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BMWのラグジュアリーモデルにのみ搭載

“駆けぬける歓び” を加速させる。B&Wのダイヤモンド・トゥイーター搭載、2400万超のBMW旗艦SUVの音質をチェック

公開日 2024/11/04 07:00 栗原祥光
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メルセデスとポルシェはブルメスター、フォルクスワーゲンとBYDはディナウディオ、レクサスはマークレビンソンと、高級車の純正カーオーディオにハイエンドオーディオブランドの手掛けるのが珍しくない。だが、その音世界はいかなるものか。ホームオーディオとの相違点はどこにあるのか。今回はBMWの旗艦SUV「XMレーベル」が搭載するB&Wシステムの音をお届けする。

BMW XMレーベル。価格は2,420万円

ダイヤモンド・トゥイーターを搭載するカーオーディオシステム



BMWがBowers&Wilkins(以下B&W)にカーオーディオのデザインを依頼した詳しい時期や経緯は残念ながらわからない。だが、2015年に登場した6代目となるフラグシップセダン 7シリーズのオプションにB&Wのカーオーディオがあり驚いたことを覚えている。というのも、新車発表の記者会見会場で、自動車媒体がエンジンに夢中になる中、独り「ダイヤモンド・トゥイーター」の姿を見て驚き、撮影していたから。

6代目BMW 7シリーズ(写真のモデルは745e Luxury。販売当時の価格は1241万円)

745e Luxuryの後席ドアに取り付けられたB&Wのスピーカーユニット(後席トゥイーターはアルミドーム型だが、運転席側の振動板は人工ダイヤモンドであった)

現在B&Wのカーオーディオシステムを標準搭載するBMWは電気自動車のi5とセダンの7シリーズ、クーペの8シリーズ、SUVのX5、X6、X7、XMのみ(iXにはオプションで設定あり)。言い換えるならラグジュアリーなモデルと限られている。ちなみに他のBMWにはハーマン・カードンのシステムが用いられている。ハーマンインターナショナルとB&Wは2008年にカーオーディオ事業におけるパートナーシップを発表しているので、BMWがB&Wのシステムを採用したのは、その流れからだろう。

BMW X5(写真のモデルはX5 xDrive50e M Sport。価格は1260万円)

20のスピーカーユニットと20チャンネルのアンプで構成



今回のXMレーベルも含め、前出のBMW SUVが搭載するB&W製スピーカーユニットの数は、25mm径のドームトゥイーターが7基、100mmミッドレンジが7基、217mmウーファーが2基、そしてサラウンドスピーカー4基の計20基。それぞれのユニットにパワーアンプがあてがわれており、その総出力は1475Wを誇る。なおシステム的には同じではあるものの、車種によってインテリアやエアーボリュームが異なることから、個別にイコライジングがなされているという。

BMW XMレーベルの車内(運転席側)

その信号処理にはQuantum Logic Immersion(QLI)のデジタルプロセッシングと、AuraVoxのイコライゼーションが用いている。この辺は他社のプレミアムカーに搭載するカーオーディオシステムでも見かける構成だ。

では見える範囲で詳しくみていこう。運転席・助手席側のドアはドームトゥイーターとミッドレンジによる2ウェイシステムをマウント。ステンレス製のメタルをのぞき込むと、ダイヤモンド・トゥイーターと保護用のウェーブガイドの姿が見える。ミッドレンジは近年のB&Wでお馴染みの振動板表面がグレーのコンテニュアム・コーンだ。

ドアミラー近傍に取り付けられた25mm径ダイヤモンド・ドームトゥイーター

100mmコンティニュアム・コーン型ミッドレンジ

形状的にドライバーを囲むような形状のダッシュボードにもスピーカーはマウントされている。だがサランネットを取り外すことは叶わず、その姿を見ることはできなかった。またユニット構成などは明らかにされていない。

運転席側のダッシュボード形状

後席ドアにも100mmコンティニュアム・コーンのミッドレンジとトゥイーターが設置されている。だがトゥイーターの振動板表面はなめらかなアルミドームとのこと。

XMレーベルの後席。ソファも標準で付いてくる

室内から見た後席ドア。25mmアルミ・ドームトゥイーターと100mmコンティニュアム・コーン型ミッドレンジで構成

ドアで気づいたのは、運転席や助手席のみならず、後部座席までも2枚のガラスの間に透明樹脂フィルムによる「中間膜」を設けた “合わせガラス” を用いていること。これは事故時の安全性や赤外線カットに優れるだけでなく、外部からの騒音低減にも効果がある。実際にドアを閉めると外部の音はかなり低減されていることがわかる。

1列目、2列目のドアに、合わせガラスを採用する

2基の217mmロハセル・コーンウーファーの姿は、車内を探しても見当たらず。大抵のカーオーディオは、ラゲッジスペースにウーファーを設置するのだが……。

ラゲッジスペースの様子。見た限り、サブウーファーの開口部を見つけることはできなかった

天面はガラスルーフの代わりに、間接照明が仕込まれた立体構造のルーフライニングが取り付けられている。そこにサラウンド用としてヘッドレスト近傍に40mmのフルレンジユニットをマウントする。

天井面の様子。ヘッドレスト付近にサラウンドスピーカーを配置する

40mm径フルレンジユニット

対応ソースは必要にして十分



入力ソースはテレビ、AM/FMラジオのほか、Bluetooth、USB-type A、そしてSpotify。日本車で見かける3.5mmミニプラグによるアナログ入力やHDMI入力は用意されていない。

ソース選択画面

スマートフォンとの接続は、iOSならApple CarPlayが起動するが、Androidの場合は、専用アプリをインストールようメッセージが登場する。つまりAndroid AUTOには対応していない。

iOS端末を接続すると、Apple CarPlayが起動する

筆者のAndroid端末(Pixel 6a)をUSB接続した様子。Android AUTOは起動しなかった

オーディオコントロールは、メーターパネルと一体化したカーブドのインフォテイメントディスプレイを見ながら、パネルタッチまたはセンターコンソールのジョグダイアル、そしてハンドルリモコンで行う。

ステアリングホイール右手側に設けられたエンターテインメント用ステアリングリモコン

センターコンソールのジョグダイヤル

続いて設定画面を開いてみる。

まずイコライジングは100Hz、200Hz、500Hz、1kHz、2kHz、5kHz、10kHzの7バンド。低音と高音のスライダーはTREBLE/BASSの役目を果たしているようで、1kHzを中心に他の周波数も一緒に変化する。これは使いやすいと感心した。

イコライザー画面

高域を上げた様子。中央の1kHzより上の帯域が全体的に上がっているのがわかる

ホームオーディオにはない機能のひとつが、車速連動調整だろう。例えば高速道路など、ロードノイズや風切り音が大きい場所で音量が上がるというものだ。またナビゲーションの声も任意で変更できる。ここら辺は他のカーオーディオでも見かける機能だ。

走行時の速度、つまり環境音に合わせて音量が変化する

同じくホームオーディオにはないのが、フェーダー機能だろう。これは前後左右のスピーカーのバランスを変えることで、アコースティックセンターの位置を調整できるというもの。グラフィカルにアコースティックセンターを表示し、タッチパネルで直感的に変更できる。

バランス/フェーダー機能の設定

音響特性を大きく変化させるサウンドプロファイルは4種類を用意。この変化については後程お伝えする。

サウンドプロファイル設定メニュー画面

聴き手の心に響くエモーショナルなサウンド



手持ちのストリーミングWALKMANの「NW-A300シリーズ」に96kHz/24bitの様々なハイレゾ音源(FLAC)をインストール。Bluetooth接続で試聴を開始したが、ややクリアネスを欠いた印象。

NW-A300シリーズと車両をBluetooth接続した状態から試聴をスタート

そこでUSB接続したのだが、車両側がNW-A300を認識しないため、音源を手持ちのUSBメモリーに移した。なおUSBメモリーそのものは普通に流通しているものだ。

USBはType-A端子で、センターコンソールに用意されている

続いて選曲するわけだが、なぜかアートワークが出るものと出ないものが。これは他社の純正カーオーディオでも起きるので、あまり気にしないことにした。

選曲画面。アートワークが出るもの、出ないものがあった

まずは、サウンドプロファイルから「スタジオ」を選択し試聴を始めることにした。B&W「800 D3」のイラストと共に「レコーディングスタジオでのオリジナル音源を体験できる本物のサウンド」というメッセージが現れるスタジオは、天井のサラウンドスピーカーを使わないモードだ。アコースティックセンターは車両中央にした状態にセットした。

サウンドプロファイル「スタジオ」を選んだ状態

肌合いのよい温度感で、ややエッジを立たせながら楽器の質感と楽音の微妙なニュアンスを描き出す。引き締まった低域とストレスなく伸びきったワイドレンジサウンドは、まごうことなき現代B&Wそのもの。でありながら、聴き手の心に響くエモーショナルさを備えている。

助手席や後席でも聴いたが、帯域バランスの点で運転席が最も好ましい印象を受けた。だがトゥイーターの位置が耳に近いのと、試聴車両はあまりオーディオを使っていないためか、高域が時折鋭く感じる場面も。新車の場合は暫くイコライジング機能を使い、少し高域を落とした方が好ましいかもしれない。

アコースティックセンターを車両中央にすると、リアスピーカーからも音が出る都合、車内に音で満たされる快感が得られるいっぽう、音像定位が不明瞭になる。そこで思いっきり前にセットしてみると、フロントウィンドウの幅いっぱいにサウンドステージが拡がるとともに、奥行きもしっかりと表現。後席を使わないなら断然こっちだ。

続いて後席専用のサウンドプロファイルを選んでみた。イームズラウンジチェア&オットマンのイラストに思わず笑ったが、後席に座った方向けというあたり、ショーファーカーも手掛ける自動車メーカーらしい配慮と感じた。

サウンドプロファイルから「後席」を選択

運転席側の低域レベルが思いっきり上がるいっぽう、リアシートで聴くと、センターにサブウーファーを置いた2.1チャンネルシステム的な音像で聴こえるから面白い。音の出方も穏やかな傾向へと代わり、クッションのあるゆったりとしたシートと相まって、リビングルームでリラックスして音楽を聴いているかのような気持ちになる。なるほどラウンジチェア&オットマンのイラストを表示する理由はこれか、と妙に納得した。

自動車が時間と場所を超え、その場へと誘う



再び運転席へ戻り、サウンドプロファイルをコンサートへと変更。天面に取り付けられたサラウンドスピーカーからも残響成分のような音が出る。

サウンドプロファイル「コンサート」を選んだ状態

カルロス・クライバー指揮、バイエルン国立管弦楽団によるヴェルディの歌劇『椿姫』は、色彩が鮮やかで躍動的なオーケストラに、深い陰影を感じさせるコトルバスの歌声が魅力的。まるで自分が特等席に招かれたかのようなプレイバックに思わず笑顔に。

椿姫を選んだところ

「オンステージ」は、オンマイク録音の音源に適している様子。「コンサート」に比べ残響成分がより低域から出るいっぽう、残響時間が短くなったようだ。

オンステージモード

TM NETWORK最大のヒットアルバム『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』の最後に収められている「STILL LOVE HER(失われた風景)」は、まるで聴き手を中心にセッションが行われているかのようなプレイバック。語り掛けるような宇都宮隆の歌声、木根尚登の14小節に渡る “泣きのハーモニカ” が心に沁みる。

『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』から「STILL LOVE HER (失われた風景)」をセレクト

ふと近年話題のイマーシブオーディオに対応するかと思い、スマートフォンと車両をUSB接続しTM NETWORKつながりで、Amazon Music UnlimitedとApple Musicで配信しているイマーシブオーディオ版の「Get Wild」をかけてみたが、残念ながら非対応だった。

試しにイマーシブオーディオ版のGet Wildをかけてみたが、イマーシブオーディオでは動かなかった

これらサラウンドスピーカーのレベル調整は調整可能。試聴は標準レベルで行った。

サラウンドスピーカーのレベル調整画面

「カーオーディオなんて……」と色眼鏡をもつ人こそ体験してほしい



B&Wのエンジニアが作り上げたという、BMW XMレーベルの純正カーオーディオシステム。その完成度は想像を超えるものであった。特に2つのサラウンドモードの音は、不自然さを覚えることは少なく、むしろこちらが本命では?と言いたくなるほどの高い完成度。自動車が時間と場所を超えて、その場へと誘うといったら大袈裟だろうか。「カーオーディオなんて……」と色眼鏡をもつ人こそ、この音は体験してほしい。高度に調整された音に驚くハズだ。

ワインディングロードで綺麗な景色の中、好きな音楽に浸る。B&Wのシステムは、駆けぬける歓びを加速させる素晴らしい出来栄えだった。

後方から見たBMW XMシリーズ

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