公開日 2015/12/21 12:00
羽生結弦のエキシビション曲「天と地のレクイエム」収録アルバムがハイレゾに。作曲者に印象を聞いた
ベーゼンドルファーによる一発録り
フィギュアスケート2015-2016シーズンで、羽生結弦のプログラムに使用されているピアノ曲「天と地のレクイエム」(3・11東日本大震災 鎮魂曲)。いま話題のこの曲は、作曲家/ピアノ・シンセサイザーアーティストの松尾泰伸氏による作品だ。
本作を含むヒーリングアルバム『rlung Purple/紫のルン』が、12月23日にハイレゾでリリースされることとなった。ベーゼンドルファーによる演奏を一発録りしたという、オーディオファンからも注目すべきタイトルについて、松尾氏ご本人にお話をうかがった。
●ハイレゾでリリースされるにあたって
まずは簡単に、松尾氏のプロフィールをご紹介したい。1982年に大阪芸術大学音楽学科作曲専攻卒業。以降、アジアやヨーロッパでのワールドツアーを行い、1988年にはグループバンド「mar-pa」でメジャーデビューを果たす。1992年からはソロ活動をスタートし、2002年にはインディーズレーベル02MA RECORDSを立ち上げる。精力的に国内外で演奏会を行うほか、ヒーリングミュージック作品を多数リリースしている。
『rlung Purple/紫のルン』は、元は2012年5月に02MA RECORDSより発売されたアルバムだ。この度、本作がハイレゾでリリースされるに至ったのは、「天と地のレクイエム」(3・11東日本大震災 鎮魂曲)が収録されていることもあるが、“ハイレゾ”に相応しい作品であるからこそだろう。
松尾氏:実は、ハイレゾというフォーマットに対して、自分では意識したことがありません。ただ、作品の制作時に、自分が演奏している時に聴こえる音をそのまま録って欲しいという要望をスタッフに伝えていました。そうしてマイクのセッティングなどを工夫し、良い音を求めて録音した結果として、ハイレゾでリリースできるスペック、クオリティであると認めていただけたんです。
ハイレゾでリリースすることに関しては、作品に携わった周りの方々の力がとても大きいと語る松尾氏。しかし、自身の考えとしても、音に対するこだわりはあったという。
松尾氏:演奏家の方は音の粒が録れているかどうかを重視されていることが多いですが、自分は空気感であったり、音の余韻であったり、そういったアンビエントな部分を大事にする、というところはあると思います。それは作曲家であり、演奏者でもあるからこそのこだわりなのかもしれませんね。それもあって、ピアノソロの作品は一発録りとなっています。
楽曲を最もよく理解する作曲者自身だからこそ、楽曲全体を通しての細かなニュアンスを大切に捉えられたのだろう。さて、そんな録音における特徴を持つ松尾氏のピアノソロアルバムだが、もう一つ取り上げるべきポイントがある。それはベーゼンドルファーを使用しているというところだ。
松尾氏:ベーゼンドルファーは、作曲家に好まれる楽器であると聞いたことがあります。最初はベーゼンドルファーを弾いても違いが分かりませんでした。けれど、その後に他のピアノを弾いたら、何かが違うと感じる。具体的にそれがはっきり分かったのは、ベーゼンドルファー社の講習を聞きに行ってですね。ベーゼンドルファーは作りが特殊で、他のピアノとは音の響きが異なるそうなんです。その結果として得られる音のバイブレーションが、自分が感じていた違いでした。これが、作曲家が好む理由になっているように思います。
●比較試聴から感じられた違い
取材時には、CD音源とハイレゾ音源の比較試聴も行われた。そこで松尾氏が述べた感想は、「CDの時より聴きやすくなっている」というものだった。
松尾氏:この作品はピアノらしくない、と言われることがあったんです。ベーゼンドルファーを使用していて、マイクの設置もスタンダードなものではない。普通のピアノの音に慣れている方からすると、違和感があるんですね。自分で聴いても、環境によってですがCD音源はベーゼンドルファーの箱鳴りにザラついた感じがする時があります。それがハイレゾでは、高域が出てきて、薄い層のザラつきが取れて、全体的にクリアになっています。演奏している時に自分が聴いている音に、より近い印象ですね。
記者が『rlung Purple/紫のルン』を聴いて感じるのは、柔らかさだ。スピーカーから、音というより、スタジオの空気が流れだしているような感覚を受ける。演奏されている松尾氏の表情や、感情の起伏までを見つめているような、鮮やかな幻想に包み込まれる。ハイレゾでは、その空気がリアルさを増す印象だ。ピアノとの違いが気になるというより、ベーゼンドルファーが鳴っているということを正しく認識できる。
松尾氏:手間暇を掛けて作り上げた作品が、より良い形で聴いてもらえるということが嬉しいですね。それがハイレゾというものであるのなら、今後もそれを念頭に置いて、活動を行っていきたいと思います。
『rlung Purple/紫のルン』のハイレゾ配信は12月23日にスタートする。同時にレコチョク、iTunes Store等にてCDクオリティの配信も行わるので、聴き比べをしてみるのも面白いだろう。いずれにせよ、その響きとメロディに癒やされることうけあいだ。
■「天と地のレクイエム」
本作を含むヒーリングアルバム『rlung Purple/紫のルン』が、12月23日にハイレゾでリリースされることとなった。ベーゼンドルファーによる演奏を一発録りしたという、オーディオファンからも注目すべきタイトルについて、松尾氏ご本人にお話をうかがった。
●ハイレゾでリリースされるにあたって
まずは簡単に、松尾氏のプロフィールをご紹介したい。1982年に大阪芸術大学音楽学科作曲専攻卒業。以降、アジアやヨーロッパでのワールドツアーを行い、1988年にはグループバンド「mar-pa」でメジャーデビューを果たす。1992年からはソロ活動をスタートし、2002年にはインディーズレーベル02MA RECORDSを立ち上げる。精力的に国内外で演奏会を行うほか、ヒーリングミュージック作品を多数リリースしている。
『rlung Purple/紫のルン』は、元は2012年5月に02MA RECORDSより発売されたアルバムだ。この度、本作がハイレゾでリリースされるに至ったのは、「天と地のレクイエム」(3・11東日本大震災 鎮魂曲)が収録されていることもあるが、“ハイレゾ”に相応しい作品であるからこそだろう。
松尾氏:実は、ハイレゾというフォーマットに対して、自分では意識したことがありません。ただ、作品の制作時に、自分が演奏している時に聴こえる音をそのまま録って欲しいという要望をスタッフに伝えていました。そうしてマイクのセッティングなどを工夫し、良い音を求めて録音した結果として、ハイレゾでリリースできるスペック、クオリティであると認めていただけたんです。
ハイレゾでリリースすることに関しては、作品に携わった周りの方々の力がとても大きいと語る松尾氏。しかし、自身の考えとしても、音に対するこだわりはあったという。
松尾氏:演奏家の方は音の粒が録れているかどうかを重視されていることが多いですが、自分は空気感であったり、音の余韻であったり、そういったアンビエントな部分を大事にする、というところはあると思います。それは作曲家であり、演奏者でもあるからこそのこだわりなのかもしれませんね。それもあって、ピアノソロの作品は一発録りとなっています。
楽曲を最もよく理解する作曲者自身だからこそ、楽曲全体を通しての細かなニュアンスを大切に捉えられたのだろう。さて、そんな録音における特徴を持つ松尾氏のピアノソロアルバムだが、もう一つ取り上げるべきポイントがある。それはベーゼンドルファーを使用しているというところだ。
松尾氏:ベーゼンドルファーは、作曲家に好まれる楽器であると聞いたことがあります。最初はベーゼンドルファーを弾いても違いが分かりませんでした。けれど、その後に他のピアノを弾いたら、何かが違うと感じる。具体的にそれがはっきり分かったのは、ベーゼンドルファー社の講習を聞きに行ってですね。ベーゼンドルファーは作りが特殊で、他のピアノとは音の響きが異なるそうなんです。その結果として得られる音のバイブレーションが、自分が感じていた違いでした。これが、作曲家が好む理由になっているように思います。
●比較試聴から感じられた違い
取材時には、CD音源とハイレゾ音源の比較試聴も行われた。そこで松尾氏が述べた感想は、「CDの時より聴きやすくなっている」というものだった。
松尾氏:この作品はピアノらしくない、と言われることがあったんです。ベーゼンドルファーを使用していて、マイクの設置もスタンダードなものではない。普通のピアノの音に慣れている方からすると、違和感があるんですね。自分で聴いても、環境によってですがCD音源はベーゼンドルファーの箱鳴りにザラついた感じがする時があります。それがハイレゾでは、高域が出てきて、薄い層のザラつきが取れて、全体的にクリアになっています。演奏している時に自分が聴いている音に、より近い印象ですね。
記者が『rlung Purple/紫のルン』を聴いて感じるのは、柔らかさだ。スピーカーから、音というより、スタジオの空気が流れだしているような感覚を受ける。演奏されている松尾氏の表情や、感情の起伏までを見つめているような、鮮やかな幻想に包み込まれる。ハイレゾでは、その空気がリアルさを増す印象だ。ピアノとの違いが気になるというより、ベーゼンドルファーが鳴っているということを正しく認識できる。
松尾氏:手間暇を掛けて作り上げた作品が、より良い形で聴いてもらえるということが嬉しいですね。それがハイレゾというものであるのなら、今後もそれを念頭に置いて、活動を行っていきたいと思います。
『rlung Purple/紫のルン』のハイレゾ配信は12月23日にスタートする。同時にレコチョク、iTunes Store等にてCDクオリティの配信も行わるので、聴き比べをしてみるのも面白いだろう。いずれにせよ、その響きとメロディに癒やされることうけあいだ。
■「天と地のレクイエム」