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公開日 2024/07/18 16:25
NTT、eスポーツの勝敗と深く関わる脳波パターンを発見。約8割の精度で勝敗予測
格ゲー試合中の脳波と勝敗の関係を研究
NTTは、eスポーツ対戦直前の脳波に勝敗と強く関わるパターンの存在を世界で初めて発見し、この脳波データから直後の試合結果を高精度に予測することに成功したと発表した。
本発表はNTTコミュニケーション科学基礎研究所の研究に基づくもの。同研究所では、“すべての人が自分の能力を最大限に引き出せる社会を目指して、心と体を調整する脳の仕組み” を研究する中、アスリートが競技本番に臨む状態=「メンタル」に着目。アスリートは本番の強いプレッシャーの中で最高のパフォーマンスを発揮することを目指し、メンタルを最適に調節していると考えられ、実際にいくつかの競技で脳状態と瞬間的なパフォーマンスとの関係が調べられてきた。しかし、実戦中の計測の困難さなどから、対戦競技の勝敗と関係する脳状態は見出されていなかった。
そこでこの度の研究では、身体運動機能の違いよりもメンタルゲームの側面が強く、脳計測に適しているeスポーツ(対戦格闘ゲーム)を対象に、試合中の選手の脳状態を脳波計測(EEG)により観測。アスリートが試合に臨む際の理想的な精神状態がどのような脳波パターンから生じるのかを調査したところ、対戦直前のプレイヤーの脳波データに存在する、勝敗と強く関連するパターンを特定したという。
具体的な研究手法としては、対戦格闘ゲームの熟練者同士による、競技本番と同じ2ラウンド先取制の試合におけるEEGを計測した。eスポーツにおいては、目標を達成するための最善の方法を選択する能力「戦略判断」と、選手個人が精神的動揺などを意識的に抑制する「感情制御」の2点が重視され、特に第1ラウンドの直前は戦略判断、第3ラウンドの直前は感情制御の重要度が高まるとされていることから、第1/第3ラウンドの直前期間において戦略判断/感情制御に関わる脳波パターンと勝敗の関連性を調査した。
すると、戦略判断に関わる左前頭脳領域のγ波が、試合の序盤(第1ラウンドの直前)に増大している時、また感情制御に関わる左前頭脳領域のα波が試合の終盤(第3ラウンドの直前)に増大している時、試合に勝ち易いことが明らかになったという。
またもう1つの研究として、試合直前の脳波パターンが試合結果をどの程度正確に予測できるのか評価するため、1ラウンド先取制で行われる試合直前の脳波データから、その試合の勝敗を予測するモデルを複数の機械学習手法で構築した。
すると、最も成績の良いモデルには勝敗に関わる脳波の特徴量が獲得されており、試合の勝敗を約80%の精度で予測できることが明らかとなった。実力が拮抗した組み合わせの試合、番狂わせが起きた試合の勝敗予測についても、約80%の高い精度を示し、過去の試合結果などから学習する従来型のモデルを上回るという。
同社では本研究結果について、勝負事に臨む際の理想的な脳状態が存在することを示すとともに、競技パフォーマンスの予測に脳情報が有効であることを示すものだと述べ、「将来的に、スポーツ、医療、教育などさまざまな現場で活躍する人々の脳状態の最適化によるパフォーマンス向上や、熟練者の高度なスキルを生み出す脳状態のデジタル化によるスキル伝承の実現に向けた大きな成果」だとしている。
本研究成果のうち、eスポーツ勝敗と関連する脳波については、2023年6月16日に米国科学誌「iScience」に掲載。また勝敗予測技術についての詳細は、2024年7月11日にオランダ科学誌「Computers in Human Behavior」に掲載された。
本発表はNTTコミュニケーション科学基礎研究所の研究に基づくもの。同研究所では、“すべての人が自分の能力を最大限に引き出せる社会を目指して、心と体を調整する脳の仕組み” を研究する中、アスリートが競技本番に臨む状態=「メンタル」に着目。アスリートは本番の強いプレッシャーの中で最高のパフォーマンスを発揮することを目指し、メンタルを最適に調節していると考えられ、実際にいくつかの競技で脳状態と瞬間的なパフォーマンスとの関係が調べられてきた。しかし、実戦中の計測の困難さなどから、対戦競技の勝敗と関係する脳状態は見出されていなかった。
そこでこの度の研究では、身体運動機能の違いよりもメンタルゲームの側面が強く、脳計測に適しているeスポーツ(対戦格闘ゲーム)を対象に、試合中の選手の脳状態を脳波計測(EEG)により観測。アスリートが試合に臨む際の理想的な精神状態がどのような脳波パターンから生じるのかを調査したところ、対戦直前のプレイヤーの脳波データに存在する、勝敗と強く関連するパターンを特定したという。
具体的な研究手法としては、対戦格闘ゲームの熟練者同士による、競技本番と同じ2ラウンド先取制の試合におけるEEGを計測した。eスポーツにおいては、目標を達成するための最善の方法を選択する能力「戦略判断」と、選手個人が精神的動揺などを意識的に抑制する「感情制御」の2点が重視され、特に第1ラウンドの直前は戦略判断、第3ラウンドの直前は感情制御の重要度が高まるとされていることから、第1/第3ラウンドの直前期間において戦略判断/感情制御に関わる脳波パターンと勝敗の関連性を調査した。
すると、戦略判断に関わる左前頭脳領域のγ波が、試合の序盤(第1ラウンドの直前)に増大している時、また感情制御に関わる左前頭脳領域のα波が試合の終盤(第3ラウンドの直前)に増大している時、試合に勝ち易いことが明らかになったという。
またもう1つの研究として、試合直前の脳波パターンが試合結果をどの程度正確に予測できるのか評価するため、1ラウンド先取制で行われる試合直前の脳波データから、その試合の勝敗を予測するモデルを複数の機械学習手法で構築した。
すると、最も成績の良いモデルには勝敗に関わる脳波の特徴量が獲得されており、試合の勝敗を約80%の精度で予測できることが明らかとなった。実力が拮抗した組み合わせの試合、番狂わせが起きた試合の勝敗予測についても、約80%の高い精度を示し、過去の試合結果などから学習する従来型のモデルを上回るという。
同社では本研究結果について、勝負事に臨む際の理想的な脳状態が存在することを示すとともに、競技パフォーマンスの予測に脳情報が有効であることを示すものだと述べ、「将来的に、スポーツ、医療、教育などさまざまな現場で活躍する人々の脳状態の最適化によるパフォーマンス向上や、熟練者の高度なスキルを生み出す脳状態のデジタル化によるスキル伝承の実現に向けた大きな成果」だとしている。
本研究成果のうち、eスポーツ勝敗と関連する脳波については、2023年6月16日に米国科学誌「iScience」に掲載。また勝敗予測技術についての詳細は、2024年7月11日にオランダ科学誌「Computers in Human Behavior」に掲載された。