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【特別企画】内部回路を一新、機構面からも音質をさらに追求

ティアック最新鋭機「UD-507」を速報レビュー!ディスクリートDACの実力をスピーカー&ヘッドホンでチェック

公開日 2024/06/21 06:35 生形三郎
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ティアックの“500シリーズ”にディスクリートDACを初搭載



コンパクトなA4サイズ筐体に高音質を凝縮したティアックReference500シリーズに、最新作「UD-507」が登場した。本機はその名の通り、シリーズのヒット作であるDACプリ/ヘッドホンアンプ「UD-505」の上位モデルに位置するもの。上位機「700シリーズ」譲りのディスクリートDACや強化されたヘッドホンアンプ、高性能なボリュームアッテネーターなどを搭載する意欲作の実力を、早速スピーカー再生及びヘッドホン再生にて検証したのでお届けする。

TEAC USC-DAC&プリアンプ&ヘッドホンアンプ「UD-507」(328,800円/税込) ※8月下旬発売

全段でデュアルモノラル、フルバランス回路構成を採る本機の特長は、なんといっても、自社製ディスクリートDAC『TRDD 5』を搭載することだ。これは上位モデル「UD-701N」に採用の回路を踏襲したもので、独自アルゴリズムを搭載したFPGA内のΔΣモジュレーターによって入力信号をアナログ信号化するもの。

同社が力を入れる、DACチップを使わず抵抗やパーツを組み合わせて音質を追求する「ディスクリートDAC」。このシリーズとしては初搭載となる

UD-507への搭載にあたり、回路構成は同一としながらも、ロジック回路と高精度抵抗で構成されるエレメント(1chあたり16個必要)を新たなパーツの採用によってコンパクト化することで、回路規模の大幅なダウンサイジングを可能としたものというから驚きである。

また、かねてよりユーザーニーズの高いヘッドホンアンプ部には、強力な電流供給能力を持つバッファーアンプ回路「TEAC-HCLD2」を採用するとともに、最大出力は1,200mW+1,200mW(バランス接続、100Ω負荷時)を実現。様々なヘッドホンやイヤホンのインピーダンスに対応するため、LOW/MID/HIGHの3種類のゲイン切り替えを搭載し、単体のヘッドホンアンプと同等の駆動力や機能性を備えるにいたっている。

UD-507(上)とUD-505(下)の背面端子。基本機能は共通だが配置が大きく変更されている。そのほか天板のねじ止めやフットなども変更されており、パッと見共通デザインにも見えるが大きくアップデートがなされている

加えて、高精度なアナログボリュームアッテネーター「TEAC-QVCS」も採用し、5系統のデジタル入力とバランス及びアンバランス接続によるアナログ入力を装備するなど、プリアンプ部も充実の仕様となっている。なお、デジタル入力には、フロントパネルにUSB Type-C入力を備えておりDAPなどのモバイル機器をスマートに接続できる点や、より高品位な音を楽しめるLDACコーデックに対応するBluetooth機能は、2台の機器と同時に接続可能なマルチポイント仕様となっているなど、アップトゥデートな装備をカバーする点も見逃せない。

シルバーの他にブラック仕上げも用意。なお4pinXLR端子の搭載や、フロントのUSB typeC端子もシリーズとしては今作が初

以上の内部構成と同じく注目に値するのが、筐体の各部に配された細かな制振設計だ。天板のアルミプレートが1.6mmから2.6mmへと厚みを増すとともに、敢えてリジッドにネジ留めしないセミフローティング機構とし、振動に対して、むやみに止めることなく、適切にいなすアプローチを追求。

天板は厚さ2.6mmと前作より分厚くなった他、「ねじ止め」をせず左右パネルから挟み込むフローティング構造を採用。ねじ止めがないのは音質・デザイン双方からのこだわり

足元も刷新され、新開発のフローティング・フットが採用されている。以前より足元は、フットをシャーシに固定せず半固定状態にする3点支持フット「Stressless Foot」を採用していたが、今回その機構をさらに一歩押し進めた「Stressless Foot v2」へと進化。 シャーシとベースとの間にあそびを持たせた新機構を採用している。

ガッチリ固めるのではなく振動を“いなす”最新フット「Stressless Foot v2」を搭載

これは、ティアックのハイエンドブランドであるエソテリックにも採用されていない最新構造とのことで、まさに同社の先頭技術が投入されているのである。また、フットのパーツの塗装によっても音傾向が変わるため、様々に仕上げを検討したといい、脚だけでも大きなコストを掛けて設計しているというから、本機への力の入れようがよく分かる。

さらに、底面のプレートも最後まで検討を続け、音質を考慮しトランスの制振のためのスリットを挿入して振動をコントロールしたり、背面のコネクタパネルにも、RCA端子部のネジ止め時に基板へ無用な力がかからぬようにスリットを入れるなど、細やかな部分にまで配慮が散りばめられている。このあたりに、同社の製品開発に対する、回路面だけでなく機構面も踏まえた立体的な取り組みを伺い知ることができる。

底板の「切れ込み」も、トランスの振動を排除するなど音質的に配慮された位置に設けられている

背面の電源コネクタ左右の「切れ込み」も振動対策から合理的に設計されたもの

温かみのある音色で楽器の対話を小気味よく引き出してくる



試聴は、ミュージックサーバーfidata「HFAS2-X40」とUD-507をUSB接続し、サーバー内のハイレゾファイルを再生した。アンプには同シリーズの「AP-505」を、スピーカーにはBowers & Wilkins「805 D4 Signature」を接続している。

パワーアンプ「AP-505」を組み合わせ、スピーカー再生で実力をチェック

まず、DACの性能を見極めるべく、敢えてハイレートな384kHz/24bit音源の クリスチャン・グローヴレン「BACH - Inside Polyphony」(2L)から再生。教会で収録したソロピアノ音源で、2Lレーベルらしい透明性の高いサウンドが楽しめる音源だ。

UD-507で再生すると、大きな空間情報量を持つ本音源も、ピアノの音像はしっかりと手前へと手繰り寄せられ、そのフォーカスも瞭然としている。巧みな打鍵の強弱を含む演奏のタッチや、フレーズを形作る拍節感など、演奏が持つ音楽のグルーヴをしっかりとあらわにしていく。音色表現も、ともするとクールになりがちな2Lの音源を、温かみある音色で再現しており、ストレスなく心地よいサウンドが楽しめる。一曲目の試聴から、音源の魅力が存分に引き出されていることを目の当たりにした。

続いて、アダム・バウディヒ&ヘルゲ・リエン・トリオ「bridges」(96kHz/24bit)の再生でも、またしてもグルーヴィーな表現に思わず口元がほころんだ。ジャズ・ヴァイオリニストのアダムとヘルゲ・リエン・トリオのリズミカルな掛け合いが魅力のアルバムなのだが、冒頭のハーモニクスを交えたアダムの軽快なピチカートと、ヘルゲ・リエンがピアノの低音弦を叩いてリズムをとるタイトな対話が、実に小気味よく展開する。ヴァイオリンの擦弦やピアノの高音弦の音色などは、鋭いアタックや硬質感で耳へとリーチするのではなく、楽器に抱くイメージ本来の温もりや滑らかさに満ちたサウンドが立ち上がることが何よりもの快感だ。

写実的な高域描写力を持ち合わせる「805 D4 Signature」から、これだけ熱量豊かな再現を引き出すことに瞠目する。これはUD-507の能力はもちろんのこと、クラスDアンプ内蔵のAP-505を含めたトータルでの持ち味もあるだろう。ウーファーの制動力も豊かで余韻が間延びせず、しかしながら、厚みや密度をしっかりと感じさせ、大変説得力の高いサウンドを楽しませる組み合わせだといえる。

電源を入れた直後には「TEAC Reference Discrete DAC 5」の文字も表示される

ヴォーカルソースも、歌声がしっかり前面へとそそり立つ存在感がありながらも、ソースに含まれる楽器の数々がしっかりと解像され、奏者の表現が明快に伝わってくる気持ちのよさがある。そしてやはり、音色には程よい温かみやソフトネスがあり、その音に安心して身を任せて、長時間心ゆくまで楽しめるサウンドと感じた。

ヘッドホン再生でもストレスない開放感とソフトな肌触り



続いて、ヘッドホンアンプ部の音質を確認する。ヘッドホンにはゼンハイザー「HD 800S」を使用し、ヘッドホン付属のTRSコネクタによるシングルエンド接続ケーブルと、4ピンXLRコネクタによるバランス接続ケーブルを用いての両接続の駆動をチェックした。

ゼンハイザーのヘッドホン「HD 800S」でも音質をチェック

一聴して実感するのは、音楽の「活き活きさ」だ。スピーカーとは異なり、ヘッドホンから耳へと直接に音が届くため、本機の持っているサウンドの特長がダイレクトに届いてくる。スピーカー再生のときと同様に、ストレスなく心地よい、ソフトな肌触りの音色の質感が魅力的だ。

HD 800Sはその性能の高さから、ヘッドホンアンプによっては高域方向がシャープでモニター然とした描写になることもあるが、どのようなソースを再生しても高域がキリキリせずに至極快適なのである。温かみを感じる音色だが、決して高域が減衰しているようには感じさせず、さらに、抑制感がなく音楽自体は躍動的で活発さに満ちており、それも「ストレスのなさ」を感じさせる理由である。

バランス接続では、より広い画角で詳細な情報が引き出されていく。音色も、よりしっとりとした質感が引き出され、上品さも備わる。しかしながら、闇雲にスケールが広大になりすぎたり、低域もタイトに締めすぎたりせずに程よい開放感があり、そこに本機ならではの魅力を感じる。機器としての性能を誇示するのではなく、あくまで、快く音楽を楽しむことを本位としていることが如実に伝わる音なのである。それがヘッドホン再生でも再確認することが出来た。

作り手の機微をしっかり届けてくれる誠実さも感じる



以上「UD-507」は、Referenceシリーズ伝統のA4サイズの中に、上位機譲りのディスクリートDACサウンドを実現した、革新的なDACプリ/ヘッドホンアンプである。筆者は、本機と多くの技術を共有する上位機「UD-701N」をネットワークプレーヤーのリファレンスとして拙宅で使用しており、そのサウンドを把握している。

両者を比較すると、UD-701Nは回路規模や電源部の充実による一層高解像な描写力やサウンドの存在感を備えているが、UD-507には、その「ちょうどよい」筐体サイズ感にも現れているような、聴き手に大変身近に高音質を楽しませてくれる親しみやすさ、心地よさがあると実感する。

今作から設けられた新機能として、「クロック」の有無を入力ごとに設定することができる。またティアックスタッフによると、Bluetooth入力でも外部クロックの追加で音質効果が見られるという

例えば、疲れ切っていて音楽を聴く気すら起きないような心持ちのときにも、気構えせずに聴けて、気持ちの良い音で心をホッとさせてくれる音と言えばよいのだろうか。まさに「ちょうどよい」サウンドなのである。

そしてそれは、単に心地よい音というだけでなく、音楽の演じ手や作り手の機微をしっかりと届けてくれる誠実さがあると筆者は感じる。このあたりの実力は、先述の通り、上位機の技術をしっかりと踏襲しているからであろう。

「UD-507」 は、とりわけ、スペースを圧迫せずに良質な音を楽しみたい方や、ヘッドホンやDAPなどの手持ちのモバイル環境を活かして高音質を楽しみたい方にうってつけのプロダクトなのである。

(提供:ティアック)

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