公開日 2023/03/01 06:30
<インタビュー>LG製品と過ごす時間をどこまで濃くできるか。満足度をより深められるブランドへ
VGP2023受賞:LGエレクトロニクス・ジャパン 宇佐美夕佳氏
VGP2023
受賞インタビュー:LGエレクトロニクス・ジャパン
有機ELテレビ史上最小サイズとなる42V型を実現したLGエレクトロニクス「OLED42C2PJA」がVGP2023「批評家大賞」を受賞した。有機ELテレビで9年連続世界シェアNo1を誇り、テレビを上質な “アート作品” へと進化させた「65ART90EJQA」や画面を曲げられるテレビ「LG OLED Flex」などを矢継ぎ早に提案、新しいテレビの価値を訴えた “次なる” 提案にも熱い視線が注がれている。LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社 マーケティング統括責任者・宇佐美夕佳氏にテレビ市場創造へ向けた意気込みを聞く。
LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社
マーケティング統括責任者
宇佐美夕佳氏
プロフィール/FMCG(Fast Moving Consumer Goods)業界にてブランドマネージャー、マーケティングマネージャーを経て、広くマーケティング分野に従事。新規事業の立ち上げを数多く経験した。2008年より家電業界に転身。「お客様の経験価値を高める」「本質を追い求める」ことをモットーにコミュニケーションストーリーを開発、提案し続けている。
―― 有機ELテレビ史上最小サイズとなる42V型を実現した「OLED42C2PJA」がVGP2023「批評家大賞」を受賞されました。おめでとうございます。
宇佐美 栄誉ある賞をいただき、大変光栄です。テレビではご存じの通りサイズアップが世界的に見ても大きなトレンドとなっています。ベゼルが薄くなり、より大きなサイズが設置しやすくなったことはもちろんですが、それ以上にお客様はやはり大画面で得られる体験を優先されているのだと強く実感しています。家電量販店の売り場でも55V型や65V型がセンターに配置されていますが、今年は人気の中心がさらに大型化して、60V型以上へと移行していくのではないかと見ています。LGエレクトロニクスではすでに昨年から、メインストリームを大型へとシフトしました。
そのようななかで、なぜ42V型なのか。2020年から有機ELテレビのラインナップには48V型があり、サイズや予算の関係から、もうひとまわり下のサイズが欲しいというお客様からの声が寄せられていたことも事実です。しかし、それ以上に注目しなければならないテーマがサスティナビリティです。
ライフスタイルも家族構成も様々で、例えばコンパクトなお家に住まわれることを好む方もいて、米国ではトレンドになっていると言います。そうしたなか、インテリアにフィットさせるために42V型というサイズをお選びいただくなど、選択される理由にもこれまでにはなかったいろいろな “気づき” があります。42V型だからといって必ずしも設置性の問題で選ばれる方ばかりではないということです。
コンパクトなお住まいでも75V型を入れたい、プロジェクターで100インチを実現したいと大きなサイズを希望される方もいらっしゃいます。多種多様な要望は、ご自身の生活や人生のなかでどういった空間を創りたいのかという価値観の現れ。そこにお応えしていくための42V型というサイズなのであって、LGエレクトロニクスには42V型から88V型超に至るバリエーションが揃っています。
―― LGエレクトロニクスでは、テレビを上質な “アート作品” へと進化させた「65ART90EJQA」や画面を曲げられるテレビ「LG OLED Flex」など、価値観や目的で選べるこれまでになかったテレビの選択肢を率先して提案されていますね。
宇佐美 「新時代のテレビをつくれ。」をスローガンに、お客様が求める体験に一番フィットする、生活の価値を高めることができる製品を提供させていただいています。部屋の中に大きな黒い画面があることをあまり良しとしない方もいらっしゃって、なかにはテレビを隠している場合もあります。「65ART90EJQA」は立て掛けたキャンバスのように見えるデザインで、web OSに搭載するアートギャラリーに切り替えれば、テレビを見ていない時間にも絵画のようにお部屋の中にフィットさせることができます。
一方、世界中で今、最も熱狂的なゲーミング市場に向けて、画面を曲げることで得られるより高い没入感で、ゲームの世界とのより高い一体感を演出できる製品として投入したのが「LG OLED Flex」です。「こんなテレビを待っていました!」と、ゲームをするときにカーブをかけて使用されているケースが多いようです。もちろん、普通に平面で見ていただくこともできます。
―― 「LG OLED Flex」では発売記念のキャッシュバックキャンペーンを開催されていましたが市場の反響はいかがですか。
宇佐美 LGエレクトロニクスではマスに向けたコミュニケーションというより、ターゲットをより明確にしたアプローチを重視しています。「LG OLED Flex」でターゲットにしたのはゲーム好きの方。指名買いが多いことからも、メッセージはしっかり届けられていると手応えを感じています。製品展示はテレビ売り場だけでなく、ゲームモニターの売り場にも置いていただいています。
「eスポーツ」が急成長しています。家電量販店はもちろん、家具量販店などでもゲーミングコーナーをつくって力を入れています。米国で開催される世界最大級のゲーム展示会「E3」にも代表されるように、高額な賞金がかけられた世界規模の大会が多数開催され、数多くのプロゲーマーが誕生しています。
大きな盛り上がりが加速した背景にあるのが新型コロナウイルスの感染拡大です。不特定多数の人と世界観を楽しむことを後押する役割を果たしました。その典型と言えるのがゲームで、 “あつ森”(あつまれ どうぶつの森)は世界的に大ヒットしました。セキュリティが守られ、ハンドルネームだけで楽しめ、チームをつくって仲間と楽しむことができる。スマホで楽しむモバイルゲームとは一線を画すもので、また、プレイをして楽しむ人だけでなく、プレイ動画を見て楽しむ人が多いことも特徴です。スポーツ観戦と一緒ですね。今後の有望市場として注目しています。
―― 1年半前のインタビューで、コロナ禍では消費者の「自分はこうしたい」とのこだわりが浮き彫りになり、自分軸での判断力を身に着けたお客様へ、メーカーからの声も以前に増して届きやすくなったとのお話をいただきました。テレビを取り巻く現在の変化についてはどのように捉えていらっしゃいますか。
宇佐美 “テレビ”を本当に“テレビ”として捉えているのか。放送波を受信する単なる受像機ではもはやありません。LGエレクトロニクスではいち早くスマートテレビに軸足を移しましたが、その特徴のひとつでもあるマジックリモコンに対しても、導入当初と比較すると、「大変使いやすい」との意見が老若男女を問わずに増えています。スマホ同様、感覚的に操作できてしまうことを凄く楽に感じていただいていて、世の中の潮流がようやくマッチしてきた印象です。
これからの時代の家電の大事なポイントはカスタマイズやアクセスビリティです。AIアシスタントを搭載して、対話型で音声操作ができるスマートスピーカーが生活のなかに自然に溶け込んでいるように、同じようにテレビに話しかけて電源を入れたり、操作をしたりするのがもはや当たり前とも言える世界にわたしたちは生きています。今はまだいろいろな設定が必要になりますが、昨年発売したモデルでは、メニューの順番を変えるなどパーソナルな設定が行えるようになっています。今後、どのような進化を見せるのか。レコメンドしてくれたりするようになったら面白いですね。
―― サブスクの音楽配信サービスなどではすでに始まっていますね。
宇佐美 スマホの普及により、カメラやポータブルオーディオプレーヤーは市場が縮小して、「スマホに取って代わられた」と言われますが、テレビはスマホに取って代わることなく、きちんと役割を持たすことができます。パーソナルではない、“皆で楽しめること” がやはり大きな強みとなっています。
批評家大賞をいただいた「OLED42C2PJA」も、マーケティングのフレーズとしては42V型というサイズから「パーソナルテレビ」という言い方をしています。言葉の意味合いとしては狭い空間をイメージさせますが、実際には何人かで集まって見ても十分に大きな画面サイズです。楽しみ方はそれぞれに自由で、LGエレクトロニクスの最近のテレビも本当に “自由なテレビ” だなと感じています。それは市場が求めているひとつの目指すべき方向なのではないかと思います。
―― 家電量販店のテレビ売り場に目を向けると、液晶、有機EL、mini LEDが比較試聴できるスペースを設けるところが増えてきました。
宇佐美 有機ELが市場ではかなり浸透してきましたが、まだ少なからず抵抗を持たれている方もいらっしゃいます。有機ELと液晶との比較では、消費電力はすでに有機ELの方が低くなっていて、ご販売店様や私どもの販売員(ヘルパー)はその点は十分に理解していますので、お客様にわかりやすく説明を差し上げています。よく指摘される画面の暗さについても、LGエレクトロニクスでは「LG OLED evo」という新世代のパネルを搭載し、この課題もすでに解消しています。
映画は全然見ないで地上波の番組ばかり、価格もできるだけ抑えたいと希望するのであれば、今は液晶の方が賢い選択だと思います。しかし、リビングなどで日中の明るい部屋で主に楽しみたいから液晶を選ぶという選択は、必ずしも正しくはありません。
―― コロナを契機にして、お客様も事前にいろいろネットで調べた上で来店されるようになり、店頭での滞在時間が短くなったという声を販売店からよくお聞きします。
宇佐美 わからないポイントを事前にしっかりと整理して来店されるお客様が確かに多くなっています。その疑問に対してきちんとお答えできることが大事で、LGエレクトロニクス製品に対するトレーニングはすべてのご販売店様で実施させていただいています。お客様のライフシーンにどれだけ溶け込ます提案ができるかですね。
サイズも事前に決めて来られるケースが目立ちますが、例えば55V型を予定されていたとして、実は20センチほど延ばすだけで65V型が置けてしまいます。実際に店頭で確かめてアップグレードされる例も少なくありません。これから10年使うことを考え、大画面モデルをお買い求めになる傾向が見受けられます。
日本のお客様で少し気になる点は、アプリが多ければいいと思いがちなことですね。何が大事な機能なのかをきちんと整理した上で買い物をされることをお薦めします。海外では映像配信でもスマホからミラーリングで飛ばせば十分と考える方もいます。ご自身の使い方に合わせて納得できることが一番大事なポイントです。
―― だんだんと店頭にお客様も戻りつつあります。そうしたことを実際に自分の目や耳で確認する意味からも、店頭は重要なタッチポイントになりますね。
宇佐美 テレビの音質の違いを訴求する場面も目にする機会が増えました。しかし、店頭の大音量そのままに家で聴けるケースなどほとんどないと思います。映像も店頭に適した明るいモードで見せていますし、そうした点も考慮して、ぜひご検討いただきたいですね。
われわれの販売員は店頭と自宅での異なる環境による見え方や聴こえ方の違いもきちんと説明するようにしています。クルマは試乗することができますが、テレビは自宅に持ち帰って試し見することはできないですから。
―― 2023年に向けたテレビ事業への意気込みをお願いします。
宇佐美 LGエレクトロニクスは、お客様がライフスタイルで目指す価値の向上を、マーケティング活動や製品展開を通して力強く支えていきます。われわれLGは「Life's Good」というスローガンを掲げていますが、それはまさに、お客様の生活がより豊かになるように、より願ったものになるようにとの想いが込められています。
“もの消費・こと消費” などと言われて久しいですが、今ではまったく使われなくなりました。それは、自分が身を置いている空間でどのように充実した時間を過ごすことができるのか、その濃度が問われているからだと思います。
われわれは家電メーカーですから、時短を実現する製品やエンタメを謳歌できる製品を提供することで、お客様がその体験を通してどれだけ生活の密度を高めていただけるのか。我々のブランドと過ごしていただく時間をどこまで濃くして、満足度をより深めていただけるかにチャレンジしていきます。
お客様がクリエイティブにご自身の生活に取り入れ、工夫していただくことで、もっと楽しく便利になる新規性やユニークさを備えた、LGならではという切り口からの提案を、これから2023年に発売、発表するモデルに搭載して参ります。ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。
受賞インタビュー:LGエレクトロニクス・ジャパン
有機ELテレビ史上最小サイズとなる42V型を実現したLGエレクトロニクス「OLED42C2PJA」がVGP2023「批評家大賞」を受賞した。有機ELテレビで9年連続世界シェアNo1を誇り、テレビを上質な “アート作品” へと進化させた「65ART90EJQA」や画面を曲げられるテレビ「LG OLED Flex」などを矢継ぎ早に提案、新しいテレビの価値を訴えた “次なる” 提案にも熱い視線が注がれている。LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社 マーケティング統括責任者・宇佐美夕佳氏にテレビ市場創造へ向けた意気込みを聞く。
LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社
マーケティング統括責任者
宇佐美夕佳氏
プロフィール/FMCG(Fast Moving Consumer Goods)業界にてブランドマネージャー、マーケティングマネージャーを経て、広くマーケティング分野に従事。新規事業の立ち上げを数多く経験した。2008年より家電業界に転身。「お客様の経験価値を高める」「本質を追い求める」ことをモットーにコミュニケーションストーリーを開発、提案し続けている。
■設置上の制限から42V型を選んでいるとは限らない
―― 有機ELテレビ史上最小サイズとなる42V型を実現した「OLED42C2PJA」がVGP2023「批評家大賞」を受賞されました。おめでとうございます。
宇佐美 栄誉ある賞をいただき、大変光栄です。テレビではご存じの通りサイズアップが世界的に見ても大きなトレンドとなっています。ベゼルが薄くなり、より大きなサイズが設置しやすくなったことはもちろんですが、それ以上にお客様はやはり大画面で得られる体験を優先されているのだと強く実感しています。家電量販店の売り場でも55V型や65V型がセンターに配置されていますが、今年は人気の中心がさらに大型化して、60V型以上へと移行していくのではないかと見ています。LGエレクトロニクスではすでに昨年から、メインストリームを大型へとシフトしました。
そのようななかで、なぜ42V型なのか。2020年から有機ELテレビのラインナップには48V型があり、サイズや予算の関係から、もうひとまわり下のサイズが欲しいというお客様からの声が寄せられていたことも事実です。しかし、それ以上に注目しなければならないテーマがサスティナビリティです。
ライフスタイルも家族構成も様々で、例えばコンパクトなお家に住まわれることを好む方もいて、米国ではトレンドになっていると言います。そうしたなか、インテリアにフィットさせるために42V型というサイズをお選びいただくなど、選択される理由にもこれまでにはなかったいろいろな “気づき” があります。42V型だからといって必ずしも設置性の問題で選ばれる方ばかりではないということです。
コンパクトなお住まいでも75V型を入れたい、プロジェクターで100インチを実現したいと大きなサイズを希望される方もいらっしゃいます。多種多様な要望は、ご自身の生活や人生のなかでどういった空間を創りたいのかという価値観の現れ。そこにお応えしていくための42V型というサイズなのであって、LGエレクトロニクスには42V型から88V型超に至るバリエーションが揃っています。
■ゲーマー待望!画面が曲げられるテレビ「LG OLED Flex」
―― LGエレクトロニクスでは、テレビを上質な “アート作品” へと進化させた「65ART90EJQA」や画面を曲げられるテレビ「LG OLED Flex」など、価値観や目的で選べるこれまでになかったテレビの選択肢を率先して提案されていますね。
宇佐美 「新時代のテレビをつくれ。」をスローガンに、お客様が求める体験に一番フィットする、生活の価値を高めることができる製品を提供させていただいています。部屋の中に大きな黒い画面があることをあまり良しとしない方もいらっしゃって、なかにはテレビを隠している場合もあります。「65ART90EJQA」は立て掛けたキャンバスのように見えるデザインで、web OSに搭載するアートギャラリーに切り替えれば、テレビを見ていない時間にも絵画のようにお部屋の中にフィットさせることができます。
一方、世界中で今、最も熱狂的なゲーミング市場に向けて、画面を曲げることで得られるより高い没入感で、ゲームの世界とのより高い一体感を演出できる製品として投入したのが「LG OLED Flex」です。「こんなテレビを待っていました!」と、ゲームをするときにカーブをかけて使用されているケースが多いようです。もちろん、普通に平面で見ていただくこともできます。
―― 「LG OLED Flex」では発売記念のキャッシュバックキャンペーンを開催されていましたが市場の反響はいかがですか。
宇佐美 LGエレクトロニクスではマスに向けたコミュニケーションというより、ターゲットをより明確にしたアプローチを重視しています。「LG OLED Flex」でターゲットにしたのはゲーム好きの方。指名買いが多いことからも、メッセージはしっかり届けられていると手応えを感じています。製品展示はテレビ売り場だけでなく、ゲームモニターの売り場にも置いていただいています。
「eスポーツ」が急成長しています。家電量販店はもちろん、家具量販店などでもゲーミングコーナーをつくって力を入れています。米国で開催される世界最大級のゲーム展示会「E3」にも代表されるように、高額な賞金がかけられた世界規模の大会が多数開催され、数多くのプロゲーマーが誕生しています。
大きな盛り上がりが加速した背景にあるのが新型コロナウイルスの感染拡大です。不特定多数の人と世界観を楽しむことを後押する役割を果たしました。その典型と言えるのがゲームで、 “あつ森”(あつまれ どうぶつの森)は世界的に大ヒットしました。セキュリティが守られ、ハンドルネームだけで楽しめ、チームをつくって仲間と楽しむことができる。スマホで楽しむモバイルゲームとは一線を画すもので、また、プレイをして楽しむ人だけでなく、プレイ動画を見て楽しむ人が多いことも特徴です。スポーツ観戦と一緒ですね。今後の有望市場として注目しています。
■カスタマイズやアクセスビリティが家電には欠かせない
―― 1年半前のインタビューで、コロナ禍では消費者の「自分はこうしたい」とのこだわりが浮き彫りになり、自分軸での判断力を身に着けたお客様へ、メーカーからの声も以前に増して届きやすくなったとのお話をいただきました。テレビを取り巻く現在の変化についてはどのように捉えていらっしゃいますか。
宇佐美 “テレビ”を本当に“テレビ”として捉えているのか。放送波を受信する単なる受像機ではもはやありません。LGエレクトロニクスではいち早くスマートテレビに軸足を移しましたが、その特徴のひとつでもあるマジックリモコンに対しても、導入当初と比較すると、「大変使いやすい」との意見が老若男女を問わずに増えています。スマホ同様、感覚的に操作できてしまうことを凄く楽に感じていただいていて、世の中の潮流がようやくマッチしてきた印象です。
これからの時代の家電の大事なポイントはカスタマイズやアクセスビリティです。AIアシスタントを搭載して、対話型で音声操作ができるスマートスピーカーが生活のなかに自然に溶け込んでいるように、同じようにテレビに話しかけて電源を入れたり、操作をしたりするのがもはや当たり前とも言える世界にわたしたちは生きています。今はまだいろいろな設定が必要になりますが、昨年発売したモデルでは、メニューの順番を変えるなどパーソナルな設定が行えるようになっています。今後、どのような進化を見せるのか。レコメンドしてくれたりするようになったら面白いですね。
―― サブスクの音楽配信サービスなどではすでに始まっていますね。
宇佐美 スマホの普及により、カメラやポータブルオーディオプレーヤーは市場が縮小して、「スマホに取って代わられた」と言われますが、テレビはスマホに取って代わることなく、きちんと役割を持たすことができます。パーソナルではない、“皆で楽しめること” がやはり大きな強みとなっています。
批評家大賞をいただいた「OLED42C2PJA」も、マーケティングのフレーズとしては42V型というサイズから「パーソナルテレビ」という言い方をしています。言葉の意味合いとしては狭い空間をイメージさせますが、実際には何人かで集まって見ても十分に大きな画面サイズです。楽しみ方はそれぞれに自由で、LGエレクトロニクスの最近のテレビも本当に “自由なテレビ” だなと感じています。それは市場が求めているひとつの目指すべき方向なのではないかと思います。
■お客様のライフシーンにどれだけ溶け込ます提案ができるか
―― 家電量販店のテレビ売り場に目を向けると、液晶、有機EL、mini LEDが比較試聴できるスペースを設けるところが増えてきました。
宇佐美 有機ELが市場ではかなり浸透してきましたが、まだ少なからず抵抗を持たれている方もいらっしゃいます。有機ELと液晶との比較では、消費電力はすでに有機ELの方が低くなっていて、ご販売店様や私どもの販売員(ヘルパー)はその点は十分に理解していますので、お客様にわかりやすく説明を差し上げています。よく指摘される画面の暗さについても、LGエレクトロニクスでは「LG OLED evo」という新世代のパネルを搭載し、この課題もすでに解消しています。
映画は全然見ないで地上波の番組ばかり、価格もできるだけ抑えたいと希望するのであれば、今は液晶の方が賢い選択だと思います。しかし、リビングなどで日中の明るい部屋で主に楽しみたいから液晶を選ぶという選択は、必ずしも正しくはありません。
―― コロナを契機にして、お客様も事前にいろいろネットで調べた上で来店されるようになり、店頭での滞在時間が短くなったという声を販売店からよくお聞きします。
宇佐美 わからないポイントを事前にしっかりと整理して来店されるお客様が確かに多くなっています。その疑問に対してきちんとお答えできることが大事で、LGエレクトロニクス製品に対するトレーニングはすべてのご販売店様で実施させていただいています。お客様のライフシーンにどれだけ溶け込ます提案ができるかですね。
サイズも事前に決めて来られるケースが目立ちますが、例えば55V型を予定されていたとして、実は20センチほど延ばすだけで65V型が置けてしまいます。実際に店頭で確かめてアップグレードされる例も少なくありません。これから10年使うことを考え、大画面モデルをお買い求めになる傾向が見受けられます。
日本のお客様で少し気になる点は、アプリが多ければいいと思いがちなことですね。何が大事な機能なのかをきちんと整理した上で買い物をされることをお薦めします。海外では映像配信でもスマホからミラーリングで飛ばせば十分と考える方もいます。ご自身の使い方に合わせて納得できることが一番大事なポイントです。
―― だんだんと店頭にお客様も戻りつつあります。そうしたことを実際に自分の目や耳で確認する意味からも、店頭は重要なタッチポイントになりますね。
宇佐美 テレビの音質の違いを訴求する場面も目にする機会が増えました。しかし、店頭の大音量そのままに家で聴けるケースなどほとんどないと思います。映像も店頭に適した明るいモードで見せていますし、そうした点も考慮して、ぜひご検討いただきたいですね。
われわれの販売員は店頭と自宅での異なる環境による見え方や聴こえ方の違いもきちんと説明するようにしています。クルマは試乗することができますが、テレビは自宅に持ち帰って試し見することはできないですから。
―― 2023年に向けたテレビ事業への意気込みをお願いします。
宇佐美 LGエレクトロニクスは、お客様がライフスタイルで目指す価値の向上を、マーケティング活動や製品展開を通して力強く支えていきます。われわれLGは「Life's Good」というスローガンを掲げていますが、それはまさに、お客様の生活がより豊かになるように、より願ったものになるようにとの想いが込められています。
“もの消費・こと消費” などと言われて久しいですが、今ではまったく使われなくなりました。それは、自分が身を置いている空間でどのように充実した時間を過ごすことができるのか、その濃度が問われているからだと思います。
われわれは家電メーカーですから、時短を実現する製品やエンタメを謳歌できる製品を提供することで、お客様がその体験を通してどれだけ生活の密度を高めていただけるのか。我々のブランドと過ごしていただく時間をどこまで濃くして、満足度をより深めていただけるかにチャレンジしていきます。
お客様がクリエイティブにご自身の生活に取り入れ、工夫していただくことで、もっと楽しく便利になる新規性やユニークさを備えた、LGならではという切り口からの提案を、これから2023年に発売、発表するモデルに搭載して参ります。ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。
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