公開日 2019/06/13 16:32
DIATONE復活からまもなく2年。既成概念に縛られないアプローチでさらなる浸透と躍進を誓う
担当者・佐藤岳氏に訊く
2017年9月、大きな話題を集め、18年振りの復活を遂げたDIATONEスピーカーシステム。往年のDIATONEファン、そして、新しいDIATONEファンに迎えられ、2年を経て得たのは大きな自信。新しいDIATONEの音を聴くことができたオーディオファンはまだ一握り。期待の声に応えるべく、一歩ずつ着実に試聴する機会を広げていくというDIATONEのこれからについて、(株)三菱電機ライフネットワークの佐藤岳氏から伺った。
佐藤 岳氏 Takeshi Satoh
株式会社三菱電機ライフネットワーク
商事統括部 担当部長
Profile 1961年2月25日生まれ。神奈川県出身。1989年 三菱電機入社、1995年 京都製作所に配属、プロジェクターの企画、営業に長年にわたり携わる。2014年より4K TV、2017年よりDIATONEを兼務。2019年1月 三菱電機ライフネットワークに出向、DIATONE担当。
■心配無用!スピーカー設計技術に衰えナシ
―― 2017年秋のDIATONE復活劇からまもなく2年になります。2005年に三菱電機エンジニアリングから1本100万円と高額な「DS-MA1」の発売が直販のみでありましたが、それを除けば1999年の撤退から18年振りの再参入となります。その背景について改めてお聞かせください。
佐藤 2017年8月に、DIATONEスピーカーシステム「DS-4NB70」(1本60万円)を正式に発表し、翌9月より販売を開始しました。DS-4NB70には独自開発の「NVC振動板」の最新世代となる「NCV-R振動板」を搭載しています。NCV振動板を初採用したのは2011年のことです。カーオーディオ担当の三田製作所から当時の材料研究所(現・先端技術総合研究所)に一から開発を依頼したもので、今回、DIATONEスピーカー復活にあたり、ブランドのレゾンデートルである振動板には一番いいものを使おうと、第4世代にあたるNCV-R振動板を採用しました。モデルナンバー「DS-4NB70」の“4”には、4世代目のNCVという意味が込められています。
NCV-R振動板ができた2016年の秋には、カーオーディオ「DIATONE SOUND NAVI」で、「DS-SA10000」として商品化されました。実はその頃から、この新しい振動板を使って何か新しいことができないかとの検討が進められ、その選択肢のひとつがハイファイオーディオの再立ち上げでした。
ゴールまでには紆余曲折があり、「三菱電機」ではなく、DIATONEのスピーカー設計を手掛ける原宏造氏が在籍する「三菱電機エンジニアリング」からの発売となりました。同社はカーオーディオの基礎設計などを手掛け、車載用スピーカーのユニット設計もずっと行っており、技術が錆びつくことなく継続できていたことはとてもラッキーでした。スピーカーの設計は電気屋ではなく機械屋がメインですから、特にそこには経験値や測定だけでは計り知れない豊富な知見が必要となります。
DIATONEの正当なエンジニアが残る三菱電機エンジニアリングが設計開発を行い、企画や販促など広報活動は、私ども三菱電機ライフネットワークが行います。しかし、ここでひとつ課題となったのは、三菱電機ライフネットワークが対量販店の販売会社であること。すなわち、オーディオ専門店に対するルートがほとんどありませんでした。
昔からのお付き合いで残っていた一部のオーディオ専門店さんの口座も休眠状態で、最終的には、販売後に同時進行でご販売店との契約を進めていく形になりました。予想以上に時間がかかってしまいましたが、ようやく全国数十店にまで整備が進んできました。価格面からもオーディオ専門店さんが主体となる商品ですから、引き続き販路の拡大に努めて参ります。
■分岐点は200時間。エージングで驚くほど進化する
―― 実際に導入を進めてみて、市場からの反響はいかがでしたか。
佐藤 ハイファイオーディオではユーザーの高齢化が相当進んでいますが、私たちがDS-4NB70のメインターゲットとして設定したのは、DIATONEをよくご存じの団塊世代でした。しかし、彼らには彼らなりに抱き続けてきたDIATONEへの想いがあり、我々が再び世に送り出したDS-4NB70との間には“ギャップ”がありました。
DIATONEファンには4つのタイプがあります。「2S-305」「2S-3003」に代表されるNHKモニター派。「P-610」に代表されるフルレンジ派。B4Cピュアボロン振動板を採用する3ウェイブックシェルフ派。そして、それら以外の特に小型2ウェイを好まれる方たちです。それぞれに主義主張が強く、すると、DS-4NB70は“我々のDIATONE”とは違うではないかというわけです。
ただし、中古市場で手に入れ、未だDIATONEを使われている方がたくさんいて、18年振りの復活だったにもかかわらず、「DIATONE」ブランドに対する認知の高さには驚かされると同時に、本当にありがたかったですね。ただし、残念なのは若い人にはまったく知られていないこと。その断絶を解消し、継続していくことも、私たちの大事な使命のひとつだと認識しています。
―― 立ち上がりはご苦労されましたが、約2年という時間の経過には、どのような意味がありましたか。
佐藤 こちらもいろいろなことに慣れてきたし、お客様の間にも理解が深まってきました。イベントでも当初とは違い、もの凄く肯定的な反応なんです。そこでひとつ思い当たる要因が「エージング」です。NCVも駆動系も鳴らし込んでいくほどによくなっていきますが、大きな鍵を握る分岐点が約200時間のところにあるフィルムコンデンサのエージングで、それを過ぎるとぐっと安定感が増してくることがわかりました。この2年弱という月日の間に熟成が進み、店頭でもリファレンスとして毎日使われているモデルはびっくりするくらいいい音がします。
NCVが進化しているポイントのひとつが伝搬速度です。第1世代では約5,000m/s、それが第4世代では6,300m/sです。どうやら6,000m/sくらいがウーファーのスレッショルドで、速くなって凄くよくなります。ところが、従来の紙のような「ドワン」という音ではなく、「ポン」と立ち上がって「ポン」と切れる、これまで聴いたことがない音のため、最初は戸惑いますし、嫌がる人もいて、新素材の評価が分かれがちです。ところがその嫌がっていた人たちも、「最近聴くとなんかいいよね」と言い始めました。それは、熟成が進んだからなんだと僕たちもだいぶわかってきました。
佐藤 岳氏 Takeshi Satoh
株式会社三菱電機ライフネットワーク
商事統括部 担当部長
Profile 1961年2月25日生まれ。神奈川県出身。1989年 三菱電機入社、1995年 京都製作所に配属、プロジェクターの企画、営業に長年にわたり携わる。2014年より4K TV、2017年よりDIATONEを兼務。2019年1月 三菱電機ライフネットワークに出向、DIATONE担当。
■心配無用!スピーカー設計技術に衰えナシ
―― 2017年秋のDIATONE復活劇からまもなく2年になります。2005年に三菱電機エンジニアリングから1本100万円と高額な「DS-MA1」の発売が直販のみでありましたが、それを除けば1999年の撤退から18年振りの再参入となります。その背景について改めてお聞かせください。
佐藤 2017年8月に、DIATONEスピーカーシステム「DS-4NB70」(1本60万円)を正式に発表し、翌9月より販売を開始しました。DS-4NB70には独自開発の「NVC振動板」の最新世代となる「NCV-R振動板」を搭載しています。NCV振動板を初採用したのは2011年のことです。カーオーディオ担当の三田製作所から当時の材料研究所(現・先端技術総合研究所)に一から開発を依頼したもので、今回、DIATONEスピーカー復活にあたり、ブランドのレゾンデートルである振動板には一番いいものを使おうと、第4世代にあたるNCV-R振動板を採用しました。モデルナンバー「DS-4NB70」の“4”には、4世代目のNCVという意味が込められています。
NCV-R振動板ができた2016年の秋には、カーオーディオ「DIATONE SOUND NAVI」で、「DS-SA10000」として商品化されました。実はその頃から、この新しい振動板を使って何か新しいことができないかとの検討が進められ、その選択肢のひとつがハイファイオーディオの再立ち上げでした。
ゴールまでには紆余曲折があり、「三菱電機」ではなく、DIATONEのスピーカー設計を手掛ける原宏造氏が在籍する「三菱電機エンジニアリング」からの発売となりました。同社はカーオーディオの基礎設計などを手掛け、車載用スピーカーのユニット設計もずっと行っており、技術が錆びつくことなく継続できていたことはとてもラッキーでした。スピーカーの設計は電気屋ではなく機械屋がメインですから、特にそこには経験値や測定だけでは計り知れない豊富な知見が必要となります。
DIATONEの正当なエンジニアが残る三菱電機エンジニアリングが設計開発を行い、企画や販促など広報活動は、私ども三菱電機ライフネットワークが行います。しかし、ここでひとつ課題となったのは、三菱電機ライフネットワークが対量販店の販売会社であること。すなわち、オーディオ専門店に対するルートがほとんどありませんでした。
昔からのお付き合いで残っていた一部のオーディオ専門店さんの口座も休眠状態で、最終的には、販売後に同時進行でご販売店との契約を進めていく形になりました。予想以上に時間がかかってしまいましたが、ようやく全国数十店にまで整備が進んできました。価格面からもオーディオ専門店さんが主体となる商品ですから、引き続き販路の拡大に努めて参ります。
■分岐点は200時間。エージングで驚くほど進化する
―― 実際に導入を進めてみて、市場からの反響はいかがでしたか。
佐藤 ハイファイオーディオではユーザーの高齢化が相当進んでいますが、私たちがDS-4NB70のメインターゲットとして設定したのは、DIATONEをよくご存じの団塊世代でした。しかし、彼らには彼らなりに抱き続けてきたDIATONEへの想いがあり、我々が再び世に送り出したDS-4NB70との間には“ギャップ”がありました。
DIATONEファンには4つのタイプがあります。「2S-305」「2S-3003」に代表されるNHKモニター派。「P-610」に代表されるフルレンジ派。B4Cピュアボロン振動板を採用する3ウェイブックシェルフ派。そして、それら以外の特に小型2ウェイを好まれる方たちです。それぞれに主義主張が強く、すると、DS-4NB70は“我々のDIATONE”とは違うではないかというわけです。
ただし、中古市場で手に入れ、未だDIATONEを使われている方がたくさんいて、18年振りの復活だったにもかかわらず、「DIATONE」ブランドに対する認知の高さには驚かされると同時に、本当にありがたかったですね。ただし、残念なのは若い人にはまったく知られていないこと。その断絶を解消し、継続していくことも、私たちの大事な使命のひとつだと認識しています。
―― 立ち上がりはご苦労されましたが、約2年という時間の経過には、どのような意味がありましたか。
佐藤 こちらもいろいろなことに慣れてきたし、お客様の間にも理解が深まってきました。イベントでも当初とは違い、もの凄く肯定的な反応なんです。そこでひとつ思い当たる要因が「エージング」です。NCVも駆動系も鳴らし込んでいくほどによくなっていきますが、大きな鍵を握る分岐点が約200時間のところにあるフィルムコンデンサのエージングで、それを過ぎるとぐっと安定感が増してくることがわかりました。この2年弱という月日の間に熟成が進み、店頭でもリファレンスとして毎日使われているモデルはびっくりするくらいいい音がします。
NCVが進化しているポイントのひとつが伝搬速度です。第1世代では約5,000m/s、それが第4世代では6,300m/sです。どうやら6,000m/sくらいがウーファーのスレッショルドで、速くなって凄くよくなります。ところが、従来の紙のような「ドワン」という音ではなく、「ポン」と立ち上がって「ポン」と切れる、これまで聴いたことがない音のため、最初は戸惑いますし、嫌がる人もいて、新素材の評価が分かれがちです。ところがその嫌がっていた人たちも、「最近聴くとなんかいいよね」と言い始めました。それは、熟成が進んだからなんだと僕たちもだいぶわかってきました。
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