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公開日 2011/09/03 21:09

<IFA>東芝・大角氏オープニングキーノート − 「スマート・コミュニティ」実現のビジョンを語る

震災復興に向けて全力貢献を宣言
ファイル・ウェブ編集部:山本 敦
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IFA2011オープニング・インターナショナル・キーノートの壇上に立つ(株)東芝 大角正明氏
IFA2011の開幕初日となる現地時間9月2日。オープニング・インターナショナル・キーノートスピーチに(株)東芝 執行役上席常務 デジタルプロダクツ&サービス社 社長の大角正明氏が登壇し、東芝が世界に向けて提供する、デジタル技術とエネルギー技術による社会貢献のビジョンを紹介した。


■未曾有の大震災は、人々に「エネルギー創出」の必要性を認識させた

カンファレンスでは、2011年3月11日に東日本大震災が発生した後、東芝がどのような方向にビジネス戦略の舵を切り、同社のデジタル技術、エネルギー技術など各分野におけるノウハウの蓄積を、日本社会の復興・発展のためにどう活かすかが詳しく語られた。また同社の様々な分野における先端技術について、グローバルな社会貢献へとつなげるためのビジョンも示された。

冒頭、大角氏はカンファレンスの来場者にむけてドイツ語で語りはじめ、「日本が震災と津波による大きな被害に見舞われた後、ヨーロッパ、ドイツの方々から多くのお見舞いの言葉と、義援金をはじめとする様々な支援を頂戴したことについて、私からお礼を申し上げたい。皆様からの温かな力添えは、日本の復興に確かな力となっている。誠にありがとうございました」と感謝の言葉を述べた。


2011年3月11日に発生した東日本大震災についての紹介からカンファレンスがスタートした

被災地域へヨーロッパ、ドイツからおくられた支援への謝意を大角氏はドイツ語で述べた
続くスピーチは英語で行われた。大角氏は東日本大震災の後、東芝として自社のビジネスをどのような考え方で推進していくか、具体的な取り組みを一つ一つ紹介していった。

大角氏は震災が発生した直後に被災地へ駆けつけたが、その被害の状況は想像を絶するものだったと言う。東芝の地域店の中には、被災して店舗を失った店舗も数多くあったというが、全社員の協力により困難を乗り越えたという。だが、被災した各地域が街単位で復興を遂げるには、これからまだ、最低でも数年単位の時間がかかるだろうと述べた。

「だが、私は被災地で復興に取り組む人々の中に“一致団結”という一筋の光をみた」と大角氏は語る。「これから新しく、街を築き上げていくためには長く、大変な努力が必要だ。だが一方では、そこに最新の技術を採り入れた“強く・想像力豊かな街”をつくるチャンスがあると捉えることもできる。新しい都市計画の幕開けは、大災害といういわば“不幸な推進力”により始まることになってしまったが、人々に新たな“気付き”をもたらした」。

大角氏は震災が日本の人々に“価値観の変化”をもたらし、その価値観が世界中に、短期間で広がって行ったと説明。中でも最も大きな変化は「エネルギーに対する考え方」だ。大震災の直後に発生したエネルギー危機は、東日本全体の発電・送電インフラに大きなダメージを与え、その影響は東北・東京を超え、日本全体に広がった。「当たり前のように考えられてきた安全で快適な生活が失われたことで、日本全体がエネルギーの価値を切実に考えるようになったことは大きな変化」と大角氏は述べ、「震災前の私たちの暮らしは、はエネルギー供給を発電事業者に依存して、好きなときに好きなだけエネルギーを浪費するようなものだった。いま、そのような暮らしから脱却して、エネルギーの大切さと真摯に向かいあいながら、“エネルギー創出”を皆で考えるべき時がやってきた」と述べた。

大震災により人々が「エネルギーの価値」を再認識した

人々が新たに期待しているのは、“地元で発電し、地元で消費する”「再生可能なエネルギー」にあり、世界の関心がいま、震災を経た後の、日本の「新しいエネルギー創出技術」に向けられていると大角氏は続け、「優れた技術を求める声が世界中で高まり、その普及を通じた“スマート・コミュニティ”実現の礎となる企業が、今後の競争から一歩抜きん出ることになるだろう」とした。

大角氏は「スマート・コミュニティ」への期待は震災復興の日本にとどまらず、今後も世界の先進国・発展途上国の両方で高まっていくという見解を示した。スマート・コミュニティ市場へ参入する企業の中には、これまでエネルギーとは縁の薄かった大企業もあり、それぞれ知恵を出しながら、新しい社会の実現に向けた提案を競い合うだろうと大角氏は説明。

大角氏はまた「新たに強く、スマートな都市社会を確立していくことは困難な道のりではあるが、震災後の日本人は伝統的な価値を再発見することができた」と語り、プレゼンテーションのスクリーンに「絆」の漢字1文字を映しだした。「この漢字の意味は、“人と人との、固い契り”を表している。左側は“糸”を意味しており、また右側は“半”とも読める。私は、この左右の文字を合わせた“絆”という文字には、近しい人々の感情や状況を、相手の気持ちになって考えてみるという意味があると考える。二人の人間の片方が強くひっぱり過ぎてしまうと“糸”は引きちぎれてしまうだろう」とし、「絆」という漢字の意味になぞらえながら、スマート・コミュニティ実現のためには、他者への思いやりが大切と強調した。「例えば高齢化社会は、日本が他の先進国に先駆けて直面したグローバルな問題だ。高齢者をはじめとした方々への思いやりを活かした快適な都市計画、犯罪を未然に防ぎ、安全を重んじる都市計画が今後は重視されるべきだ」。

「絆」の文字になぞらえ、「スマート・コミュニティ」実現のために必用な考え方を述べた


■東芝は「スマート・コミュニティ」実現に必要な技術を一手に担える企業


東芝が考える「スマート・コミュニティ」のビジョンを披露
日本は復興への取り組みを通じて、将来の世代にも豊かさを引き継げる「持続可能な社会」を獲得できると大角氏は述べ、この持続可能な社会のビジョンを「スマート・コミュニティ」として、東芝のテーマとして推進していくと述べた。そして自然と人間が共生していくために、ソーラー/地熱/風力といった、再生可能エネルギーを積極活用していくべきであるとも強調した。大角氏は「再生可能エネルギーを既存の送電網に組み込むことは大きなチャレンジだが、そもそも日本の送電網の立ち上げに深く関わってきた企業は東芝だ。そして、東芝の送電網は世界で最も効率的なグリッドであることに注目して欲しい」とアピールした。また東芝が長年かけて作り上げてきた電力技術をベースに、新たなエネルギー・マネージメント・ソリューションを世界に向けて提供していく方針を述べた。

東芝の社会インフラに関連した製品とサービスは、電気事業以外にも多岐にわたる。大角氏は「例えばそれは、飲料水の技術だ。飲料水は大切な社会のリソースだが、東芝の浄水技術は世界で最も安全であるという評価を受けている」とし、現在も海水や排水を飲料水として浄化する技術などの開発を進めていることを紹介した。また交通・輸送システムや、ビルディング・マネージメントシステム、先端医療システムなどの先進技術についても例を挙げながら、「東芝はスマート・コミュニティを実現するために必要な技術を、まるごと提供できる数少ない企業のひとつ」とアピールした。

東芝の「飲料水技術」を紹介

交通・輸送システム技術の先進性をアピール


■先進エネルギーソリューションを備えたホームエンターテインメント機器を紹介

続いて東芝のホームエンターテインメント機器における「スマート・コミュニティ」の取り組みなどが紹介された。


日本国民の節電努力を紹介
大角氏は3月の大震災後に発生した「エネルギー危機」を受けて、日本の国民ひとりひとりが「節電」のために努力してきたことを紹介し、東芝として、人々の努力をサポートするために行ってきた取り組みを挙げた。大角氏は「東芝が考える“未来のデバイスのあるべき姿”とは、ハイクオリティなエンタテインメントとエネルギーマネージメントの性能を高次で両立させた製品である」とし、プレスカンファレンスで発表した新しいAndroidタブレットノートPCなどが、エンターテインメントのパフォーマンスと省エネ性能を両立させた製品の代表例として紹介された。

RZ節電リモのデモを実施

PC製品のスペックも紹介

また国内ではタブレットやスマートフォンで利用できるモバイル製品用アプリの「RZ節電リモ」(関連ニュース)のデモが行われ、タブレットなどで家庭のテレビの消費電力マネジメントができる連携機能を紹介。「個人の節電・省電への参画をよりサポートできるアプリケーション」として披露した。

また日本国内向けにも6月に発表が行われた“ピークシフト機能”を搭載した19V型の“REGZA”(関連ニュース)も壇上で紹介し、AC電源に加えて内蔵バッテリーで最長3時間のテレビ視聴が行える機能をデモ。電力のピークシフトに貢献できるテレビとして、導入国で高い評価を獲得していることを強調した。また、テレビやBD製品のために開発した、待機電力0Wを実現する「ecoチップ」についても、日本国内で年度内に搭載商品を発売することも紹介した。

“ピークシフト機能”を搭載した19V型の“REGZA”を紹介

ピークシフトボタンの機能をデモした


新しい「ecoチップ」搭載製品の国内投入予定を紹介
ヨーロッパ向けの商品展開についても触れられ、先日のカンファレンスで発表された4K/グラスレス3Dテレビにおける先進技術や、ヨーロッパのテレビ/タブレット/PC製品向けに展開するクラウドサービス「Toshiba Places」をピックアップした。

ヨーロッパで展開する「Toshiba Places」

大角氏は「今回のイベントでご覧いただく商品をはじめ、東芝はハード/ソフト/サービスの3つの柱に先進的な商品を揃えて、ホームエンターテインメントの開拓者であり続ける」と抱負を語った。使いやすいハードと豊富なコンテンツを揃えたエンターテインメントサービスを軸に置き、簡単かつ楽しく利用できるエネルギー・マネージメント機能についても、順次ヨーロッパ向け商品に展開する計画を明らかにした。

エネルギー・マネージメント機能をホーム用機器向けにヨーロッパでも展開していく


■「デジタル技術」と「エネルギー技術」の知見を融合させ、社会貢献に全力で取り組む

大角氏はデジタル技術とエネルギー技術の知見を融合させていくことで、東芝がホームエンターテインメントとホームエネルギーソリューションのリーダーになっていく、と力強く宣言。このテーマを実現するためにスマートメーターは必用不可欠な機器とし、当分野のリーディングカンパニーであるスイスの大手メーカー、ランティス・ギアを買収したことについても触れ、同社とともに“スマート・コミュニティ”の提案をグローバルに拡大させると述べた。

持続可能な社会実現のため、リーダーシップを執っていくことを宣言した

「東芝は日本国内にとどまらず、ヨーロッパへ、そして世界に向けてスマート・コミュニティ実現のためのソリューションを提供していく」と述べ、デジタルデバイスのリーディングカンパニーとしてだけでなく、人と人、コミュニティとの強い「絆」の確立に貢献していくと、同社の企業ビジョンを宣言。「復興へ力強く歩み始めた日本をサポートしながら、東芝はこれからも全力でグローバルな社会貢献に邁進して行きたい」とスピーチを締めくくった。

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