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アニメから自主制作映画まで5タイトル

「人に本気で観てほしい作品」をぶつけ合え!推し語りバトル開幕!

公開日 2023/04/30 07:00 編集部:杉山康介
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押野プレゼン作品『イップ・マン』


押野:僕が推したいのは『イップ・マン』という映画です。格闘を題材とした映画っていっぱいあって、男の子なら好きな人も多いと思うんですよね。で、アクション俳優の中でも有名な人の1人がブルース・リーだと思いますが、彼が生涯の中で唯一師匠と呼んだと言われている人が、イップ・マン(漢字表記:葉問)です。

押野:イップ・マンを題材にした作品はいくつかあるけど、中でも有名かつ今日紹介するのが、ドニー・イェンが演じた『イップ・マン 序章』『葉問』『継承』『完結』の4作品。2008年から2019年にかけて大体10年くらいかけて展開された結果、スピンオフ作品が生まれたり、別の人が主演でイップ・マンの映画が作られたりと“イップ・マン旋風”を巻き起こした作品なんですね。

(c)2008 Mandarin Films Limited. All Rights Reserved

松永:僕『継承』までは観たんですけど、『完結』はまだ観られてないんですよね。どこで配信してますか?

押野:今の所、全作見放題配信しているのはU-NEXTだけみたい。他だと一部だけレンタル配信のパターンが多いね。

押野:イップ・マンは詠春拳という拳法の達人で、道場破りを返り討ちにするくらい強いし、金に目が眩んだ武術家仲間から「いくら払えば協会の仲間にしてやる」と誘われてもはねつける、ストイックで高潔な人物なんですね。彼は実在の人物、しかもブルース・リーの師匠にあたる年代ということで、『序章』は日中戦争があった頃、『葉問』は第二次世界大戦後のイギリス領香港が舞台になってきます。

押野:例えばジャッキー・チェンやブルース・リーの映画だと、ダメな武術家をやっつけて終わりだったり、拳を交えることでお互いを認め合ったりするじゃないですか。でも、『イップ・マン 序章/葉問』ではそういうダメ武術家は序盤にちょっと出てくるだけで、そのあとは戦争で勝った日本人やイギリス人が巨悪として立ち塞がってくる。

押野:これが本当に嫌なやつで、観てる側としては「イップ・マン、早くやっつけてくれないかな」って思っちゃうわけ。で、これがイップ・マンのエンタメ的に突き詰められた部分だと思うんですけど、彼はなかなか動かない。アクションシーンは序盤に「イップ・マンってこんな人なんだな」ってのが分かる程度に出てくるだけで、あとはひたすらフラストレーションを溜める時間。

:アクション映画なのにスカッと要素が少なめなんですね……。

押野:最後の最後にイップ・マンと悪役が戦うことになるんですけど、一説によると詠春拳って、詠春さんという女性が編み出した武術だと言われているんです。普通のアクション映画だと強力なパンチやキック一撃で相手を吹き飛ばしたりするけど、力のない女性が編み出した拳法だからか、イップ・マンは「あっ死んじゃう……」って思うくらい細かくずっと殴り続けるし、関節や急所も容赦なく狙ってくる。

押野:後頭部をひたすら殴って、敵が倒れた後も足で頭を挟んで殴り続けて、関節も折って完全に動けなくしちゃう。高潔な人物はどこに? と思うくらい殺意に満ちているんですけど、そこでもう、溜まったフラストレーションが一気にカタルシスになるわけ。やっぱ散々フラストレーション溜めさせられたんだから、一撃で吹き飛ばされたらスーッとしないんですよね。もう尋常じゃないくらいボッコボコにしてくれるので安心できます。

男の子なので語りながら体もついつい動いてしまう

押野:『序章』『葉問』はそういうスカッと色が強いけど、『継承』『完結』ではイップ・マンも歳を重ねてきて、どちらかというと人間ドラマが色濃くなってきます。それこそブルース・リーが弟子になったり、息子が成長して自分の武術家としての晩年をどうするか考えたりと、武術家としての生き様が見えてくるので、シリーズ4作でアクションエンタメと人間ドラマの両方をしっかり楽しめる作りになってるんですね。格闘系アクション作品が好きな方なら、今までにないようなアクションと展開が観られるんじゃないかな、と思います。

長濱:自分は観たことないですけど、各所で名前が挙がる理由が分かった気がする。ジャッキー・チェンはハリウッドを目指した、中国映画を世界に広めようとしたけど、イップ・マンは本気で「中国武術の映画」を作ろうとしたんだろうな、って話を聞いていて思いました。

押野:公開当時の情勢もあるのかもしれないですけど、悪役の描き方は完全に世界を狙ってないな、って感じがしますね。それでも大ウケしたからか、『継承』ではマイク・タイソンが出演してます。

押野:ちなみに主演のドニー・イェンは母親が武術家だし、本人も武術を学んでいてジェット・リーが同い年だったりする人なんですね。なので彼自身、非常に洗練されたアクションを見せてくれます。

杉山:こんなイキイキ喋る押野さん久しぶりに見た気がする。



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