公開日 2009/11/27 16:30
あらゆる製品ジャンルで“ベスト・イン・クラス”を狙う − DTSキーパーソンに聞くブランド戦略
DTSのネクストステージとは?
DTS-HD Master Audioをはじめこれまで多様なデジタルサラウンド技術を提供してきたDTS社。近年ではビジュアルグランプリ2010で企画賞を受賞したPC向け技術「DTS Premium Suite」やモバイル向け技術「DTS Envelo」、さらに放送技術「DTS Neural Surround」といった新しい分野へ積極的に働きかけている印象が強い。このたび来日したDTS,Inc. Executive Vice President&General ManagerのBrian D.Towne氏と、DTS Licensing Ltd Managing Director DTS Europe&Corporate VPのLen Lloyd氏のお2人にDTS社の現状と今後の展開について話を伺った。
■ワールドワイドで展開するDTSのネットワーク
ーーまずはじめにDTS社の現状について教えていただけますか。
Brian Towne氏(以下、Towne氏):DTSは北米、欧州、アジアの各地に支社を構えており、現地社員とコミュニケーションを図るために我々は積極的に各オフィスをまわってきました。アジア地域は日本だけでなく香港や広州にも拠点がありますが、2008年には台湾支社がオープンし、2010年には韓国支社を本格的にオープンする予定です。また欧州にはライセンスをとりまとめている支社がありますが、今後欧州のライセシング活動が東欧にも拡張されていくでしょう。
ーー韓国支社立ち上げの理由をお聞かせください。
Towne氏:言語と時間の問題で、各地に人を配置したほうが迅速にクライアントのサポートを行うことができ、ビジネスを円滑に進めることができるというメリットがあるからです。
ーーアジアは重要なマーケットとお考えですか。
Towne氏:BtoBビジネスの拠点としては1996年にDTSがホームオーディオ市場に参入した当初からアジアをとても重要な市場と位置付けています。またコンシューマー製品の市場としても、現在アメリカが非常に厳しい中で、アジアの方が活気があると感じています。最終的にエンドユーザーにDTS対応機器を購入していただかなければいけないので、やはり重要な地域だという認識です。
ーーコンシューマー市場で伸びていると感じる製品はどのような分野でしょうか。
Towne氏:薄型テレビはどの地域でも伸びてますが、特に中国での成長率は高いと感じています。またPCも伸びが大きいジャンルです。我々にとって重要なホームシアター製品は、アメリカでクリスマス商戦期に100ドルを切る低価格のBDプレーヤー製品の売上が大幅に伸びると期待しています。
■DTS本社が本格的な施設を完備した新社屋に移転
ーー今年、DTS本社が新社屋に移転されたと伺っていますが。
Towne氏:DTSは数人の社員によるベンチャービジネスからはじまって、その後の成長とともにオフィスを移転しましたが、1つの場所に収まりきれず社員は3つの建物に分散していました。2008年末にNeural Audioを傘下に入れ社員も増えたこともあり、今回は大きな建物を購入し、最新設備を整えました。また社内に完備するリスニングルームはどんなチャンネルでもレイアウトを変更できる仕様にしたり、レコーディングスタジオのようにフローティングの構造にするなどこだわって設計しています。社員だけでなく訪れた方にも満足いただけるような社屋になりました。
新社屋の様子。天井も高くオープンな空間設計となっている
ーー圧縮音源のエンコード、デコード技術を保有するNeural Audio社が加わったことで、DTSの技術力がいっそう強化されました。
Towne氏:現在当社は高い技術力を持ったエンジニアを多く抱えています。その中にはNeural AudioのChief Scientist、James Johnsonのような多彩な経験と実績を持ったエンジニアもいます。彼はベル研究所に25年間在籍しトランジスタの原理の開発にも携わった著名なエンジニアで、AESのフェローも務めています。
もう一人のキーパーソンは、2009年よりDTSに入社したSenior Director, Audio ProcessingのJean-Marc Jotです。そのほかにもサウンドプロセッシング技術において世界で5本の指に入るような優秀な技術者がDTSには在籍しています。
■“ベスト・イン・クラス”への取り組み
−PC、モバイル、ネットワークプレーヤー・・・など多様な分野で参入を狙う
Towne氏:BDの技術だけをみても、我々は「DTS-HD Master Audio」からセカンダリーオーディオである「DTS Express」の技術まで、幅広くカバーしています。そして「DTS-HD Master Audio」はBDというメディアの枠を越えたキャパシティーを備えており、チャンネル数や転送レートをまだまだ伸ばすことが可能です。
そんな中でDTSはこれまでハイクオリティなオーディオコンプレッション技術、そしてBDの周辺技術といったクオリティ第一のブランドバリューを築きあげてきましたが、どんなアプリケーションでもマルチチャンネル再生する際の問題を取り除いて最適化するという技術を手に入れたことで、BDやDVDに限らずアプリケーションを増やすことができるようになりました。
こうした技術を活用し、次のステップとして、“ベスト・イン・クラス”というキーワードを掲げて、あらゆる領域で最高品位の音質を提供するという取り組みに力を入れていき、ビジネスをマスマーケットにも拡大していきます。
店頭で目立つような仕掛けになっていて製品購入したものの、家で30分くらい聴いてみて違和感を覚えた、というようなものではいけません。あくまでクオリティにこだわり、どんな環境下でも再生を最適化する技術を我々は提供していきます。
ーーPCでの高音質再生を目的とした「DTS Premium Suite」も“ベスト・イン・クラス”の思想に基づいて開発されたものですね。
Towne氏:PC向けにあらゆるDTS技術を提供できるようひとつにパッケージ化した「DTS Premium Suite」など、PCやモバイル製品といった新たな分野でも展開しています。また近年エンタテイメントのソフトウェアの形や再生方法が根本的に変わりつつある中で、デジタルオーディオプレーヤーやネットワークオーディオ、iPodドック搭載システムなどの製品への対応も期待できると考えています。
圧縮音源の技術では、MP3やWMAといったステレオソースをマルチチャンネルで再生することができる「DTS Neural DICE(Dynamic Image Control Enhancement)」という新技術に最も可能性を感じています。
ーーこれらの技術を搭載した製品はいつ頃出てくるのでしょうか。
Towne氏:一気に多ジャンルに拡大していくのは難しいですが、現在優先順位を決めてパートナーの方々と慎重に製品化を検討しているところです。
■欧州でのアプローチ − IPTVでDTSのプレゼンスが突出してくる
ーーLloydさんに伺います。欧州ではどのようなDTS技術や製品ジャンルが注目されているのでしょうか。
Len Lloyd氏(以下、Lloyd氏):欧州はハイエンド製品が強い市場で、カーオーディオでもホームオーディオ分野でもDTSの技術は高く評価されています。また新しい分野でも欧州に標準策定のイニシアチブがあるIPTVなどの分野でこれからDTSのプレゼンスが必ず突出してくるでしょう。
2003年からHDオーディオというクオリティ指向の技術を訴求してきて、これからはDLNAやIPTVといったネットワーク系にアプローチしていく次の段階に入っています。このような新しい領域にDTS技術をどのように搭載していくかがキーとなります。
■究極の目的はどんな環境の方にもベストな音質で聴いてもらうこと
− 新しい取り組みも画策中
Towne氏:DTSの技術は制作者がスタジオで聴いているマスター音源をエンドユーザーにも同じクオリティで届けたいという発想が原点にあります。はっきりとはまだお伝えできないのですが、現在、我々が進めているプロジェクトでは、このエンドユーザーへ届ける過程を根本的に変えるようなことを構想しています。ただ、マスタークオリティに近づけるというコンセプトに変わりはありません。
ーー今年のCESで11.1ch再生のデモを披露されていらっしゃいましたが、その技術に関連したものなのでしょうか。
Towne氏:チャンネル数を増やすこということだけでは最終的な解決にはなりません。我々の究極の目的はどんな環境の方にもベストな音質で聴いてもらいたいということであり、それはチャンネルをどのように配置するか、いくつ配置するか、ということとは別の話です。各々のライフスタイルにあった最適なソリューションを提供していたいと考えています。
ーーその技術はCES 2010で発表されるのでしょうか。
Towne氏:現在ある技術のカテゴリーで新しい製品が出展されることはあるかもしれませんが、今お話した内容はまだ公の場でお見せする段階には到達していません。具体的なリリース時期についてもお話できませんが、ぜひ今後に期待していてください。
■ワールドワイドで展開するDTSのネットワーク
ーーまずはじめにDTS社の現状について教えていただけますか。
Brian Towne氏(以下、Towne氏):DTSは北米、欧州、アジアの各地に支社を構えており、現地社員とコミュニケーションを図るために我々は積極的に各オフィスをまわってきました。アジア地域は日本だけでなく香港や広州にも拠点がありますが、2008年には台湾支社がオープンし、2010年には韓国支社を本格的にオープンする予定です。また欧州にはライセンスをとりまとめている支社がありますが、今後欧州のライセシング活動が東欧にも拡張されていくでしょう。
ーー韓国支社立ち上げの理由をお聞かせください。
Towne氏:言語と時間の問題で、各地に人を配置したほうが迅速にクライアントのサポートを行うことができ、ビジネスを円滑に進めることができるというメリットがあるからです。
ーーアジアは重要なマーケットとお考えですか。
Towne氏:BtoBビジネスの拠点としては1996年にDTSがホームオーディオ市場に参入した当初からアジアをとても重要な市場と位置付けています。またコンシューマー製品の市場としても、現在アメリカが非常に厳しい中で、アジアの方が活気があると感じています。最終的にエンドユーザーにDTS対応機器を購入していただかなければいけないので、やはり重要な地域だという認識です。
ーーコンシューマー市場で伸びていると感じる製品はどのような分野でしょうか。
Towne氏:薄型テレビはどの地域でも伸びてますが、特に中国での成長率は高いと感じています。またPCも伸びが大きいジャンルです。我々にとって重要なホームシアター製品は、アメリカでクリスマス商戦期に100ドルを切る低価格のBDプレーヤー製品の売上が大幅に伸びると期待しています。
■DTS本社が本格的な施設を完備した新社屋に移転
ーー今年、DTS本社が新社屋に移転されたと伺っていますが。
Towne氏:DTSは数人の社員によるベンチャービジネスからはじまって、その後の成長とともにオフィスを移転しましたが、1つの場所に収まりきれず社員は3つの建物に分散していました。2008年末にNeural Audioを傘下に入れ社員も増えたこともあり、今回は大きな建物を購入し、最新設備を整えました。また社内に完備するリスニングルームはどんなチャンネルでもレイアウトを変更できる仕様にしたり、レコーディングスタジオのようにフローティングの構造にするなどこだわって設計しています。社員だけでなく訪れた方にも満足いただけるような社屋になりました。
ーー圧縮音源のエンコード、デコード技術を保有するNeural Audio社が加わったことで、DTSの技術力がいっそう強化されました。
Towne氏:現在当社は高い技術力を持ったエンジニアを多く抱えています。その中にはNeural AudioのChief Scientist、James Johnsonのような多彩な経験と実績を持ったエンジニアもいます。彼はベル研究所に25年間在籍しトランジスタの原理の開発にも携わった著名なエンジニアで、AESのフェローも務めています。
もう一人のキーパーソンは、2009年よりDTSに入社したSenior Director, Audio ProcessingのJean-Marc Jotです。そのほかにもサウンドプロセッシング技術において世界で5本の指に入るような優秀な技術者がDTSには在籍しています。
■“ベスト・イン・クラス”への取り組み
−PC、モバイル、ネットワークプレーヤー・・・など多様な分野で参入を狙う
Towne氏:BDの技術だけをみても、我々は「DTS-HD Master Audio」からセカンダリーオーディオである「DTS Express」の技術まで、幅広くカバーしています。そして「DTS-HD Master Audio」はBDというメディアの枠を越えたキャパシティーを備えており、チャンネル数や転送レートをまだまだ伸ばすことが可能です。
そんな中でDTSはこれまでハイクオリティなオーディオコンプレッション技術、そしてBDの周辺技術といったクオリティ第一のブランドバリューを築きあげてきましたが、どんなアプリケーションでもマルチチャンネル再生する際の問題を取り除いて最適化するという技術を手に入れたことで、BDやDVDに限らずアプリケーションを増やすことができるようになりました。
こうした技術を活用し、次のステップとして、“ベスト・イン・クラス”というキーワードを掲げて、あらゆる領域で最高品位の音質を提供するという取り組みに力を入れていき、ビジネスをマスマーケットにも拡大していきます。
店頭で目立つような仕掛けになっていて製品購入したものの、家で30分くらい聴いてみて違和感を覚えた、というようなものではいけません。あくまでクオリティにこだわり、どんな環境下でも再生を最適化する技術を我々は提供していきます。
ーーPCでの高音質再生を目的とした「DTS Premium Suite」も“ベスト・イン・クラス”の思想に基づいて開発されたものですね。
Towne氏:PC向けにあらゆるDTS技術を提供できるようひとつにパッケージ化した「DTS Premium Suite」など、PCやモバイル製品といった新たな分野でも展開しています。また近年エンタテイメントのソフトウェアの形や再生方法が根本的に変わりつつある中で、デジタルオーディオプレーヤーやネットワークオーディオ、iPodドック搭載システムなどの製品への対応も期待できると考えています。
圧縮音源の技術では、MP3やWMAといったステレオソースをマルチチャンネルで再生することができる「DTS Neural DICE(Dynamic Image Control Enhancement)」という新技術に最も可能性を感じています。
ーーこれらの技術を搭載した製品はいつ頃出てくるのでしょうか。
Towne氏:一気に多ジャンルに拡大していくのは難しいですが、現在優先順位を決めてパートナーの方々と慎重に製品化を検討しているところです。
■欧州でのアプローチ − IPTVでDTSのプレゼンスが突出してくる
ーーLloydさんに伺います。欧州ではどのようなDTS技術や製品ジャンルが注目されているのでしょうか。
Len Lloyd氏(以下、Lloyd氏):欧州はハイエンド製品が強い市場で、カーオーディオでもホームオーディオ分野でもDTSの技術は高く評価されています。また新しい分野でも欧州に標準策定のイニシアチブがあるIPTVなどの分野でこれからDTSのプレゼンスが必ず突出してくるでしょう。
2003年からHDオーディオというクオリティ指向の技術を訴求してきて、これからはDLNAやIPTVといったネットワーク系にアプローチしていく次の段階に入っています。このような新しい領域にDTS技術をどのように搭載していくかがキーとなります。
■究極の目的はどんな環境の方にもベストな音質で聴いてもらうこと
− 新しい取り組みも画策中
Towne氏:DTSの技術は制作者がスタジオで聴いているマスター音源をエンドユーザーにも同じクオリティで届けたいという発想が原点にあります。はっきりとはまだお伝えできないのですが、現在、我々が進めているプロジェクトでは、このエンドユーザーへ届ける過程を根本的に変えるようなことを構想しています。ただ、マスタークオリティに近づけるというコンセプトに変わりはありません。
ーー今年のCESで11.1ch再生のデモを披露されていらっしゃいましたが、その技術に関連したものなのでしょうか。
Towne氏:チャンネル数を増やすこということだけでは最終的な解決にはなりません。我々の究極の目的はどんな環境の方にもベストな音質で聴いてもらいたいということであり、それはチャンネルをどのように配置するか、いくつ配置するか、ということとは別の話です。各々のライフスタイルにあった最適なソリューションを提供していたいと考えています。
ーーその技術はCES 2010で発表されるのでしょうか。
Towne氏:現在ある技術のカテゴリーで新しい製品が出展されることはあるかもしれませんが、今お話した内容はまだ公の場でお見せする段階には到達していません。具体的なリリース時期についてもお話できませんが、ぜひ今後に期待していてください。
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