“DSP補正”を廃したサブウーファーにも改めて注目
オールECLIPSEで作った、富士通テンが考える“理想のドルビーアトモス”。本社新試聴室で堪能
■“DSPを持たない”ECLIPSEのサブウーファーの優位性を再確認する
今回神戸を訪れたのは、正確な波形再現を旨とするECLIPSEによるドルビーアトモス再生の到達点を実際に自分の耳で確かめることだ。そしてもうひとつ、ECLIPSEの理想を実現した再生環境において、同社サブウーファーのサウンドと優位性を今一度確認してみてほしいというリクエストももらっていた。
富士通テンの白井雅弥氏は、「TD725SWMK2」と「TD520SW」に代表されるECLIPSEのサブウーファーについてこう切り出した。「最近は音場補正機能やイコライジング機能をアピールするサブウーファーが増えていますよね。一方でECLIPSEのサブウーファーはあえてDSPを搭載せず、イコライジング機能も排しています。それは当然音質を第一に考えた結果なのですが、その理由を改めて説明したかったのです」。
そもそもECLIPSEはカーオーディオをバックボーンとして持っており、高度なDSP技術や音場補正技術を有している。走行音や外騒音の影響が大きい上に、極端に狭い自動車内が再生環境となるカーオーディオでは、DSP技術は欠くことのできない要素だ。そして、“車載”という巨大な市場を背景に、ホームオーディオとは比較にならない規模での研究が行われている。以前の記事でも紹介した本社内の無響室からも(高橋氏によるECLIPSEレポート)、開発環境の充実が端的に伺える。
なぜ高度なDSP技術を持ちながら、ECLIPSEはサブウーファーにおいて、イコライジングや音場補正を一切用いないのか。「元々存在しない音をイコライジングで“盛る”ことで足そうとすれば、音の歪みまで“盛って”しまいます。過渡特性が悪化することは言うまでもないことです」と白井氏は説明する。
ECLIPSEのスピーカー/サブウーファーは、過渡特性を最重要に考えている。言い換えれば、「時間軸において信号波形をいかに正確に再現するか」ということだ。そしてサブウーファーにおいては、DSPによる電気的な補正に頼ることなく、サブウーファー自体の機構的・機械的なアプローチによって過渡特性を追求しているのである。
■ECLIPSEサブウーファーは機械的アプローチで過渡特性を追求する
続いて開発陣の一人である柴田清誠氏と城戸敏弘氏が、ECLIPSEのサブウーファーの優れた過渡特性が技術的な面でどのように裏付けられるのか、そしてなぜイコライジングが過渡特性に悪影響を与えるのかを説明してくれた。
ECLIPSEのサブウーファーのフラグシップモデル「TD725SWMK2」と、搭載された技術要素をそのままにサイズのみ小さくした「TD520SW」は、いずれも2基のウーファーユニットを対向配置させ、アルミシャフトで連結させた「R2R構造」を採用している。この構造は両ユニットの反作用によって不要振動をキャンセルするため、超高速駆動とエンクロージャーの振動排除を両立させることができるのである。
「ECLIPSEのサブウーファーのコンセプトは、超低域においても時間軸に対して正確な音の再現を行うことです」と城戸氏。その正確さは、聴感はもちろん測定結果にも表れてくることを、各種データを用いて説明してくれた。
城戸氏はまず、サブウーファーにインパルスを入力したときの再生音の波形を示した。一般的なサブウーファーでは立ち上がりは緩やかで、立ち下がりもだらりともたつき「尾ひれ」のようになっている。ECLIPSEサブウーファーでは立ち上がりが急峻で、立ち下がりの付帯音もない。「過渡特性が悪いとは、立ち上がり・立ち下がりの時間に遅れが生じるということです。この状況を映画の効果音に例えると、本来『ドン』という音が、『ドゥーン』という音で再生されてしまうのです」。
ECLIPSEは信号に忠実な低音再現を行うために、DSPなどを用いることなく、あくまで機械的・機構的なアプローチを徹底している。「周波数が低くなるほど、立ち上がり・立ち下がりの正確な再現は難しくなります。ECLIPSEのサブウーファーでは、R2R構造の採用や小口径で軽量のユニットを用いることで素早い駆動を可能として、立ち上がりの遅れや立ち下がりのもたつきが発生することを防いでいるのです」(城戸氏)。
ユニットの高速駆動や不要振動の徹底排除が、優れた過渡特性を実現していることは理解できた。ではなぜ、イコライジングや音場補正が正確な波形再現に悪影響を及ぼすのか。城戸氏は、サブウーファーで電気的な補正をかけることの弊害も説明してくれた。イコライザー機能は、本来信号には含まれない成分を付加するために位相の崩れが発生し、立ち上がりをなまらせてしまう。またDSPで信号処理を行えば、アナログ入力をA/D変換してDSP処理を行い、さらにD/A変換してスピーカーを鳴らすというプロセスが必要となる。よってA/D・D/A変換における遅延は避けられないという。
今回神戸を訪れたのは、正確な波形再現を旨とするECLIPSEによるドルビーアトモス再生の到達点を実際に自分の耳で確かめることだ。そしてもうひとつ、ECLIPSEの理想を実現した再生環境において、同社サブウーファーのサウンドと優位性を今一度確認してみてほしいというリクエストももらっていた。
富士通テンの白井雅弥氏は、「TD725SWMK2」と「TD520SW」に代表されるECLIPSEのサブウーファーについてこう切り出した。「最近は音場補正機能やイコライジング機能をアピールするサブウーファーが増えていますよね。一方でECLIPSEのサブウーファーはあえてDSPを搭載せず、イコライジング機能も排しています。それは当然音質を第一に考えた結果なのですが、その理由を改めて説明したかったのです」。
そもそもECLIPSEはカーオーディオをバックボーンとして持っており、高度なDSP技術や音場補正技術を有している。走行音や外騒音の影響が大きい上に、極端に狭い自動車内が再生環境となるカーオーディオでは、DSP技術は欠くことのできない要素だ。そして、“車載”という巨大な市場を背景に、ホームオーディオとは比較にならない規模での研究が行われている。以前の記事でも紹介した本社内の無響室からも(高橋氏によるECLIPSEレポート)、開発環境の充実が端的に伺える。
なぜ高度なDSP技術を持ちながら、ECLIPSEはサブウーファーにおいて、イコライジングや音場補正を一切用いないのか。「元々存在しない音をイコライジングで“盛る”ことで足そうとすれば、音の歪みまで“盛って”しまいます。過渡特性が悪化することは言うまでもないことです」と白井氏は説明する。
ECLIPSEのスピーカー/サブウーファーは、過渡特性を最重要に考えている。言い換えれば、「時間軸において信号波形をいかに正確に再現するか」ということだ。そしてサブウーファーにおいては、DSPによる電気的な補正に頼ることなく、サブウーファー自体の機構的・機械的なアプローチによって過渡特性を追求しているのである。
■ECLIPSEサブウーファーは機械的アプローチで過渡特性を追求する
続いて開発陣の一人である柴田清誠氏と城戸敏弘氏が、ECLIPSEのサブウーファーの優れた過渡特性が技術的な面でどのように裏付けられるのか、そしてなぜイコライジングが過渡特性に悪影響を与えるのかを説明してくれた。
ECLIPSEのサブウーファーのフラグシップモデル「TD725SWMK2」と、搭載された技術要素をそのままにサイズのみ小さくした「TD520SW」は、いずれも2基のウーファーユニットを対向配置させ、アルミシャフトで連結させた「R2R構造」を採用している。この構造は両ユニットの反作用によって不要振動をキャンセルするため、超高速駆動とエンクロージャーの振動排除を両立させることができるのである。
「ECLIPSEのサブウーファーのコンセプトは、超低域においても時間軸に対して正確な音の再現を行うことです」と城戸氏。その正確さは、聴感はもちろん測定結果にも表れてくることを、各種データを用いて説明してくれた。
城戸氏はまず、サブウーファーにインパルスを入力したときの再生音の波形を示した。一般的なサブウーファーでは立ち上がりは緩やかで、立ち下がりもだらりともたつき「尾ひれ」のようになっている。ECLIPSEサブウーファーでは立ち上がりが急峻で、立ち下がりの付帯音もない。「過渡特性が悪いとは、立ち上がり・立ち下がりの時間に遅れが生じるということです。この状況を映画の効果音に例えると、本来『ドン』という音が、『ドゥーン』という音で再生されてしまうのです」。
ECLIPSEは信号に忠実な低音再現を行うために、DSPなどを用いることなく、あくまで機械的・機構的なアプローチを徹底している。「周波数が低くなるほど、立ち上がり・立ち下がりの正確な再現は難しくなります。ECLIPSEのサブウーファーでは、R2R構造の採用や小口径で軽量のユニットを用いることで素早い駆動を可能として、立ち上がりの遅れや立ち下がりのもたつきが発生することを防いでいるのです」(城戸氏)。
ユニットの高速駆動や不要振動の徹底排除が、優れた過渡特性を実現していることは理解できた。ではなぜ、イコライジングや音場補正が正確な波形再現に悪影響を及ぼすのか。城戸氏は、サブウーファーで電気的な補正をかけることの弊害も説明してくれた。イコライザー機能は、本来信号には含まれない成分を付加するために位相の崩れが発生し、立ち上がりをなまらせてしまう。またDSPで信号処理を行えば、アナログ入力をA/D変換してDSP処理を行い、さらにD/A変換してスピーカーを鳴らすというプロセスが必要となる。よってA/D・D/A変換における遅延は避けられないという。