【特別企画】ヒット製品の背景を探る連続企画
マランツ「11シリーズ」大ヒットの舞台裏(1)フラグシップ機に込めた思いとは?
新回路採用で飛躍的に音質向上した
プリメインアンプ「PM-11S3」
プリメインアンプ「PM-11S3」は、パワーアンプと電源部が大きく進化。本機の開発を担当したCEエンジニアリングユニット 設計本部の中野 綾氏は「特に機能が増えたわけではないですし、スペックの数字もほぼ一緒。けれど、セパレーションや聴感上のS/N感が飛躍的に向上しています」と胸を張る。
「この鍵となったのは、本機に新採用した回路『SA Driver』。V/Iサーボ方式電流帰還型パワーアンプのプリドライバー段にHDAM-SA3を応用した新回路は、当初は上位モデルのパワーアンプ『MA-9S3』となるモデルに搭載しようと考えていたものです。空間表現力やディテールの再現力は高いものの、じゃじゃ馬のように扱いが難しい回路でもありました…まとめあげるには、かなりの苦労がありました」(中野氏)
苦労を重ねつつも、「評判が良かった前モデルを超える製品を出したい」という信念は変わらなかった。新アンプのほかにも、電源回路や各種パーツをブラッシュアップ。容量フィルターコンデンサーと音質を吟味したブリーダー抵抗により高調波ノイズを抑制することで、トランスケースに内蔵していたプリアンプ電源用のチョークコイルを取り外すことに成功。この分のケース内空きスペースを用いてトロイダルコアのサイズを上げ、容量を高めた。
澤田氏は「セパレートアンプのようにそれぞれの機能に特化するのは理想のかたち。でも、プリメインアンプだからこそできることというのも、あると思うんです」と言う。「セパレートだとプリ/パワーのゲイン配分は常識的な範囲にしないといけません。ですが我々のプリメインは導線一体型なので、信号を増幅させるのはプリに全部任せ、パワー部は電力増幅だけに専念してもらうという作り方ができました。そういう意味では、ある意味セパレートアンプを超えていると言えると思います」。
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