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PR評論家 山之内正がレポート

東京藝大の公演をハイレゾ立体音響で無料配信。コルグ「Live Extreme」Auro-3D配信実現の背景とその魅力に迫る

公開日 2023/07/28 06:30 山之内 正
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「Auro-3Dを選んだのは、音質が優れていることと、ハイトを含む9chで制作した音源を5.1chのストリームで配信できることが主な理由です。再生環境は他の方式の方が広く普及していますが、ヘッドフォンが中心だったり、ライセンスの取得やプラットフォームの準備・調整に手間がかかるなど、まだ課題があります。Auro-3Dも対応するAVアンプが必要ですが、最近は製品も増えてきたので、スピーカーで本格的な3Dオーディオを体験できる機会が広がることを期待しています。興味はあるのに聴く方法がわからないと学生から言われていたので(笑)」(亀川教授)

取材時の様子

コルグの山口創司氏によると、Live ExtremeでAuro-3Dの配信を実現できた背景として、ウェブブラウザでPCMやDSDのビットパーフェクト配信を行う技術を確立していたことが大きいという。その技術を活かせば5.1ch信号のなかにハイト成分を重ねるAuro-3Dの信号を配信するのはそれほど難しくないと明かしてくれた。

コルグ 山口創司氏

一方、実際の作業としてはパソコン、ブラウザ、再生機器などが複数存在するなかでの動作の検証に時間がかかったという。当初、macOS版Chromeではサラウンド再生ができないなど、特定の環境では未解決の問題があったそうだ。現在はその問題は解決したとのことだが、Apple Silicon搭載MacはHDMIからのハイレゾ出力ができない仕様だそうで、実際に筆者が自宅の環境で試したときも、96kHz/24bitで再生するには、インテルのCPUを積んだ数年前のMacを使う必要があった。なお、48kHz/24bitのAuro-3DはApple Silicon搭載Macでも再生可能。また、Windowsではこうした制限なくLive Extremeの配信をフルスペックで視聴できる。

そこさえクリアすれば、ブラウザの再生画面で音符のアイコンをクリックしてサンプリング周波数とチャンネル数を選び、AVアンプ側でAuro-3Dモードを選択するだけで操作が完了し、難しさはない。5.1chシステムに4本のハイトスピーカーを加えたAuro9.1(96kHz/24bit)の再生環境で、イマーシブオーディオならではの広大で立体的な音響空間が出現した。ちなみに今回の自宅での試聴はマランツのCINEMA 50を用いている。

マランツ「CINEMA 50」などAuro-3D対応のAVアンプも増えている

Auro-3Dコンテンツを聴く。「ステレオ再生とは別格」



奏楽堂で昨年夏に行われた第九の演奏会をLive Extremeで再生すると、オーケストラが前後左右に大きく広がり、ホール前列での鑑賞体験を狙っていることがわかる。

ステージ中央に定位するバリトン歌手の音像はステレオ再生よりも鮮明で、オーケストラとの位置関係を立体的に再現。独唱に続いて合唱が歌い始めると、ステージ後方の高い位置に広がるスケール感が圧倒的で、分厚い響きが聴き手の全身を包み込む。コントラバスなど低音楽器が動かす空気の絶対量もステレオ再生とは別格の余裕がある。

同じ音源を千住キャンパスのスタジオに設置されたシステムで再生すると、360度すべての方向に直接音と間接音が高密度に広がり、実際のスピーカーの位置に制約を受けないシームレスな音場が展開した。Live Extremeのポテンシャルの高さを実感できる理想的な環境だ。

東京藝大 千住キャンパス内のスタジオではハイトスピーカーまで含めて同じ同軸型スピーカーを使用

このつながりの良さがいったいどこから生まれるのか、亀川教授に尋ねてみると「このスタジオは全チャンネルに同じ同軸型スピーカーを使っています。3ウェイなど音響中心が離れているスピーカーだと音域によってフォーカスが変化しますが、同軸型はそれがありません。チャンネル数が多いことには、大型スピーカーを使わなくても十分な低音が得られるメリットもあります。ハイトスピーカーは低い音域まで伸びている必要はないので、まずは小さいスピーカーで3Dオーディオに取り組むことをお薦めします」という有益なアドバイスが返ってきた。

キャンパス内の別スタジオでも同軸スピーカーによるシステムを構築

「デジタルツイン」にはLive Extremeで楽しめるAuro-3Dのコンテンツが複数あり、ヴィブラフォンとマリンバが聴き手を取り囲むスティーブ・ライヒの「マレットカルテット」や環境音を3次元に配置した「Ambit Acoustics」など、興味深い作品が揃っている。奏楽堂で録音したオルガン演奏など、今後も新しい作品を公開予定とのことなので、ぜひ楽しみにしていただきたい。

(提供:コルグ)

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