PRビクター「HA-FX150T」を例に解説
【集中連載】イヤホン イコライザー基礎知識:第3回「ゲインを調整すると音はどう変わる?」
スマートフォンアプリから音質を細かくイコライジングできることも特徴であるビクターの完全ワイヤレスイヤホン「HA-FX150T」。ただ、イコライザーとは何者なのか? 理解しているようで実は少しあやふやな人もいるのでは? HA-FX150Tを例にとりながら、イコライザーの基礎知識や使いこなすコツを短期集中連載で解説します。
今回は「ゲイン」のイコライジングについて解説。ゲインとは何者で、ゲインを調整すると音はどう変わるのか? そのポイントを紹介します。
【関連記事】
・第1回「イコライザーって何?」
・第2回「周波数設定の自由度こそパライコの強み」
パラメトリックイコライザー、略してパライコの設定項目は、HA-FX150Tではそれぞれ、
●周波数=どの周波数を中心に
●ゲイン=どれほどの増減量
●Q=どれほどの周波数幅
です。今回は「ゲイン」を説明していきましょう。
といっても「ゲイン」はシンプルに、狙った周波数をどのくらい強めるか/弱めるかの増減量の設定です。その意味や効果はすっと理解できることでしょう。単位の「dB(デシベル)」は見慣れないものかもしれませんが、今は単に気にしなくてもOKです。
さてHA-FX150Tのパライコは、手をつけない0dBを基準に、-6dBまで下げる、6dBまで上げるというゲイン調整が可能。この±6dBというゲイン幅が実は絶妙です。他のイヤホンのイコライザーの中にはもっと広い幅を備えるものもありますが、HA-FX150Tはおそらく意図的に±6dBにとどめてあります。
というのも極端なゲイン設定でのイコライジングは、楽器本来の音色や楽曲本来の印象、イヤホンの個性を崩してしまいがち。音楽制作時のエフェクターとしてならありですが、音楽リスニング環境で使うには過剰な効果です。
リスニングにおいて+8dBや+10dBのイコライジングが必要になることは滅多にありません。ですが例えば±12dBの幅が用意されていると、+8dBや+10dBも「真ん中よりちょっと上」「まだ天井ではない」という見え方になってしまいます。初心者は躊躇なく+8dBや+10dBを使ってしまうかもしれません。
対して±6dBのゲイン幅ならそんな間違いは起きません。最大値である-6dBや+6dBにセッティングしても、音色や音楽を破綻させたり、HA-FX150Tらしさを大きく損なうことはないでしょう。これぞ実用的な範囲!
ではその絶妙な増減幅を体感してみましょう。YOASOBI「アイドル」の今回は中高域をイコライジング。
「Victor Headphones」アプリでサウンドモード「CUSTOM 3」の設定を開き、ポイント(2)の値を調整。
●周波数:2400Hz前後(2.4kHz前後)
●ゲイン:-6.0dB/0dB/+6.0dB
●Q:0.6
として、曲を再生しながらゲインを0dBから-6.0dB、+6.0dBへと動かしてみましょう。
2.4kHz付近は、音のアタック感や明るさなど様々な要素に影響する周波数。-6.0dBにするとボーカルも楽器も当たりが柔らかくなり、全体もウォームで奥行きのある雰囲気に。逆に+6.0dBでは音のアタック感やシャープさが強調され、前に出てくるアグレッシブな雰囲気にといった変化が生まれます。どちらが好みですか?筆者としては「アイドル」には後者のアグレッシブな表現がフィットするかなと思います。
ですが好みは人それぞれ。そして±6dBの増減どちら側の変化も楽曲の印象を激変させてしまうほどではなく、「好み次第でどちらもあり」の範疇に収まってはいますよね。
それが「HA-FX150Tのパライコのゲイン幅はリスニング向けとして実用的な範囲」ということ。スペックの数字を大きくすることにとらわれない、堅実な設計です。
……でも実はHA-FX150Tのパライコには6dB超のイコライジングをできちゃう裏技も。ポイント(1)(2)(3)のうち複数の周波数設定を同じ帯域に重ねることで、ひとつの帯域に±6dBを3回重ねがけできるのです。
この裏技を実際に使う機会はほとんどないかと思いますが、HA-FX150Tのパライコの自由度の高さが表れているところですね。
(提供:JVCケンウッド)
今回は「ゲイン」のイコライジングについて解説。ゲインとは何者で、ゲインを調整すると音はどう変わるのか? そのポイントを紹介します。
【関連記事】
・第1回「イコライザーって何?」
・第2回「周波数設定の自由度こそパライコの強み」
ゲインとは「どれくらいの強さ/弱さでイコライジングするか」
パラメトリックイコライザー、略してパライコの設定項目は、HA-FX150Tではそれぞれ、
●周波数=どの周波数を中心に
●ゲイン=どれほどの増減量
●Q=どれほどの周波数幅
です。今回は「ゲイン」を説明していきましょう。
といっても「ゲイン」はシンプルに、狙った周波数をどのくらい強めるか/弱めるかの増減量の設定です。その意味や効果はすっと理解できることでしょう。単位の「dB(デシベル)」は見慣れないものかもしれませんが、今は単に気にしなくてもOKです。
ビクターが用意した「±6.0dB」というゲイン幅の絶妙さ
さてHA-FX150Tのパライコは、手をつけない0dBを基準に、-6dBまで下げる、6dBまで上げるというゲイン調整が可能。この±6dBというゲイン幅が実は絶妙です。他のイヤホンのイコライザーの中にはもっと広い幅を備えるものもありますが、HA-FX150Tはおそらく意図的に±6dBにとどめてあります。
というのも極端なゲイン設定でのイコライジングは、楽器本来の音色や楽曲本来の印象、イヤホンの個性を崩してしまいがち。音楽制作時のエフェクターとしてならありですが、音楽リスニング環境で使うには過剰な効果です。
リスニングにおいて+8dBや+10dBのイコライジングが必要になることは滅多にありません。ですが例えば±12dBの幅が用意されていると、+8dBや+10dBも「真ん中よりちょっと上」「まだ天井ではない」という見え方になってしまいます。初心者は躊躇なく+8dBや+10dBを使ってしまうかもしれません。
対して±6dBのゲイン幅ならそんな間違いは起きません。最大値である-6dBや+6dBにセッティングしても、音色や音楽を破綻させたり、HA-FX150Tらしさを大きく損なうことはないでしょう。これぞ実用的な範囲!
ではその絶妙な増減幅を体感してみましょう。YOASOBI「アイドル」の今回は中高域をイコライジング。
「Victor Headphones」アプリでサウンドモード「CUSTOM 3」の設定を開き、ポイント(2)の値を調整。
●周波数:2400Hz前後(2.4kHz前後)
●ゲイン:-6.0dB/0dB/+6.0dB
●Q:0.6
として、曲を再生しながらゲインを0dBから-6.0dB、+6.0dBへと動かしてみましょう。
2.4kHz付近は、音のアタック感や明るさなど様々な要素に影響する周波数。-6.0dBにするとボーカルも楽器も当たりが柔らかくなり、全体もウォームで奥行きのある雰囲気に。逆に+6.0dBでは音のアタック感やシャープさが強調され、前に出てくるアグレッシブな雰囲気にといった変化が生まれます。どちらが好みですか?筆者としては「アイドル」には後者のアグレッシブな表現がフィットするかなと思います。
ですが好みは人それぞれ。そして±6dBの増減どちら側の変化も楽曲の印象を激変させてしまうほどではなく、「好み次第でどちらもあり」の範疇に収まってはいますよね。
それが「HA-FX150Tのパライコのゲイン幅はリスニング向けとして実用的な範囲」ということ。スペックの数字を大きくすることにとらわれない、堅実な設計です。
……でも実はHA-FX150Tのパライコには6dB超のイコライジングをできちゃう裏技も。ポイント(1)(2)(3)のうち複数の周波数設定を同じ帯域に重ねることで、ひとつの帯域に±6dBを3回重ねがけできるのです。
この裏技を実際に使う機会はほとんどないかと思いますが、HA-FX150Tのパライコの自由度の高さが表れているところですね。
(提供:JVCケンウッド)