クルマを「イイ音で選ぶ」という新しい選択肢
「ごちゃごちぇうるせえ、いいオト。」なのか?「アウトランダーPHEV」の音質、前機種からの進化もチェック
国内販売車としては初となる「ヤマハ・ブランド・オーディオ」を搭載した三菱自動車のフラグシップSUV「アウトランダーPHEV」。8スピーカー構成の「ダイナミックサウンドヤマハプレミアム」と、12スピーカー構成の「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」があるが、果たしてどのような音の違いがあるのだろう。今回、試聴することができたのでレポートしたい。
新形アウトランダーPHEVは、駆動用バッテリーの容量を増して、電動航続距離を約20km伸長。最高出力も約20%アップさせている。電力だけで走行できるので、駐車場でアイドリングせずに音楽が楽しめる、エンジンを動かさないのでS/Nの向上につながるなど、オーディオ的には良いことづくめだ。
従来のアウトランダーには、6スピーカー構成を標準として、上位に9スピーカー構成の(1)「BOSEプレミアムサウンドシステム」を用意していた。今回は8スピーカー構成の(2)「ダイナミックサウンドヤマハプレミアム」を標準、12スピーカー構成の最上位(3)「ダイナミックサウンドヤマハアルティメイト」を最上位の標準、それ以下のグレードではオプションとした。全体的に豪華になったといえるだろう。今回は(1)(2)(3)すべての搭載車を用意し、それぞれの音質を確認した。
(1)「BOSEプレミアムサウンドシステム」の構成は、前席が19mmトゥイーターと60mmミッドレンジ、150mm×230mmウーファーの3ウェイ、後席は130mmフルレンジ。さらにラゲッジスペースに130mmサブウーファーと、純正カーオーディオとしては豪華な構成だ。音響の設定画面を見てみるとシンプルで、特にフィーチャーするような機能はない。
運転席に座り試聴を始めた。耳あたりのよい、暖色傾向の心地よい歌声が車内に響きわたる。たっぷりとした低域と角のとれた高域というピラミッドバランスは、聴き疲れしづらく、長時間の運転に好適だ。後席はトゥイーターが設置されていないためか音像が遠くに感じるものの、自然な音場とも感じた。これが標準搭載なら、多くの方は不満を抱かないだろう。ダイナミックサウンドヤマハプレミアムを聴くまでは……。
新形アウトランダーPHEVに標準搭載する(2)「ダイナミックサウンドヤマハプレミアム」は、前席はAピラーにトゥイーター、ドアにウーファーをマウントした2ウェイ、後席はドアに2ウェイのコアキシャルユニットを配置。ラゲッジスペースにサブウーファーは設置していない。
設定画面を呼び出すと、特筆すべき設定項目はない様子。それでは聴いてみることにした。パッと視界が拓けたかのようなクリアさが印象的。ニュートラルな音調で楽曲の機微、細やかな表情を丁寧に描き出す。ややスレンダーな低域が、全体的にスッキリとした印象を与え、聴いていて心地がよい。
後席でも印象は大きく変わらない。ここでもトゥイーターがないゆえに音像は遠くになるが、不自然な印象を与えない。試しにリアスピーカーだけを鳴らす設定にすると、さすがに足元から声が聴こえるなどの違和感を覚えるので、そういう設定にしなければ自然な音場と帯域バランスが楽しめる。これで十分だと思った。ダイナミックサウンドヤマハアルティメイトを聴くまでは……。
(3)「ダイナミックサウンドヤマハアルティメイト」は、前席が3ウェイ、リアが2ウェイで構成。さらにダッシュボード中央にセンタースピーカーを配置するほか、ラゲッジスペースにサブウーファーを置く。これらは2基の専用パワーアンプでドライブするという力の入れようだ。
驚くべきはドアに専用の補強等の対策を行ったこと。これは自動車メーカーだからできることだ。と書くのは簡単だが、これがどれだけ大変なことか。恐らく担当者はかなり工場側から文句を言われたに違いない。
アルティメイトのみ、サラウンドモードのほか、曲や好みに合わせて4種のイコライザーセッティングを用意。路面・走行スピード、さらに雨の強さ、エアコンの風量などに合わせて補正する機能を有している。まさにアルティメイトの名に相応しい多機能ぶりだ。
音もアルティメイトであった。運転席で聴くとヴォーカル帯域の密度が増しただけでなく、センタースピーカーの効果もあってか、定位感が向上しているのがわかる。ニュートラルな音調はそのままに、品位がワンランク上がる印象。細かな音情報を積み上げて音楽を構築しているかのような、丁寧なプレイバックに本当に車内で聴いているのか? という想いさえよぎる。停車中は静粛な室内環境と相まって、まるで試聴室にいるかのようだ。
後席の音も確認した。トゥイーターを加えた効果は定位感と情報量に表れる。運転席と助手席の背もたれの間に音像が結ばれ、それまで遠くに感じていた音像がグッと近くなる。感心したのはリアラゲッジにあるサブウーファーの振る舞いで、まったく主張することなく、それでいてシッカリと音楽を下支えしている。
では走行中はどうだろう。エアコンをつけた状態、つまり普通に走りながら停止時と同じ曲をかけてみた。ロードノイズやエアコンからのノイズがある帯域だけ、そこをイコライジングして持ち上げているというが、オンとオフで違和感をあまり感じない。つまり「これみよがしに変えました」というところがなく、自然に聴きやすくなっているというわけだ。
弱と強の2ポジション用意されているサラウンドも試してみた。弱は程よい残響が乗ったようで、オーケストラなどのライブな録音に効果アリ! だが強はやりすぎの印象を抱く。その事を担当者に伝えると「わざとやっています。弱がオススメです」と笑いながら語った。
「カーオーディオはいい音がしない」と、ごちゃごちぇうるせえ人にこそ一聴の価値があるアウトランダーPHEV。特に周波数バランスは見事で、カーオーディオの新リファレンスといっても言い過ぎではないだろう。
クルマの場合「音がイイから選ぶ」という考えには、なかなか至らないだろう。だが音がイイ方が良いに決まっているのも事実だ。三菱自動車は今回、そこに着眼し真剣に取り組み結果を出した。これが他の自動車メーカーに波及し、音がよいクルマが増えることを期待したい。そうすれば、後付けのカーオーディオの音もいっそう向上すると思うから……。
最後に車両そのものについて。三菱自動車は長年PHEVシステムに取り組んでおり、その完成度や走行性能は他社をも凌ぐ。ハイブリッド車はアクセルを戻すと、エネルギー回収(回生)の動作が発生する。その回生の動きがとても自然なのだ。またSUVというパッケージゆえに、色々と使い勝手がよい。しかも室内は上質である。高額車種であるが、電動車の良さとガソリン車の安心感の両方を兼ね備えるアウトランダーPHEVは、充電環境が家になくてもミドルクラスサイズSUVのベストバイだと断言したい。
■安定したピラミッドバランスのBOSEサウンド
新形アウトランダーPHEVは、駆動用バッテリーの容量を増して、電動航続距離を約20km伸長。最高出力も約20%アップさせている。電力だけで走行できるので、駐車場でアイドリングせずに音楽が楽しめる、エンジンを動かさないのでS/Nの向上につながるなど、オーディオ的には良いことづくめだ。
従来のアウトランダーには、6スピーカー構成を標準として、上位に9スピーカー構成の(1)「BOSEプレミアムサウンドシステム」を用意していた。今回は8スピーカー構成の(2)「ダイナミックサウンドヤマハプレミアム」を標準、12スピーカー構成の最上位(3)「ダイナミックサウンドヤマハアルティメイト」を最上位の標準、それ以下のグレードではオプションとした。全体的に豪華になったといえるだろう。今回は(1)(2)(3)すべての搭載車を用意し、それぞれの音質を確認した。
(1)「BOSEプレミアムサウンドシステム」の構成は、前席が19mmトゥイーターと60mmミッドレンジ、150mm×230mmウーファーの3ウェイ、後席は130mmフルレンジ。さらにラゲッジスペースに130mmサブウーファーと、純正カーオーディオとしては豪華な構成だ。音響の設定画面を見てみるとシンプルで、特にフィーチャーするような機能はない。
運転席に座り試聴を始めた。耳あたりのよい、暖色傾向の心地よい歌声が車内に響きわたる。たっぷりとした低域と角のとれた高域というピラミッドバランスは、聴き疲れしづらく、長時間の運転に好適だ。後席はトゥイーターが設置されていないためか音像が遠くに感じるものの、自然な音場とも感じた。これが標準搭載なら、多くの方は不満を抱かないだろう。ダイナミックサウンドヤマハプレミアムを聴くまでは……。
■ニュートラルな音調で楽曲の機微を捉える
新形アウトランダーPHEVに標準搭載する(2)「ダイナミックサウンドヤマハプレミアム」は、前席はAピラーにトゥイーター、ドアにウーファーをマウントした2ウェイ、後席はドアに2ウェイのコアキシャルユニットを配置。ラゲッジスペースにサブウーファーは設置していない。
設定画面を呼び出すと、特筆すべき設定項目はない様子。それでは聴いてみることにした。パッと視界が拓けたかのようなクリアさが印象的。ニュートラルな音調で楽曲の機微、細やかな表情を丁寧に描き出す。ややスレンダーな低域が、全体的にスッキリとした印象を与え、聴いていて心地がよい。
後席でも印象は大きく変わらない。ここでもトゥイーターがないゆえに音像は遠くになるが、不自然な印象を与えない。試しにリアスピーカーだけを鳴らす設定にすると、さすがに足元から声が聴こえるなどの違和感を覚えるので、そういう設定にしなければ自然な音場と帯域バランスが楽しめる。これで十分だと思った。ダイナミックサウンドヤマハアルティメイトを聴くまでは……。
■ドアの補強も効果的。密度感が増し品位が上がる
(3)「ダイナミックサウンドヤマハアルティメイト」は、前席が3ウェイ、リアが2ウェイで構成。さらにダッシュボード中央にセンタースピーカーを配置するほか、ラゲッジスペースにサブウーファーを置く。これらは2基の専用パワーアンプでドライブするという力の入れようだ。
驚くべきはドアに専用の補強等の対策を行ったこと。これは自動車メーカーだからできることだ。と書くのは簡単だが、これがどれだけ大変なことか。恐らく担当者はかなり工場側から文句を言われたに違いない。
アルティメイトのみ、サラウンドモードのほか、曲や好みに合わせて4種のイコライザーセッティングを用意。路面・走行スピード、さらに雨の強さ、エアコンの風量などに合わせて補正する機能を有している。まさにアルティメイトの名に相応しい多機能ぶりだ。
音もアルティメイトであった。運転席で聴くとヴォーカル帯域の密度が増しただけでなく、センタースピーカーの効果もあってか、定位感が向上しているのがわかる。ニュートラルな音調はそのままに、品位がワンランク上がる印象。細かな音情報を積み上げて音楽を構築しているかのような、丁寧なプレイバックに本当に車内で聴いているのか? という想いさえよぎる。停車中は静粛な室内環境と相まって、まるで試聴室にいるかのようだ。
後席の音も確認した。トゥイーターを加えた効果は定位感と情報量に表れる。運転席と助手席の背もたれの間に音像が結ばれ、それまで遠くに感じていた音像がグッと近くなる。感心したのはリアラゲッジにあるサブウーファーの振る舞いで、まったく主張することなく、それでいてシッカリと音楽を下支えしている。
では走行中はどうだろう。エアコンをつけた状態、つまり普通に走りながら停止時と同じ曲をかけてみた。ロードノイズやエアコンからのノイズがある帯域だけ、そこをイコライジングして持ち上げているというが、オンとオフで違和感をあまり感じない。つまり「これみよがしに変えました」というところがなく、自然に聴きやすくなっているというわけだ。
弱と強の2ポジション用意されているサラウンドも試してみた。弱は程よい残響が乗ったようで、オーケストラなどのライブな録音に効果アリ! だが強はやりすぎの印象を抱く。その事を担当者に伝えると「わざとやっています。弱がオススメです」と笑いながら語った。
■「音がイイからクルマを選ぶ」という新しい選択肢
「カーオーディオはいい音がしない」と、ごちゃごちぇうるせえ人にこそ一聴の価値があるアウトランダーPHEV。特に周波数バランスは見事で、カーオーディオの新リファレンスといっても言い過ぎではないだろう。
クルマの場合「音がイイから選ぶ」という考えには、なかなか至らないだろう。だが音がイイ方が良いに決まっているのも事実だ。三菱自動車は今回、そこに着眼し真剣に取り組み結果を出した。これが他の自動車メーカーに波及し、音がよいクルマが増えることを期待したい。そうすれば、後付けのカーオーディオの音もいっそう向上すると思うから……。
最後に車両そのものについて。三菱自動車は長年PHEVシステムに取り組んでおり、その完成度や走行性能は他社をも凌ぐ。ハイブリッド車はアクセルを戻すと、エネルギー回収(回生)の動作が発生する。その回生の動きがとても自然なのだ。またSUVというパッケージゆえに、色々と使い勝手がよい。しかも室内は上質である。高額車種であるが、電動車の良さとガソリン車の安心感の両方を兼ね備えるアウトランダーPHEVは、充電環境が家になくてもミドルクラスサイズSUVのベストバイだと断言したい。