公開日 2023/12/06 06:40
【インタビュー】アキュフェーズ、趣味の製品として最大限の高付加価値を追求し、お客様にお届けし続ける
オーディオ銘機賞2024 受賞:アキュフェーズ 鈴木雅臣氏
オーディオ銘機賞2024
受賞インタビュー:アキュフェーズ
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定する一大アワード「オーディオ銘機賞2024」において、アキュフェーズの純A級ステレオパワーアンプ「A-80」が金賞を受賞した。エンドユーザーとの対面での接点活動がいよいよ本格化している今年、数々のこだわりのもと具現化した製品群を世に送り出すアキュフェーズ、同社の鈴木社長が受賞に際しての思いを語る。
アキュフェーズ株式会社 代表取締役社長
鈴木雅臣氏
―― オーディオ銘機賞2024におけるご受賞、誠におめでとうございます。18年連続の金賞受賞となりましたが、あらためて思いをお聞かせいただけますか。
鈴木 栄誉ある賞をいただきまして、誠にありがとうございました。社員一同たいへん喜んでおります。私たちは創業以来、安全に長期間使用でき、良好な音質で音楽を楽しめる製品を作ってきました。それを積み重ねた結果、18回連続もの金賞受賞、多くの製品での受賞という高いご評価につながったかと思っています。これからもオーディオ文化の発展に尽くすとともに、お客様に愛される製品を作ってまいります。
―― 金賞受賞モデルのA-80につきまして、概要と訴求のポイントをお聞かせいただけますか。
鈴木 A-80は、2018年に発売したA級ステレオパワーアンプA-75の後継機です。昨年発売した50周年記念モデルのA級モノラルパワーアンプ「A-300」のステレオバージョンで、電子回路の構成は、A-300をそのまま受け継いでいます。
開発の課題は、パワーアンプの増幅方式であるA級動作で増幅する領域の拡大でした。A級領域を広くすると発熱が大きくなり、製品の安全性や信頼性に影響を与えます。A-80のパワーアンプの最終段では、半導体素子MOS-FETを10個並列動作させますので、この半導体素子を厳密に選別して各素子に流れる電流のばらつきを抑え、全体の電流を最適化し発熱を下げることができました。
電気的性能もA-75から向上しています。出力雑音は7%低くなり、スピーカーの駆動能力を表すダンピング・ファクタは、保証値こそ1000でA-75と変わりありませんが、実力値は2000を大きく上回る値を実現しています。
―― 半導体素子を厳密に選別したということですが、具体的にはどういうことなのでしょうか。
鈴木 A級アンプとAB級アンプの違いは流れる電流の大きさの違いですが、回路の中で電流の大きさにばらつきがあると、消費電力が大きくなったり小さくなったりします。A級アンプであるA-80は、MOS-FETが上下に10個ずつ並んでいてそれぞれ一緒に動きますから、同じ動きにならないと熱も分散できず、故障の原因にもなってしまいます。そこで電流のばらつきを抑えるため、特性の近いMOS-FETを厳密に選別して使用したのです。
半導体素子はシリコン・ウェハーの上に並べて作られ、ウェハー上の近い位置でできたものは同じような特性をもっています。しかしパッケージになって納入された状態では当然ばらけてしまっていますから、特性の似たものを選別して取り出さなくてはなりません。具体的には、MOS-FETを1つずつ測定して、似たような特性をもつものをグループ分けします。A-80では、各グループの中をさらに2つに分けて特性がより揃っている素子を使いました。
―― 部品選びまでもそこまで丁寧に行っておられるのですね。ただ、コロナ禍の中で問題になった半導体不足はその後解消されたのでしょうか。
鈴木 半導体の不足は、まだ解消されません。弊社ではこうして選別するために、MOS-FETについては以前からのたくさんのストックがありますが、一部の半導体は未だに入手しづらい状態です。特にマイクロプロセッサーなどは、2年前に発注していたものが今ようやく入荷されています。まだしばらくはこの様相が続くかと思われますが、お客様にできる限りご迷惑をおかけしないよう最善を尽くしてまいります。
―― 銀賞を受賞された「DP-770」は、一体型SACDプレーヤーの新しいフラグシップモデルですね。
鈴木 DP-770は、2021年に発売した50周年記念モデルのセパレート型SACDプレーヤー・システム「DP-1000」、「DC-1000」を一体化するという設計思想で開発しました。現在のデジタル音楽ソースは多様化しているので、ディスクから情報を読み出す能力に加え、外部からの入力に対するD/Aコンバータの高い再生能力が要求されます。
DP-770は、DP-1000に使用したディスク・ドライブ・メカニズムをほぼそのままの形で搭載し、さらに振動解析を徹底してディスクの読み取り能力を高めました。D/Aコンバータ部は、弊社オリジナルの雑音とひずみを打ち消す技術ANCCを搭載するとともに、電源回路などを一新して、DC-1000に迫る雑音特性と低ひずみ率を実現しています。
―― セパレートアンプの「C-2300」、「P-4600」も銀賞受賞となりました。
鈴木 C-2300は、プリアンプ「C-2450」と「C-2150」を統合したモデルですが、内部の回路構成は、上級機「C-2900」と同じボリューム・コントロール回路Balanced AAVAを搭載した完全バランス型で、C-2900に迫る雑音特性を実現しました。4バンドのトーンコントロールを搭載し、音楽の帯域バランス調整の自由度が格段に向上しています。さらに、アナログ・ディスク入力ボード「AD-60」や、デジタル入力ボード「DAC-60」などのオプション・ボードを挿入するスロットを装備し、多様な音源に対応できます。
P-4600は、AB級ステレオ・パワーアンプ「P-4500」の後継機ですが、出力段を強化することで大出力化しています。ダンピング・ファクタの保証値もP-4500より高めたので、低能率スピーカーを含め、どのようなスピーカーも強力に駆動できます。雑音特性も向上しているので、力があるだけではなく、音楽の細やかな表現にも長けています。
―― C-2300、P-4600は最上級モデルとは別の価格帯として、ある程度の制約の中で製品の魅力を出す難しさがあったのではないでしょうか。
鈴木 製品を企画開発する際は、趣味の製品としての付加価値が製品価格を上回ることを常に考えています。たとえば、P-4600には上級機のP-7500と同様の回路が入っていますし、C-2300の中身はC-2900と同様となっており、上級機の技術を搭載して付加価値を高めています。
付加価値を高めればどうしてもコストがかかりますから、製品の企画・設計はどこまで極めるかのせめぎ合いです。けれども、制約があった方がやりがいを感じられるんです。私もかつて設計に携わっていましたが、これはどうしても譲れないといった思いが設計者にはあって、制約の中でも工夫を凝らしてそれを実現させるのが腕のみせどころですね。
また弊社の製品は、10年20年といった長期間の使用に耐える信頼性をもち、修理についても万全の体制を整えています。中古品を入手されたお客様も「セカンドユーザー登録」を利用していただければ、安心して長期間使用していただけます。こういったところにも、高い付加価値を感じていただけると思っております。
―― 昨今はお客様の活動も活発になってきました。今後の販促展開についてお聞かせください。
鈴木 新型コロナの第8波が拡大し始めた昨年の今頃は、冬の商戦の先行きが全く見えない状況でした。今年は、新型コロナウイルスが5類感染症に移行して初めての年末商戦を迎えます。ハイエンド・オーディオ機器の販売促進の基本である、対面でのお客様との対応が、やっと実践できるようになりました。
私が会長を務めております日本インターナショナルオーディオ協議会のイベント「2023東京インターナショナルオーディオショウ」も、おかげさまで大成功でした。これからも各地で行われるオーディオ・ショウやイベント、新製品試聴会などに積極的に参加し、お客様と対面して弊社製品をアピールしていきたいと思います。
―― すばらしい製品も揃い、いよいよ楽しみですね。これからの益々のご活躍を期待しております。
受賞インタビュー:アキュフェーズ
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定する一大アワード「オーディオ銘機賞2024」において、アキュフェーズの純A級ステレオパワーアンプ「A-80」が金賞を受賞した。エンドユーザーとの対面での接点活動がいよいよ本格化している今年、数々のこだわりのもと具現化した製品群を世に送り出すアキュフェーズ、同社の鈴木社長が受賞に際しての思いを語る。
アキュフェーズ株式会社 代表取締役社長
鈴木雅臣氏
■A級動作での増幅領域を拡大、こだわり抜いて完成したA級ステレオパワーアンプ「A-80」
―― オーディオ銘機賞2024におけるご受賞、誠におめでとうございます。18年連続の金賞受賞となりましたが、あらためて思いをお聞かせいただけますか。
鈴木 栄誉ある賞をいただきまして、誠にありがとうございました。社員一同たいへん喜んでおります。私たちは創業以来、安全に長期間使用でき、良好な音質で音楽を楽しめる製品を作ってきました。それを積み重ねた結果、18回連続もの金賞受賞、多くの製品での受賞という高いご評価につながったかと思っています。これからもオーディオ文化の発展に尽くすとともに、お客様に愛される製品を作ってまいります。
―― 金賞受賞モデルのA-80につきまして、概要と訴求のポイントをお聞かせいただけますか。
鈴木 A-80は、2018年に発売したA級ステレオパワーアンプA-75の後継機です。昨年発売した50周年記念モデルのA級モノラルパワーアンプ「A-300」のステレオバージョンで、電子回路の構成は、A-300をそのまま受け継いでいます。
開発の課題は、パワーアンプの増幅方式であるA級動作で増幅する領域の拡大でした。A級領域を広くすると発熱が大きくなり、製品の安全性や信頼性に影響を与えます。A-80のパワーアンプの最終段では、半導体素子MOS-FETを10個並列動作させますので、この半導体素子を厳密に選別して各素子に流れる電流のばらつきを抑え、全体の電流を最適化し発熱を下げることができました。
電気的性能もA-75から向上しています。出力雑音は7%低くなり、スピーカーの駆動能力を表すダンピング・ファクタは、保証値こそ1000でA-75と変わりありませんが、実力値は2000を大きく上回る値を実現しています。
―― 半導体素子を厳密に選別したということですが、具体的にはどういうことなのでしょうか。
鈴木 A級アンプとAB級アンプの違いは流れる電流の大きさの違いですが、回路の中で電流の大きさにばらつきがあると、消費電力が大きくなったり小さくなったりします。A級アンプであるA-80は、MOS-FETが上下に10個ずつ並んでいてそれぞれ一緒に動きますから、同じ動きにならないと熱も分散できず、故障の原因にもなってしまいます。そこで電流のばらつきを抑えるため、特性の近いMOS-FETを厳密に選別して使用したのです。
半導体素子はシリコン・ウェハーの上に並べて作られ、ウェハー上の近い位置でできたものは同じような特性をもっています。しかしパッケージになって納入された状態では当然ばらけてしまっていますから、特性の似たものを選別して取り出さなくてはなりません。具体的には、MOS-FETを1つずつ測定して、似たような特性をもつものをグループ分けします。A-80では、各グループの中をさらに2つに分けて特性がより揃っている素子を使いました。
―― 部品選びまでもそこまで丁寧に行っておられるのですね。ただ、コロナ禍の中で問題になった半導体不足はその後解消されたのでしょうか。
鈴木 半導体の不足は、まだ解消されません。弊社ではこうして選別するために、MOS-FETについては以前からのたくさんのストックがありますが、一部の半導体は未だに入手しづらい状態です。特にマイクロプロセッサーなどは、2年前に発注していたものが今ようやく入荷されています。まだしばらくはこの様相が続くかと思われますが、お客様にできる限りご迷惑をおかけしないよう最善を尽くしてまいります。
■価格を超えた付加価値を追求、絶対の安全性・安心感とともにユーザーの期待に応える
―― 銀賞を受賞された「DP-770」は、一体型SACDプレーヤーの新しいフラグシップモデルですね。
鈴木 DP-770は、2021年に発売した50周年記念モデルのセパレート型SACDプレーヤー・システム「DP-1000」、「DC-1000」を一体化するという設計思想で開発しました。現在のデジタル音楽ソースは多様化しているので、ディスクから情報を読み出す能力に加え、外部からの入力に対するD/Aコンバータの高い再生能力が要求されます。
DP-770は、DP-1000に使用したディスク・ドライブ・メカニズムをほぼそのままの形で搭載し、さらに振動解析を徹底してディスクの読み取り能力を高めました。D/Aコンバータ部は、弊社オリジナルの雑音とひずみを打ち消す技術ANCCを搭載するとともに、電源回路などを一新して、DC-1000に迫る雑音特性と低ひずみ率を実現しています。
―― セパレートアンプの「C-2300」、「P-4600」も銀賞受賞となりました。
鈴木 C-2300は、プリアンプ「C-2450」と「C-2150」を統合したモデルですが、内部の回路構成は、上級機「C-2900」と同じボリューム・コントロール回路Balanced AAVAを搭載した完全バランス型で、C-2900に迫る雑音特性を実現しました。4バンドのトーンコントロールを搭載し、音楽の帯域バランス調整の自由度が格段に向上しています。さらに、アナログ・ディスク入力ボード「AD-60」や、デジタル入力ボード「DAC-60」などのオプション・ボードを挿入するスロットを装備し、多様な音源に対応できます。
P-4600は、AB級ステレオ・パワーアンプ「P-4500」の後継機ですが、出力段を強化することで大出力化しています。ダンピング・ファクタの保証値もP-4500より高めたので、低能率スピーカーを含め、どのようなスピーカーも強力に駆動できます。雑音特性も向上しているので、力があるだけではなく、音楽の細やかな表現にも長けています。
―― C-2300、P-4600は最上級モデルとは別の価格帯として、ある程度の制約の中で製品の魅力を出す難しさがあったのではないでしょうか。
鈴木 製品を企画開発する際は、趣味の製品としての付加価値が製品価格を上回ることを常に考えています。たとえば、P-4600には上級機のP-7500と同様の回路が入っていますし、C-2300の中身はC-2900と同様となっており、上級機の技術を搭載して付加価値を高めています。
付加価値を高めればどうしてもコストがかかりますから、製品の企画・設計はどこまで極めるかのせめぎ合いです。けれども、制約があった方がやりがいを感じられるんです。私もかつて設計に携わっていましたが、これはどうしても譲れないといった思いが設計者にはあって、制約の中でも工夫を凝らしてそれを実現させるのが腕のみせどころですね。
また弊社の製品は、10年20年といった長期間の使用に耐える信頼性をもち、修理についても万全の体制を整えています。中古品を入手されたお客様も「セカンドユーザー登録」を利用していただければ、安心して長期間使用していただけます。こういったところにも、高い付加価値を感じていただけると思っております。
―― 昨今はお客様の活動も活発になってきました。今後の販促展開についてお聞かせください。
鈴木 新型コロナの第8波が拡大し始めた昨年の今頃は、冬の商戦の先行きが全く見えない状況でした。今年は、新型コロナウイルスが5類感染症に移行して初めての年末商戦を迎えます。ハイエンド・オーディオ機器の販売促進の基本である、対面でのお客様との対応が、やっと実践できるようになりました。
私が会長を務めております日本インターナショナルオーディオ協議会のイベント「2023東京インターナショナルオーディオショウ」も、おかげさまで大成功でした。これからも各地で行われるオーディオ・ショウやイベント、新製品試聴会などに積極的に参加し、お客様と対面して弊社製品をアピールしていきたいと思います。
―― すばらしい製品も揃い、いよいよ楽しみですね。これからの益々のご活躍を期待しております。
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