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公開日 2010/01/08 19:26
3D/エナジー事業シフトでサムスン追撃 − パナソニックが経営方針説明会を開催
「サムスンを良く研究しなければ」
パナソニック(株)は、2010年度の経営方針説明会を開催。同社社長の大坪文雄氏、経理・財務担当 取締役の上野山 実氏が出席した。
大坪社長は冒頭、三洋電機を子会社化したことについて言及。「新生パナソニックでは、三洋電機を新たにグループに加えた。特に太陽電池や二次電池、業務用機器など強い事業を持つ三洋電機を加えたことで大きなポテンシャルを得た。モノ作りで社会の発展・豊かなくらしに貢献するという方針で進んでいく」とし、三洋電機とのシナジー創出がグループの大きな課題であることを説明した。
シナジーの最大化に向けて、パナソニックでは「お客様起点でベストの姿を追求する」という。成長・強化という観点からは、環境/エナジーで先頭に立つこと、新事業を大胆に描くこと、学びあい、知恵を結集することが重要と説明。さらに両社の事業が重複している分野などについては、「互いの強みを見極める、やめるべき事業はやめることが必要。課題を出し切り、一気に改革する」とした。
薄型テレビ事業については、「新たな展開でグローバル事業を勝ち抜く」と宣言。International CESでも発表されたとおり、フルHD 3Dプラズマを今春発売するほか、LEDバックライトを搭載した液晶テレビの販売を、全モデルのうち30%へと一気に引き上げるという。
また、新興国や米国などのボリュームゾーンを攻略する施策については、新興国ではCRTテレビから32V型クラスの液晶テレビへ、米国ではリアプロジェクションテレビから65/58V型クラスのプラズマテレビへの置きかえ需要をねらっていくという。
さらに大坪氏は、薄型テレビの生産コストを引き下げるため、尼崎や姫路の新パネル工場を稼働させる一方、モジュールやセットは海外で集中生産することも表明した。現在同社は、テレビセットはチェコやメキシコ、中国で、モジュールについてはマレーシアやタイで生産を行っているが、テレビセットについては「今後はインドでの生産も考えたい」と説明。「完成品の生産は今後急速に海外シフトを進めていく」と述べた。
AV機器については、3D関連機器に大きな期待を寄せている。3DテレビやBDプレーヤー/レコーダー、シアターシステムなどだけでなく、パナソニックハリウッド研究所のオーサリング技術、業務用の撮影・編集機器などについても3D化を進め、「エンド・トゥ−・エンドの総合力で圧倒的市場ポジションを確立する」とした。
なお、記者会見の席上でサムスン電子の強み、脅威をどのように捉えているか問われた大坪氏は、「オーナー系企業であるし、強烈なリーダーシップのもと経営を行っている。経営スピードについても我々よりはるかに強いと言うことは認識しなければならない。特許の出願件数などを見ていても、技術レベルもどんどん上がっている。我々にとっては、一番強力なリーディングカンパニーであると認識している」と回答。
その上で大坪氏は、「冷静に見てみると、ウォンは安く、円は高くなっている。韓国政府の税の優遇などについても、我々とは比較にならない。経営環境の状況の違いもよく見極めていかなければならない。ただし、サムスンをよく研究し、勉強しなければならないことは確かだ」とした。
さらに大坪氏はサムスンについて、「既存の事業範囲についてこれから競争するのは大変厳しい。したがって、エネルギーマネジメントのような、AV単品、白物単品とは違った土俵を作ろうという戦略だ。我々のビジネス構築力などは優位性があるので、これをスピーディーにやり遂げることがサムスンへの有効な対抗策になるだろう」と述べた。
大坪氏はまた、薄型テレビ事業でのサムスン対抗策について「正直に言って今日現在、薄型テレビの売上げではサムスン電子に遙かに凌駕されているのが事実。これからは量だけではなく質でも勝負していきたい。ここでカギとなるのは3Dだ。テレビやBDはもちろん、SkypeやDIRECTV、撮影用のカメラも開発した。エンド・トゥー・エンドのソリューションを充実させ、サムスン対抗への一つの柱にしたい」とした。
また大坪氏は、三洋電機とのシナジーを前提として「創業100周年ビジョン」についても言及。「世界はいま、極めて大きな節目を迎えている。持続可能な多極化社会の実現に向け、パナソニックが今後5〜10年でやるべきことはグリーン革命の先導を果たすこと。そのために、エレクトロニクス関連企業としてナンバーワンの環境革新企業を目指す」と力強く宣言した。具体的には、CO2削減への貢献、資源循環への貢献、エナジーシステム事業規模、環境配慮商品、およびその売上比率で、いずれも業界ナンバーワンを目指すとした。2018年度には、環境配慮ナンバーワン商品の売上比率を30%以上にするとともに、エナジーシステム事業の売上げ3兆円を目指すという。
大坪社長はさらに、「グリーン指標で業界ナンバーワンになるとともに、グローバルエクセレンス企業としての指標を常にクリアしたい」とも述べ、具体的には2018年に売上高10兆円以上、営業利益率10%以上、ROE 10%以上を達成することを目標に掲げた。
2010年は、2012年までの新中期計画の最初の年にあたる。2009年度までのGP3計画が大幅な未達に終わったことを受け、三洋電機をグループ会社化したことで、2010年からはこれまでとは異なる非連続な施策を行っていくことで、世界ナンバーワンに成長させる基盤を作っていくという。
新中期計画の基本コンセプトは「環境貢献と事業成長の一体化」「大胆なパラダイム転換」「成長をベースとした収益力強化」の3点。特にパラダイム転換については、「日本中心から徹底的なグローバル志向へ、また既存事業偏重からエナジーなど新領域へ、さらに単品志向からソリューションシステム志向へと、パラダイムチェンジを行っていく」とした。
特にエナジーソリューションについては、同社が以前から唱えている「家・ビルまるごとエコ」の推進を強化することを改めて説明。大坪氏は「家・ビル丸ごとソリューションを作ってこそ、他社に真似できないパナソニックの強みを発揮できる。創エネ、蓄エネ、省エネのそれぞれを強化し、エナジー事業をフラグシップ事業にする」と述べた。
最後に大坪氏は、パナソニックの2010年の経営スローガン「Unite Our Efforts - Drive Eco Innovation 力を一つに、環境革新」を発表。このスローガンのもと、全社員一丸となって頑張っていきたいと述べた。
以下、記者会見で行われた質疑応答をお伝えする。
Q:三洋電機との協業の中で、「やめるべきものはやめる」との説明があったが、具体定期にはどのようなものが念頭にあるのか。どのような基準で線引きするのか。
A:子会社化が決まってから直ちにチームを立ち上げて検討しているので現段階では回答できない。ただし、大方針としては、シナジーを発揮して大きくなる事業なのかどうかで判断するということ。だから、似た事業領域だから直ちにやめる、ということではない。
Q:閣僚の発言で為替がこの数日変動している。いまの為替水準についてどう考えているか。閣僚が為替について発言することについてどう考えているか。
A:輸出という面から見ると、強すぎる円は問題だ。為替については安定しており、急激な変化がないということが重要なファクターだと考えている。
Q:新興国のボリュームゾーン戦略について、もっとくわしく教えてほしい。
A:単に安い商品ということではなく、現地の中間所得者層に受け入れられる製品を作るというのが基本戦略。インドネシアの冷蔵庫の開発を、こういった方針のもと、現地主導で進めた結果、好評を得ている。また、インドではスプリット型のエアコンを開発中だ。現地の人が現地のニーズを汲んで、現地の材料をなるべく使うというのが重要になる。ボリュームゾーンで数を稼いで利益を上げることは十分可能だ。
Q:エナジー事業についてはGoogleなども参入するが、これらの企業をライバルとして考えているのか、提携などの可能性もあるのか。
A:エナジー事業は、これから本格的に積み上げていく事業だ。GoogleなどはIT技術をベースに参入してきているが、パナソニックは家電のオンオフ、消費電力などもコントロールしながらスマートグリッドなどとつないでいくという方向性だ。「暮らしからアイデアを起こす」というユニークな手法であり、我々のやり方でリーダーシップを取れるのではないか。
Q:説明の中で出てきた「非連続な施策」というのは何を意味するのか。
A:日常的な経営活動の中で、これまでの仕事を踏襲するのでなく、やり方を一つ一つ見直していくということを示している。メンタル面で「昨日の続きが今日」という考え方をしないようにしようということだ。
Q:今後成長を図っていく中で、パナソニックグループとして足りないリソースは何か。 ヘルスケア、LEDなどの分野なのか。
A:ヘルスケアについて言うと、我々は機器を作る能力は持っているが、業界の人的なつながりなどはまだまだだ。自前ですべてをカバーするというこれまでの考え方だけでなく、他社との協業なども積極的に検討していきたい。
Q:三洋電機とのシナジー創出の進捗状況について教えてほしい。
A:3月末までに、社内でシナジー創出の報告会を開催する。それにあわせて各チームが検討を進めているところだ。
Q:エナジー事業で今後、3兆円以上の売上げを目指していくとのことだが、パナソニックと三洋はこれまで激しいライバル関係にあった。投資、技術開発などでどのように協力していくのか。
A:重複分野があったとしたら、これまでどちらが優位だったのか、などを分析して進めていきたい。ただし、パナソニックと三洋電機が一緒になったと言っても、シェアは合計しても35%。65%が未開拓分野だ。そういったことを考えながらコラボレーションを進めていきたい。
大坪社長は冒頭、三洋電機を子会社化したことについて言及。「新生パナソニックでは、三洋電機を新たにグループに加えた。特に太陽電池や二次電池、業務用機器など強い事業を持つ三洋電機を加えたことで大きなポテンシャルを得た。モノ作りで社会の発展・豊かなくらしに貢献するという方針で進んでいく」とし、三洋電機とのシナジー創出がグループの大きな課題であることを説明した。
シナジーの最大化に向けて、パナソニックでは「お客様起点でベストの姿を追求する」という。成長・強化という観点からは、環境/エナジーで先頭に立つこと、新事業を大胆に描くこと、学びあい、知恵を結集することが重要と説明。さらに両社の事業が重複している分野などについては、「互いの強みを見極める、やめるべき事業はやめることが必要。課題を出し切り、一気に改革する」とした。
薄型テレビ事業については、「新たな展開でグローバル事業を勝ち抜く」と宣言。International CESでも発表されたとおり、フルHD 3Dプラズマを今春発売するほか、LEDバックライトを搭載した液晶テレビの販売を、全モデルのうち30%へと一気に引き上げるという。
また、新興国や米国などのボリュームゾーンを攻略する施策については、新興国ではCRTテレビから32V型クラスの液晶テレビへ、米国ではリアプロジェクションテレビから65/58V型クラスのプラズマテレビへの置きかえ需要をねらっていくという。
さらに大坪氏は、薄型テレビの生産コストを引き下げるため、尼崎や姫路の新パネル工場を稼働させる一方、モジュールやセットは海外で集中生産することも表明した。現在同社は、テレビセットはチェコやメキシコ、中国で、モジュールについてはマレーシアやタイで生産を行っているが、テレビセットについては「今後はインドでの生産も考えたい」と説明。「完成品の生産は今後急速に海外シフトを進めていく」と述べた。
AV機器については、3D関連機器に大きな期待を寄せている。3DテレビやBDプレーヤー/レコーダー、シアターシステムなどだけでなく、パナソニックハリウッド研究所のオーサリング技術、業務用の撮影・編集機器などについても3D化を進め、「エンド・トゥ−・エンドの総合力で圧倒的市場ポジションを確立する」とした。
なお、記者会見の席上でサムスン電子の強み、脅威をどのように捉えているか問われた大坪氏は、「オーナー系企業であるし、強烈なリーダーシップのもと経営を行っている。経営スピードについても我々よりはるかに強いと言うことは認識しなければならない。特許の出願件数などを見ていても、技術レベルもどんどん上がっている。我々にとっては、一番強力なリーディングカンパニーであると認識している」と回答。
その上で大坪氏は、「冷静に見てみると、ウォンは安く、円は高くなっている。韓国政府の税の優遇などについても、我々とは比較にならない。経営環境の状況の違いもよく見極めていかなければならない。ただし、サムスンをよく研究し、勉強しなければならないことは確かだ」とした。
さらに大坪氏はサムスンについて、「既存の事業範囲についてこれから競争するのは大変厳しい。したがって、エネルギーマネジメントのような、AV単品、白物単品とは違った土俵を作ろうという戦略だ。我々のビジネス構築力などは優位性があるので、これをスピーディーにやり遂げることがサムスンへの有効な対抗策になるだろう」と述べた。
大坪氏はまた、薄型テレビ事業でのサムスン対抗策について「正直に言って今日現在、薄型テレビの売上げではサムスン電子に遙かに凌駕されているのが事実。これからは量だけではなく質でも勝負していきたい。ここでカギとなるのは3Dだ。テレビやBDはもちろん、SkypeやDIRECTV、撮影用のカメラも開発した。エンド・トゥー・エンドのソリューションを充実させ、サムスン対抗への一つの柱にしたい」とした。
また大坪氏は、三洋電機とのシナジーを前提として「創業100周年ビジョン」についても言及。「世界はいま、極めて大きな節目を迎えている。持続可能な多極化社会の実現に向け、パナソニックが今後5〜10年でやるべきことはグリーン革命の先導を果たすこと。そのために、エレクトロニクス関連企業としてナンバーワンの環境革新企業を目指す」と力強く宣言した。具体的には、CO2削減への貢献、資源循環への貢献、エナジーシステム事業規模、環境配慮商品、およびその売上比率で、いずれも業界ナンバーワンを目指すとした。2018年度には、環境配慮ナンバーワン商品の売上比率を30%以上にするとともに、エナジーシステム事業の売上げ3兆円を目指すという。
大坪社長はさらに、「グリーン指標で業界ナンバーワンになるとともに、グローバルエクセレンス企業としての指標を常にクリアしたい」とも述べ、具体的には2018年に売上高10兆円以上、営業利益率10%以上、ROE 10%以上を達成することを目標に掲げた。
2010年は、2012年までの新中期計画の最初の年にあたる。2009年度までのGP3計画が大幅な未達に終わったことを受け、三洋電機をグループ会社化したことで、2010年からはこれまでとは異なる非連続な施策を行っていくことで、世界ナンバーワンに成長させる基盤を作っていくという。
新中期計画の基本コンセプトは「環境貢献と事業成長の一体化」「大胆なパラダイム転換」「成長をベースとした収益力強化」の3点。特にパラダイム転換については、「日本中心から徹底的なグローバル志向へ、また既存事業偏重からエナジーなど新領域へ、さらに単品志向からソリューションシステム志向へと、パラダイムチェンジを行っていく」とした。
特にエナジーソリューションについては、同社が以前から唱えている「家・ビルまるごとエコ」の推進を強化することを改めて説明。大坪氏は「家・ビル丸ごとソリューションを作ってこそ、他社に真似できないパナソニックの強みを発揮できる。創エネ、蓄エネ、省エネのそれぞれを強化し、エナジー事業をフラグシップ事業にする」と述べた。
最後に大坪氏は、パナソニックの2010年の経営スローガン「Unite Our Efforts - Drive Eco Innovation 力を一つに、環境革新」を発表。このスローガンのもと、全社員一丸となって頑張っていきたいと述べた。
以下、記者会見で行われた質疑応答をお伝えする。
Q:三洋電機との協業の中で、「やめるべきものはやめる」との説明があったが、具体定期にはどのようなものが念頭にあるのか。どのような基準で線引きするのか。
A:子会社化が決まってから直ちにチームを立ち上げて検討しているので現段階では回答できない。ただし、大方針としては、シナジーを発揮して大きくなる事業なのかどうかで判断するということ。だから、似た事業領域だから直ちにやめる、ということではない。
Q:閣僚の発言で為替がこの数日変動している。いまの為替水準についてどう考えているか。閣僚が為替について発言することについてどう考えているか。
A:輸出という面から見ると、強すぎる円は問題だ。為替については安定しており、急激な変化がないということが重要なファクターだと考えている。
Q:新興国のボリュームゾーン戦略について、もっとくわしく教えてほしい。
A:単に安い商品ということではなく、現地の中間所得者層に受け入れられる製品を作るというのが基本戦略。インドネシアの冷蔵庫の開発を、こういった方針のもと、現地主導で進めた結果、好評を得ている。また、インドではスプリット型のエアコンを開発中だ。現地の人が現地のニーズを汲んで、現地の材料をなるべく使うというのが重要になる。ボリュームゾーンで数を稼いで利益を上げることは十分可能だ。
Q:エナジー事業についてはGoogleなども参入するが、これらの企業をライバルとして考えているのか、提携などの可能性もあるのか。
A:エナジー事業は、これから本格的に積み上げていく事業だ。GoogleなどはIT技術をベースに参入してきているが、パナソニックは家電のオンオフ、消費電力などもコントロールしながらスマートグリッドなどとつないでいくという方向性だ。「暮らしからアイデアを起こす」というユニークな手法であり、我々のやり方でリーダーシップを取れるのではないか。
Q:説明の中で出てきた「非連続な施策」というのは何を意味するのか。
A:日常的な経営活動の中で、これまでの仕事を踏襲するのでなく、やり方を一つ一つ見直していくということを示している。メンタル面で「昨日の続きが今日」という考え方をしないようにしようということだ。
Q:今後成長を図っていく中で、パナソニックグループとして足りないリソースは何か。 ヘルスケア、LEDなどの分野なのか。
A:ヘルスケアについて言うと、我々は機器を作る能力は持っているが、業界の人的なつながりなどはまだまだだ。自前ですべてをカバーするというこれまでの考え方だけでなく、他社との協業なども積極的に検討していきたい。
Q:三洋電機とのシナジー創出の進捗状況について教えてほしい。
A:3月末までに、社内でシナジー創出の報告会を開催する。それにあわせて各チームが検討を進めているところだ。
Q:エナジー事業で今後、3兆円以上の売上げを目指していくとのことだが、パナソニックと三洋はこれまで激しいライバル関係にあった。投資、技術開発などでどのように協力していくのか。
A:重複分野があったとしたら、これまでどちらが優位だったのか、などを分析して進めていきたい。ただし、パナソニックと三洋電機が一緒になったと言っても、シェアは合計しても35%。65%が未開拓分野だ。そういったことを考えながらコラボレーションを進めていきたい。