連続企画:日本コロムビアのハイレゾ音源レビュー
GIGA MUSIC独占先行配信!歌手・堺 正章の歌声と魅力が詰まった「サウンド・ナウ!」がハイレゾで甦る
ハイレゾの音空間により堺 正章オンステージが目の前に
これだけ質の高い楽曲を一気に書き下ろしてずらりと揃える筒美京平のプロ作曲家としての力量は驚くべきものだ。バックの演奏がまた巧い。1972年という録音時期はアナログ8トラック録音が主流の時代だ。バンドにブラス、ストリングス、女声コーラス、パーカッションを加えた編成だが、96kHz/24bitハイレゾリマスターで帯域が広がりベース、ドラムスが鮮明さと量感を増した。
CDで少々窮屈だった音場が拡大し、楽器群が解き放たれ立体的に定位し編成にばらつきがないので、40分の堺 正章オンステージを目の前にしているような楽しさだ。ハイレゾの広大な音空間を与えられてこそ、である。それでは全12曲を曲順に聴いてみよう。
トラック01「運がよければいいことあるさ」
電気楽器+ブラス、ストリングス、女声コーラスの編成はすべて共通。ハイレゾ化で奥行きと重層性が生まれ、楽器が解れエレキギターのカッティングがやや右、べ―ス、ドラムスを中心に女声コーラスがたゆたうように響く。
トラック02「アップ・ダウン」
「死」をテーマにした異色のナンバー。少々暗いが面白い曲想だ。ハイレゾで帯域が広がり、曲を象徴するバスドラの打撃が重く鼓動のような効果を発揮。ベースの唸りも金属的な質感を取り戻し、エンディングのリフレインのドラマティックな盛り上がりが聞き物だ。
トラック03「愛情」
6/8拍子のバラードで結婚式を見つめる男の哀感を描いた美しい曲。バンド、ストリングス、女声に、ここでは内心の慟哭のように男声コーラスも加わる。コロムビア歌謡らしくベースプレーヤーが演奏の要。ポール・マッカートニーを思わせるよく歌う躍動的なベースラインが聞き物だ。途中チェロのソロが前面に出るが、ハイレゾリマスターで艶のある美しい響きを聴かせる。
トラック04「若い旅人」
他曲同様の編成だがブラスが前面に出て明るい青春讃歌。R&Bっぽいコーラスのリフが楽しい。鈴(LCH)やエレキのオブリガード(RCH)、チャイムが晴れやかな効果。ドラムロールの音の動きの軌跡がハイレゾの解像力で鮮明になり小気味よい。
トラック05「アパート借りたよ」
バート・バカラック風のピアノ(LCH)のアクセントに筒美京平の引き出しの多さと洋楽の研究の程が分かる。ハイレゾで帯域が広がりベース、ドラム低音楽器が存在感を増しアレンジとサウンド面の工夫が伝わり、曲の狙った世界が鮮明に。
トラック06「誰でも愛を求めてる」
ハイレゾの帯域拡張で堺 正章の声が適度なリバーブを纏い、宙空に高々と定位し伸びやかに解き放たれる。ブラス(RCH)に艶があり水平方向の広がりも豊かだ。LPやCDでこの音場は味わえなかった。曲想の大らかな人間讃歌に包まれ心地よいハイレゾ音場だ。
トラック07「僕の可愛い人」
アナログシンセのオブリガードがユーモラスな効果。ハイレゾリマスターでストリングスの歪みが減り左右に広がり、堺のキャラクター通り包容力を感じさせる音場。エンディングの女声コーラスが水平方向に隙間ない密度と量感を湛えて広がる。
トラック08「ベイビー、勇気をだして」
アップテンポのノリノリ和製R&B。流行の兆したディスコを意識したのかも。ハイレゾ化を経てもやや歪みが残っているがブラス(R)、ストリングス(L)の掛け合いで、’70年代初期らしいアトラクティブなステレオ効果が盛り上がる。
トラック09「恋人捜し」
珍しくクリアトーンでなくエフェクタを掛けたエレキギター(R)が新鮮。ジャクソンファイブ等モータウンを思わせる華やかなアレンジが楽しい。ブラスの使い方が豪華でトロンボーン、バリトンサックス(L)、トランペット(R)と音域を違えた金管を左右に配しての掛け合いが楽しい。ハイレゾリマスターは金管の音色の解像感が大躍進。
トラック10「幸福 (しあわせ) への招待」
筒美京平らしい美しいバラード。帯域の拡張でベースの低音の沈み込みが凄い。歌謡曲でこれだけ低音が入っていたのかという驚き。日本コロムビアのレコーディングらしい演奏のレベルの高さだ。ハイレゾリマスターでギター(L)のオブリガードの断片も鮮度を増し存在感豊かで効果的。ストリングスも歪みが減り厚みと艶を増した。
トラック11「田舎の教会で」
曲想に合わせて珍しくチェンバロを右CHに配し、ブラス、ストリングスがウェディングソングのドラマティックで晴れやかな効果を演出。「しあわせ」こそが堺 正章ワールドとハイレゾリマスターで確信。
トラック12「ともだちの朝」
珍しくマイナー調だが、アップテンポで活気のある励ましの友情讃歌。ハイレゾの広大な音空間で奥行きの深い音場が生まれ、中盤のストリングスが立体的かつ艶やかに前に出る。「ペット・サウンズ」を思わせるティンパニ連打で効果的な音場の転換。ハイレゾリマスターでアレンジと録音の狙いが鮮明に伝わる。
◇ ◇
歌謡曲アルバムイコールシングル曲の詰め合わせ、というイメージを覆す歌手・堺 正章の代表作だ。堺 正章の歌唱力、魅力に作曲家・筒美京平の剛腕、日本コロムビアの誇るミュージシャンの演奏力がプラスされ、発表から45年が経った今聴き応えのあるアルバムだ。音の曇りをぬぐい去り新生を果たしたのはハイレゾリマスターの威力あってこそ。堺 正章ファンならずとも全てのポップスファンに聴いてほしい日本のヴォーカルアルバムの隠れた名盤だ。
<試聴時の使用装置>
DAコンバーター:アキュフェーズ「DC-950」のUSB入力を使用
プリアンプ:アキュフェーズ「C-3850」
パワーアンプ:アキュフェーズ「M-6200」2台
スピーカーシステム:TAD「TAD-E1」
これだけ質の高い楽曲を一気に書き下ろしてずらりと揃える筒美京平のプロ作曲家としての力量は驚くべきものだ。バックの演奏がまた巧い。1972年という録音時期はアナログ8トラック録音が主流の時代だ。バンドにブラス、ストリングス、女声コーラス、パーカッションを加えた編成だが、96kHz/24bitハイレゾリマスターで帯域が広がりベース、ドラムスが鮮明さと量感を増した。
CDで少々窮屈だった音場が拡大し、楽器群が解き放たれ立体的に定位し編成にばらつきがないので、40分の堺 正章オンステージを目の前にしているような楽しさだ。ハイレゾの広大な音空間を与えられてこそ、である。それでは全12曲を曲順に聴いてみよう。
トラック01「運がよければいいことあるさ」
電気楽器+ブラス、ストリングス、女声コーラスの編成はすべて共通。ハイレゾ化で奥行きと重層性が生まれ、楽器が解れエレキギターのカッティングがやや右、べ―ス、ドラムスを中心に女声コーラスがたゆたうように響く。
トラック02「アップ・ダウン」
「死」をテーマにした異色のナンバー。少々暗いが面白い曲想だ。ハイレゾで帯域が広がり、曲を象徴するバスドラの打撃が重く鼓動のような効果を発揮。ベースの唸りも金属的な質感を取り戻し、エンディングのリフレインのドラマティックな盛り上がりが聞き物だ。
トラック03「愛情」
6/8拍子のバラードで結婚式を見つめる男の哀感を描いた美しい曲。バンド、ストリングス、女声に、ここでは内心の慟哭のように男声コーラスも加わる。コロムビア歌謡らしくベースプレーヤーが演奏の要。ポール・マッカートニーを思わせるよく歌う躍動的なベースラインが聞き物だ。途中チェロのソロが前面に出るが、ハイレゾリマスターで艶のある美しい響きを聴かせる。
トラック04「若い旅人」
他曲同様の編成だがブラスが前面に出て明るい青春讃歌。R&Bっぽいコーラスのリフが楽しい。鈴(LCH)やエレキのオブリガード(RCH)、チャイムが晴れやかな効果。ドラムロールの音の動きの軌跡がハイレゾの解像力で鮮明になり小気味よい。
トラック05「アパート借りたよ」
バート・バカラック風のピアノ(LCH)のアクセントに筒美京平の引き出しの多さと洋楽の研究の程が分かる。ハイレゾで帯域が広がりベース、ドラム低音楽器が存在感を増しアレンジとサウンド面の工夫が伝わり、曲の狙った世界が鮮明に。
トラック06「誰でも愛を求めてる」
ハイレゾの帯域拡張で堺 正章の声が適度なリバーブを纏い、宙空に高々と定位し伸びやかに解き放たれる。ブラス(RCH)に艶があり水平方向の広がりも豊かだ。LPやCDでこの音場は味わえなかった。曲想の大らかな人間讃歌に包まれ心地よいハイレゾ音場だ。
トラック07「僕の可愛い人」
アナログシンセのオブリガードがユーモラスな効果。ハイレゾリマスターでストリングスの歪みが減り左右に広がり、堺のキャラクター通り包容力を感じさせる音場。エンディングの女声コーラスが水平方向に隙間ない密度と量感を湛えて広がる。
トラック08「ベイビー、勇気をだして」
アップテンポのノリノリ和製R&B。流行の兆したディスコを意識したのかも。ハイレゾ化を経てもやや歪みが残っているがブラス(R)、ストリングス(L)の掛け合いで、’70年代初期らしいアトラクティブなステレオ効果が盛り上がる。
トラック09「恋人捜し」
珍しくクリアトーンでなくエフェクタを掛けたエレキギター(R)が新鮮。ジャクソンファイブ等モータウンを思わせる華やかなアレンジが楽しい。ブラスの使い方が豪華でトロンボーン、バリトンサックス(L)、トランペット(R)と音域を違えた金管を左右に配しての掛け合いが楽しい。ハイレゾリマスターは金管の音色の解像感が大躍進。
トラック10「幸福 (しあわせ) への招待」
筒美京平らしい美しいバラード。帯域の拡張でベースの低音の沈み込みが凄い。歌謡曲でこれだけ低音が入っていたのかという驚き。日本コロムビアのレコーディングらしい演奏のレベルの高さだ。ハイレゾリマスターでギター(L)のオブリガードの断片も鮮度を増し存在感豊かで効果的。ストリングスも歪みが減り厚みと艶を増した。
トラック11「田舎の教会で」
曲想に合わせて珍しくチェンバロを右CHに配し、ブラス、ストリングスがウェディングソングのドラマティックで晴れやかな効果を演出。「しあわせ」こそが堺 正章ワールドとハイレゾリマスターで確信。
トラック12「ともだちの朝」
珍しくマイナー調だが、アップテンポで活気のある励ましの友情讃歌。ハイレゾの広大な音空間で奥行きの深い音場が生まれ、中盤のストリングスが立体的かつ艶やかに前に出る。「ペット・サウンズ」を思わせるティンパニ連打で効果的な音場の転換。ハイレゾリマスターでアレンジと録音の狙いが鮮明に伝わる。
歌謡曲アルバムイコールシングル曲の詰め合わせ、というイメージを覆す歌手・堺 正章の代表作だ。堺 正章の歌唱力、魅力に作曲家・筒美京平の剛腕、日本コロムビアの誇るミュージシャンの演奏力がプラスされ、発表から45年が経った今聴き応えのあるアルバムだ。音の曇りをぬぐい去り新生を果たしたのはハイレゾリマスターの威力あってこそ。堺 正章ファンならずとも全てのポップスファンに聴いてほしい日本のヴォーカルアルバムの隠れた名盤だ。
<試聴時の使用装置>
DAコンバーター:アキュフェーズ「DC-950」のUSB入力を使用
プリアンプ:アキュフェーズ「C-3850」
パワーアンプ:アキュフェーズ「M-6200」2台
スピーカーシステム:TAD「TAD-E1」