[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第271回】
いまだからこそ“二刀流”エントリーDAP、超小型Shanling「M0 Pro」に注目!
しかしMA910Sのこのチューニング、ボリューム感たっぷりの中低音は一歩間違えればボリューム感出しすぎのボワンとした音像にもなりかねない。高域のエッジを立てないのも一歩間違えれば単に不明瞭な音像描写になりかねない。
だが、それこそがバランス駆動専用、バランス駆動でしか使えない端子仕様のイヤホンならでのバランス駆動前提チューニングということなのだろう。バランス駆動の制動力があれば中低域の制動に不足なし!バランス駆動の解像感があればエッジに頼る必要なし!というわけだ。
そして前述のように、M0 Proはバランス駆動時の音が特に優れているDAP。ならばこの組み合わせは「バランス駆動重視DAP×バランス駆動専用イヤホン」というコンビネーション、好印象が当然ともいえる。
Bluetooth送受信機能でワイヤレスな活用も
M0としてのサイズと価格帯をキープしつつ、この音質向上っぷり!これなら操作性据え置きでも納得だ。DAPとしてもUSB-DAC/ヘッドホンアンプとしても活躍してくれることだろう。
では最後に、DAPでもUSB-DAC/ヘッドホンアンプでもない、さらに別の動作モードについても見ておこう。前述のように、M0 ProはBluetoothのトランスミッター、そしてレシーバーとしても使用できるのだ。
トランスミッター機能というのは、スマホでそうしているように、M0 Proで再生する音楽を完全ワイヤレスイヤホン等で聴けるということ。
レシーバー機能は、USB-DAC/ヘッドホンアンプ機能の「USB」の部分をBluetoothに置き換える感じだ。スマホとM0 ProをBluetooth接続して、「スマホのサブスクアプリで再生している音楽を、M0 Proにつないだ有線イヤホンで聴く」みたいなことができる。
どちらのモードもLDAC対応なので、LDAC対応の完全ワイヤレスイヤホンやスマホとの組み合わせで、周囲の電波環境が良好であれば、Bluetoothとしてはベストな音質でのリスニングが可能。レシーバーとして使用の場合、M0 Pro側のDAC/アンプの音質向上が反映されるのもポイントだ。
DAPをより幅広い層にアピールできるアイテム
繰り返しになるが、ポータブルオーディオのエントリークラスにおいてDAPの存在感は薄まってきている。ヒットモデルの後継機であっても、超小型という個性はあっても、単にDAPとしての魅力だけでM0 Proに注目するようなユーザーは減ってしまっているのかもしれない。
だが、M0 Proは、超小型DAPであると同時に、その超小型のおかげでそれにとどまらない活躍を期待できる一台だ。
たとえばスティック型USB-DAC/ヘッドホンアンプをもう利用していて、単に新しいスティック型USB-DAC/ヘッドホンアンプへの買い替えるだけだと新鮮味が薄い……なんて思っている方。M0 Proなら、DACアンプの役割も引き継ぎつつ、DAPという新しい世界も試せます!みたいなところも、M0 Proなら狙えるかもしれない。
エントリーDAPというジャンル全体の今後を占う意味も含めて、注目すべきモデルと言えるだろう。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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