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公開日 2018/11/12 19:33
4K化でテレビドラマ作りに大きな変化。新4K衛星放送スタート間近、BSテレ東などの制作現場を見た
QVCも4Kで「新次元のお買い物」へ
BS/110度CS放送を使った「新4K8K衛星放送(BS4K/BS8K)」。12月1日からの開始が間近に迫り、周知活動などを行う一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)がメディア向けに放送局の4K設備などを公開するイベントを開催。BSテレ東4Kや4K QVCの設備が公開され、プロデューサーらが4Kでの番組づくりのメリットや苦労を語った。
■4K放送開始で「テレビドラマが映画的になる」
新4K8K衛星放送は12月1日10時からスタートする。すべてのチャンネルを視聴するには新たに右旋波と左旋波の両方に対応するアンテナなどを用意する必要があるが、現在BS放送を視聴できている家庭であれば、4Kテレビとチューナー(もしくはチューナー内蔵4Kテレビ)を用意するだけでも、民放キー局系など一部の4Kチャンネルを視聴することができる。
一般視聴者向けにメーカー各社から続々と同放送対応製品が発売されているが、放送局側の準備も着々と進んでいる。今回設備を公開したBSテレ東4Kを始めとするBS民放各社では、4Kマスターを共通でNEC製のものにするなどで4K化の工期短縮とコスト抑制を図り、放送開始に向けて準備を進めているという。
BSテレビ東京では、六本木社屋の第2スタジオを2016年11月の移転時に“4Kレディスタジオ”として整備し、2018年8月に4K生放送対応スタジオへと改修。カメラ設備にソニー製の「HDC-4300」「BPU-4500」「HDCU-2000」6式を揃えるなど、4K/2K、HLG/SDR両対応の体制を整えている。なお、天王洲社屋の第1スタジオも4K対応しているほか、神谷町社屋の第1スタジオも今年度中に4K生放送対応へと改修が完了する予定だという。
BSテレ東 制作局の森田昇プロデューサーは、「(番組を制作する)現場の人間からすると、機材が4K対応になるということ以上に、撮影方法が大きく変わった。現在、そのメリットが一番大きいのがドラマだ」とコメント。「より細かな演出をつけられるようになり、誤解を恐れずに言えば、テレビドラマが映画的になった」と語る。
そして「特に撮影データをLogで収録するようになったのが一番大きい」とし、膨大なデータ量で収録しておくようになったメリットに言及。より高精細なカメラとレンズを使い、2K時より膨大なデータ量で収録するため、ボケ味や空気感、奥行き感、光の質感などを細かく表現できるようになるため、「従来のようなベタっとした画ではなくなり、セリフも何もなく、人がただ立っているだけの動かない画でもストーリーが伝わる。Log収録になってそういうことができるようになった」という。
また、「例えば笑みの表現で、口角が上がるような演技の場合、クローズアップで撮ると頬の微妙な動きも伝わる。これは2Kでは伝わりにくい部分だ」など、具体的な演出上のメリットも紹介。「怒った顔も細かな表情の動きがちゃんと分かる」とし、そうしたより細かい演出をするため出演者に求められる演技の水準も上がり、「上手な人はより上手に、そうでない人はそれなりなのが分かるようになってしまう(笑)」とも述べた。
「小道具の銃もクローズアップで撮影したら鉄ではないニセモノなのがバレた。そこで、ちゃんと鉄のリアルなものを用意したが、鉄の冷たさ、油の染み込んだ感じがちゃんと表現でき、『あぁ、人を殺める道具なんだな』というのがよりリアルに伝わる」などとも語る一方、「ほんのわずかに汗をかいてもわかってしまうので、撮影時の温度も気にするようになった」などと裏話も明かした。
また、ドラマだけでなくグルメ番組などにおいても4Kのメリットが大きいとコメント。「ご飯の映像も、2Kではなんとなくの白い塊だったところが、4Kでは一粒一粒が粒立ち、艶も分かる。湯気にも筋があり、食べ物のどこから湯気が上がっているのかが見える」とし、「カレーでも、スパイスはルーに溶けているのではなく、ルーのなかにスパイスのつぶつぶが散っていることが見て取れる。4Kだと美味しいものがちゃんと美味しく見える」と語った。
なお、毎日の放送開始/終了時に流すオープニング/クロージング映像をHDRで撮影したとのこと。「あえて習字のパフォーマンスという、白と黒の世界をテーマにしたのだが、光の当たり方で墨汁の濃淡や色がまったく異なってくる様子や、墨汁が和紙の上で乾いていく様子も分かる。和紙の表面のデコボコも確認できた」という。
今後に向けては「カツラの際(きわ)や衣装の安っぽさ、セットの粗も見えてしまうので、そういった部分をどうカバーしていくかが課題」とコメント。ドラマ以外のジャンルの番組の4K化については「バラエティはテロップを入れたりマルチ画面にしたりといったこともあるため、ドラマより編集に手間が必要になる」とし、そうした部分のノウハウを蓄積していく必要があると説明。「そういったことがクリアになれば、バカバカしさに磨きがかかったり、進化したバラエティ番組の姿が見られるのかもしれない」とした。
■どんな番組が4Kで放送される?
BSテレ東4Kでは、新4K8K衛星放送がスタートする12月1日と2日に浅田次郎「プリズンホテル」の一挙放送や、伊集院静の原作小説を内野聖陽主演で4Kドラマ化した「琥珀の夢 特別版」などの4K制作番組をオンエア。その後も「ドラマBiz ハラスメントゲーム」、栗山千明主演「サイレント・ヴォイス 行動心理官・楯岡絵麻」などを4Kで制作、放送する。
加えて2019年1月には「池波正太郎時代劇 光と影」など新たな4K制作番組も放送予定。12月時点では2Kからのアップコンバートで放送する「日経モーニングプラス」をピュア4K化するなど、ドラマ以外でも4K制作番組が増える予定となっている。そのほか、深夜時間帯にはテレビショッピング番組「ショッピングQ 4K」を4K制作して放送する。
なお、これら4K制作番組を放送する以外の時間帯は、2K番組をHLG形式での4Kにアップコンバートして放送。「孤独のグルメ」「ガイアの夜明け」といったテレビ東京の人気番組に加え、「ポケットモンスター サン&ムーン」「妖怪ウォッチ シャドウサイド」「アイカツフレンズ!」などのアニメも4Kアップコンバートでオンエアされる。
■QVCでは4Kチューナー内蔵テレビが完売し「確実な手応え」
5月に今回同様のメディアツアー(関連ニュース)で、24時間365日すべて4Kでの生放送を行うことを宣言していたQVC(※4K放送でのチャンネル名は「4K QVC」)。今回のツアーでは、前回時点で未完成だったが4Kマスタールームが完成したことを紹介したほか、今年7月に新社長へ就任した塙 雄一郎氏が4Kでの展望を語るなどした。
なおQVCでは、新4K衛星放送チューナーを内蔵した東芝製4Kテレビ「レグザ BM620Xシリーズ」を販売したところ、55/50/43型の3サイズすべてが完売したとのこと。「我々の想像をはるかに超える売れ行きで嬉しい驚きだった。(新4K衛星放送に対して)確実な手応えを感じている」(塙氏)という。
一方で、「4Kの普及にはまだ時間がかかると言われていることは我々も承知しており、そこは覚悟している」ともコメント。「我々の理念は、商品を売るのではなく商品の情報をきちんとお客様にお届けすることであり、お客様に納得してお買い物をしていただくこと。商品の色や素材の違いなどのディテールの表現において4Kは新次元であることを私も実感しており、この新次元でのお買い物という体験をより多くのお客様にお届けしたいという想いで取り組んでいる」とした。
また、「現在は4Kと2Kのサイマル放送を念頭に番組づくりをしているが、どちらか片方に理想的な画作りを当てるともう一方の画が難しくなるなどといった課題が日々出てきている。そうした課題を解決しながらノウハウを積み重ねている」とも紹介した。
「東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて4Kは盛り上がることだろう。そのときに向けて、4Kでの画作りで誰にも負けない存在になっていたい」と語った。
■4K放送開始で「テレビドラマが映画的になる」
新4K8K衛星放送は12月1日10時からスタートする。すべてのチャンネルを視聴するには新たに右旋波と左旋波の両方に対応するアンテナなどを用意する必要があるが、現在BS放送を視聴できている家庭であれば、4Kテレビとチューナー(もしくはチューナー内蔵4Kテレビ)を用意するだけでも、民放キー局系など一部の4Kチャンネルを視聴することができる。
一般視聴者向けにメーカー各社から続々と同放送対応製品が発売されているが、放送局側の準備も着々と進んでいる。今回設備を公開したBSテレ東4Kを始めとするBS民放各社では、4Kマスターを共通でNEC製のものにするなどで4K化の工期短縮とコスト抑制を図り、放送開始に向けて準備を進めているという。
BSテレビ東京では、六本木社屋の第2スタジオを2016年11月の移転時に“4Kレディスタジオ”として整備し、2018年8月に4K生放送対応スタジオへと改修。カメラ設備にソニー製の「HDC-4300」「BPU-4500」「HDCU-2000」6式を揃えるなど、4K/2K、HLG/SDR両対応の体制を整えている。なお、天王洲社屋の第1スタジオも4K対応しているほか、神谷町社屋の第1スタジオも今年度中に4K生放送対応へと改修が完了する予定だという。
BSテレ東 制作局の森田昇プロデューサーは、「(番組を制作する)現場の人間からすると、機材が4K対応になるということ以上に、撮影方法が大きく変わった。現在、そのメリットが一番大きいのがドラマだ」とコメント。「より細かな演出をつけられるようになり、誤解を恐れずに言えば、テレビドラマが映画的になった」と語る。
そして「特に撮影データをLogで収録するようになったのが一番大きい」とし、膨大なデータ量で収録しておくようになったメリットに言及。より高精細なカメラとレンズを使い、2K時より膨大なデータ量で収録するため、ボケ味や空気感、奥行き感、光の質感などを細かく表現できるようになるため、「従来のようなベタっとした画ではなくなり、セリフも何もなく、人がただ立っているだけの動かない画でもストーリーが伝わる。Log収録になってそういうことができるようになった」という。
また、「例えば笑みの表現で、口角が上がるような演技の場合、クローズアップで撮ると頬の微妙な動きも伝わる。これは2Kでは伝わりにくい部分だ」など、具体的な演出上のメリットも紹介。「怒った顔も細かな表情の動きがちゃんと分かる」とし、そうしたより細かい演出をするため出演者に求められる演技の水準も上がり、「上手な人はより上手に、そうでない人はそれなりなのが分かるようになってしまう(笑)」とも述べた。
「小道具の銃もクローズアップで撮影したら鉄ではないニセモノなのがバレた。そこで、ちゃんと鉄のリアルなものを用意したが、鉄の冷たさ、油の染み込んだ感じがちゃんと表現でき、『あぁ、人を殺める道具なんだな』というのがよりリアルに伝わる」などとも語る一方、「ほんのわずかに汗をかいてもわかってしまうので、撮影時の温度も気にするようになった」などと裏話も明かした。
また、ドラマだけでなくグルメ番組などにおいても4Kのメリットが大きいとコメント。「ご飯の映像も、2Kではなんとなくの白い塊だったところが、4Kでは一粒一粒が粒立ち、艶も分かる。湯気にも筋があり、食べ物のどこから湯気が上がっているのかが見える」とし、「カレーでも、スパイスはルーに溶けているのではなく、ルーのなかにスパイスのつぶつぶが散っていることが見て取れる。4Kだと美味しいものがちゃんと美味しく見える」と語った。
なお、毎日の放送開始/終了時に流すオープニング/クロージング映像をHDRで撮影したとのこと。「あえて習字のパフォーマンスという、白と黒の世界をテーマにしたのだが、光の当たり方で墨汁の濃淡や色がまったく異なってくる様子や、墨汁が和紙の上で乾いていく様子も分かる。和紙の表面のデコボコも確認できた」という。
今後に向けては「カツラの際(きわ)や衣装の安っぽさ、セットの粗も見えてしまうので、そういった部分をどうカバーしていくかが課題」とコメント。ドラマ以外のジャンルの番組の4K化については「バラエティはテロップを入れたりマルチ画面にしたりといったこともあるため、ドラマより編集に手間が必要になる」とし、そうした部分のノウハウを蓄積していく必要があると説明。「そういったことがクリアになれば、バカバカしさに磨きがかかったり、進化したバラエティ番組の姿が見られるのかもしれない」とした。
■どんな番組が4Kで放送される?
BSテレ東4Kでは、新4K8K衛星放送がスタートする12月1日と2日に浅田次郎「プリズンホテル」の一挙放送や、伊集院静の原作小説を内野聖陽主演で4Kドラマ化した「琥珀の夢 特別版」などの4K制作番組をオンエア。その後も「ドラマBiz ハラスメントゲーム」、栗山千明主演「サイレント・ヴォイス 行動心理官・楯岡絵麻」などを4Kで制作、放送する。
加えて2019年1月には「池波正太郎時代劇 光と影」など新たな4K制作番組も放送予定。12月時点では2Kからのアップコンバートで放送する「日経モーニングプラス」をピュア4K化するなど、ドラマ以外でも4K制作番組が増える予定となっている。そのほか、深夜時間帯にはテレビショッピング番組「ショッピングQ 4K」を4K制作して放送する。
なお、これら4K制作番組を放送する以外の時間帯は、2K番組をHLG形式での4Kにアップコンバートして放送。「孤独のグルメ」「ガイアの夜明け」といったテレビ東京の人気番組に加え、「ポケットモンスター サン&ムーン」「妖怪ウォッチ シャドウサイド」「アイカツフレンズ!」などのアニメも4Kアップコンバートでオンエアされる。
■QVCでは4Kチューナー内蔵テレビが完売し「確実な手応え」
5月に今回同様のメディアツアー(関連ニュース)で、24時間365日すべて4Kでの生放送を行うことを宣言していたQVC(※4K放送でのチャンネル名は「4K QVC」)。今回のツアーでは、前回時点で未完成だったが4Kマスタールームが完成したことを紹介したほか、今年7月に新社長へ就任した塙 雄一郎氏が4Kでの展望を語るなどした。
なおQVCでは、新4K衛星放送チューナーを内蔵した東芝製4Kテレビ「レグザ BM620Xシリーズ」を販売したところ、55/50/43型の3サイズすべてが完売したとのこと。「我々の想像をはるかに超える売れ行きで嬉しい驚きだった。(新4K衛星放送に対して)確実な手応えを感じている」(塙氏)という。
一方で、「4Kの普及にはまだ時間がかかると言われていることは我々も承知しており、そこは覚悟している」ともコメント。「我々の理念は、商品を売るのではなく商品の情報をきちんとお客様にお届けすることであり、お客様に納得してお買い物をしていただくこと。商品の色や素材の違いなどのディテールの表現において4Kは新次元であることを私も実感しており、この新次元でのお買い物という体験をより多くのお客様にお届けしたいという想いで取り組んでいる」とした。
また、「現在は4Kと2Kのサイマル放送を念頭に番組づくりをしているが、どちらか片方に理想的な画作りを当てるともう一方の画が難しくなるなどといった課題が日々出てきている。そうした課題を解決しながらノウハウを積み重ねている」とも紹介した。
「東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて4Kは盛り上がることだろう。そのときに向けて、4Kでの画作りで誰にも負けない存在になっていたい」と語った。