■特筆すべき特徴を見せる低域の分解能とスピード
RSシリーズはフロア型が2機種、ブックシェルフとセンターが1機種で、ほかにサブウーファーとリア用のダイポール型が用意されている。ここではフロア型とブックシェルフでそれぞれ2チャンネルを、シリーズ総動員で5.1チャンネルを聴いてみる。
RS8を聴くとこのシリーズの全容がよくわかるはずだ。従来のシルバースタジオよりも一回り以上再現の幅が広がっている。特に感じるのは低域の分解能とスピードである。これまでもスピードの速さでは1、2を争うほどだったが、本機ではそれに肉付きの豊かさが加わっている。だから音調が厚い。厚いがぼってり膨らむことはなく、どこまでもシャープで透明度が高い。弾力を備えた筋肉質というところだろうか。
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各シリーズに共通して採用されるC-CAMトゥイーター(写真はSilver RS6) |
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ウッドベースの解像度を聴いてみるといい。深く沈んでピチカートのタッチが明瞭に伝わり、音色が澄んで弾みがいい。目をつぶって聴かせたら、メタルだと言い当てる人はごくわずかであるに違いない。豊かで透明。それがこのスピーカーの音調を貫いているようだ。だからピアノにしても声楽にしても、およそ棘というものを感じない。もしどうしてもメタル臭いという人がいるなら、イメージから来る思い込みとしかいえない。
ボーイソプラノのハーモニーがなんと精妙に響くことか。羽毛のような手触りを持ち、空気のように空間にしみこむ。あるいはバロックの瀟洒で典雅な質感が、上質な美酒のような輝きを持つのが見えないだろうか。いずれも精密なレスポンスとぴったり揃った位相から得られる特質なのである。
ブックシェルフのRS1にそこまで求めるのは無理…だろうか。いや、小さめの空間ならかえって低域が飽和することもなく、いっそう自然なバランスを得ることができるのである。もちろん下腹に響くような低音ではない。しかしそんなものがどこに必要なのか。だぶついた低音は過去の遺物である。RS1にはウッドベースを正確な音程で鳴らし、オーケストラを緻密な色彩感で再現する力がある。空間相応の豊かさを、この小型スピーカーも持ち合わせている。
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