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フォーマットの選び方も解説

【ハイレゾ再入門(1)】徹底解説!いまさら聞けない、ハイレゾ音源の入手法&選び方

公開日 2020/05/15 12:48 NetAudio編集部
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■どのフォーマットを買えばいいの?

7パターンのハイレゾ音源が配信されている
「ハイレゾ音源を聴きたい!」と思って各サイトを訪問すると、複数のフォーマットが配信されていて、「一体どれを買えば良いのだろう?」と悩んだことがある人も少なくないだろう。

楽曲がマニアックで恐縮だが、たとえばチェンバロ奏者、桑形亜樹子のアルバム「ルイ・クープラン:クラヴサン曲集」を例にとってみると、e-onkyo musicでは「WAV」「FLAC」「DSF」の3種類、全部で7パターンの音源が配信されている。

まず購入にあたって一番気をつけて欲しいのは、「自分がそのフォーマットを再生できる機器を持っているか?」ということである。近年のハイレゾ対応機器の多くはかなりのハイスペック音源に対応しているものが増えているが、全ての機器がDSD11.2MHzやDXD384kHzに対応しているわけではない。スペック上対応していなくても、「音は出る」(=ダウングレードして再生される)こともあるが、せっかく購入する以上、できればオリジナルのグレードで聴きたいところだ。

対応機器によっては、未対応のフォーマット(たとえば384kHzのデータ)はそもそもコントローラーアプリ上から参照できないこともある。せっかく購入しても、アプリ上に登場しなければ存在しないも同然になってしまう。そのため、手元の機器の「最大対応フォーマット」は必ず確認して欲しい。

現在主流のフォーマットは、「WAV」「FLAC」「DSF」の3種類である。これらの違いについては、「これだけは押さえておきたい! ファイルフォーマットとスペックの読み方」に詳しく記載があるので、こちらも合わせて確認して欲しい。大きく分けて「WAV」「FLAC」はPCM系、「DSF」はDSD系であり、デジタル化の方式が異なる。いずれも、基本的には「数字が大きいものほどオリジナルのアナログ信号波形に近く、音質的に有利」と考えてもらって構わない。

ここ数年は「MQA」フォーマットでの配信も増えてきている。MQAは、データ容量の大きいハイレゾ音源を「折りたたみ」、サイズを縮小する技術のことで、専用の対応機器(デコーダーやレンダラー)を使うことで再生ができるというもの。現在配信されている音源は、「MQA」と「MQA Studio」の2種類があり、「MQA Studio」は製作者側が承認したクオリティとされている。

UNAMASは192kHz/24bitのMQA Studio音源のほか、5.1chの配信にも力を入れている

MQA再生ができる機器を所有しており、MQAのサウンドクオリティをぜひ知りたい、FLACとの聴き比べをしたいという場合は、MQAを購入する意義は大きい。ただし、現在はMQA音源のみが配信されることは少なく、同一スペックのFLACまたはWAVが同一の価格で販売されていることがほとんどだ。対応機器を持っていない場合は「ダウングレード」での再生になってしまうため、こちらも手元の機器のスペックを確認して欲しい。

また、数は非常に少ないが、5.1chや5.0chといった「ハイレゾサラウンド」の音源も配信されている。音源の再生には、サラウンドに対応した再生ソフトウェア(Roon等)とAVアンプ、サラウンドスピーカーなどが必要になるため、2ch再生に比べると、グッとハードルは上がる。SACDマルチの再生や、ホームシアターシステムなどを構築している方にとってはひとつの選択肢になるだろう。

ただし、MQAやサラウンド音源は、絶対数は圧倒的に少ない。以下では、音源数も多く、一番よく購入されるフォーマット、FLAC/WAVとDSFに限って話を進めたい。

■WAVとFLACとDSF、どれを選べば良い?
e-onkyo musicでは、同一スペックの「WAV」と「FLAC」の両方を配信しているものが少なくない。この場合、どちらを買えば良いだろう? これについては、それぞれに「メリット・デメリット」があるので、ライフスタイルに合わせて適切な方を選んで欲しい。

WAVデータは、現在デジタルでオリジナルマスターを作る際にも採用されていることが多く、音質面ではもっとも有利とされている。しかし、データサイズが非常に大きくなるため、データのダウンロードやコピーに時間がかかる。また、後述する「タグデータ」を埋め込むことが難しいため、使い勝手でマイナス面がある。操作アプリ上で、その音源が何の楽曲なのか、ぱっと見で判断できないことがあるのだ。

一方のFLACは、「可逆圧縮」と呼ばれる形式であり、再生機器側においてオリジナルのグレードに戻すことができるため、音質面でもWAVと遜色ないとされる。データサイズも圧縮率によって異なるが、だいたいWAVの半分から7割程度である。ネットオーディオ的な最大のメリットとしては、FLACには「タグデータ」を埋め込めるため、アプリ上にアルバムアートを表示し、美しいライブラリを構築することができる。タグを基にした検索もスムーズだ。

WAVデータはジャケット画像を埋め込むことができないため、ソフトウェア側でジャケット画像を表示することができない。FLACやDSFはデータにジャケット画像データを埋め込むことができるため、ソフトウェア上でアルバムアートが表示されている

利便性や使い勝手などを考慮すると、ネットオーディオとしては「FLAC」を推薦したいが、利便性をさておいても究極の音質を追求したいという場合は「WAV」が候補に挙がるだろう。

ちなみに「WAV」の場合のジャケット画像表示の回避方法だが、音源と同一フォルダー内に、jpgのジャケット画像を用意し、「folder.jpg」などにリネームして保存すれば、再生ソフトウェア上で表示できる。下図はAUDIRVANAで表示した様子だが、Roonでも同様に表示されることを確認している。ただし、これらは再生ソフトウェア側の仕様によるため、「必ず表示されるとは限らない」「バックアップ時に紛失する可能性がある」ことを注意して欲しい。

楽曲ファイルと同一フォルダーにjpgのジャケット画像を入れると、ソフトウェア上でも問題なく表示されることが多い

「DSF」データに関しては、こちらもタグ情報やジャケットを埋め込むことが可能。配信サイトの音源は、WAV以外は基本的にタグデータを埋め込んだ状態になっているので、ダウンロード後にユーザーがタグデータをつける必要はなく、アーティスト名やアルバム名、ジャケット画像がそのまま表示される(ただし、ライブラリをより自分好みに構築したい場合、あとから変更もできる)。


FLAC/WAVとDSFのどちらを選べば良いのか、というのは非常に難しい問題である。それぞれに特有の音質傾向があるため、どちらが正解とは言えない部分がある。それでも、あえてひとつ選択の基準を挙げるとすると、「オリジナルのフォーマットはどちらで収録されているのか?」ということを意識してみると良いだろう。たとえば先述の「ルイ・クープラン:クラヴサン曲集」であれば、エンジニアの深田晃氏によると、オリジナルの録音フォーマットは352.8kHz/24bitのDXDとコメントされている。

録音時のフォーマットというのは、作り手が制作時に音を確認している形式であり、その状態でアーティストやエンジニアが納得したクオリティと言える。ただし、すべての音源についてオリジナルの録音フォーマットで配信されているわけではないので、ひとつの参考情報として捉えて欲しい。

またアナログ時代の音源のデジタル化においては、どのような工程(機材など)を経てデジタル化されたものなのか、ということも重要となる。デジタル化の工程は必ずしも公開されているとは限らないが、近年では音質的な配慮から、そういった情報が公表されることが増えてきた。せっかく良質な音源を探しているのであれば、そういった制作時の情報を選択の基準のひとつとしてみるのも良いだろう。

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