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評論家は「曲のどんなポイント」を聴いている?

ヨルシカ、五等分の花嫁、野田愛実……オーディオ評論家が試聴に使った2023年の曲はこれだ!【Part.2】

公開日 2023/12/30 07:10 野村ケンジ/生形三郎/海上忍/岩井喬
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岩井喬先生が選ぶリファレンス曲
生形先生が執筆したレビュー記事はこちら


DEF LEPPARD 「WHEN LOVE & HATE COLLIDE」



80年代に世界的ヒットを飛ばした英国のHR/HMバンド、デフ・レパードがロイヤル・フィルハーモニー・オーケストラと共演したゴージャスなアルバム『DRASTIC SYMPHONIES』から、バラード曲「WHEN LOVE & HATE COLLIDE」を選ぶ。この曲は95年に発売した彼らの初ベスト『VAULT』に新録曲として収録されたもの。オリジナルのマルチテープ音源をベースに、アビーロード・スタジオで録音したオーケストラ・パートを加えている。

原曲でもストリングスを従えた構成であったが、それよりもさらにパワーアップした豪華なオーケストラに包まれた、力強さと荘厳さを両立したゴージャスなサウンドだ。特にオーケストラにおける個々のパートの粒立ちを聴くべく、普段は96kHz/24bitのハイレゾ音源かLPを試聴しているが、CDの初回盤に同梱されていたBDのドルビーアトモス音源ではよりステージの広さ、リヴァーブの豊かさが感じられる。

ヨルシカ「斜陽」



2024年1月に第2期の放送が決まっている、人気TVアニメ『僕の心のヤバイやつ』の第1期OP曲として用いられた1曲。

冒頭からエフェクトを抑えたボーカルとアコギのドライな質感にドキッとさせられる。その直後、イントロのリズムインで一気に音数も多くなるため、様々な試聴においてダイナミクスを確認するうえでとても参考になった。ドラムセットの緻密さやベースのリッチな厚みの表現、さらにエレキギターのコシのあるフレーズも耳当たり良い。

この静と動の対比ともいえるコントラストをどのように表現するのか。特に余韻の再現性、階調性に着目。ボーカルへ僅かにかけられたショートディレイ&リヴァーブの微細なニュアンスをどれだけ引き出せるかをチェックに用いている。

カルロス・クライバー指揮:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 『BEETHOVEN: SYMPHONY NO. 7』



グラモフォン創立125周年として、1970年代の名盤を復刻する『The Original Source Series』の第1弾として発売されたLP。

グラモフォンは1970年より4chサラウンドを見越した収録を開始していたそうで、本作もその時期に録音されていた。そのため、大元のマスターテープは4ch仕様であり、これをミックスし、従来のLPやCD製造に用いていたという。今回のプロジェクトは今まで持ち出されず保管されていた4chマスターを再生、アナログ環境でミックスしながら、直接カッティングするという、デジタル処理を一切介しないピュア・アナログ仕様の復刻を行った。

デジタル環境でマスタリングされたものとは一線を画す、鮮やかかつ自然に浮き上がる音像と余韻の生々しい階調性が特長であり、音場の空気感のリアルさに耳を奪われた。パートごとの際立ち、ステージの前後感も掴み取れ、改めて名演奏の本質に迫ることができる。本作以外にも『The Original Source Series』は展開中でいずれの作品もクオリティが高い。アナログの復刻版として最も理想といえるものだ。


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