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【特別企画】アームを含むパーツや素材を一新

迫真のリアリズム表現、ラックスマン「PD-191A」。アナログ再生の最前線を切り開く新たなチャレンジを聴く

公開日 2022/10/24 06:30 大橋伸太郎
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音場のスケールが深く大きく立体的な表現



試聴は新横浜のラックスマン本社B1試聴室で行った。プリアンプにラックスマン「C-900u」、パワーアンプ「M-10X」。カートリッジにラックスマン「LMC-5」、フォノイコライザーは「E-250」、スピーカーシステムにフォーカルの「Scala Utopia Evo」との組み合わせである。

フラグシップとなる「PD-191A」(右上)と、末弟機である「PD-151 MARKII」(左上)の比較も交えての試聴

新しいアームのトラッカビリティ以前に、プレーヤーシステム全体で達成した静粛性とS/Nが印象的だ。どのディスクを演奏しても、解像感がゆたかでFレンジが広大、音場のスケールが深く大きく立体的だ。

まずはカートリッジに「LMC-5」を取り付け

オペラアリア集『闇に抱かれて』(アンナ・ネトレプコ)は、オーケストラのトゥッティ(総奏)を突き抜けて迫って来る声の鮮度、生々しさに感銘する。ヴェールを一枚も二枚も剥がしたようにグルーヴから引き出す情報が増えている。2枚組ディスクの終曲「イゾルデの愛の死」を聴いたが、最内周の演奏終了まで追従が甘くならない。

バレエ管弦楽曲『春の祭典』(ダニエレ・ガッティ指揮、ロイヤル・コンセルへボウ管弦楽団)は、冒頭の静寂から目覚めて現れる楽音の精密な描写、弦の解像感と量感にシステム全体のS/Nの高さを、ティンパニの打撃の解像力にアーム感度の高さとハウリングマージンの余裕を実感した。比較的広いラックスマン試聴室だが、ローエンドの伝播スピードの早さと澄明な響きに感嘆、音場への浸透力、支配力を生む。

最大の聴き物が女声ジャズヴォーカル『プレリュード・トゥ・ア・キス』(カラブリア・フォーティ)だった。したたるような艶っぽく甘美な再生を予想したが、実際のPD-191Aはその逆。一口に言えば迫真の辛口リアリズム表現。実在感に富み、甘ったるさがない。

SPU本来の性能や持ち味も引き出してくる



サブウエイトを装着してカートリッジを「SPU Meister Silver MKII」に交換してみよう。SPUとのコンビネーションで今度こそ艶っぽい音楽を期待したがあにはからんや、辛口表現は退行せず、ヴォーカルはほっそりと引き締まり音場深くしなやかに息づく。カートリッジ本来の性能、持ち味を引き出すトーンアーム、プレーヤーであった。

カートリッジをオルトフォンの「SPU Meister Silver MKII」に変更してさらに試聴

主要部品の支持構造からインシュレーター等の機構、モーターのプログラミングまで妥協なくやれることをやりつくして音質の進化を実現した。強固に鍛えられた土台に、サエクと共同開発した高感度型トーンアームがみごとに一体化。聴き馴染んだディスクすべてから未知の音を引き出してくる。

聴き慣れたレコードから新たな発見を引き出すサウンドに大橋氏も驚嘆

PD-191Aは完成度が高いが守旧的ではない。アナログの過去現在はむろん未来の可能性までも望見させる。外見上はコンサバティブだが、先へと踏み込んだ尖った製品だ。近未来的な存在感を競うはるかに高価な内外ハイエンドプレーヤーに、一歩も譲らないアナログ最前線の音がここにある。今期必ず体験すべき製品である。

(提供:ラックスマン)

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