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公開日 2024/03/22 12:38
ケーブルテレビは無線を最大限に活かし第5のモバイルキャリアへ。日本ケーブルテレビ連盟が定例説明会を開催
地域DXの事例を深掘りする BtoB/G/C事業説明会
■ケーブルテレビは生活上のプラットフォームを担う存在
一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟は定例記者説明会を開催し、「無線利活用戦略2024」と「2030ケーブルビジョン」発表以降、力を入れて進めている「BtoB/G/C事業者説明会」の取り組みについて説明を行った。
冒頭、あいさつした今林顯一理事長は「テレビ以外のことを行う世界が拡がり、生活上のプラットフォームを担う立場になってきており、半歩先を行くような展開ができればと思う。後ほど説明する『無線利活用戦略2024』は、そうした先行的な取り組みを始めている事業者との共同プロジェクトのひとつ。生活上の利便を考えていく上で無線は欠かせないインフラであると強く実感し、ケーブルテレビとしても取り組むことにしたものだ。取り組むからにはパートナーとビジョンを共有して取り組んでいきたい」と無線に対する取り組みの重要性を訴えた。
さらに、昨年7月に改訂したケーブルテレビ業界が目指すべき姿とアクションプランを策定した「2030ケーブルビジョン」について、「絵空事に終わらないように、ケーブルテレビ各社が自社の経営に落とし込んでビジネスを展開し、国民の皆様、事業者の皆様、法人の皆様にお役立ていただく、そうした貢献を通じてケーブルテレビはますます発展し、役割を果たしていく。これから実装を進めていかなくてはならない」とした。
「大風呂敷ばかりではなく、BtoB・BtoG・BtoCと色々な局面でこのビジョンを具体的に展開している、地域活性化が本当の意味を持つ魂を込めた取り組みの事例を紹介させていただくことでビジョンの具体化を図っていく」と「BtoB/G/C事業者説明会」の開催意義を強調した。
「判断するのは国民の皆様。重要な役割を担っていけるのか、その曲がり角に来ている。激動の時代に、『ケーブルテレビでこんないいことがあった』『地域でビジネスをやっていく上でよそとのつながりもできてこんな発展があった』とケーブルテレビ事業者の皆さんに言っていただける存在になりたい」とあいさつを締めくくった。
■無線を最大限に活用する戦略へシフトするステージへ
続いて、無線を基点としたビジネスやサービスの在り方、支えるインフラとしての方向について包括的に整理した『無線利活用戦略2024』について、無線利活用委員会委員長・田村欣也氏(株式会社ZTV代表取締役社長)が説明を行った。
諸外国のケーブルテレビ事業の状況として、放送契約数が過去10年で4割減となる米国と韓国を取り上げ、共通する背景としてIPTVの普及を指摘。日本ではまだIPTVが普及していないが、「恐らく10年後には同じ状況が起こる可能性が高い」と警鐘を鳴らした。
ただし、業界が縮小する一方の韓国に対し、米国では早期に“無線”を活用することで成長を堅持し、明暗が分かれる結果となった。例として挙げた米国Comcast社では、無線事業(MVNO)によるブロードバンド(BB)とのバンドルにより、BBの成長に合わせて加入者数が伸長し、全米モバイル市場の新規獲得の約3割を獲得。新たな柱に据えた無線事業はスタートから5年後に事業単独でプラス収益へ転換したという。
現在、日本のケーブルテレビ事業者を取り巻く環境は、有料放送が縮小し、FTTHの成長率が鈍化。そのFTTHの選択理由でも無線の通信キャリアによるスマートフォンとのセット割が中心となり、「有線がおまけになっていると言っても過言ではない」と訴える。さらに、通信キャリアによる固定無線アクセスシステム(FWA)の台頭も進んでいる。
ケーブルテレビの顧客基盤は大きく縮小する恐れに直面しており、契約数は何も策を講じなければ、2020年には2,682万世帯であったものが、2030年には1,459万世帯まで大きく縮小することが余儀なくされると予測する。
そこで活路を開くのが米国市場の例でも示された「無線」だ。田村氏はポジティブな変化として、「昨年夏にローカル5Gの共同利用制度が施行され、エリカ拡大のチャンスが訪れたこと」「MVNO(ケーブルスマホ)が前年同期比13.8%増と好調で、顧客基盤拡大に貢献していること」「地域BWA(Broadband Wireless Access)の5G化技術が進展し、より高速で利便性の高いサービスが提供可能になること」を挙げる。
「構築した顧客基盤を自前のインフラへとマイグレーションを進めることで、通信キャリアと競争できるサービス基盤を確立し、ケーブルならではの価値を提供して差別化することで独自のマネタイズができる」「投資したFTTHと顧客基盤を守り、通信キャリアの牙城を崩すため、無線を最大限に活用していく戦略へシフトすべきステージに来た」と力を込めた。
ケーブルのホームパスは全国約5,000万世帯をカバーし、先行する事業者の例から、その10%の獲得が可能であるとの見方を示す。目標として掲げる自前インフラは、「超野心的な数字だが大きな目標を持たないと戦っていけない」と、2025年までに125事業者・5,000基地局・10万回線、2030年までに300事業者・3万基地局・300万回線を掲げる。
■地域DXの事例を深掘りする BtoB/G/C事業説明会
ふたつめの「BtoB/G/C事業説明会」の取り組みについては、二瓶浩一常務理事が説明を行った。
ケーブルテレビ業界が地域とともに成長し、さらなる発展を遂げるため、2030年に向けて業界が担うべきミッションや目指すべき姿とアクションプランを策定した2021年6月発表の「2030ケーブルビジョン」が昨年7月に改訂された。
二瓶氏は「デジタル化推進の指針は変わらない。しかし、地方自治体におけるデジタルの実装の中身はどうなのか。各種の実証は進むが、実装の展望はどうなのか」と課題を指摘。「私たちが地域の事業者として、市民の声に傾聴して取り組んでいるのか。それぞれの施策が市民に届いているのか。そこに何が足りないのか。本当に意味での伴走者は誰なのかということを切実に感じている」と語る。
ケーブルテレビ事業の特長と役割を「地域企業としての伴走力、コミュニティに生きる地域メディアとしての社会実装のサポート」と語り、「私たちはメディアであり、インフラ事業者でもあり、両方からできることが想定以上にある。行政施策は地域社会に認知・理解され、実感・体感されなければ、どんなに素晴らしい施策でもご利用いただけない。伴走者が足りず、そこを私たちができると痛感している」と訴えた。
総務省「活力ある地域社会の実現に向けた情報通信基盤と利活用の在り方に関する懇談会」の資料を引用し、「地域DXを実現するためには、変革を主導する“X人材”と、ソリューションの開発を主導する“D人材”の参画が必要であり、それぞれに求められる能力は異なる。地域課題の洗い出しなどを行うX人材は地域事情に精通したものが望ましく、ここがケーブルテレビ事業者の役割そのものと再確認した」。
「2030ケーブルビジョン」発表後、ケーブルテレビ業界では地域DXの実践が各地で重ねられているが、事業者間での取り組み格差が広がってきたことも事実。そのようななかで2021年10月にスタートした「BtoB/G/C先進事例Web説明会」は、会員各社の地域ビジネスにおける実践力向上と業界におけるビジネスの拡がりを目的に、実践につながるエッセンスや切り口の事例を“深掘り”して解説するもの。2024年2月の開催で20回を数えた。
スマートシティのプラットフォーム構築から指定管理事業に至る自治体との関係強化に取り組んだ、第1回(2021年10月)「株式会社ハートネットワーク」(愛媛)を皮切りに、過去20回におよぶ説明会の概要が紹介された。説明会の動画や資料は、加盟する各事業者がいつでも視聴できるようにアーカイブ化されている。