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ゼンハイザーのタラモア工場見学(2)

手作業のこだわりがすごい! ゼンハイザーのヘッドホン「HD 6XX」を工場で作ってきた

公開日 2024/10/09 06:40 編集部:平山洸太
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「HD 6XX」を実際に組み立ててみた



見学では、実際にHD600シリーズの組み立てを体験することができた。最初に念を押しておくが、もちろん熟練のスタッフが横につき、細かくフォローとチェックをしてもらいつつ組み立てた。

「HD 6XX」を記者が組み立ててみた

今回作ったのは、アメリカの共同購入サイトDrop限定で販売されている「HD 6XX」というモデル。シリーズにはHD 600、HD 650、HD 660S2などあるが、どのモデルを作るかはオーダーに合わせて切り替えているという。

さて、HD 6XXの制作は3人のチームで行われる。「ハウジングの作成」「ハウジングにヘッドバンドとケーブルを固定、再生特性の計測」「外箱を組み立ててヘッドホンを梱包」といった役割分担で3つのステーションが用意され、これを一定間隔でローテーションしていくという。順に詳しく解説していく。

1つめのステーションでは、ハウジング部分を作成する。まずはトランスデューサーが固定されたフレームにアームをはめ、上からメッシュ部分を取り付ける。裏返したら耳に当たる部分に薄いスポンジを乗せて、その上からイヤーパッドを固定。イヤーパッドは4か所をパチッと本体にはめていくのだが、なかなかスムーズにいかない。やはり慣れが必要だそうだ。

イヤーパッドをスムーズに固定するには慣れが必要

アームを取り付け、その上からメッシュ部分をはめ込む

2つめのステーションでは、一気にヘッドホンを完成まで持っていく。前の工程で出来上がったハウジング部分に、ヘッドバンドを取り付ける。ケーブルのコネクター部分を差し込んで接続すれば、ヘッドホンとしては完成だ。組み立てにハンダゴテを使うこともなく、シンプルな構造をしていると改めて感じた。

しっかりケーブルを差し込むため、専用の治具を使用する

完成したHD 6XXは、小型の防音ブースに用意された計測器に取り付け、周波数特性や感度、THDなどを計測する。計測にかかる時間は10秒ほど。トランスデューサー製造時にもチェックされているので、完成までには2回の測定が行われていることになる。

ブース内の測定機器に取り付け、1台ずつテストを行う

画像はHD 800シリーズのエリアのもの。HD 600シリーズでも同様のテストを行った

これらの組み立ての際は、すべての工程で視覚と触覚により、取り付けるパーツを都度チェックするルールとなっている。3人のスタッフで1時間42個、1日8時間の勤務中に290個という目標数が設定されているとのことで、多くの技術と感覚が必要であるそうだ。

完成したヘッドホンは「改めて外観をチェックして」と念を押された

最後のステーションでは、展開されているダンボールの外箱を組み立て、HD 6XXをビニール袋に入れてから、外箱の中に収納する。なおビニール袋に入れる前には、HD 6XXの外観を改めてチェックする必要がある。そして外箱を閉めたら、その上からビニール袋をさらにかぶせ、出荷用の段ボール箱に入れて終了だ。

1,000万円超え「HE 1」は作るのに約2週間



日本では未発売となるが、同社の最上モデルに「HE 1」という、1,000万円を超えるヘッドホンシステムがある。ヘッドホン本体にエレクトロスタティック型を採用し、真空管を搭載する専用ドライバーユニットとセットで使用する製品だ。

「HE 1」

HE 1の製造については、担当のダミアン氏が組み立ての大部分を行い、1からすべてを作っていく。1台が完成するまでの期間は、およそ2週間。組み立てに必要なパーツは、約3,000個にも及ぶという。

HE 1はダミアン氏ひとりで作っているという

制作している部屋の中には、さまざまな温度や湿度で動作を確かめるための、気候制御室も設けられていた。他の製品と同じように、HE1についても各工程のすべてでチェックを行うため、そのテスト回数は合計600にもなるそうだ。

奥にあるのがHE 1を作るための部屋

タラモア工場内には、見学者を招くための「オーディオファイル・エクスペリエンスセンター」が2023年9月に開設された。この施設では、HE1をじっくり試聴するための部屋が用意されており、記者もここでそのサウンドを体験できた。また、HD 800シリーズやHD 600シリーズをはじめとした、タラモア工場で製造する各製品が飾られており、こちらも自由に体験することが可能だ。

オーディオファイル・エクスペリエンスセンターは工場に併設されている



今回の記事では、ゼンハイザーのオーディオファイル向けヘッドホンやイヤホンなどについて、手作業で作られていく様子をお伝えした。

最終回となる次回は、タラモア工場でマネージャーを務める、Pat Fulton(パット フルトン)氏にインタビュー。どのような考えで製造を行っているのか、そしてあえて手作業にこだわる意義などについて、改めて伺った内容をお届けする予定だ。

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