「テレビシアター」の切り口から魅力を探る
テレビにつなげるプリメインvs高級サウンドバー。マランツ「NR1200」とB&W「Panorama 3」を比較視聴!
Panorama 3はスピーカーブランドとして確固たる地位を築いているB&Wが手掛けたサウンドバーで、「Panorama」シリーズとしては三代目に当たる。2009年に登場した初代、それに続く二代目と比べるとずいぶんと高さが抑えられ、現代の薄型テレビに相応しいデザインになるとともに、イネーブルドスピーカーを搭載してDolby Atmosに対応する3.1.2ch構成となった。
さて、ここで注目なのが価格。本体価格だけ見ればPanorama 3の方が高いが、NR1200にエントリークラスのブックシェルフスピーカーを組み合わせるとすれば、システムトータルでは両者の価格差はないに等しい。
すなわち、「投資金額が同じなら、テレビシアターを構築するうえでどちらを選ぶべきなのか」という比較検討が可能になるというわけだ。
Panorama 3は「凄く真っ当にHi-Fiスピーカーしている」サウンドバー
比較視聴はPanorama 3から行った。ソースはテレビで再生するNetflixのコンテンツと、PS5で再生するUHD BDを主に用いた。
なお筆者が使っているラックはPanorama 3に対してサイズが小さく、両端が浮いてしまうため、ゴムスペーサーの位置を踏まえて別のスペーサーを介して設置している。
Panorama 3を聴いて真っ先に感じるのは、「凄く真っ当にHi-Fiスピーカーしている」ということ。
つまり、ソースに容赦がない。無論、テレビ本体のスピーカーに比べれば雲泥の差ではあるのだが、音質的にいまいちなタイトルでは相応の音。しかし、Netflixオリジナルタイトルなど、ソースのクオリティが高ければ見事にその魅力を引き出し、UHD BDのロスレス・Dolby Atmos音声ともなると、「これは本当にサウンドバーなのか」とギョッとするほどの音が飛び出す。
これほどの振れ幅が生じるのは、スピーカーとしての純粋な性能の高さがあればこそ。さすが「B&Wのサウンドバー」というべきか、ダイアローグ・音楽・効果音いずれにおいても、筆者の知る手頃な価格帯のサウンドバーとは段違いに明瞭な再生音が得られる。
低音はサブウーファー内蔵の割には量感を欲張ったところがなく、他のサブウーファー内蔵あるいは外付けサブウーファーの「ドバドバ」とした低音に慣れている人からすれば、むしろ物足りなく感じるかもしれない。この辺りは好み範疇ではあるものの、安易に「増強された低音=迫力」という発想の音作りに走らない辺りに、やはりB&Wの一本筋の通ったポリシーを感じる。一応、専用アプリから±6dbの範囲で高音・低音の調整は可能だ。
映像再生におけるPanorama 3がもたらす体験は実に魅力的
Panorama 3はフロント3ch+サブウーファー+イネーブルドスピーカーの3.1.2ch構成だが、サラウンド音声の再生時にはイネーブルドスピーカーがかなり効果的に活用されているようで、同価格帯の2chステレオのシステムとは一線を画す音の広がりがある。そして「後ろから音が聴こえる」は無理だとしても、前方180度のレベルでしっかりとした包囲感と移動感が実現されており、映像音響の楽しさをおおいに味わえる。