公開日 2015/07/15 10:00

【レビュー】ボーズQCシリーズを10年使った筆者が体感。「QuietComfort 25」の真の価値とは?

いろんな場所でノイズキャンセリング効果をテスト
「PonoPlayer」と組み合わせてハイレゾ音源を試聴

QuietComfort 25(ホワイト)

それではQC25のサウンドにフォーカスしていこう。今回は「PonoPlayer」と組み合わせてハイレゾ音源を試聴した。本機の音のインプレッションを最初に総括するならば、かつてのQuietComfortシリーズよりもさらに中高域の明瞭度や解像感が上がり、今どきのハイレゾ音源のリスニングに最適なキャラクターを獲得していると感じた。これまでのQCシリーズが特長としてきた、充実したミッドレンジとソリッドな低音に加えて、高域に自然な透明感と伸びやかさが加わった。明るく鮮やかな音楽性も健在だ。

上原ひろみのアルバム『ALIVE』からタイトル曲の「ALIVE」では、冒頭からパワフルなピアノがガツンと耳の奥まで響いてくる。中高域はクリアで抜けが良く、音色に無駄な派手さはないものの明るく艶やかだ。高域の余韻が空気に溶け込んでいくような繊細なグラデーションの表現も上手い。低域の躍動感にも富んでいて、ドラムスの音は一音ずつ粒立ちが鮮明。微細な音がきれいに分かれていて音像はキリッと整っている。

上原ひろみ『ALIVE』

TM Networkのアルバム『CAROL』から「GIA CORM FILLIPPO DIA」は、複雑なアンサンブルのディティールの隅々にまでピントが整う。シンセサイザーやパーカッションの音は稜線がくっきりと描かれ、芯が強く安定している。ボーカルもメリハリがあって、ハイトーンの抜けが爽やか。うねるようなエレキベースのドライブ感が演奏のグルーブをパワフルに引っ張る。

オリジナル・ラヴの新作『ラヴァーマン』から「ウイスキーが、お好きでしょ」では、濃密なボーカルが耳の奥から体全体に染みこんでくる。休符に声の余韻が爽やかに残り、アーティストの存在を間近に感じさせる。ジャズギターの乾いた旋律を内気なウッドベースのグルーブが優しく自然に包み込み、ドラムスのリズムが演奏の輪郭をシャープに引き締める。近接した空間でアドリブ的に展開される、気取らない自由な演奏の空気感がとてもよく出ている。

オリジナル・ラヴ『ラヴァーマン』

オーケストラはヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団『ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」』から、「第4楽章:フィナーレ(アレグロ・コン・フォーコ)」を聴く。冒頭から金管楽器の音色が華やかに響く。クリアで全体の見晴らしがとても良い。ノイズがよく抑えられているので、ピアニッシモの微小な音も自然に耳に飛び込んでくる。マレットに触れたティンパニの皮が振るえる様や、演奏者の手元のわずかな動きまでリアルに目の前に浮かび上がってくるようだ。

QC25を音楽再生以外にも活用する

ノイズキャンセリング・ヘッドホンの活用手段は、音楽を聴くことだけじゃない。オフィスやカフェでの仕事や勉強に集中したい時には外部の音をシャットアウトするため役に立つし、飛行機の中でぐっすり眠りたい時にはフライトノイズを効果的に抑えてくれる。実際にこのような用途にQuietComfortシリーズを使っている人を街中や機内でもよく見かける。QC25ではどれほどの効果が得られるのだろうか。実験のため、QC25を片手に街のカフェに足を運んだ。

コンパクトに折り畳んで、付属品のキャリングケースに収納可能

賑わうカフェの店内で注文を済ませて席に着き、おもむろにQC25をバッグから取り出して装着する。右のイヤーカップにある電源のスイッチをオンにすると、隣席で談笑していた来客の会話はすっとマスクされる。アクティブ・ノイズキャンセリング・ヘッドホンにありがちな、電源をオンにしたときの圧迫感も感じられない。さすがに電源をオンにしただけでは会話そのものが聞こえなくなることはないが、そこから音楽再生を始めると、ボリュームを絞った状態でも外部の音はほぼ完全にシャットアウトされる。自分の世界にぐっと集中して仕事ができた。

通勤・通学の移動で、電車やバスの中で使えばロードノイズや電車の走行音もきれいに消えて、静かに音楽に集中しながら心を休められる。これはまさしく「どこにでも持ち歩けるオーディオルーム」だ。スマホで音楽を聴くときにはポータブルヘッドホンアンプを介さないと十分な音量が得づらいが、QC25との組み合わせなら、やたらめっぽうボリュームを上げなくてもいい感じのボリュームで聴けるし、曲のアレンジやボーカルの細部にも自然に耳を傾けることができる。アウトドア中心で音楽を楽しむ機会が多いのなら、ノイキャンヘッドホンはぜひ一台持っておきたい。

音楽ストリーミングサービスとの相性も最高だ。電車での移動中にLINE MUSICを聴いてみた。松田聖子の「SWEET MEMORIES」では、ハスキーな声の質感がよくわかる。電車の騒音がシャットアウトされ、演奏の細かなニュアンスがきちんと再現されて楽しく聴ける。ただし、街歩きで使う際にはかなり周囲の音が聞こえづらくなるので、音楽のボリュームは下げ気味にして、くれぐれも周りに気を配りながら使いたい。

LINE MUSICで松田聖子を聴く

筆者はよく外出先でスマホを使ってテレビを見る。自宅のBDレコーダーで録りためたコンテンツを、リモート視聴機能を使って外出先でできたフリータイムにチェックしている。そんな時に手放せないアイテムがQC25だ。ドラマやアニメはセリフがクリアに聴き取れるかで視聴体験の善し悪しが左右されるものだが、QC25が不要なノイズを打ち消してくれるので、物語の舞台に自然に集中することができる。

その効果がさらに強く実感されたのは、NHKで毎週放送されている落語や講談を集めた『日本の話芸』を視聴してみた時だった。噺家が役を演じ分ける時の声の調子やトーンの微妙な表情まで逃さず聴き取りたい。そんな時にQC25が絶大な効果を発揮してくれる。噺家の生き生きとした声の躍動感が鮮明に再現される。これぞノイズキャンセリング・ヘッドホンを使う醍醐味だと実感した。



QuietComfortシリーズはアクティブ・ノイズキャンセリング方式のオーディオヘッドホンとして、先駆け的存在であることはおそらく誰もが認める事実である。他のブランドからも長年に渡ってベンチマークとして注目されてきたはずだ。常に背中を追いかけられながら発展してきた定番モデルだからこそ、今の高い頂きに到達することができたのだと思う。「ノイキャンヘッドホンといえば、やはりボーズのQuietComfortシリーズ」であることを証明する充実の出来映えだ。

(山本 敦)

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