【SFP徹底研究】第3回 環境整備こそネットワークオーディオの命
ネットオーディオ、「光アイソレート」はどこに組み込むのが効果的? KLIMAX DSMで徹底検証!
■tp-Linkのケースを換装したオリオスペックオリジナルメディコンの効果は?
【セッティング(7) ハブとサーバー間をオリオメディコンで光アイソレート】
次に試したのが、オリオスペックのオリジナルアイテム、tp-Link製の光メディアコンバーター「MC220L」を、長尾製作所製の堅牢なスチールケースで換装したというマニアックな一品だ。これをスイッチングハブとサーバーMC220LとHFAS1-S10の間はメタルケーブルによる接続だ。
第一印象は「音量デカイ!」だった。音圧ではなく収録レベルが上がったような感じなのだ。ここまで好感度ナンバーワンだった(3)の特徴が、様々な要素が高次元でバランスしていることならば、(7)の魅力は試聴室のサイズが一回りも二回りも大きくなったような巨大なスケール感である。大迫力の音の波に360度から取り囲まれる感覚は圧巻だ。ただし、若干粗っぽい質感になるのが気になる。
【セッティング(8) メディコンに強化電源を追加】
そこで、電源供給を付属ACアダプターではなく、オリオスペックが推奨する窒化ガリウムのUSB充電器に変えてみたところ、これが「予定調和すぎるだろ!」とツッコミたくなるくらいに効いた。ノイズフロアが明らかに下がり、音場の深みがまるで違うのだ。先ほどの粗っぽさは消え去り、1音1音のフォーカス性能が上がって、B&W「802D3」のモニタースピーカーとしての一面が俄然クローズアップされるようになった。
じつは、筆者も自宅のシステムで窒化ガリウムUSB充電器やiFi audioの「iPower」を適宜使用していて、付属ACアダプターに較べて歪み感が減るのは確認済みだ。個人的にはリニア電源のどっしりと腰の座ったサウンドの方が好みなのだが、全ての周辺機器をリニア電源化すると排熱で室温がエライことになるため、低ノイズなスイッチング電源とのハイブリッド式を採用している。ちなみに、冒頭で書いた「力感が減って全体的にこじんまりしたような……」という不満も、光メディアコンバーターの電源強化によってかなり改善されたことをご報告しておこう。
思い起こせば、DELAの試聴室にお邪魔した際にも「光アイソレーションは確かに効きますが、光メディアコンバーターの電源には注意してください」と技術者の方も仰っていたっけ。「光アイソレーションしているのに、電源で音が変わるなんてオカルトだ!」と憤る人もいそうだが、その人にとっては今回の実験全てがオカルトなので、きっと(2)の時点で読むのをやめてしまったと思われる。将来、動的な測定方法が確立されれば、これらの取り組みがオカルトと揶揄されることもなくなるはずだ。
【セッティング(9) プレーヤー/サーバーをそれぞれ光アイソレート】
さて、なんだか「まとめ」みたいな文調になってしまったが、最後にこれまでの実験を総括して、おそらくこれが今回のベストだろうという全部入りの組み合わせを試してみた。それが図9になる。KLIMAX DSMはSFPポートの使用さえ避ければ光アイソレーションするメリットは明らかだったので、光メディアコンバーターにはプレーヤーの潜在能力をフルスロットルで開放してくれそうなオリオスペックメディコンを選択。サーバー側はHFAS1-S10と相性抜群のOP-S100でキマリだ。いわば(3)と(8)のイイトコ取りを狙ったセッティングだが、果たして……。
長時間の検証も疲れも吹っ飛ぶ、目の覚めるような超絶サウンドが飛び出してきた! 広大なダイナミックレンジと研ぎ澄まされたクリアネスが支配するサウンドステージで、エネルギッシュなボーカルとキレ味鋭いリズムが弾け飛ぶ! これぞまさに完全無欠のリファレンスプレーヤーだ! KLIMAX DSM、やっぱりお前はスゴかった!!
■“光アイソレート”の活用方法まとめ
というわけで、紆余曲折はあったが、今回の実験で分かったことは以下のとおりだ。
(1)SFPポートを使うことが必ずしも最良ではない
(2)1ヶ所だけ光アイソレーションするとしたらスイッチングハブとサーバーの間
(3)光メディアコンバーターは製品によって全く違う音がする
(4)光メディアコンバーターの電源も重要
(5)KLIMAX DSMが欲しいけど高くて買えない
以上である。もちろんネットワーク環境は読者によって千差万別だが、ひとつの指針は示せたのではないかと思う。最近では他にも優秀な周辺機器が続々と登場している。機は熟した。今年の夏休みはステイホームで理想のネットワーク環境作りに挑戦してみよう!