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公開日 2006/03/31 19:31
東芝・藤井氏が次世代DVDへの急速な事業シフトを宣言 − 質疑応答全掲載
(株)東芝は3月31日、世界で初めてのHD DVDプレーヤーとなる「HD-XA1」を発売した。同日に行われた新製品発表会には同社執行役員上席常務 デジタルメディアネットワーク社社長の藤井美英氏が出席し、HD DVD事業の戦略を語った。
昨今の地上デジタル放送の普及拡大と、ハイビジョン対応テレビの人気が高まり行く環境の中で、一般のユーザー、コンテンツプロバイダーの双方からHD DVDへの期待が高まるのを受け、本日HD-XA1が登場したと藤井氏は語る。
DVDフォーラムによって承認された唯一の次世代規格であるHD DVDのアドバンテージを強く主張する同社は、その優位性のポイントとして、高画質・大容量の魅力を備えながら、既存DVDとの高い互換性を確保し、その技術と製造環境をスピーディーに活用できる点にもあるとする。藤井氏は同社のHD DVDの事業戦略におけるキーワードとして、ユーザーのニーズに的確に応えるべく、現行DVDから次世代DVDへの事業シフトを「急速に実現」させることが大切であると強調した。
HD DVDの需要については30インチ以上の大画面テレビと強く結びついているとする。藤井氏は「DVDがこれだけ一般に普及した今、果たしてHD DVDがどこまで魅力を打ち出していけるのかについては正直私も悩んだが、地デジ放送や大画面テレビが普及し、これだけハイビジョンが必要とされる環境が整備された今、ユーザーは必ずHD DVDを必要とするだろうし、DVDプレーヤーは要らないという方向にさえ進んで行くのではと思っている」と語った。また今後のHD DVDの普及速度については、「今年度はソフトもまだ少ない状態なので急な変化は望めないと見ている。しかしながら、来年からはコンテンツが一気に充実するだろうし、2008年には現行DVDを逆転し、2009年にはプレーヤーとレコーダーでHD DVDが次世代DVD市場の60%を占める勢いが見られるだろう」と予測した。
HD DVDの登場は、国内DVD市場を多様化へと導くだろうというのも同社の予測するところだ。地上デジタル放送への移行が完了する2011年には、ハイビジョンを「高画質で」「長時間」録画するための機器がますます進化し、多様化すると同社はみる。同社が示した予測では、地デジ対応のHDD&HD DVDレコーダーが市場の60%を占め、うち15%は大容量コンテンツのダウンロードにも対応する機種になるとされている。同社は今後の世界的な戦略として、HDDはテラバイトの領域を含む、大容量コンテンツの記録デバイスとして進化させるとともに、HD DVDの高画質エンターテインメント機能も併せ持たせた製品を市場に送り出して行く考えだ。またHD DVDのソフトについては、今年の4月を皮切りに国内でも話題の新作が次々と発売され、年内には100作品以上が揃うだろうと予測する。
藤井氏からはHD DVDの特長とコンセプトについても紹介された。
はじめにHD DVDの再生用ディスクとしての特長について触れた藤井氏は、その「容量」における優位性について改めて指摘した。HD DVDの場合はハイビジョン映像だけでなく、将来的に様々なコンテンツを盛り込んでいくために45GBから60GBの要求が出た場合にも「対応が可能」な強みを持っていると藤井氏は指摘する。その上で「次世代ディスクを巡る論調に“容量のBlu-ray、安価なHD DVD”という評価をされることが多いが、私はこのことを不満に感じている」とした藤井氏は、DVDの技術を活かしながら大容量化を実現できるHD DVDの方が、はるかに柔軟な特長を持っており、大容量化に際しても安定的な対応が可能であると主張した。また、HD DVDでは片面2層のディスクに4.7GBのDVD層と15GBのHD DVD層を持たせた「ツインフォーマットディスク」や、両面2層のディスクに8.5GBのDVD2層と、30GBのHD DVD2層を持たせた「コンビネーションディスク」が実現できることもひとつの大きなアドバンテージであるとする。これにより「再生機をまだ持っていないという方でも、将来楽しむためにHD DVDのタイトルが購入できる。また家庭にHD DVDとDVD両方の再生機をがある場合も、両方で楽しめるタイトルが手に入るわけだし、これこそDVDの技術を正統に継承する次世代メディアだからこそできる」とした。
記録用ディスクとしてのHD DVDの特長については、主にHDDとのコンビネーションにおいて、アーカイブ用途の活用が提案された。同社としてはより一層の長時間記録についてはHDDを活用するという、ユーザーの使い方が一般的になるだろうとしている。また追記型のHD DVD-Rについては、安価なディスクを提供できることも有利な点であると指摘する。
HD DVDレコーダーの導入時期について藤井氏は「ユーザーの要望に出来るだけはやく応えたい。当社としては、発売するからには安い製品を目指す」という考えを示した。プレーヤーとレコーダーについては、双方を使い分ける楽しみ方がより鮮明になるだろうとした。録画機についても、今後投入するHD DVD関連機器には、既存のDVDのインフラを活用したいというユーザーの欲求に応え、完全な互換性を実現していくことも大切であると藤井氏は語った。
また、その他のHD DVDの特長として、iHDの機能を実装することによってPCとの高い親和性が実現できることや、AACSによる高い著作権保護技術が実現できることも藤井氏は指摘するとともに、PCの領域ではウルトラスリムドライブが可能であること、車載用については、HD DVDは対物レンズとディスク表面間の距離(ワーキングディスタンス)が1mm以上ある利点を活かして、高性能なアプリケーションが実現可能である点も示された。
続いて同社デジタルメディアネットワーク社 デジタルAV事業部 DAV商品企画部部長の伊藤眞一氏より、HD-XA1のアドバンスド機能がデモンストレーションにより紹介された。
伊藤氏はHD-XA1で映画本編を再生しながら、チャプター選択画面や特典映像を再生するアドバンスド機能のデモを行った。HD DVDの特長として、本編を再生しながらも色々な操作ができる点を伊藤氏は説明した。また、メニュー操作の効果音などについてはコンテンツプロバイダーの方で細かな作り込みが行える点や、メニュー画面のGUIについては、ユーザーが3種類のスキンから選択できる点も特長として挙げられた。
本機では世界初のHD DVDプレーヤーとして、デザインやパーツに高級機としての贅沢な仕様を盛り込んだと伊藤氏は語る。リモコンはオートセンサー付きシアターライトリモコンとし、アルミ削り出しのインシュレーターや電動式フロントドアなども取り入れられている。また背面端子部にはLAN端子も搭載し、将来の発展性も持たせている。
続いてコンテンツプロバイダーを代表し、4月7日にHD DVD初の市販ソフトをリリースする(株)ポニーキャニオンより第一映像事業部本部長の大柳英樹氏が出席した。
ポニーキャニオンはHD DVDにハイビジョンの環境映像を収録した「夜桜」「さくら(バーチャルトリップシリーズ)」「地球の大自然(バーチャルトリップシリーズ)」の3作品をリリースする予定だ。DVDは「デジタルで劣化がほとんど無く、保存性が高まったことで爆発的にセルソフトの市場を拡大させてきた」と大柳氏は語る。HD DVDが登場したことにより、大画面でハイビジョンコンテンツを楽しむ文化が一般に定着し、さらなる広がりを見せていくだろうとした大柳氏は、HD DVDだからこそ実現できるような、新しい文化を提案し、新しい人気ジャンルを開拓したいと意気込みを見せた。
同社から発売される3作品はいずれもHD DVDとDVDの映像を両方収録したツインフォーマットで発売される。大柳氏は、同社はHD DVDをプラットフォームとした今後のビジネス展開について、高画質とSDクオリティのものを大量に収録したソフトなども企画しながら、ソフトメーカーとして新しいことにチャレンジしていきたいと抱負を語った。
以下に本日の新製品発表会で行われた質疑応答の模様を掲載する。
【質疑応答】
Q:HD DVDのPCへの展開、Xbox360の外付けプレーヤーの動向について聞かせて欲しい。
A:PCドライブではいま、複数のメーカーとお話をさせていただいているところだ。当社として、実際の商品をいつ頃、どのようなかたちで発表するかは事業部が異なるので具体的には言えないが、今年の2QにはHD DVD対応モデルがでてくるだろう。本日の発表会場にもほぼ完成しているQOSMIOのプロトタイプを展示している。Xboxの動向については、マイクロソフト社がHD DVDの規格を指示して下さっているが、私の口からはその詳細を語ることは控えたい。(藤井氏)
Q:HD-XA1の月産台数はどれくらいを見込んでいるか。
A:当初月産2,000台を予定していたが、今年の暮れには月産数万台と考えている。2006年度はプレーヤー単体で60〜70万台を、AV機器だけで達成できると予測している。(藤井氏)
Q:2008年の北京五輪までにはどんな商品を発表する予定か。
A:今後次世代DVDへの期待が急速に高まるだろう。2008年にはデジタルディスクプレーヤーの40%を占めるまでに至ると予測している。北京五輪は当社としても明確なターゲットにおいて、大画面テレビや新しいプレーヤーを出していきたい。また多くのお客様がお求めになれるようなコスト実現体制を今から取り組んで行きたい。その際には、この分野でのパイオニア・プロフィットと言うべきか、機器が第1、第2、第3世代へと進化していくほどに半導体などで優位性を活かして、安く商品がつくれるのではと考えている。2008年には、現在のHDD+DVDレコーダーに近い値段で録画機を出したいと考えている。HDDの容量によって値段も変わってくるだろうが、ハイビジョン録画の要望の高まりによっては1TB、2TBと大容量をカバーできる商品も出していきたい。またHD映像がDVDに残せるものなども含めて、多様な商品群を企画して行くつもりだ。(藤井氏)
Q:日本では北米と違って、価格の安いモデルを出さないのはなぜか。
A:北米と日本では、市場の特性が違うと考えている。事業戦略上の結果だ。(伊藤氏)
Q:今回はなぜ、ソフトも充実していない状況下で、発表と発売を同時に行ったのか。
A:正直根拠はない。これまでにも延期報道がされるたびに嫌になってきたところだから、今度延期すると何と報道されるかわからないと考え、何とか3月中に発売したいという気持ちが強くあった。ただし、ここまで延期となった背景には著作権保護技術のAACSの整備を待たなければならないという、当社としてもコントロールできない領域での問題だったので、非常に苦労した。日本では今年度には発売すると宣言していたので、半分のコミットができて今は安堵している。(藤井氏)
Q:今後録画機の予定はどのようになっているか。
A:日本の場合はレコーダーの要望が高いのはわかっている。私の希望としては何とかワールドカップまで間に合わせたいと思っているのだが、その実現のために今、開発部隊にハッパをかけているところだ。(藤井氏)
Q:アドバンスド機能のバージョンアップはファームウェア更新などで対応するのか。
A:アドバンスド機能のバージョンアップについては、これまで2年間かけてその仕様をまとめてきたので、すぐに更新する必要はないと考えている。ただし、コンテンツの中に様々な情報を入れたり、色々なことが実現できるようになった中で、コンテンツホルダーのやりたい事と私たちの仕様がマッチしているかについては、十分にケアをしながら、アップデートも含めて考えていきたい。(同社デジタルメディアネットワーク社 HD DVD事業推進室室長 佐藤裕治氏)
Q:米国での発売予定は。
A:やはりAACSの整備の問題で時間がかかっている。ソフトのリリースについては現在、ハリウッドのスタジオの皆様がアドバンスド機能に凝ってしまっていて、次から次へ新しい機能を入れようとしているようだ。米国では、日本のようにはっきりと「いつ発売」というのが設けられない傾向がある。大きな全米展開は4月18日としているが、広大な米国の市場では4月の上旬からハードを売り始めるところもあるかもしれない。
Q:消費者の中には次世代規格にHD DVDとBlu-rayがあるため、買い控えている人がいると思われるが、その影響はどのように考えているか。
A:フォーマット論争になると、いつもわざわざHD DVDを出そうとするから東芝が悪いと言われる。だが、実はフォーマットの統合については私たちが何倍も努力してきたと言いたいし、それが残念だがかなわなかった。買い控えは当然おこるかもしれない。我々もそれを一時期は懸念していたが、今はどう考えてみても「ユーザーは大画面で良い映像をみたいはず」だと確信している。DVDと比較してしまうと、やはり早く次世代ディスクが欲しいと思うようになるだろう。また一般のユーザーは「今後次世代ディスクでどんなタイトルがリリースされるか」をとても注目しているはずだ。今後魅力的なコンテンツの情報が具体化されれば、HD DVDを買っていただけるだろう。東芝も大々的な攻勢をかけ、次世代ディスクの急速な普及を事業戦略として徹底したい。
Q:Blu-ray陣営とのフォーマット競争はいつ頃趨勢が決まると考えているか。また、いつまでに決着つけたいと考えているか。
A:今年の暮れまでに、東芝だけで60〜70万台のプレーヤーを出荷し、今年度で合わせて100万台を越えたい。来年以降も勢いを加速させていけば、おそらく6月頃、早ければ今年の年末には趨勢が決まるだろうと思っている。ただ、Blu-rayの方が非常に良い、という可能性もゼロではないのが心配と言えば心配。どういうものが出てくるか楽しみだ。もし仮にBlu-rayが圧倒的に良いとなった時には土下座してあやまりたいと思うが、常識的には有り得ないだろう。次世代フォーマットで勝ち残るためには、コーデックの優位性、技術開発のスピード速さ、コスト力が勝負になる。いずれにせよ、今年の年末を期待して頂きたい。
【問い合わせ先】
東芝DVDインフォメーションセンター
TEL/0120-96-3755
(Phile-web編集部)
昨今の地上デジタル放送の普及拡大と、ハイビジョン対応テレビの人気が高まり行く環境の中で、一般のユーザー、コンテンツプロバイダーの双方からHD DVDへの期待が高まるのを受け、本日HD-XA1が登場したと藤井氏は語る。
DVDフォーラムによって承認された唯一の次世代規格であるHD DVDのアドバンテージを強く主張する同社は、その優位性のポイントとして、高画質・大容量の魅力を備えながら、既存DVDとの高い互換性を確保し、その技術と製造環境をスピーディーに活用できる点にもあるとする。藤井氏は同社のHD DVDの事業戦略におけるキーワードとして、ユーザーのニーズに的確に応えるべく、現行DVDから次世代DVDへの事業シフトを「急速に実現」させることが大切であると強調した。
HD DVDの需要については30インチ以上の大画面テレビと強く結びついているとする。藤井氏は「DVDがこれだけ一般に普及した今、果たしてHD DVDがどこまで魅力を打ち出していけるのかについては正直私も悩んだが、地デジ放送や大画面テレビが普及し、これだけハイビジョンが必要とされる環境が整備された今、ユーザーは必ずHD DVDを必要とするだろうし、DVDプレーヤーは要らないという方向にさえ進んで行くのではと思っている」と語った。また今後のHD DVDの普及速度については、「今年度はソフトもまだ少ない状態なので急な変化は望めないと見ている。しかしながら、来年からはコンテンツが一気に充実するだろうし、2008年には現行DVDを逆転し、2009年にはプレーヤーとレコーダーでHD DVDが次世代DVD市場の60%を占める勢いが見られるだろう」と予測した。
HD DVDの登場は、国内DVD市場を多様化へと導くだろうというのも同社の予測するところだ。地上デジタル放送への移行が完了する2011年には、ハイビジョンを「高画質で」「長時間」録画するための機器がますます進化し、多様化すると同社はみる。同社が示した予測では、地デジ対応のHDD&HD DVDレコーダーが市場の60%を占め、うち15%は大容量コンテンツのダウンロードにも対応する機種になるとされている。同社は今後の世界的な戦略として、HDDはテラバイトの領域を含む、大容量コンテンツの記録デバイスとして進化させるとともに、HD DVDの高画質エンターテインメント機能も併せ持たせた製品を市場に送り出して行く考えだ。またHD DVDのソフトについては、今年の4月を皮切りに国内でも話題の新作が次々と発売され、年内には100作品以上が揃うだろうと予測する。
藤井氏からはHD DVDの特長とコンセプトについても紹介された。
はじめにHD DVDの再生用ディスクとしての特長について触れた藤井氏は、その「容量」における優位性について改めて指摘した。HD DVDの場合はハイビジョン映像だけでなく、将来的に様々なコンテンツを盛り込んでいくために45GBから60GBの要求が出た場合にも「対応が可能」な強みを持っていると藤井氏は指摘する。その上で「次世代ディスクを巡る論調に“容量のBlu-ray、安価なHD DVD”という評価をされることが多いが、私はこのことを不満に感じている」とした藤井氏は、DVDの技術を活かしながら大容量化を実現できるHD DVDの方が、はるかに柔軟な特長を持っており、大容量化に際しても安定的な対応が可能であると主張した。また、HD DVDでは片面2層のディスクに4.7GBのDVD層と15GBのHD DVD層を持たせた「ツインフォーマットディスク」や、両面2層のディスクに8.5GBのDVD2層と、30GBのHD DVD2層を持たせた「コンビネーションディスク」が実現できることもひとつの大きなアドバンテージであるとする。これにより「再生機をまだ持っていないという方でも、将来楽しむためにHD DVDのタイトルが購入できる。また家庭にHD DVDとDVD両方の再生機をがある場合も、両方で楽しめるタイトルが手に入るわけだし、これこそDVDの技術を正統に継承する次世代メディアだからこそできる」とした。
記録用ディスクとしてのHD DVDの特長については、主にHDDとのコンビネーションにおいて、アーカイブ用途の活用が提案された。同社としてはより一層の長時間記録についてはHDDを活用するという、ユーザーの使い方が一般的になるだろうとしている。また追記型のHD DVD-Rについては、安価なディスクを提供できることも有利な点であると指摘する。
HD DVDレコーダーの導入時期について藤井氏は「ユーザーの要望に出来るだけはやく応えたい。当社としては、発売するからには安い製品を目指す」という考えを示した。プレーヤーとレコーダーについては、双方を使い分ける楽しみ方がより鮮明になるだろうとした。録画機についても、今後投入するHD DVD関連機器には、既存のDVDのインフラを活用したいというユーザーの欲求に応え、完全な互換性を実現していくことも大切であると藤井氏は語った。
また、その他のHD DVDの特長として、iHDの機能を実装することによってPCとの高い親和性が実現できることや、AACSによる高い著作権保護技術が実現できることも藤井氏は指摘するとともに、PCの領域ではウルトラスリムドライブが可能であること、車載用については、HD DVDは対物レンズとディスク表面間の距離(ワーキングディスタンス)が1mm以上ある利点を活かして、高性能なアプリケーションが実現可能である点も示された。
続いて同社デジタルメディアネットワーク社 デジタルAV事業部 DAV商品企画部部長の伊藤眞一氏より、HD-XA1のアドバンスド機能がデモンストレーションにより紹介された。
伊藤氏はHD-XA1で映画本編を再生しながら、チャプター選択画面や特典映像を再生するアドバンスド機能のデモを行った。HD DVDの特長として、本編を再生しながらも色々な操作ができる点を伊藤氏は説明した。また、メニュー操作の効果音などについてはコンテンツプロバイダーの方で細かな作り込みが行える点や、メニュー画面のGUIについては、ユーザーが3種類のスキンから選択できる点も特長として挙げられた。
本機では世界初のHD DVDプレーヤーとして、デザインやパーツに高級機としての贅沢な仕様を盛り込んだと伊藤氏は語る。リモコンはオートセンサー付きシアターライトリモコンとし、アルミ削り出しのインシュレーターや電動式フロントドアなども取り入れられている。また背面端子部にはLAN端子も搭載し、将来の発展性も持たせている。
続いてコンテンツプロバイダーを代表し、4月7日にHD DVD初の市販ソフトをリリースする(株)ポニーキャニオンより第一映像事業部本部長の大柳英樹氏が出席した。
ポニーキャニオンはHD DVDにハイビジョンの環境映像を収録した「夜桜」「さくら(バーチャルトリップシリーズ)」「地球の大自然(バーチャルトリップシリーズ)」の3作品をリリースする予定だ。DVDは「デジタルで劣化がほとんど無く、保存性が高まったことで爆発的にセルソフトの市場を拡大させてきた」と大柳氏は語る。HD DVDが登場したことにより、大画面でハイビジョンコンテンツを楽しむ文化が一般に定着し、さらなる広がりを見せていくだろうとした大柳氏は、HD DVDだからこそ実現できるような、新しい文化を提案し、新しい人気ジャンルを開拓したいと意気込みを見せた。
同社から発売される3作品はいずれもHD DVDとDVDの映像を両方収録したツインフォーマットで発売される。大柳氏は、同社はHD DVDをプラットフォームとした今後のビジネス展開について、高画質とSDクオリティのものを大量に収録したソフトなども企画しながら、ソフトメーカーとして新しいことにチャレンジしていきたいと抱負を語った。
以下に本日の新製品発表会で行われた質疑応答の模様を掲載する。
【質疑応答】
Q:HD DVDのPCへの展開、Xbox360の外付けプレーヤーの動向について聞かせて欲しい。
A:PCドライブではいま、複数のメーカーとお話をさせていただいているところだ。当社として、実際の商品をいつ頃、どのようなかたちで発表するかは事業部が異なるので具体的には言えないが、今年の2QにはHD DVD対応モデルがでてくるだろう。本日の発表会場にもほぼ完成しているQOSMIOのプロトタイプを展示している。Xboxの動向については、マイクロソフト社がHD DVDの規格を指示して下さっているが、私の口からはその詳細を語ることは控えたい。(藤井氏)
Q:HD-XA1の月産台数はどれくらいを見込んでいるか。
A:当初月産2,000台を予定していたが、今年の暮れには月産数万台と考えている。2006年度はプレーヤー単体で60〜70万台を、AV機器だけで達成できると予測している。(藤井氏)
Q:2008年の北京五輪までにはどんな商品を発表する予定か。
A:今後次世代DVDへの期待が急速に高まるだろう。2008年にはデジタルディスクプレーヤーの40%を占めるまでに至ると予測している。北京五輪は当社としても明確なターゲットにおいて、大画面テレビや新しいプレーヤーを出していきたい。また多くのお客様がお求めになれるようなコスト実現体制を今から取り組んで行きたい。その際には、この分野でのパイオニア・プロフィットと言うべきか、機器が第1、第2、第3世代へと進化していくほどに半導体などで優位性を活かして、安く商品がつくれるのではと考えている。2008年には、現在のHDD+DVDレコーダーに近い値段で録画機を出したいと考えている。HDDの容量によって値段も変わってくるだろうが、ハイビジョン録画の要望の高まりによっては1TB、2TBと大容量をカバーできる商品も出していきたい。またHD映像がDVDに残せるものなども含めて、多様な商品群を企画して行くつもりだ。(藤井氏)
Q:日本では北米と違って、価格の安いモデルを出さないのはなぜか。
A:北米と日本では、市場の特性が違うと考えている。事業戦略上の結果だ。(伊藤氏)
Q:今回はなぜ、ソフトも充実していない状況下で、発表と発売を同時に行ったのか。
A:正直根拠はない。これまでにも延期報道がされるたびに嫌になってきたところだから、今度延期すると何と報道されるかわからないと考え、何とか3月中に発売したいという気持ちが強くあった。ただし、ここまで延期となった背景には著作権保護技術のAACSの整備を待たなければならないという、当社としてもコントロールできない領域での問題だったので、非常に苦労した。日本では今年度には発売すると宣言していたので、半分のコミットができて今は安堵している。(藤井氏)
Q:今後録画機の予定はどのようになっているか。
A:日本の場合はレコーダーの要望が高いのはわかっている。私の希望としては何とかワールドカップまで間に合わせたいと思っているのだが、その実現のために今、開発部隊にハッパをかけているところだ。(藤井氏)
Q:アドバンスド機能のバージョンアップはファームウェア更新などで対応するのか。
A:アドバンスド機能のバージョンアップについては、これまで2年間かけてその仕様をまとめてきたので、すぐに更新する必要はないと考えている。ただし、コンテンツの中に様々な情報を入れたり、色々なことが実現できるようになった中で、コンテンツホルダーのやりたい事と私たちの仕様がマッチしているかについては、十分にケアをしながら、アップデートも含めて考えていきたい。(同社デジタルメディアネットワーク社 HD DVD事業推進室室長 佐藤裕治氏)
Q:米国での発売予定は。
A:やはりAACSの整備の問題で時間がかかっている。ソフトのリリースについては現在、ハリウッドのスタジオの皆様がアドバンスド機能に凝ってしまっていて、次から次へ新しい機能を入れようとしているようだ。米国では、日本のようにはっきりと「いつ発売」というのが設けられない傾向がある。大きな全米展開は4月18日としているが、広大な米国の市場では4月の上旬からハードを売り始めるところもあるかもしれない。
Q:消費者の中には次世代規格にHD DVDとBlu-rayがあるため、買い控えている人がいると思われるが、その影響はどのように考えているか。
A:フォーマット論争になると、いつもわざわざHD DVDを出そうとするから東芝が悪いと言われる。だが、実はフォーマットの統合については私たちが何倍も努力してきたと言いたいし、それが残念だがかなわなかった。買い控えは当然おこるかもしれない。我々もそれを一時期は懸念していたが、今はどう考えてみても「ユーザーは大画面で良い映像をみたいはず」だと確信している。DVDと比較してしまうと、やはり早く次世代ディスクが欲しいと思うようになるだろう。また一般のユーザーは「今後次世代ディスクでどんなタイトルがリリースされるか」をとても注目しているはずだ。今後魅力的なコンテンツの情報が具体化されれば、HD DVDを買っていただけるだろう。東芝も大々的な攻勢をかけ、次世代ディスクの急速な普及を事業戦略として徹底したい。
Q:Blu-ray陣営とのフォーマット競争はいつ頃趨勢が決まると考えているか。また、いつまでに決着つけたいと考えているか。
A:今年の暮れまでに、東芝だけで60〜70万台のプレーヤーを出荷し、今年度で合わせて100万台を越えたい。来年以降も勢いを加速させていけば、おそらく6月頃、早ければ今年の年末には趨勢が決まるだろうと思っている。ただ、Blu-rayの方が非常に良い、という可能性もゼロではないのが心配と言えば心配。どういうものが出てくるか楽しみだ。もし仮にBlu-rayが圧倒的に良いとなった時には土下座してあやまりたいと思うが、常識的には有り得ないだろう。次世代フォーマットで勝ち残るためには、コーデックの優位性、技術開発のスピード速さ、コスト力が勝負になる。いずれにせよ、今年の年末を期待して頂きたい。
【問い合わせ先】
東芝DVDインフォメーションセンター
TEL/0120-96-3755
(Phile-web編集部)