公開日 2015/06/22 16:49
ハイエンドスピーカー市場に旋風、KEF「The Referenceシリーズ」の魅力を探る
Reference 5/3/1を山之内 正が試聴
KEFの「The Reference Series」がハイエンドスピーカー市場に旋風を巻き起こしている。同シリーズはMuonやBladeといったトップモデルで開発したUni-Q同軸2ウェイドライバーや、ロングスローで超低歪みのウーファードライバーの技術を生かしつつ、さらに音楽性の高い新開発のドライバーを搭載したモデルとして、多くの評論家の耳を魅了し続けている。同シリーズの音質をいち早く体験した山之内 正氏が、トップモデルのReference5からReference3、ブックシェルフのReference1までそれぞれの魅力をレポートする。
1970年代に登場して以来
最も価値あるリファインを遂げた
KEFを象徴する存在と呼ぶべきReferenceシリーズが昨年、約10年ぶりにリニューアルされ、ブックシェルフ型のReference 1、フロア型のReference 3、Reference 5の3機種が発売されている。Referenceの系譜はKEF創設後まもない1970年代に遡り、それ以来着実な進化を遂げながら現在に至っている。帯域ごとに独立させたキャビネットやUni-Qドライバーユニットの搭載など、その時代ごとに最先端技術を意欲的に投入して新しい地平を開いてきたのだ。
今回のReferenceシリーズもその例外ではない。さらに言えば筆者が知る範囲で今回のモデルチェンジは、これまでで最もドラスティックかつ価値のあるリファインと呼べるように思う。2014年5月にミュンヘンのHighEnd2014で公開された当初からそんな印象を抱いていたが、日本に届いた量産モデルを聴き、あらためてその確信を強めた。最初に聴いたときの強烈な印象がどこから来ているのかというと、いままでこのサイズのスピーカーから聴いたことのない力強い低音、そのインパクトの強さが原点だ。
Uni-Qとウーファーの構成が
フラットなレスポンスを実現する
ユニット構成は125mm口径のUni-Qドライバーと165mmウーファーの組み合わせというシンプルなもので、フロア型の2機種はいずれもUni-Qを中心に据えた仮想同軸配置を採用。Reference 3はウーファー2個、Reference 5は4個を組み合わせ、超低音から超高域まで、ほぼフラットなレスポンスを実現した。外見上ひと際目を引くフロントバッフルはアルミとレジンの積層構造を採用、前後の連結構造と内部の補強材でキャビネットの不要共振を徹底的に排除している。金属と木材を組み合わせて堅固な構造を実現する手法はスピーカーでは珍しいが、あとで紹介するようにその成果は大きく、KEFの技術力の高さをうかがうことができる。
バッフルの幅を抑えたスリムなキャビネットなので安定性が心配されるところだが、堅固な台座を組み合わせることでその懸念を払拭している。この台座には高さ調整機構と共に水準器が組み込まれているので、スムーズなセッティングができるはずだ。
●「Reference 1」を聴く
外見からは想像できないほど
力強く豊かな低音を繰り出す
ブックシェルフ型のReference 1はシンプルな3ウェイ構成でウーファーは1基のみ。朗々とした低音を引き出すのは無理があると思いがちだが、実際には外見からは想像できないほど力強く豊かな低音を繰り出してくる。しかも、量感の余裕に加えて、立ち上がりと立ち下がりがなまらず、鮮明な輪郭を描き出すことにも注目したい。キャビネットの不要共振を徹底して排除することで、量感を確保したままブレやにじみのない低音を引き出すことに成功したのだ。
ベースとヴォーカルのデュオ(ムジカ・ヌーダ)を本機で聴くと、ベースが鳴り続けているときにも声の余韻が消えていく様子が鮮明で、高音部が澄んだ響きを失わないことに気づく。ヴォーカルの音像は中央にピンポイントで定位し、イメージが広がりすぎたり、輪郭が曖昧になることがない。低域と中高域の干渉が少ないからこそ、同軸型ユニットならではのまとまりの良い定位が生きてくるのだ。Reference 1はシリーズのなかで一番コンパクトなスピーカーだが、駆動力に余裕のあるアンプを組み合わせ、堅固なスタンドに載せることさえ配慮すれば、低音の量感不足を感じる心配はない。
●「Reference 3」を聴く
鮮鋭度の高い低音を支えに
中高域が澄んだ音色を奏でる
Reference 3はキャビネットの容積に余裕が生まれ、ウーファーも2発に増えているが、それによって低音のアタックが緩む気配はない。ブックシェルフ型にも負けない鮮鋭度の高い低音を支えに中高域が澄んだ音色を奏でる例として、オルガン伴奏の合唱曲『アヴェ・ヴェルム・コルプス』を挙げておこう。キャビネットの共振が残るスピーカーでこの演奏を聴くと、足鍵盤で演奏されるベース音が特定の音程で制動できなくなり、前後の音に比べて音量が極端に大きくなったり、輪郭がにじんで異様に広がってしまうことがある。Reference3は低音の旋律に不自然な凸凹がなく、しかも全ての音色を正確に聴き取ることができる。澄んだヌケの良い低音はメロディの音域を邪魔せず、ハーモニーの基礎をしっかり支えてくれるのだ。
●「Reference 5」を聴く
低音が俊敏に立ち上がり
隅々まで音場が見通せる
最上位のReference5は他のスピーカーと同一口径ながらウーファーが4基に増えているため、同時に動く空気の絶対量は相応に大きくなる。設置スペースにはそれなりの余裕がある方が良いのはもちろんだが、他の2つのスピーカーと同様、低音の立ち上がりは俊敏で、音が消えるときの制動も速いので、同サイズのフロア型スピーカーに比べるとハンドリングは良さそうだ。本誌試聴室の実質的な面積は20u程度なのだが、その小さな空間で大編成のオーケストラを聴いても低音が飽和することはなく、音場は隅々まで見通しが利く。
質感と量感の両立は多くのスピーカーが目指してきたテーマだが、それを高い次元で実現するのは簡単ではない。Referenceシリーズの革新性はまさにそこにある。
(山之内 正)
■Specification
[Reference 1]●ユニット:Uni-Qドライバー→HF:25mmベンテッド・アルミニウム・ドーム、MF:125mmアルミニウム、Bass→LF:165mmアルミニウム×1 ●周波数帯域:Short port→40Hz〜45kHz、Long port→37Hz〜45kHz ●周波数特性:45Hz〜35kHz(±3dB) ●クロスオーバー:350Hz、2.8kHz ●対応アンプ出力:50〜200W ●感度:85dB(2.83V) ●最大出力レベル:111dB ●インピーダンス:8Ω(最小3.2Ω) ●仕上げ:標準→ディープ・ピアノブラック、サテン・アメリカン・ウォールナット、特注色→ラグジュアリー・グロス・ローズウッド ●外形寸法:205W×440H×430Dmm(突起部含む) ●質量:18.2kg
[Reference 3]●ユニット:Uni-Qドライバー→HF:25mmベンテッド・アルミニウム・ドーム、MF:125mmアルミニウム、Bass→LF:165mmアルミニウム×2 ●周波数帯域:Short port→38Hz〜45kHz、Long port→35Hz〜45kHz ●周波数特性:43Hz〜35kHz(±3dB) ●クロスオーバー:350Hz、2.8kHz ●対応アンプ出力:50〜300W ●感度:87.5dB(2.83V) ●最大出力レベル:113.5dB ●インピーダンス:8Ω(最小3.2Ω) ●仕上げ:標準→ディープ・ピアノブラック、サテン・アメリカン・ウォールナット、特注色→ラグジュアリー・グロス・ローズウッド ●外形寸法:349W×1202H×470Dmm(突起部含む) ●質量:51.3kg
[Reference 5]●ユニット:Uni-Qドライバー→HF:25mmベンテッド・アルミニウム・ドーム、MF:125mmアルミニウム、Bass→LF:165mmアルミニウム×4 ●周波数帯域:Short port→35Hz〜45kHz、Long port→32Hz〜45kHz ●周波数特性:40Hz〜35kHz(±3dB) ●クロスオーバー:350Hz、2.8kHz ●対応アンプ出力:50〜400W ●感度:90dB(2.83V) ●最大出力レベル:116dB ●ハーモニックディストーション(2nd&3rdハーモニクス/90dB):<0.5% 40Hz〜100kHz、<0.2% 200Hz〜10kHz ●インピーダンス:8Ω(最小3.2Ω) ●仕上げ:標準→ディープ・ピアノブラック、サテン・アメリカン・ウォールナット、特注色→ラグジュアリー・グロス・ローズウッド ●外形寸法:349W×1397H×470Dmm(突起部含む) ●質量:60.2kg
本記事は、『オーディオアクセサリー 155号』からの転載です。『オーディオアクセサリー』の詳細はこちら。
1970年代に登場して以来
最も価値あるリファインを遂げた
KEFを象徴する存在と呼ぶべきReferenceシリーズが昨年、約10年ぶりにリニューアルされ、ブックシェルフ型のReference 1、フロア型のReference 3、Reference 5の3機種が発売されている。Referenceの系譜はKEF創設後まもない1970年代に遡り、それ以来着実な進化を遂げながら現在に至っている。帯域ごとに独立させたキャビネットやUni-Qドライバーユニットの搭載など、その時代ごとに最先端技術を意欲的に投入して新しい地平を開いてきたのだ。
今回のReferenceシリーズもその例外ではない。さらに言えば筆者が知る範囲で今回のモデルチェンジは、これまでで最もドラスティックかつ価値のあるリファインと呼べるように思う。2014年5月にミュンヘンのHighEnd2014で公開された当初からそんな印象を抱いていたが、日本に届いた量産モデルを聴き、あらためてその確信を強めた。最初に聴いたときの強烈な印象がどこから来ているのかというと、いままでこのサイズのスピーカーから聴いたことのない力強い低音、そのインパクトの強さが原点だ。
Uni-Qとウーファーの構成が
フラットなレスポンスを実現する
ユニット構成は125mm口径のUni-Qドライバーと165mmウーファーの組み合わせというシンプルなもので、フロア型の2機種はいずれもUni-Qを中心に据えた仮想同軸配置を採用。Reference 3はウーファー2個、Reference 5は4個を組み合わせ、超低音から超高域まで、ほぼフラットなレスポンスを実現した。外見上ひと際目を引くフロントバッフルはアルミとレジンの積層構造を採用、前後の連結構造と内部の補強材でキャビネットの不要共振を徹底的に排除している。金属と木材を組み合わせて堅固な構造を実現する手法はスピーカーでは珍しいが、あとで紹介するようにその成果は大きく、KEFの技術力の高さをうかがうことができる。
バッフルの幅を抑えたスリムなキャビネットなので安定性が心配されるところだが、堅固な台座を組み合わせることでその懸念を払拭している。この台座には高さ調整機構と共に水準器が組み込まれているので、スムーズなセッティングができるはずだ。
●「Reference 1」を聴く
外見からは想像できないほど
力強く豊かな低音を繰り出す
ブックシェルフ型のReference 1はシンプルな3ウェイ構成でウーファーは1基のみ。朗々とした低音を引き出すのは無理があると思いがちだが、実際には外見からは想像できないほど力強く豊かな低音を繰り出してくる。しかも、量感の余裕に加えて、立ち上がりと立ち下がりがなまらず、鮮明な輪郭を描き出すことにも注目したい。キャビネットの不要共振を徹底して排除することで、量感を確保したままブレやにじみのない低音を引き出すことに成功したのだ。
ベースとヴォーカルのデュオ(ムジカ・ヌーダ)を本機で聴くと、ベースが鳴り続けているときにも声の余韻が消えていく様子が鮮明で、高音部が澄んだ響きを失わないことに気づく。ヴォーカルの音像は中央にピンポイントで定位し、イメージが広がりすぎたり、輪郭が曖昧になることがない。低域と中高域の干渉が少ないからこそ、同軸型ユニットならではのまとまりの良い定位が生きてくるのだ。Reference 1はシリーズのなかで一番コンパクトなスピーカーだが、駆動力に余裕のあるアンプを組み合わせ、堅固なスタンドに載せることさえ配慮すれば、低音の量感不足を感じる心配はない。
●「Reference 3」を聴く
鮮鋭度の高い低音を支えに
中高域が澄んだ音色を奏でる
Reference 3はキャビネットの容積に余裕が生まれ、ウーファーも2発に増えているが、それによって低音のアタックが緩む気配はない。ブックシェルフ型にも負けない鮮鋭度の高い低音を支えに中高域が澄んだ音色を奏でる例として、オルガン伴奏の合唱曲『アヴェ・ヴェルム・コルプス』を挙げておこう。キャビネットの共振が残るスピーカーでこの演奏を聴くと、足鍵盤で演奏されるベース音が特定の音程で制動できなくなり、前後の音に比べて音量が極端に大きくなったり、輪郭がにじんで異様に広がってしまうことがある。Reference3は低音の旋律に不自然な凸凹がなく、しかも全ての音色を正確に聴き取ることができる。澄んだヌケの良い低音はメロディの音域を邪魔せず、ハーモニーの基礎をしっかり支えてくれるのだ。
●「Reference 5」を聴く
低音が俊敏に立ち上がり
隅々まで音場が見通せる
最上位のReference5は他のスピーカーと同一口径ながらウーファーが4基に増えているため、同時に動く空気の絶対量は相応に大きくなる。設置スペースにはそれなりの余裕がある方が良いのはもちろんだが、他の2つのスピーカーと同様、低音の立ち上がりは俊敏で、音が消えるときの制動も速いので、同サイズのフロア型スピーカーに比べるとハンドリングは良さそうだ。本誌試聴室の実質的な面積は20u程度なのだが、その小さな空間で大編成のオーケストラを聴いても低音が飽和することはなく、音場は隅々まで見通しが利く。
質感と量感の両立は多くのスピーカーが目指してきたテーマだが、それを高い次元で実現するのは簡単ではない。Referenceシリーズの革新性はまさにそこにある。
(山之内 正)
■Specification
[Reference 1]●ユニット:Uni-Qドライバー→HF:25mmベンテッド・アルミニウム・ドーム、MF:125mmアルミニウム、Bass→LF:165mmアルミニウム×1 ●周波数帯域:Short port→40Hz〜45kHz、Long port→37Hz〜45kHz ●周波数特性:45Hz〜35kHz(±3dB) ●クロスオーバー:350Hz、2.8kHz ●対応アンプ出力:50〜200W ●感度:85dB(2.83V) ●最大出力レベル:111dB ●インピーダンス:8Ω(最小3.2Ω) ●仕上げ:標準→ディープ・ピアノブラック、サテン・アメリカン・ウォールナット、特注色→ラグジュアリー・グロス・ローズウッド ●外形寸法:205W×440H×430Dmm(突起部含む) ●質量:18.2kg
[Reference 3]●ユニット:Uni-Qドライバー→HF:25mmベンテッド・アルミニウム・ドーム、MF:125mmアルミニウム、Bass→LF:165mmアルミニウム×2 ●周波数帯域:Short port→38Hz〜45kHz、Long port→35Hz〜45kHz ●周波数特性:43Hz〜35kHz(±3dB) ●クロスオーバー:350Hz、2.8kHz ●対応アンプ出力:50〜300W ●感度:87.5dB(2.83V) ●最大出力レベル:113.5dB ●インピーダンス:8Ω(最小3.2Ω) ●仕上げ:標準→ディープ・ピアノブラック、サテン・アメリカン・ウォールナット、特注色→ラグジュアリー・グロス・ローズウッド ●外形寸法:349W×1202H×470Dmm(突起部含む) ●質量:51.3kg
[Reference 5]●ユニット:Uni-Qドライバー→HF:25mmベンテッド・アルミニウム・ドーム、MF:125mmアルミニウム、Bass→LF:165mmアルミニウム×4 ●周波数帯域:Short port→35Hz〜45kHz、Long port→32Hz〜45kHz ●周波数特性:40Hz〜35kHz(±3dB) ●クロスオーバー:350Hz、2.8kHz ●対応アンプ出力:50〜400W ●感度:90dB(2.83V) ●最大出力レベル:116dB ●ハーモニックディストーション(2nd&3rdハーモニクス/90dB):<0.5% 40Hz〜100kHz、<0.2% 200Hz〜10kHz ●インピーダンス:8Ω(最小3.2Ω) ●仕上げ:標準→ディープ・ピアノブラック、サテン・アメリカン・ウォールナット、特注色→ラグジュアリー・グロス・ローズウッド ●外形寸法:349W×1397H×470Dmm(突起部含む) ●質量:60.2kg
本記事は、『オーディオアクセサリー 155号』からの転載です。『オーディオアクセサリー』の詳細はこちら。