【Qobuzを楽しむ50万円プラン】プライマー&ピエガ、これぞスモール・ラグジュアリーの音楽世界
金属キャビネットも美しいヨーロッパブランドを選定
「Qobuzを聴くためのシステム」を5つの価格帯で紹介・提案していく本シリーズ。今回紹介するのはPRIMARE(プライマー)のネットワーク対応プリメインアンプ「I15 PRISMA MK2」、PIEGA(ピエガ)のブックシェルフ「Ace 30」の組み合わせで、金額的には50万円を想定したシステム。両機ともにコンパクトかつ金属の質感が見た目にも美しい、本シリーズにおいてずば抜けて瀟洒なセットである。

【Qobuzを楽しむ10万円プラン】BLUESOUND×ADAMのアクティブSPで楽しむデスクトップオーディオ!
【Qobuzを楽しむ20万円プラン】JBL×ヤマハ、革新を続ける名門ブランドの最新ストリーミングサウンド
【Qobuzを楽しむ30万円プラン】既存システムにWiiMをプラスオン!瀟洒なフレンチ・サウンドに新たな彩りを
(3月31日公開予定)【Qobuzを楽しむ100万円プラン】
I15 PRISMA MK2はプライマーのプリメインアンプ「I15」に、デジタルモジュール「PRISMA」を搭載したモデル。Qobuzに対応するネットワーク再生機能のほか、USB入力を含む豊富なデジタル入力が使用可能だ。横幅35センチの比較的コンパクトなサイズもあいまって、場合によってはPCと組み合わせるデスクトップオーディオ用途も視野に入るだろう。

北欧ブランドらしい清潔感のあるデザインが目を引くが、Hypex UCD102アンプモジュールを採用するなど、純粋なアンプとしても内容は充実。また、見た目のスリムなイメージに反して本機は6.4kgとなかなかの重量級であり、しっかりと投じられた物量、充実した筐体の存在が数字からも見て取れる。
Ace 30はピエガの「Ace」シリーズのブックシェルフで、同社製スピーカーとしてはサイズ的にもクラス的にも最もベーシックなモデルに当たる。とはいえアルミ・エンクロージャーにリボントゥイーターというピエガを象徴する要素は健在。

本機の220H✕140W✕160Dmmというサイズはこのクラスの本格的なスピーカーとしては群を抜いてコンパクトであり、置き場所を選ばない。それでいてスピーカーとしての性能を犠牲にした結果のサイズかと言われればそんなこともなく、スペックシートを見ると再生周波数特性は50Hz~40kHzと十分、能率も87dB/W/mと扱いやすい数値となっている。
透明感と静寂感、音の消え際まで美しい
I15 PRISMA MK2と組み合わせたAce 30は、サイズだけなら本シリーズで最初に紹介したADAM「D3V」並みにコンパクトだが、出てくる音はやはり格が違う。

高域の伸びやかさ、見通しの良いスムーズな空間描写とそれを実現する優れた分解能は特筆もの。ノラ・ジョーンズ「Come Away With Me」の一音一音に透明感や静寂感といった要素まで強く意識させられたのは本シリーズでは初めてであり、ピエガがこだわるリボントゥイーターが存分に活きているのだろう。
この透明感と静寂感は「亡き王女のためのパヴァーヌ」においても顕著な威力を発揮しており、背景の静けさのおかげで音の煌めきが消え際にいたるまで本当に美しく、今までのシステムで聴いたのとは別の曲かのようにすら思える。
低域についてもサイズからは想像できないほどの量感と深い沈み込みを実現しており、ビリー・アイリッシュ「bad guy」の強烈な低音もビシリと引き締めて聴かせる。D級アンプならではの優れた駆動力に、見事な静寂感も兼ね備えたI15 PRISMA MK2のアンプとしての実力にも大いに感心した。

小音量でも音像が明瞭さを失わないのはこの組み合わせの大きな美点といえるが、むしろ大音量時の再生音が強い印象を残した。スピーカーのサイズからイメージする窮屈さなど微塵も感じさせず、見事な解像度と精緻さを保ったまま大音量にも難なく追従するさまは、この組み合わせの高い実力をあらためて実感させるものだった。シンプル&スリムな組み合わせではあるものの、例えば広いリビングの隅々にまで音を届けるといった使い方にも余裕で応えられそうだ。
Prismaアプリは必要な情報・機能が一画面に集約され、Qobuzの音源も整然とタイル表示されるなどデザインにも優れているのだが、動作の安定性とレスポンスに少々難があり、再生時に頭が欠けるといった問題も発生する。アプリ側でQobuzの音源を逐一ブラウズして再生するよりも、あらかじめQobuzのWebプレーヤー側でプレイリストを作っておいて、それをアプリから呼び出して再生するという使い方がよさそうだ。

I15 PRISMA MK2とAce 30の組み合わせは瀟洒で美しい佇まいでありつつ、サイズ感を遥かに越える雄大にして本格的な再生音を実現する。良くも悪くも昔ながらの重厚長大なオーディオではなく、生活空間に無理なく溶け込むスタイリッシュなシステムが欲しい、それでいて音にも妥協したくない……そんな希望を叶えてくれる組み合わせだと感じた。