フィリップス/ブラウンの違いをチェック
平成シェーバー探検記(前編)“ひげ剃り” に対する各社の考え方・アプローチの違いとは
■ブラウン
ブラウンも歴史は古い。1950年(昭和25年)、朝鮮戦争が勃発し、戦後の日本の復興が急ピッチに進められてた時期でもある。ドイツはベルリンで東西の冷戦が始まっていたが、全体では復興に力を入れ始めた時期といえる。
ブラウンがこの時期にシェーバーに参入したのは「身のまわりのクオリティを上げるため」だという。ブラウンは小型モーターや刃に優れた技術を持ち、現在製造しているのは男性用のシェーバー、女性用のシェーバー、ハンドブレンダー、電動歯ブラシなど。確かに小型高性能な製品が並ぶ。オーディオでいうと私はボーズを思い起こす。シンプルで高性能なところが似ているように感じる。
技術、技術革新を重視するブラウンだが、それと共に「デザインと技術の融合」も重要視している。ドイツはバウハウスの流れを汲む合理主義的・機能主義的なデザインを好む傾向があり、その意味でもドイツらしいといえる。私はブラウンの旅行用目覚まし時計を四半世紀使っているが、シンプルにして充分、飽きが来ない。スキがなさ過ぎて取り付きにくく感じていたデザインも、今では自分の一部である。
現在のフラグシップ、9シリーズは開発に8年間費やした意欲作。シンプルさと実用性が高次元で融合されたデザインだ。例えば中央のボタンは、ひげを剃りながらでも押し間違えがないレベルの大きさだが、それがデザインを壊しているのかというとそんなことはない。アクセントとして見栄えがする処理がなされている。
ブラウンというと、CMの「モーニング・レポート」が印象的だ。ひげを剃ってきた人に、ブラウンで剃ってもらって、刃を外しトントン。それでもひげが剃れたというインパクト大のCM。この影響もあり、深剃りのブラウンとして一躍有名に。そのDNAは未だに健在。シリーズ9も深剃りは任せろ!という感じだ。
往復式のブラウンは、安全カミソリのように上下に動かすのが基本となる。その動きのなか、肌に密着できるよう、ヘッドが前後に動くことができる仕組み。なおかつ刃自体にもサスペンション機能があり、微妙な凹凸に合わせ動く。4枚ある刃のうち、両外側の刃は網刃、内側2枚はトリマー機能を持つ。このトリマー機能は優れもので、いろいろな方向へ伸びているひげを見事にカットする。
肌に対して優しいのかという問いには、少々ユニークな感じがする解答が返ってきた。「普通に使って頂いても、やさしいです。しかし肌は繊細ですので、刃が触れるとそれだけ傷みます。このため、ワンパスでのカットをお勧めしております。ブラウンは1回当てると剃れます。だからこそのワンパスです」。
この話は、かなり衝撃だった。確かに言う通り。肌に最もやさしいのは、なるべく触れないことだ。しかし剃っている時に可能なのかと言われると、難しいもの。つい往復させてしまう…。
実際にテストしてみた。手の一部になった持ち味で、当たりは少々硬め。切れ味もイイ。意識してワンパスで剃ってみたが、確かにそれで剃れました。しかし知らず知らずのうちに往復しようとする手の動きを止めるわけだから、私にはちょっとしんどかった。私は、必ずこうしろと言われるのが未だに大の苦手だからだ…。
次回は日本メーカー、パナソニックと日立をご紹介しよう。