PR魅力ある分厚いサウンド、接続方式で“音変”も
ボーカル曲が好きなら間違いなし!qdcの“黄金”IEM「Folk」を聴いた
まずは有線接続から。Hybrid Folk-Sを耳に装着する。IEMブランドとして数多くのアイテムを手掛けるqdcの最新作だけあり、フィット感が高く、耳の中にピッタリと収まり安定する。ケーブルはハリがありつつも適度に柔らかく、取り回しが楽だ。タッチノイズが極めて少ないのも、モバイル用途では重宝するポイント。
3.5mm接続でOfficial髭男dismの「ミックスナッツ」を再生すると、どっしりと存在感のあるサウンドが飛び込んでくる。高解像度かつ滑らかな音像は、温かく厚みを伴ったウォーム傾向だ。ボーカルの声は湿り気を帯び、熱量が高く立体的で生々しい。
音のバランスはフラットだが、中域を中心に厚みがある分、ボーカルやギターが前にスッと出て感じられる。Hybrid Folk-Sは「ボーカルを中心としたリスニング主体」を目指して作られたというが、納得のチューニングだ。
あいみょんの新曲「愛の花」では、立体的で潤った声に耳を奪われる。透明感がありつつ伸びやかで、時にかわいらしく、時に艶やかに変化する歌声にうっとりさせられる。空間は広く、アコースティックギターのバッキングがスッと伸びて消えていく様までよく分かる。
ビル・エヴァンス・トリオの「Waltz for Debby」は、冒頭のゆったり入るピアノが美しい。定位が正確で音が立体的なため、生音のようにリアル。高級スピーカーをゆったり聴いているような量感を伴った繊細な表現力だ。
プラグを交換し4.4mmバランス接続にすると、情報量と音の立体感が大幅にアップ。「ミックスナッツ」では音の密度が一気に増し、エネルギッシュになった。サウンドのスケールが大きくなったようだ。
ボーカルやベースは音がぎゅっと詰まって、より厚みと迫力を増している。表現力が高まっているのもポイント。3.5mm接続時に気づかなかったドラミングの巧みさや左右チャンネルのホーンセクションの違いなど、細部まで見通しやすくなっている。
あいみょんの「愛の花」も同様に音がいっそう立体的になる。イントロのキーボードやアコースティックギターは音像がくっきりし、一つひとつの音の分離もよくなっている。ボーカルは声がいっそう生々しくなり、生歌を聴いている感覚だ。
「Waltz for Debby」は音像がより明瞭になっている。ピアノのタッチがぐっと近く感じられるが、過度な主張は感じられない。空間表現が正確でベースやドラムとの距離感が保たれているからだろう。思いのほか違いが大きかったのが低域で、3.5mmで聴いた時よりも弦がフレットにあたる音や箱鳴りが明瞭になり、サウンドがリアルに感じられた。
続けてワイヤレス接続を試す。ケーブルをTWXに差し替え、iPhone 14とペアリングする。TWXはSBC/AAC/aptXコーデックに準拠し、単体で8時間、充電ケース併用で40時間の再生に対応する。コントロールアプリの「qdc」も用意されており、EQ設定やサウンドモードの切り替え、外音取り込みレベルの調整、左右のボリュームの調整といったコントロールに対応する。
一聴して、3.5mm端子の有線接続と遜色ない迫力だったことに驚かされた。「ミックスナッツ」では温かみを帯びたサウンドはそのまま。中域の音の厚みこそ有線接続に譲るものの、低域の力強さとアタック感が増しておりいっそうスピード感あるスピーディな再生だ。Bluetooth接続は、有線接続に劣るという固定観念を覆すクオリティといえる。
あいみょん「愛の花」では、やはりボーカルが聴きやすい。スポットが当たっているようなのだ。とりわけサビのハイトーンが印象的で、細かい音の粒をぎゅっと凝縮したような歌声が空間に勢いよく伸びてすっと拡散する。
「Waltz for Debby」は中域の厚みが抑えられ、全体的にシャープな演奏だ。正確な定位と音の分離の良さもそのまま。音がぎゅっと詰まったランニングベースもキレ味十分。イントロの静謐さと、演奏がヒートアップしている時の華やかさをグラデーションで描く表現力を備えている。
「ボーカルを中心としたリスニング」を意識したというHybrid Folk-Sのサウンドは、まさに狙い通りの出来映え。3種類のドライバーを搭載するユニバーサルIEMとしては価格も手頃で、ポップスやアニソン、ジャズなどをよく聴くなら、選んで間違いない。
その上、標準でアンバランスとバランス、TWXを用意すれば有線と無線といったように、異なる接続で音を変化させる “オーディオの一段深い愉しみ” も味わえる。長く愛用できそうな製品だ。
(協力:アユート)