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公開日 2008/09/18 19:35
光ディスクは不要、BDは儲かる自信がない − 東芝DM社 藤井社長が語る映像事業の新戦略
(株)東芝は本日、液晶テレビREGZA、レコーダーVARDIAの新商品発表会を行った。本項では、発表会の模様をお伝えする。
■「ブルーレイはとても高い」
発表会の冒頭、「2008 多様化するデジタル映像ライフ」と題した、世界中のユーザーがどのようにAV機器を活用しているかインタビューした映像が流された。HDDレコーダーを使っているユーザーの事例では、「HDD内蔵の方が操作が速いと思って購入した。先の番組表も見られるので、録画機会が増えた」と満足している様子。また、テレビの外付けHDDに録画しているユーザーや、TiVoで映画をダウンロードして再生しているユーザー、またホームサーバーを導入しているユーザーなど、様々な事例が紹介され、AVライフスタイルが多様化していることを印象づけた。
中にはブルーレイについて聞いたインタビューもあり、ユーザーは「Blu-rayはとても高いし、DVDとの価格差ほどの違いがあるか疑問」と回答。さらに、海外のオーディオビジュアルデザイナーへのインタビューでは、「従来のDVDに比べ、Blu-rayはまだ高い。一方でオンラインコンテンツ、ダウンロードコンテンツは人気で、これらのコンテンツを貯めておくために、大容量のストレージが必要」と回答した。
ビデオ上映に続いて登壇した同社執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社 社長の藤井美英氏は、まず会場内に置かれた新商品や参考展示を紹介。VARDIAの方では、XDE搭載のDVDプレーヤー/レコーダーを紹介し、「ハイビジョン映像とXDEで処理した映像を並べ、どちらが本当のハイビジョンか内覧で見ていただいたが、大変好評だった」と自賛した。
REGZAについては、来年以降に市場投入を計画している製品や技術を紹介。Cell B.E.を搭載し、2009年秋の発売を予定するCell TVのほか、店頭ダウンロード型の映像コンテンツ販売システム「MOD(Media On Demand)」、またインテルとヤフーが発表したウィジェット・チャネルというプラットフォームを利用した試作機なども公開している、と説明。また、業務用に低ビットレートで高画質を実現するMPEG4-AVC/H.264エンコーダーを開発したこともあわせて紹介した。
冒頭に流れたビデオについては、「過度に編集しているのではないかとお思いかもしれないが、そんなことはない。東芝DM社長の私がこんなことを言っちゃったらまずいかもしれないが、世の中は私が考えている以上に進んじゃってるなあ、と実感する」とした上で、「映像事業は本当に難しい。地域ごとに好み、カルチャー、インフラが違う。ユーザーニーズを正確に捉え、なるべく多くの方に安価な価格で楽しんでもらいたいと願っている」と述べた。
続いて同氏はようやく本題に入り、「映像事業 新戦略・新商品説明」と題して、同社の新戦略について説明を行った。東芝DM社の戦略目標として「何はなくとも液晶テレビが大事。2010年にグローバルシェア10%を獲得する」と宣言。「一部では北京五輪での販売があまり盛り上がらなかったという指摘があったが、7月以降にシェアが拡大し、2位の地位を奪回した」と胸を張った。
さらに藤井氏は、テレビ事業について「国内は圧倒的に小さいんですね。一番大きいのがヨーロッパ、アメリカで、国内は2割。2004年にDM社の社長になったとき、テレビのシェアとして12%という目標を掲げた。SEDがこういう状況になったので、コミットメントとしては10%でやっていく。2008年は8%のシェアが見込めると考えている」と現状を分析した。
■「何で光ディスクを使わなければならないんだ」
レコーダー事業については、「HD DVDで撤退した説明責任もあるので、くわしく説明する」と冒頭に前置きし、「HD DVDをやっている時は、高画質やインタラクティビティ、ネットワークコネクティビティを実現する手段として、HD DVDをコアに位置づけていた。それを中心に、ネットワーク機能やサーバーなどを広げていけたらと考えていた。ただ、撤退の後によく考えてみたら、何で光ディスクを使わなければいけないんだ、と思い当たった。ネットワークコネクティビティーについては特にそう。もっとまじめに考えてくださいよ、という声も頂いた」と述べ、「とにかく、あれだけの損失を出したので、様々な調査を重ねたが、結論としては、人は映像機器について3つの要望を持っている。『あらゆるコンテンツを一つのストレージに貯めたい』、『いつでもかんたんに取り出したい』、『綺麗な映像で見させて欲しい』というものだ」と説明した。
さらに藤井氏は、光ディスクに頼らずにこれらの3つの機能を実現することができるとし、記録メディアに依存せずに高画質コンテンツを記録・再生することが可能となったと強調した。「これを英語風に言ったのが『Media Independent』という考え。見栄を断ち切って、我々の強みであるHDDとフラッシュメモリーを中心にした事業を作りたい。とにかく我々は事業をやっているので、利益を生まなくてはならない。キーは東芝のアドバンテージ。東芝の持っている新高画質技術、半導体を中心にした新機能、新ストレージの3つの矢を束ねる」とした。
■超解像技術や新サービスにも期待
超解像技術については、「世界中の研究期間が取り組んでいる技術で、我々も10年以上研究してきた。地デジのかなり綺麗な映像をさらに美しく見せる」と説明。またXDE技術については、「いまのDVDをこれで見るとハイビジョンに近い画質で見られる。将来的には、端末側に超解像やXDEを搭載し、ネットの映像も高画質化することを考えている」と展望を述べた。
さらに藤井氏は、半導体付加価値戦略として、「テレビを超えたテレビ、DVDを超えたDVDを作りたい。テレビに関しては、キーとなるのは高性能のプロセッサーで、これを入れてしまえば良い。このために様々な試みを行っており、Cell TVもその試行錯誤の一つだ。また、DVDはインテル/Yahoo!と連携したWidget Channelで、パソコン世の動画や情報サービスをかんたんに見られるようになる」と説明した。
ストレージについては、「先ほどご覧いただいたインタビューでアンケートを行った際、ユーザーの声として一番多かったのが『もっと大きな記録容量を』という意見で、これには驚いた。まさにテラバイト時代だ。我々の戦略はこれだけではない。HDDで録りためたものを、フラッシュメモリーをブリッジメディアとして書き出し、持ち歩くことができる。こういうソリューションを夢見ているというわけではなく、すでに開発を進めている。他社が真似をできない合わせ技を広げていきたい」と戦略を語った。
さらに藤井氏は、米MOD社と提携した新サービスについても説明。「かんたんに言ってしまえば、店頭型コンテンツダウンローディングシステムだ。店頭に自動販売機のようなものがあり、その中に様々なコンテンツが入っている。お金を入れると、SDメモリーカードにコンテンツをダウンロードし、ドッキングステーションからHDDに蓄積する。これはかなりのシェアを取るのではないか。また、SDカードの普及に役立つのではないかと考えている」と期待を見せた。
最後に藤井氏は、同社映像事業の新プロモーション策を発表。「CMキャラクターに福山雅治氏を採用することにした。話をしてみたら、非常に様々な才能を感じた。色々と当社の事業についても説明させていただいて、意気に感じていただいた」と説明。コミュニケーションコンセプトは「X CROSS digital」で、同社の映像新戦略から生まれる商品群を、デジタルが持つ無限の可能と重ね合わせた言葉なのだという。続いて、福山氏が出演するCMの第一弾も公開された。
■「使う人の思いに応えるという原点に戻った」新REGZA
続いて、TV事業部 事業部長の大角正明氏がテレビの事業環境とREGZA新製品の概要について説明を行った。グローバルの事業環境については、「2007年まではグローバル市場は堅調に拡大したが、今夏の五輪需要はかなりの期待はずれに終わった。欧米経済は様々な問題を抱えており、現在の市場環境だと今後はかなり厳しいのでは。世界需要はやや堅めかもしれないが、2009年に1億台、2010年に1億3,000万台と考えている」と予想。その上で、「2008年は750万台を出荷する予定で、下期の台数シェア8%を狙う。2010年は1,300万台を達成し、シェア10%を達成したい」とした。
また、大角氏はREGZAの顧客満足度の高さについても強調。「2006年度から3位、2位、1位というふうに伸び、顧客満足度首位になった。何が受け入れられたのかと言うと、高画質、HDD録画の2点だ」と説明。さらに、環境面でも「おまかせドンピシャ高画質」を採用したことで消費電力が下がり、これにより春夏モデル9機種が省エネ5つ星を獲得した、と説明した。
別項で紹介するREGZAの新ラインナップについては、「大きく商品ラインナップを変え、使う人の思いに応えるという原点に戻った」とし、「新モデルは画質、録画、エコを3つの訴求ポイントにした。REGZAは完全モデルチェンジ。全6シリーズ20機種を一斉投入する」と高らかに宣言した。国内シェア目標にも触れ、「2008年度下期に、国内液晶テレビ市場でシェア20%を目指す。福山氏のCMを使って露出を増やし、ブランド認知度を高めていきたい」と期待を見せた。
■レコーダーの今後は「簡単操作」がカギに
レコーダーについては、デジタルAV事業部 事業部長の下田乾二氏が説明。まず同氏は、「藤井のプレゼンの後、しかもテレビでありながら録画機能を搭載したREGZAの説明の後にレコーダーを紹介するのは正直に言ってやりにくいが、自信をもっておすすめできる製品だ」とあいさつ。
下田氏は、「コンテンツディストリビューションの形態が変化し、インターネットにコンテンツディストリビューションが移りつつある」と述べた後、XDE技術を説明。画質には自信を持っているとした。また、「2011年のアナログ完全停波を控え、これからは簡単操作がカギになる。もちろん、好評をいただいているVARDIAの高機能は継承しながら、操作をかんたんにしていく」と今後の戦略を説明。なお、新VARDIAが実現したフルハイビジョン7倍録画については、「うちが6倍録画をやったら他社さんも次第に追いついてきたが、当社は一歩先行く7倍録画だ」と自信を見せた。
以下、発表会で行われた質疑応答をご紹介する。
Q: レコーダーの国内市場を見ると、金額ベースでBlu-rayが5割を超えている。これにどう対応していくか。
A: まず言っておきたいのが、Blu-rayについては完全にノーサイドで、恨みがあるというのは一切無い。VARDIAは人気があって、BDを出して欲しいという声もあるが、価格が下落するのは目に見えている。個人的にはほんとうにやる必要があるか疑問だ。特にネット接続については、BDのネット接続機能はあまり必要ではない。テレビの録画は、光ディスクに頼らない録画ソリューションを提供していきたい。BDを出していけないということはないが、いまは儲かる自信がない。ただし、東芝は常に態度が変わるので、今後どうなるかはわからない(藤井氏)。
Q: 今期、DVDレコーダーの販売台数をどう見込んでいるのか。また、来期は今期に比べどういう見通しを持っているか。
A: 録画市場におけるBDの構成比率が、北京五輪前に40数パーセントになったことで、DVDが多少減ったのは事実。
だが、一部で言われているように、2009年度にBDの売上比率が90%になるなどということは無いと見ている(下田氏)。
レコーダーでは、東芝は20〜25%のシェアを持っている。本当に2009年に、BDの売り上げが90%になるのか。そんなことはあり得ない。皆が89,800円のBDレコーダーを買うはずはなく、4万円台でなければならないという人は確実にいる。DVDを持っているけどBDは高いねえ、という人は多い。DVDレコーダーは絶対になくならない。エントリー層に向けては、HDDだけのレコーダーも用意している。DVDレコーダーとHDD単体で、国内で来期100万台は行けると見ている。
とにかく、日本は市場が非常に小さい。勝負は、グローバルでいかに利益を出すかということ。日本という特殊な市場だけを考えて戦略を練ると失敗する。
まあ、日本ではBDが一定程度伸びていくのかなあ、という気がするが、199ドルや299ドルあたりになれば勝負は分からない。皆さんはBDと言うかもしれないが(藤井氏)。
Q: ネットワーク接続という戦略は分かるが、BDで高画質映像を楽しむ時期はしばらく続くのでは。何年後にネットで高画質を楽しむ時期が来ると考えているのか。
A: 日本とアメリカは事情が全然違う。ネットサービスは大きく2つあって、映画と情報サービス。これはまるっきり違うコンテンツだ。映画はきれいな画質でなければいけないが、アメリカのネット接続スピードは平均で3Mbps程度と低い。一方、情報サービスは映画以上に早く浸透し、2010年頃から進化していくだろう。映画については、これは個人的には来ないのはないかと考えている。2012年頃でも、全体の10〜20%程度にしかならないと見ている(藤井氏)。
Q: ハイビジョンの無線伝送についての取り組みを教えて欲しい。また、どの方式を使うかについても教えて欲しい。
A: CEATECでも色々展示がされると思うが、他社に技術は負けていない。ただし、私はちょっと待ったをかけている。ワイヤレスは何と何をつなぐかが重要で、他社がやっているように、ディスプレイとチューナーをセパレートにするという場合には、これは必要。プレーヤー/レコーダーとテレビの場合は、昔のテレビでは使えないという問題がある。テレビとPCの接続については、本当に無線が必要なのか。無線は、先頭を切って出すことは出来るが、これをやる必要があるかは疑問だ。方式については、ミリ波が5年先や10年先を見据えて有力なのではないかと考えているが、最終的には決めていない(藤井氏)。
(Phile-web編集部)
■「ブルーレイはとても高い」
発表会の冒頭、「2008 多様化するデジタル映像ライフ」と題した、世界中のユーザーがどのようにAV機器を活用しているかインタビューした映像が流された。HDDレコーダーを使っているユーザーの事例では、「HDD内蔵の方が操作が速いと思って購入した。先の番組表も見られるので、録画機会が増えた」と満足している様子。また、テレビの外付けHDDに録画しているユーザーや、TiVoで映画をダウンロードして再生しているユーザー、またホームサーバーを導入しているユーザーなど、様々な事例が紹介され、AVライフスタイルが多様化していることを印象づけた。
中にはブルーレイについて聞いたインタビューもあり、ユーザーは「Blu-rayはとても高いし、DVDとの価格差ほどの違いがあるか疑問」と回答。さらに、海外のオーディオビジュアルデザイナーへのインタビューでは、「従来のDVDに比べ、Blu-rayはまだ高い。一方でオンラインコンテンツ、ダウンロードコンテンツは人気で、これらのコンテンツを貯めておくために、大容量のストレージが必要」と回答した。
ビデオ上映に続いて登壇した同社執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社 社長の藤井美英氏は、まず会場内に置かれた新商品や参考展示を紹介。VARDIAの方では、XDE搭載のDVDプレーヤー/レコーダーを紹介し、「ハイビジョン映像とXDEで処理した映像を並べ、どちらが本当のハイビジョンか内覧で見ていただいたが、大変好評だった」と自賛した。
REGZAについては、来年以降に市場投入を計画している製品や技術を紹介。Cell B.E.を搭載し、2009年秋の発売を予定するCell TVのほか、店頭ダウンロード型の映像コンテンツ販売システム「MOD(Media On Demand)」、またインテルとヤフーが発表したウィジェット・チャネルというプラットフォームを利用した試作機なども公開している、と説明。また、業務用に低ビットレートで高画質を実現するMPEG4-AVC/H.264エンコーダーを開発したこともあわせて紹介した。
冒頭に流れたビデオについては、「過度に編集しているのではないかとお思いかもしれないが、そんなことはない。東芝DM社長の私がこんなことを言っちゃったらまずいかもしれないが、世の中は私が考えている以上に進んじゃってるなあ、と実感する」とした上で、「映像事業は本当に難しい。地域ごとに好み、カルチャー、インフラが違う。ユーザーニーズを正確に捉え、なるべく多くの方に安価な価格で楽しんでもらいたいと願っている」と述べた。
続いて同氏はようやく本題に入り、「映像事業 新戦略・新商品説明」と題して、同社の新戦略について説明を行った。東芝DM社の戦略目標として「何はなくとも液晶テレビが大事。2010年にグローバルシェア10%を獲得する」と宣言。「一部では北京五輪での販売があまり盛り上がらなかったという指摘があったが、7月以降にシェアが拡大し、2位の地位を奪回した」と胸を張った。
さらに藤井氏は、テレビ事業について「国内は圧倒的に小さいんですね。一番大きいのがヨーロッパ、アメリカで、国内は2割。2004年にDM社の社長になったとき、テレビのシェアとして12%という目標を掲げた。SEDがこういう状況になったので、コミットメントとしては10%でやっていく。2008年は8%のシェアが見込めると考えている」と現状を分析した。
■「何で光ディスクを使わなければならないんだ」
レコーダー事業については、「HD DVDで撤退した説明責任もあるので、くわしく説明する」と冒頭に前置きし、「HD DVDをやっている時は、高画質やインタラクティビティ、ネットワークコネクティビティを実現する手段として、HD DVDをコアに位置づけていた。それを中心に、ネットワーク機能やサーバーなどを広げていけたらと考えていた。ただ、撤退の後によく考えてみたら、何で光ディスクを使わなければいけないんだ、と思い当たった。ネットワークコネクティビティーについては特にそう。もっとまじめに考えてくださいよ、という声も頂いた」と述べ、「とにかく、あれだけの損失を出したので、様々な調査を重ねたが、結論としては、人は映像機器について3つの要望を持っている。『あらゆるコンテンツを一つのストレージに貯めたい』、『いつでもかんたんに取り出したい』、『綺麗な映像で見させて欲しい』というものだ」と説明した。
さらに藤井氏は、光ディスクに頼らずにこれらの3つの機能を実現することができるとし、記録メディアに依存せずに高画質コンテンツを記録・再生することが可能となったと強調した。「これを英語風に言ったのが『Media Independent』という考え。見栄を断ち切って、我々の強みであるHDDとフラッシュメモリーを中心にした事業を作りたい。とにかく我々は事業をやっているので、利益を生まなくてはならない。キーは東芝のアドバンテージ。東芝の持っている新高画質技術、半導体を中心にした新機能、新ストレージの3つの矢を束ねる」とした。
■超解像技術や新サービスにも期待
超解像技術については、「世界中の研究期間が取り組んでいる技術で、我々も10年以上研究してきた。地デジのかなり綺麗な映像をさらに美しく見せる」と説明。またXDE技術については、「いまのDVDをこれで見るとハイビジョンに近い画質で見られる。将来的には、端末側に超解像やXDEを搭載し、ネットの映像も高画質化することを考えている」と展望を述べた。
さらに藤井氏は、半導体付加価値戦略として、「テレビを超えたテレビ、DVDを超えたDVDを作りたい。テレビに関しては、キーとなるのは高性能のプロセッサーで、これを入れてしまえば良い。このために様々な試みを行っており、Cell TVもその試行錯誤の一つだ。また、DVDはインテル/Yahoo!と連携したWidget Channelで、パソコン世の動画や情報サービスをかんたんに見られるようになる」と説明した。
ストレージについては、「先ほどご覧いただいたインタビューでアンケートを行った際、ユーザーの声として一番多かったのが『もっと大きな記録容量を』という意見で、これには驚いた。まさにテラバイト時代だ。我々の戦略はこれだけではない。HDDで録りためたものを、フラッシュメモリーをブリッジメディアとして書き出し、持ち歩くことができる。こういうソリューションを夢見ているというわけではなく、すでに開発を進めている。他社が真似をできない合わせ技を広げていきたい」と戦略を語った。
さらに藤井氏は、米MOD社と提携した新サービスについても説明。「かんたんに言ってしまえば、店頭型コンテンツダウンローディングシステムだ。店頭に自動販売機のようなものがあり、その中に様々なコンテンツが入っている。お金を入れると、SDメモリーカードにコンテンツをダウンロードし、ドッキングステーションからHDDに蓄積する。これはかなりのシェアを取るのではないか。また、SDカードの普及に役立つのではないかと考えている」と期待を見せた。
最後に藤井氏は、同社映像事業の新プロモーション策を発表。「CMキャラクターに福山雅治氏を採用することにした。話をしてみたら、非常に様々な才能を感じた。色々と当社の事業についても説明させていただいて、意気に感じていただいた」と説明。コミュニケーションコンセプトは「X CROSS digital」で、同社の映像新戦略から生まれる商品群を、デジタルが持つ無限の可能と重ね合わせた言葉なのだという。続いて、福山氏が出演するCMの第一弾も公開された。
■「使う人の思いに応えるという原点に戻った」新REGZA
続いて、TV事業部 事業部長の大角正明氏がテレビの事業環境とREGZA新製品の概要について説明を行った。グローバルの事業環境については、「2007年まではグローバル市場は堅調に拡大したが、今夏の五輪需要はかなりの期待はずれに終わった。欧米経済は様々な問題を抱えており、現在の市場環境だと今後はかなり厳しいのでは。世界需要はやや堅めかもしれないが、2009年に1億台、2010年に1億3,000万台と考えている」と予想。その上で、「2008年は750万台を出荷する予定で、下期の台数シェア8%を狙う。2010年は1,300万台を達成し、シェア10%を達成したい」とした。
また、大角氏はREGZAの顧客満足度の高さについても強調。「2006年度から3位、2位、1位というふうに伸び、顧客満足度首位になった。何が受け入れられたのかと言うと、高画質、HDD録画の2点だ」と説明。さらに、環境面でも「おまかせドンピシャ高画質」を採用したことで消費電力が下がり、これにより春夏モデル9機種が省エネ5つ星を獲得した、と説明した。
別項で紹介するREGZAの新ラインナップについては、「大きく商品ラインナップを変え、使う人の思いに応えるという原点に戻った」とし、「新モデルは画質、録画、エコを3つの訴求ポイントにした。REGZAは完全モデルチェンジ。全6シリーズ20機種を一斉投入する」と高らかに宣言した。国内シェア目標にも触れ、「2008年度下期に、国内液晶テレビ市場でシェア20%を目指す。福山氏のCMを使って露出を増やし、ブランド認知度を高めていきたい」と期待を見せた。
■レコーダーの今後は「簡単操作」がカギに
レコーダーについては、デジタルAV事業部 事業部長の下田乾二氏が説明。まず同氏は、「藤井のプレゼンの後、しかもテレビでありながら録画機能を搭載したREGZAの説明の後にレコーダーを紹介するのは正直に言ってやりにくいが、自信をもっておすすめできる製品だ」とあいさつ。
下田氏は、「コンテンツディストリビューションの形態が変化し、インターネットにコンテンツディストリビューションが移りつつある」と述べた後、XDE技術を説明。画質には自信を持っているとした。また、「2011年のアナログ完全停波を控え、これからは簡単操作がカギになる。もちろん、好評をいただいているVARDIAの高機能は継承しながら、操作をかんたんにしていく」と今後の戦略を説明。なお、新VARDIAが実現したフルハイビジョン7倍録画については、「うちが6倍録画をやったら他社さんも次第に追いついてきたが、当社は一歩先行く7倍録画だ」と自信を見せた。
以下、発表会で行われた質疑応答をご紹介する。
Q: レコーダーの国内市場を見ると、金額ベースでBlu-rayが5割を超えている。これにどう対応していくか。
A: まず言っておきたいのが、Blu-rayについては完全にノーサイドで、恨みがあるというのは一切無い。VARDIAは人気があって、BDを出して欲しいという声もあるが、価格が下落するのは目に見えている。個人的にはほんとうにやる必要があるか疑問だ。特にネット接続については、BDのネット接続機能はあまり必要ではない。テレビの録画は、光ディスクに頼らない録画ソリューションを提供していきたい。BDを出していけないということはないが、いまは儲かる自信がない。ただし、東芝は常に態度が変わるので、今後どうなるかはわからない(藤井氏)。
Q: 今期、DVDレコーダーの販売台数をどう見込んでいるのか。また、来期は今期に比べどういう見通しを持っているか。
A: 録画市場におけるBDの構成比率が、北京五輪前に40数パーセントになったことで、DVDが多少減ったのは事実。
だが、一部で言われているように、2009年度にBDの売上比率が90%になるなどということは無いと見ている(下田氏)。
レコーダーでは、東芝は20〜25%のシェアを持っている。本当に2009年に、BDの売り上げが90%になるのか。そんなことはあり得ない。皆が89,800円のBDレコーダーを買うはずはなく、4万円台でなければならないという人は確実にいる。DVDを持っているけどBDは高いねえ、という人は多い。DVDレコーダーは絶対になくならない。エントリー層に向けては、HDDだけのレコーダーも用意している。DVDレコーダーとHDD単体で、国内で来期100万台は行けると見ている。
とにかく、日本は市場が非常に小さい。勝負は、グローバルでいかに利益を出すかということ。日本という特殊な市場だけを考えて戦略を練ると失敗する。
まあ、日本ではBDが一定程度伸びていくのかなあ、という気がするが、199ドルや299ドルあたりになれば勝負は分からない。皆さんはBDと言うかもしれないが(藤井氏)。
Q: ネットワーク接続という戦略は分かるが、BDで高画質映像を楽しむ時期はしばらく続くのでは。何年後にネットで高画質を楽しむ時期が来ると考えているのか。
A: 日本とアメリカは事情が全然違う。ネットサービスは大きく2つあって、映画と情報サービス。これはまるっきり違うコンテンツだ。映画はきれいな画質でなければいけないが、アメリカのネット接続スピードは平均で3Mbps程度と低い。一方、情報サービスは映画以上に早く浸透し、2010年頃から進化していくだろう。映画については、これは個人的には来ないのはないかと考えている。2012年頃でも、全体の10〜20%程度にしかならないと見ている(藤井氏)。
Q: ハイビジョンの無線伝送についての取り組みを教えて欲しい。また、どの方式を使うかについても教えて欲しい。
A: CEATECでも色々展示がされると思うが、他社に技術は負けていない。ただし、私はちょっと待ったをかけている。ワイヤレスは何と何をつなぐかが重要で、他社がやっているように、ディスプレイとチューナーをセパレートにするという場合には、これは必要。プレーヤー/レコーダーとテレビの場合は、昔のテレビでは使えないという問題がある。テレビとPCの接続については、本当に無線が必要なのか。無線は、先頭を切って出すことは出来るが、これをやる必要があるかは疑問だ。方式については、ミリ波が5年先や10年先を見据えて有力なのではないかと考えているが、最終的には決めていない(藤井氏)。
(Phile-web編集部)