息を呑む、未体験の精細感
ソニー「α7R IV」レビュー。フルサイズ初の6000万画素超えは伊達じゃない
■現状最高レベルの超高精細な描写力
それでは早速インプレッションに移ろう。やはり最大の注目点は、有効約6100万画素センサーによる高精細な描写だ。先代機に比べ、約1.5倍近い画素数アップは伊達じゃない。
この画素数で、等倍表示をする意味性はさておき、PCディスプレイ上で撮影画像を表示し、どんどんと拡大していくと、「こんなにも写っているのか!」と感動を覚えるほどの精細感である。先代機でも十分過ぎる解像度を備えていたが、本機はさらに余裕のある高精細さを備えている。
A3プリントどころか、ポスターサイズのプリントにも十分耐えるレベルであり、冷静に考えると「ここまで必要か?」と思ってしまうものの、広大な風景を撮っても、肉眼では気付かないほど細部までキッチリと写り、実に気持ちがよい。ポートレートでは、瞳の毛細血管や毛穴まで容赦なく写してしまう、恐ろしいまでの実力だ。
また、これだけの高画素数となると、横位置で撮ったカットをトリミングして縦位置で使っても、必要十分な画素数を保持できるため、納品後、どのように使われるかわからないプロ用途でも威力を発揮するだろう。
さらに本機には、“APS-Cクロップ”と呼ばれる、画面中央のAPS-Cサイズの範囲だけで撮影するモードも備えており、同モードを使えば、同社のAPS-C用レンズでの撮影もできる。この場合でも画素数は約2600万画素もあるので、A3プリントくらいなら楽々カバーできる。
フルサイズ対応レンズ装着時に、同モードを使用すれば、焦点距離が1.5倍の望遠撮影になる点も隠れたメリット。望遠側が足りない時にも便利だ。撮影画像のデータサイズも小さくなり、連写時の連続撮影枚数も約3倍に伸ばせるなど、超高解像度を必要としない動体撮影などでは、特に重宝するだろう。
■明暗の再現域や超高感度もハイレベル
超高感度域については、2400万画素クラスのモデルに比べ、強いとはいわないが、それでもISO3200程度までは安心して使えるレベル。また、動体撮影ではISO6400も多用したが、十分実用に耐えるという印象だ。ISO12800まで上げると、流石にノイズや細部の潰れが見られるが、SNSなどで利用するのであれば、実用の範疇といえるだろう。
また、ダイナミックレンジがクラストップレベルとなる15段もあるため、かなり明暗比の高いシーンでも、白飛びや黒つぶれを最小限に抑えたデータが得られる。これも本機ならではの魅力だ。JPEG撮影では、その恩恵を積極的に体感する機会が少なく実に残念だが、RAW撮影すると、現像工程でその再現域の広さにきっと驚くことだろう。
■改善されたグリップ感と操作性
そして、本機を手にしてすぐ気付くのが、ホールド感の向上だ。α7シリーズの美点である小型軽量さはそのままに、先代機よりグリップが大きめになった。これにより指がかりがよくなり、望遠ズームや大口径レンズなど、重めのレンズを装着した時の安定感が大幅に向上している。また、それに伴って、シャッターボタンの角度なども見直されており、シャッターもより押しやすくなった。シャッターの感触も、先代機と明らかに異なるフィーリングだ。
本機はシャッターユニットも新規開発されている。ちょうど「α7R II」の振動の少なさ(音は賑やか)と、「α7R III」の静かさ(振動は若干感じる)のいいとこ取りをした感じだ。実はこれが、今回「α7R IV」を使用した上で感じた、もっとも大きな改善点かも知れない。撮影時の軽快感や安心感が向上しており、振動も少なく、微細なブレによる画質低下にも効果的だ。
とはいえ、フラグシップ機として考えると、他社製のフラグシップミラーレスほど、静かで振動が抑えられているわけではないため、もうワンランク動作時の質感を向上させてほしかったというのが正直なところ。もちろん、実用上は何の問題もないし、先代機よりも明らかに進化はしているのだが、フラッグシップと謳うのであれば、こちらも欲をいわせてもらいたくなってしまう。
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