クラウドストレージサービスはAV機器をねらえ
すっかりおなじみとなった感のあるクラウドストレージサービス。Dropboxはその代表格と言えるだろうし、ほかにもSugarSync、SkyDrive、Googleドライブなど、様々なサービスが展開されている。しかも、その多くは無料で使い始めることができる。
クラウドストレージの仕組みはシンプル。オンライン上に用意されたストレージにネットを介してアクセスし、データを置いておけるというものだ。あとは対応機器からデータを更新したり、ダウンロードしたり、あるいはストリーミング再生したりといったことが可能になる。大元のファイルは1つなので、ある機器でクラウド上のデータを更新すると、ほかの機器でも即座に反映したデータが利用できるのもメリットだ。
◇
ストレージに特化したもの以外にも、クラウドサービスはまさに百花繚乱という言葉がふさわしい充実ぶりを見せている。中でも、サービス利用者が非常に多く、知名度が高いものとして真っ先に名前が挙がるのは、アップルが展開しているiCloudだろう。
iCloudはハードウェアやOSを作っているメーカーが考えたクラウドサービスだけあり、単にストレージを提供するだけでなく、様々な機種間のデータ同期、プッシュ通知なども簡単な設定で行うことができ、クラウドということをさほど意識しなくても使いこなせるのが利点だ。このようにOSやプラットフォームを展開している企業が作ったクラウドサービスは、システムにより深く統合されているため、簡便性という面で大きなアドバンテージを持っている。
純正クラウドサービスが利便性を高めれば高めるほど、サードパーティー製のものをあえて選ぶ理由が薄れる。今後もOSベンダーや有力ハードメーカーが、独自クラウドによる囲い込み策を強めることは確実な情勢で、独立系のクラウドストレージサービスにとっては、ここが一つの正念場だ。
◇
だが、独立系のクラウドストレージサービスは、やり方を間違えさえしなければ、今後も多くのユーザーの支持を得られるはずだ。
独立系クラウドストレージのメリットの一つは、マルチデバイス対応が可能であるという点。これに対してハードメーカーやソフトメーカー謹製のサービスの場合、同じプラットフォームの機器を揃えないとメリットを享受できない場合が多い。たとえばiCloudであれば、アップルの術中にはまり、iOS機器やらMacやらを買い揃えたらとても快適なのだが、それを良しとしない方も多いだろう。また家ではMacを使ってるけど会社ではWindowsなどという方も多いはずで、こういった場合、iCloudの魅力は大きく薄れてしまう。
もちろん、こんなことはクラウドストレージサービス側は百も承知。これまでも独立系クラウドサービスはマルチデバイス対応を重視してきた。Dropboxの場合、AndroidでもiOSでも、WindowsでもMacでもLinuxでも、フォルダに好きなコンテンツを入れておくだけで、ファイルをかんたんに共有することが可能なのだ。
また、クラウドストレージサービスの多くが、ドキュメントファイルだけでなく、写真やビデオの共有に力を入れていることにも注目したい。無料で数GB〜数十GBのストレージを提供し、なるべく多くのユーザーに使ってもらって利便性に気づかせた上で、追加容量を買ってもらうのがクラウドストレージの基本的なビジネスモデル。容量が大きい写真やビデオの置き場所としてクラウドを提案するのは、収益拡大を考えたら当然の行動だ。たとえばDropboxの場合、写真や動画をアップロードすることで無料ストレージを拡大させるキャンペーンを展開するなど、メディアファイルのストレージとしてアピールする施策を強力に展開している。
ここまで見てきたとき、まだ欠けている、大きなピースが存在することに気づく方もいるだろう。マルチデバイス対応を積極的に進め、しかも写真や動画といったメディアファイルの取り込みも図っているクラウド型ストレージサービス。だが、写真や動画を楽しむためのデバイスであるAV機器は、まだほとんどクラウドストレージサービスに対応していないのだ。
◇
AV機器がクラウドストレージとつながることによるメリットは大きい。
たとえばテレビからクラウドストレージにアクセスできたら、PCやスマホ、タブレットなどからアップロードした写真や動画を、テレビの大画面で、家族が一緒に楽しむことができる。
またレコーダーがクラウドストレージに対応したら、レコーダーにビデオカメラから取り込んだ映像をオンラインで共有し、あとからスマホで見るなどといったことが可能になる。もちろん、レコーダーをクラウド内のコンテンツプレーヤーとして活用しても良いだろう。
さらに、最近ではネットに接続できるビデオカメラも増えている。Dropboxに直接アップロードする機能を備えたら、撮影した後、すぐにクラウドで共有することも可能になるのだ。
音楽ファイルでも、クラウドストレージはその威力を発揮する。身の回りにあるデジタルデバイスが増えるに従い、音楽ファイルの分散化が問題になりつつある。たとえばiPhoneからAirPlayで音楽を再生したいと思ったとき、目当ての楽曲がデバイス内になかったら、再生開始まで一手間も二手間も増えてしまう。外出先で同じようなことがあった場合はもっとクリティカルで、たとえば出張時に聴きたい楽曲が手元に無い場合、これまでは特殊な方法を使わなければ対処が難しかった。だが、クラウドストレージにライブラリをまるごと置いておけば、いつでもどこでもライブラリにアクセスでき、このような問題は一気に解決する。もしかしたら、NASを省略したネットオーディオ環境の構築も可能になるかもしれない。
さらに言うと、AV機器にクラウドストレージが組み込まれたら、より大容量のストレージを欲するユーザーも増えるはず。サービス事業者にとっても大きな収益拡大のチャンスとなるはずだ。
◇
AVファンにとってもサービス事業者にとっても、AV機器がクラウドストレージに対応するメリットは、思いのほか大きそうだ。SugarSyncに対応したスマートテレビが海外で販売されているなど一部に先例はあるし、ソニーが展開するクラウドサービス「PlayMemories Online」はBRAVIAにも対応予定であるなど、AV機器の取り込みを図るサービスも徐々に出てきた。
とは言え、まだ多くのクラウドストレージサービスにとって、AV機器は未踏の地。今後スマートテレビが増えたらアプリとして対応しやすくなるはずだし、AV機器でも多種多様なクラウドサービスが利用できる未来を期待したい。
クラウドストレージの仕組みはシンプル。オンライン上に用意されたストレージにネットを介してアクセスし、データを置いておけるというものだ。あとは対応機器からデータを更新したり、ダウンロードしたり、あるいはストリーミング再生したりといったことが可能になる。大元のファイルは1つなので、ある機器でクラウド上のデータを更新すると、ほかの機器でも即座に反映したデータが利用できるのもメリットだ。
ストレージに特化したもの以外にも、クラウドサービスはまさに百花繚乱という言葉がふさわしい充実ぶりを見せている。中でも、サービス利用者が非常に多く、知名度が高いものとして真っ先に名前が挙がるのは、アップルが展開しているiCloudだろう。
iCloudはハードウェアやOSを作っているメーカーが考えたクラウドサービスだけあり、単にストレージを提供するだけでなく、様々な機種間のデータ同期、プッシュ通知なども簡単な設定で行うことができ、クラウドということをさほど意識しなくても使いこなせるのが利点だ。このようにOSやプラットフォームを展開している企業が作ったクラウドサービスは、システムにより深く統合されているため、簡便性という面で大きなアドバンテージを持っている。
純正クラウドサービスが利便性を高めれば高めるほど、サードパーティー製のものをあえて選ぶ理由が薄れる。今後もOSベンダーや有力ハードメーカーが、独自クラウドによる囲い込み策を強めることは確実な情勢で、独立系のクラウドストレージサービスにとっては、ここが一つの正念場だ。
だが、独立系のクラウドストレージサービスは、やり方を間違えさえしなければ、今後も多くのユーザーの支持を得られるはずだ。
独立系クラウドストレージのメリットの一つは、マルチデバイス対応が可能であるという点。これに対してハードメーカーやソフトメーカー謹製のサービスの場合、同じプラットフォームの機器を揃えないとメリットを享受できない場合が多い。たとえばiCloudであれば、アップルの術中にはまり、iOS機器やらMacやらを買い揃えたらとても快適なのだが、それを良しとしない方も多いだろう。また家ではMacを使ってるけど会社ではWindowsなどという方も多いはずで、こういった場合、iCloudの魅力は大きく薄れてしまう。
もちろん、こんなことはクラウドストレージサービス側は百も承知。これまでも独立系クラウドサービスはマルチデバイス対応を重視してきた。Dropboxの場合、AndroidでもiOSでも、WindowsでもMacでもLinuxでも、フォルダに好きなコンテンツを入れておくだけで、ファイルをかんたんに共有することが可能なのだ。
また、クラウドストレージサービスの多くが、ドキュメントファイルだけでなく、写真やビデオの共有に力を入れていることにも注目したい。無料で数GB〜数十GBのストレージを提供し、なるべく多くのユーザーに使ってもらって利便性に気づかせた上で、追加容量を買ってもらうのがクラウドストレージの基本的なビジネスモデル。容量が大きい写真やビデオの置き場所としてクラウドを提案するのは、収益拡大を考えたら当然の行動だ。たとえばDropboxの場合、写真や動画をアップロードすることで無料ストレージを拡大させるキャンペーンを展開するなど、メディアファイルのストレージとしてアピールする施策を強力に展開している。
ここまで見てきたとき、まだ欠けている、大きなピースが存在することに気づく方もいるだろう。マルチデバイス対応を積極的に進め、しかも写真や動画といったメディアファイルの取り込みも図っているクラウド型ストレージサービス。だが、写真や動画を楽しむためのデバイスであるAV機器は、まだほとんどクラウドストレージサービスに対応していないのだ。
AV機器がクラウドストレージとつながることによるメリットは大きい。
たとえばテレビからクラウドストレージにアクセスできたら、PCやスマホ、タブレットなどからアップロードした写真や動画を、テレビの大画面で、家族が一緒に楽しむことができる。
またレコーダーがクラウドストレージに対応したら、レコーダーにビデオカメラから取り込んだ映像をオンラインで共有し、あとからスマホで見るなどといったことが可能になる。もちろん、レコーダーをクラウド内のコンテンツプレーヤーとして活用しても良いだろう。
さらに、最近ではネットに接続できるビデオカメラも増えている。Dropboxに直接アップロードする機能を備えたら、撮影した後、すぐにクラウドで共有することも可能になるのだ。
音楽ファイルでも、クラウドストレージはその威力を発揮する。身の回りにあるデジタルデバイスが増えるに従い、音楽ファイルの分散化が問題になりつつある。たとえばiPhoneからAirPlayで音楽を再生したいと思ったとき、目当ての楽曲がデバイス内になかったら、再生開始まで一手間も二手間も増えてしまう。外出先で同じようなことがあった場合はもっとクリティカルで、たとえば出張時に聴きたい楽曲が手元に無い場合、これまでは特殊な方法を使わなければ対処が難しかった。だが、クラウドストレージにライブラリをまるごと置いておけば、いつでもどこでもライブラリにアクセスでき、このような問題は一気に解決する。もしかしたら、NASを省略したネットオーディオ環境の構築も可能になるかもしれない。
さらに言うと、AV機器にクラウドストレージが組み込まれたら、より大容量のストレージを欲するユーザーも増えるはず。サービス事業者にとっても大きな収益拡大のチャンスとなるはずだ。
AVファンにとってもサービス事業者にとっても、AV機器がクラウドストレージに対応するメリットは、思いのほか大きそうだ。SugarSyncに対応したスマートテレビが海外で販売されているなど一部に先例はあるし、ソニーが展開するクラウドサービス「PlayMemories Online」はBRAVIAにも対応予定であるなど、AV機器の取り込みを図るサービスも徐々に出てきた。
とは言え、まだ多くのクラウドストレージサービスにとって、AV機器は未踏の地。今後スマートテレビが増えたらアプリとして対応しやすくなるはずだし、AV機器でも多種多様なクラウドサービスが利用できる未来を期待したい。