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公開日 2016/11/02 14:49

ESS Technologyの技術幹部に聞く、新フラグシップDAC「ES9038PRO」進化のポイント

ES9028PROとのちがいも解説
島幸太郎(OPPO Digital Japan/エミライ)
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「ES9038PRO」と「ES9028PRO」のちがいとは?

ーー 今回PROシリーズではフラグシップ製品である「ES9038PRO」と「ES9028PRO」が注目されていますが、この2製品はどのように異なるのでしょうか。

Forman氏 「ES9018S」をDACチップとして採用するメーカーの中には、このDACチップをチャンネルあたり複数枚使用して性能向上を図る手法を採るところもあります。我々は携帯向けのDACチップとして大変好評を博した「ES9018K2M」を開発した際にDACを小型化する技術を確立することができましたので、この技術を駆使して同様のアプローチをワンチップで実現することにしました。

ES9038PROとES9028PRO

「ES9038PRO」は「ES9018S」同様8ch DACであることには変わりありませんが、チャンネルあたり4つのDACを内蔵しており、合計32個のDACを内蔵しています。ですので、仮に「ES9038PRO」をステレオ・モードで使った場合には、チャンネルあたり16個のDACを並列動作させることになります。

これに対して、「ES9028PRO」はチャンネルあたり1つのDACを内蔵しています。この内蔵DACの数の違いでお分かりのように、「ES9018S」の後継機種は「ES9028PRO」になります。

なお、実際のところ「ES9038PRO」と「ES9028PRO」との間にはパッケージの違いはなく、「ES9038PRO」に内蔵されているDACの3/4の機能を停止させているものが「ES9028PRO」になります。ですので、両者について内蔵するDACの数以外の部分での技術的な違いはありません。

先日開催された「音のサロン」に参考出展されたexaSound「e32」(写真中央)は、ES9028PROを採用する

ーー DAC内蔵数の多さが非常に印象に残る「ES9038PRO」ですが、これはどういった製品で使われることを想定しているのでしょうか。

Forman氏 「ES9038PRO」はエンスージアスト向けのD/Aコンバーター製品に搭載されることを想定して設計されています。これまでのD/Aコンバーターの音質的限界を突破し、次のステージに到達することを目標として開発が進められました。

繰り返しになりますが、「ES9018S」との互換性を重視して設計したものが「ES9028PRO」になります。これに対し、「ES9038PRO」は先にご説明したとおり内蔵DACの数が4倍になっている関係で、従来「ES9018S」を採用していた製品のチップからそのまま置き換えるということはできません。

これはSabre DACチップが電流出力型であることに起因します。「ES9038PRO」は「ES9018S」と比べて出力電流が大きいため、「ES9018S」用に設計されたI/V変換回路の場合、電流供給能力を超えてしまって、信号が歪むあるいは破損してしまう可能性があるためです。これを解決するには、チャンネルごとにI/V変換回路を用意して、その出力を再度合成するか、新規に非常に強力なアンプを持つI/V変換回路を設計するしかありません。

ーー 今回のPROシリーズは一見どの部分が進化したのかがわかりにくい印象を持たれた方もいらっしゃるかもしれませんが、お話を伺っていると順当な進化を遂げた製品であるように思います。

Forman氏 その通りです。測定用機材の限界の問題もあり、すでにSabre DACは静特性については従来製品との違いが見かけ上わかりにくくなっています。

今回のPROシリーズは特に動特性を重視して設計しており、Sシリーズと比較すると、PROシリーズは音場の奥行き感が顕著に改善されたサウンドに仕上がっています。日本のオーディオファンの皆さんにも実際に聴いていただき、確かな音質の向上を体験いただけたら嬉しく思います。

ーー 本日はありがとうございました。

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