公開日 2010/02/09 20:53
ついに姿を現した3D対応“VIERA”&“DIGA”、その真価を折原一也が速攻レビュー
「3D世界に没入できる完成度」
本日、パナソニックよりフルHD 3D対応プラズマ“VIERA”が発表された。3D対応モデルは「VT2シリーズ」(関連ニュース)と命名された新シリーズで、4月23日に発売が開始される。54V型「TH-P54VT2」は約53万円、50V型「TH-P50VT2」は約43万円程度となる。なお、3D対応モデルには3D視聴用のアクティブシャッターメガネが1個同梱されており、2つ目以降については約1万円で購入できる。
同時に発表された「V2シリーズ」(関連ニュース)にも50V型モデルがラインナップされており、「TH-P50V2」は約36万円前後で3月5日に発売される。
●3D対応へのプレミアムは7万円
50V型の3D対応機の予想実売価格から、2Dのみ対応しているモデルの予想実売価格を引くと、その差は約7万円。世界初の3D対応テレビ対応としては手頃という印象だ。
3D対応テレビという製品が一般消費者の間で人気を集めるかは未知数だが、「新次元の機能を搭載したモデル」としては比較的手が届きやすい価格帯になったのではないかと思う。
ハイエンドに近い位置づけで低価格なV2シリーズが存在しているので、3D対応モデルは「プレミアムモデル」という位置づけになっているが、店頭価格の値下がりを考えると2009年のハイエンドモデルと同程度の価格帯になることも予想できる。この価格設定は3D体験に期待するAVファンとしても歓迎したいところだ。
もう一つ、やや驚きだったのは「別売りのアクティブシャッターメガネが約1万円」という価格設定だ。筆者はこれまで「3Dメガネの単体価格はいくらになるのか」と関係者の間で情報交換をしており、中には3万円という予想もあったが、筆者は現実的なラインとして1万円強くらいだろうと考えていた。本日、パナソニックが発表した約1万円という価格は大方の予想より安めだった。標準でアクティブシャッターメガネ1個しか同梱されていないのが残念なところだが、約1万円という価格は、買い増しをしようという意欲を削がない価格設定と言えよう。
●試作機ながら3D世界に没入できる完成度
記者発表会の後に用意されていた3Dデモ体験会は、54V型「TH-P54VT2」の試作機で行われた。デモソースは製品に同梱されるデモBDより『グランドキャニオン』(自然映像)『アストロボーイ』(CGアニメ映画)と、『アバター』(実写映画)のトレーラーの3種類。
実際のデモ視聴では、フレームシーケンシャルによる映像ブレ感は小さく、3Dの立体感と精細感をしっかり出していて、鑑賞する上での違和感や目の疲れはほとんど感じられないレベルだ。
デモソースの選択も巧みと言って良い。「これぞ3D」という、前面に飛び出してくる立体感の表現法が活用されている『グランドキャニオン』に対して、『アストロボーイ』『アバター』のトレーラーでは特に奥行き方向に立体感を描出。3Dであることをことさらに意識させないような表現により、映像への没入感を高めていた。
本日のデモは照明を落とした状態での視聴であったため、明るい部屋で鑑賞した際の照明の影響や、3D表示時の画面輝度をどう確保してくるかなども気になるところだ。これらについてはまた後日レビューを行いたい。
●2D画質でも最上位に位置する「VT2シリーズ」
「V2シリーズ」「VT2シリーズ」の同一サイズ(50V型)を比較した際の、3D対応モデルの約7万円という価格プレミアムは、実は3D対応に必要なハードウェアや機能に対する上乗せ分だけではない。
VT2シリーズでは3Dに対応させるため、短残光の「高密度蛍光体」をRGBすべてに採用した事によって発光回数を増やしている。これにより、同蛍光体を限定的に使っているV2シリーズと比べ、2D表示時の階調表現力を高めている。また、短残光の蛍光体の採用によって動画性能も上がっており、例えば、従来機種では白いテロップに黄色く尾を引くように見えることがあった、プラズマ特有の色割れも抑えられる。
コントラスト比が同じ500万対1なので、2D画質は同一と思いがちな両シリーズだが、2D表示における最高画質を求める場合でも、3Dにも対応したVT2シリーズがベストという事を知っておきたい。
●Blu-ray 3D再生対応の“DIGA”も同時発表
同時にBDレコーダーの「DMR-BWT3000」「DMR-BWT2000」「DMR-BWT1000」(関連ニュース)も、4月23日に発売されることが発表された。機能の詳細はニュース記事を確認して欲しいが、MPEG-4 MVC形式で映像が収録されているBlu-ray 3Dの再生に対応しており、これによって3Dのブルーレイ再生環境が整うことになる。同シリーズはMPEG-4 MVCのデコードやAVC W録画といった処理を行うため、BDレコーダーに用いられていたプラットフォームを新「UniPhier(ユニフィエ)」へと置き換えており、これは2007年に登場したDMR-BW900以来の刷新となる。
なお、本日の発表会では簡単な紹介のみにとどめていたが、国内ではBS11が3D番組の放送を行っており、無料で楽しめるコンテンツは既に存在する。また、ケーブルテレビのJ:COMは4月よりオンデマンド放送を開始し、スカパー!HDも夏から3D放送の開始を予定している。
これらの放送に関しては、現状のフォーマットから大きく変わらない限り、録画することが可能だ。というのは、BS11で採用しているサイドバイサイドの映像信号は、BDで採用されているフルHD 3Dではなく、通常のフルHD映像と同等のものだからだ。このため、BDレコーダーで録画した番組を再生すれば、今回発表されたVIERA VT2シリーズ側で3Dモードを切り替えることで、付属のアクティブシャッターメガネで3D映像として鑑賞できる。
ちなみに、3D放送の録画だけを行うのであれば、本日発表された3D対応BDレコーダーは必須ではない。BS11の3D放送は従来通りのフルHD映像として録画できるため、これまでのBDレコーダーもそのまま使用できるのだ。今回発表された3D対応BDレコーダーが必須となるのは、Blu-ray 3Dソフトを再生する場合に限られる。
今回、肝心のBlu-ray 3D作品の新タイトルや発売開始時期などについての発表がなかったのが残念だが、4月までには何か動きがあるはずだ。
なお、今回の発表で得た情報ではないが、筆者の取材で、映像配信プラットフォームの「アクトビラ」も3D対応コンテンツへの用意を前向きに検討中という情報も得ている。2010年のキーワードとして「3D」がどれだけ定着するのか、日本における3D対応本格化への動きに、今後も注目していきたい。
(折原一也)
執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。
同時に発表された「V2シリーズ」(関連ニュース)にも50V型モデルがラインナップされており、「TH-P50V2」は約36万円前後で3月5日に発売される。
●3D対応へのプレミアムは7万円
50V型の3D対応機の予想実売価格から、2Dのみ対応しているモデルの予想実売価格を引くと、その差は約7万円。世界初の3D対応テレビ対応としては手頃という印象だ。
3D対応テレビという製品が一般消費者の間で人気を集めるかは未知数だが、「新次元の機能を搭載したモデル」としては比較的手が届きやすい価格帯になったのではないかと思う。
ハイエンドに近い位置づけで低価格なV2シリーズが存在しているので、3D対応モデルは「プレミアムモデル」という位置づけになっているが、店頭価格の値下がりを考えると2009年のハイエンドモデルと同程度の価格帯になることも予想できる。この価格設定は3D体験に期待するAVファンとしても歓迎したいところだ。
もう一つ、やや驚きだったのは「別売りのアクティブシャッターメガネが約1万円」という価格設定だ。筆者はこれまで「3Dメガネの単体価格はいくらになるのか」と関係者の間で情報交換をしており、中には3万円という予想もあったが、筆者は現実的なラインとして1万円強くらいだろうと考えていた。本日、パナソニックが発表した約1万円という価格は大方の予想より安めだった。標準でアクティブシャッターメガネ1個しか同梱されていないのが残念なところだが、約1万円という価格は、買い増しをしようという意欲を削がない価格設定と言えよう。
●試作機ながら3D世界に没入できる完成度
記者発表会の後に用意されていた3Dデモ体験会は、54V型「TH-P54VT2」の試作機で行われた。デモソースは製品に同梱されるデモBDより『グランドキャニオン』(自然映像)『アストロボーイ』(CGアニメ映画)と、『アバター』(実写映画)のトレーラーの3種類。
実際のデモ視聴では、フレームシーケンシャルによる映像ブレ感は小さく、3Dの立体感と精細感をしっかり出していて、鑑賞する上での違和感や目の疲れはほとんど感じられないレベルだ。
デモソースの選択も巧みと言って良い。「これぞ3D」という、前面に飛び出してくる立体感の表現法が活用されている『グランドキャニオン』に対して、『アストロボーイ』『アバター』のトレーラーでは特に奥行き方向に立体感を描出。3Dであることをことさらに意識させないような表現により、映像への没入感を高めていた。
本日のデモは照明を落とした状態での視聴であったため、明るい部屋で鑑賞した際の照明の影響や、3D表示時の画面輝度をどう確保してくるかなども気になるところだ。これらについてはまた後日レビューを行いたい。
●2D画質でも最上位に位置する「VT2シリーズ」
「V2シリーズ」「VT2シリーズ」の同一サイズ(50V型)を比較した際の、3D対応モデルの約7万円という価格プレミアムは、実は3D対応に必要なハードウェアや機能に対する上乗せ分だけではない。
VT2シリーズでは3Dに対応させるため、短残光の「高密度蛍光体」をRGBすべてに採用した事によって発光回数を増やしている。これにより、同蛍光体を限定的に使っているV2シリーズと比べ、2D表示時の階調表現力を高めている。また、短残光の蛍光体の採用によって動画性能も上がっており、例えば、従来機種では白いテロップに黄色く尾を引くように見えることがあった、プラズマ特有の色割れも抑えられる。
コントラスト比が同じ500万対1なので、2D画質は同一と思いがちな両シリーズだが、2D表示における最高画質を求める場合でも、3Dにも対応したVT2シリーズがベストという事を知っておきたい。
●Blu-ray 3D再生対応の“DIGA”も同時発表
同時にBDレコーダーの「DMR-BWT3000」「DMR-BWT2000」「DMR-BWT1000」(関連ニュース)も、4月23日に発売されることが発表された。機能の詳細はニュース記事を確認して欲しいが、MPEG-4 MVC形式で映像が収録されているBlu-ray 3Dの再生に対応しており、これによって3Dのブルーレイ再生環境が整うことになる。同シリーズはMPEG-4 MVCのデコードやAVC W録画といった処理を行うため、BDレコーダーに用いられていたプラットフォームを新「UniPhier(ユニフィエ)」へと置き換えており、これは2007年に登場したDMR-BW900以来の刷新となる。
なお、本日の発表会では簡単な紹介のみにとどめていたが、国内ではBS11が3D番組の放送を行っており、無料で楽しめるコンテンツは既に存在する。また、ケーブルテレビのJ:COMは4月よりオンデマンド放送を開始し、スカパー!HDも夏から3D放送の開始を予定している。
これらの放送に関しては、現状のフォーマットから大きく変わらない限り、録画することが可能だ。というのは、BS11で採用しているサイドバイサイドの映像信号は、BDで採用されているフルHD 3Dではなく、通常のフルHD映像と同等のものだからだ。このため、BDレコーダーで録画した番組を再生すれば、今回発表されたVIERA VT2シリーズ側で3Dモードを切り替えることで、付属のアクティブシャッターメガネで3D映像として鑑賞できる。
ちなみに、3D放送の録画だけを行うのであれば、本日発表された3D対応BDレコーダーは必須ではない。BS11の3D放送は従来通りのフルHD映像として録画できるため、これまでのBDレコーダーもそのまま使用できるのだ。今回発表された3D対応BDレコーダーが必須となるのは、Blu-ray 3Dソフトを再生する場合に限られる。
今回、肝心のBlu-ray 3D作品の新タイトルや発売開始時期などについての発表がなかったのが残念だが、4月までには何か動きがあるはずだ。
なお、今回の発表で得た情報ではないが、筆者の取材で、映像配信プラットフォームの「アクトビラ」も3D対応コンテンツへの用意を前向きに検討中という情報も得ている。2010年のキーワードとして「3D」がどれだけ定着するのか、日本における3D対応本格化への動きに、今後も注目していきたい。
(折原一也)
執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。