[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第271回】
いまだからこそ“二刀流”エントリーDAP、超小型Shanling「M0 Pro」に注目!
変わらぬ超小型サイズが “DAP冬の時代” で新たな強みに
Shanlingから、2018年発売のヒットモデル「M0」の最新版となる、超小型DAP新モデル「M0 Pro」が発売された。実売税込1万9800円と文句なしのエントリー価格帯も維持している。
DAPのエントリークラスは正直、ジャンル自体が勢いを失っている状況だ。仮に5万円までをエントリー価格帯としよう。去年以降発売の製品としてはHiBy「New R3 Pro Saber」、HIDIZS「AP80 Pro Titanium Alloy」、Sony「NW-A306」くらいだろうか。しかも前2つは2020年発売モデルのマイナーアップデート、またはバリエーション展開だ。
というのも、音楽リスニングの主役はすっかりサブスクで、そのサブスクを外出中に楽しむにはモバイルデータ通信機能が必須。その機能を備えないDAPは、ポータブル環境でのサブスク再生システムとしてはほぼ論外だ。これからポータブルオーディオを始めようというエントリー層にアピールできるものではない。
その一方で復権してきたのは、スティック型USB-DAC/ヘッドホンアンプ。スマホと有線イヤホンを高音質でつなぐ存在として改めて注目を集め、一時期は落ち込んでいた製品数が急激に盛り返された。ポータブルオーディオにおけるエントリー価格帯の主役は、いまやこちらに移っている。
そんなエントリーDAP冬の時代に投入されてきたM0 Pro。後ほど確認するが、バランス駆動対応を含めて音質はグッと向上。しかしサイズや機能性にM0からの大きな変化はない。
しかしエントリーDAPを取り巻く状況の変化が、そのサイズや機能に新たな意味を与えた。スティック型USB-DAC/ヘッドホンアンプにも匹敵するコンパクトさ。そしてUSB-DAC/ヘッドホンアンプとしての動作モードも備えるということは……
M0 Proは、エントリーDAPでありながらスティック型USB-DAC/ヘッドホンアンプのニーズにも応えられる、二刀流アイテムになり得るのだ!
ただまあ、それはM0の時点からそう。だが、M0当時とは状況が違う。エントリーDAPとスティック型USB-DAC/ヘッドホンアンプの人気が逆転した現在にこそ、「スティック型DAC/ヘッドホンアンプのニーズにも応えられる超小型エントリーDAP」というのはより強いアピールポイントになるはずだ。
M0のアイデンティティ「小さいは正義!」を死守
ということで、M0 ProはこのエントリーDAP冬の時代にも独自のポジションでの成功を狙える製品といえる。しかしその成功を実際に得られるかどうかは、その出来栄え、実力次第。そこを確かめていこう。
まずは概要確認。注目ポイントはおおよそ以下のようなところだろうか。
●超小型サイズによる圧倒的なポータビリティ
●超小型画面に最適化したタッチ操作インターフェース
●独自OS「MTouch OS」による軽快動作
●シングルエンド駆動で約14.5時間の再生時間
★バランス駆動では10時間
●DAC/ヘッドホンアンプとしても機能
●Bluetooth送受信(LDACにも対応)
●内蔵メモリなし(microSD必須)
●お手頃価格
★最新DACチップESS「ES9219C」をデュアル搭載
★4.4mmバランス駆動にも対応(別売の専用変換ケーブル必須)
(●はM0からの継承、★はM0からの強化)
最重要ポイントはもちろん超小型サイズ。スティック型USB-DAC/ヘッドホンアンプのニーズにまで対応できるのもそのおかげだ。それ抜きで単にDAPとしても、M0が支持された最大の理由はそのサイズ。それを継承しないのはあり得ない。
本体の3.5mm/5極シングルエンド駆動端子と専用変換ケーブルを組み合わせる形での4.4mmバランス駆動対応も、そのサイズ感を死守するための選択だろう。M0であるからには「4.4mm端子搭載したいから全体のサイズ大きくしちゃおうぜ!」は許されない。
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