LUXMANプリメインアンプ現行モデル レビュー
週刊で注目製品のレビューをお届けするPhile-webの人気コンテンツ「週刊製品批評」に掲載されたラックスマンのプリメインアンプ現行モデルの評価記事を特別掲載で紹介しよう。
 
大ヒットモデルをさらにリファイン 長い歴史とノウハウで高音質を実現
文/小林 貢
L-590AII LUXMAN
プリメインアンプ

L-590AII

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独自の負帰還回路ODNFを採用
<上>本機のリア部<下>本機の内部

我が国を代表するアンプの老舗ブランドであるラックスマンが、2005年、11年ぶりに純A級増幅方式の「L-590A」を市場投入した。本機「L-590AII」はリファインモデルとして昨年登場した製品だ。

わずか2年でリファインされることとなったのは、同社が当初予想した以上の高い人気を得たため、開発時点で確保していた基幹パーツが残り少なくなったからと聞いている。この現象を見ただけでも、いかに高い評価と人気を得たことがわかだろう。一般的にはパーツを入れ替えて微調整し、予告なしの変更として発売し続けても何の問題はないのだろうが、同社ではこれを機に全面的に回路を見直し、さらなる高音質化を果たしたのだ。

本機は、以前から同社製品に採用され、評価を高めてきた独自の負帰還回路ODNF(OnlyDistortion Negative Feedback)を搭載しているのが大きな特徴だ。この回路を搭載することで初期スルーレートの高さとワイドな周波数特性を実現している。さらに同社の旗艦プリアンプC-1000fで採用された高音質なセレクター・スイッチICを入力部に採用し、チャンネル・セパレーションを向上させているのも見逃せない。この590AIIの出力段は3パラレルpp構成を採り、30W/ch(8Ω)と実用上十分なパワーを確保。そのパワーを支える電源部は680VAの電源トランスで構成。また今回の改良では増幅回路の安定化を図り、電源整流回路に動作ノイズが少なく電圧変換効率の高いショットキーバリア・ダイオードを採用しているという。

本機のパワーは30Wと、現代としては決して高出力ではないが、我が国の一般的な試聴環境では何ら不足のない音量で音楽を聴かせてくれる。また駆動力も高く、よほどエキセントリックなスピーカーシステムでない限り正確かつ十分なドライブ力を発揮してくれるはずだ。

厚みのあるマッシブかつパワフルな超低音のビートが叩きだされるコンテンポラリー系やフュージョン系ソフトを聴いても、低域のビートの切れやキックドラムなどの低音楽器の輪郭を曖昧にすることなく、切れの良いビート感が得られるのが好ましい。また純A級アンプらしく、歪み感や強調感のないナチュラルかつニュートラルなサウンドで高い鮮度感が得られているのも大きな魅力だ。さらに女性ヴォーカルは瑞々しく艶やかな表情で再現され弦楽器などの繊細感も巧く引き出してくる。

ワンポイントマイク的なシンプルな録音手法の高音質クラシック系CDを聴くと透明度の高い音場空間がスピーカー間に展開する。そして弱音部や無音部分などの静寂感のリアルさも純A級動作ならではといえるだろう。

いくぶん前モデルよりも価格は上がっているが、向上した音質を考えると、価格上昇は無きに等しいといえる。長い歴史と確かなノウハウを持つブランドならではの性能向上を果たした製品である。

 
スペック
【SPEC】●連続実効出力:30W+30W/8Ω、60W+60W/4Ω ●全高調波歪率:0.005%以下(8Ω、1KHz)、0.03%以下(8Ω、20〜20KHz) ●周波数特性:PHONO(MM) 20Hz〜20,000Hz(±0.5dB)、LINE 20Hz〜100,000Hz(-3dB) ●消費電力:280W(電気用品安全法による規定)、1.2W(スタンバイ時) ●外形寸法:467W×178H×434Dmm ●質量:26.5kg ●問い合わせ:ラックスマン(株)TEL/045-470-6991
リンク
ラックスマンの製品情報
Phile-webニュース【ラックスマン、性能向上を図った「L-590A/550A」のマークIIモデルを発売】
 
筆者プロフィール
小林 貢  Mitsugu Kobayashi

東京・浅草生まれ。ビートルズやヴェンチャーズの登場に触発され中学時代からギターを初め、高校時代までロックを中心にバンド活動を行う。高校3年になる頃ベースに転向、時を同じくしてジャズを聴き始め当時流行っていたジャズ・ロックを志向し、大学入学と同時にジャズを始める。日本大学法学部へ通うかたわら尚美高等音楽院にてコントラバスを習得。大学卒業後、まっとう(?)なサラリーマンの道へ入るもジャズへの夢捨て難く、70年代日本ジャズ界をリードしたスリーブラインドマイス(TBM)レコードに入社。また日本ジャズ界の鬼才、ベーシストでありコンポーザーでもある金井英人氏にも師事したが、ほとんど酒飲み師弟関係となる。TBM時代の後半には企画制作に携わると同時にマスタリング監修も務める。その頃からオーディオ専門誌で執筆活動をはじめる。国内外のハイエンドからエントリーモデル、クラフトやカーオーディオ関連までと守備範囲は幅広い。特に海外のリーズナブルな製品の自他ともに認める「目利き」であり、これまで氏が海外のオーディオショーで注目した製品の多くが、日本国内のヒットモデルとなっている。近年ミュージック&オーディオファンに本当に音の良いCDを提供したいという思いが募り、再び音楽制作に乗り出し自身のレーベル、ウッディ・クリークを興す。旧知の名レコーディングエンジニア神成芳彦氏とのコンビで、高音質かつ音楽性の高いCDを発売し、内外から高い評価を受けている。