公開日 2021/06/30 06:30
“遊べる”フォノEQ「PE-505」で、MCカートリッジのバランス伝送の効果を徹底検証!
【特別企画】10万円代でMCバランス受けを実現
ティアックのフォノイコライザー「PE-505」は、デュアルモノラルの回路構成を搭載、アナログファンに嬉しいさまざまな“遊べる”機能を搭載したフォノイコライザーとして大きな注目を集めている。A4サイズの小型筐体「Reference」シリーズのひとつだが、10万円代後半という価格でフルバランス伝送を搭載する点でも他の類をみない。
この「PE-505」を、バランス伝送が可能な人気のアナログプレーヤー2モデルと組み合わせてテストした。ロングセラーを記録したラックスマンの「PD-171A」と、ダイレクトドライブの最高峰としてテクニクス復活を強く印象づけた「SL-1000R」。いずれも価格的にはハイグレードなプレーヤーとなるが、上位モデルとの組み合わせにおいて「PE-505」はどんな表情を見せるのか、徹底検証した。
■MCカートリッジのバランス受けを10万円代で実現する「PE-505」
現時点でアナログ・カートリッジの大半を占めるのがMC型であるのは、疑う余地のないところだが、その発電の仕組みが平衡方式であることは意外と認知されていない。つまり磁気回路は、+/−それぞれにグランドを設けたバランス方式になっているのである。このことからわかるのは、対応機が近年増えつつあるバランス入力端子付きフォノイコライザーアンプは、真に理に適った接続/増幅方式であり、S/Nやチャンネルセパレーション、歪み率といったスペックにおいて優位に働くのである。
ティアック「PE-505」は、デュアルモノラルの回路構成による完全バランス入出力によるフォノイコライザーアンプ。前述したMCカートリッジの伝送/増幅にパーフェクトに応える製品といってよい。昇圧トランス等を内蔵しない、いわゆるハイゲインアンプである。今回はそんなPE-505を、バランス出力に対応したミドル〜ハイエンドクラスのアナログプレーヤーと組み合わせ、その実力のほどを深堀りしてみたい。
PE-505は単純なフォノイコライザーアンプではない。キャリアの長いアナログオーディオファンや、モノラルレコードも愛聴するような熱心なレコード愛好家をも唸らせる、なかなか興味深いファンクションを備えたモデルなのである。具体的には、RIAAイコライザー制定前のモノラルレコードの補正カーブであったDECCAやCOLUMBIAのイコライザーカーブ・ポジションを装備。一方ではMCカートリッジの負荷抵抗のみならず、MMカートリッジの負荷容量設定も細かなポジションを装備している点が見逃せない(しかもここまで複数の設定値を備えているのは、この価格帯製品では貴重)。また、MCカートリッジの消磁機能まで備えているのは実に頼もしいところ。
今回はフルバランス増幅回路での試聴テストとなるわけだが、86dBという高S/N比は、本機よりも高価なハイエンドモデルでもなかなか見られないスペック。これこそ本機の設計コンセプトが本格的という何より証拠だ。
中央にメーターを備えた、ほぼシンメトリーなパネルデザインは、どこかノスタルジックな雰囲気を醸し出しながら、確かなアイデンティティを放っている。背面に目を転じれば、入力端子のみならず、出力までバランス完備である。
ここで組み合わせるバランスケーブルにもできる限り良質のものを選びたい。今回はサエク「SCX-5000」を用意した。導体に結晶粒界を長手方向に変化させて結晶同士のつながりを連続化させ、低歪みを実現した高純度銅PC-Triple Cを採用しているのが特徴。絹糸介在やフッ素絶縁材など、内部構造にもこだわりを貫き、MCカートリッジが拾い上げた微小信号の伝送に理想的なコンストラクションを実現している。
なお、バランス伝送での接続は、MCカートリッジ使用時のみ実践できるもので、MMカートリッジでは不可であることに注意したい(発電構造が異なるので、バランス伝送できない)。
■PD-171Aと組み合わせ。細かなディテール表現はまさにバランス伝送の恩恵
今回使用したカートリッジは、フェーズメーションのフラグシップ機「PP-2000」。そこでPE-505の設定は、ハイゲインのMCポジションにて、インピーダンス100Ωとした。プリメインアンプにはアキュフェーズ「E-800」、スピーカーにはTADの「Micro Evolution One(ME-1)」を組み合わせている。
最初に聴いたアナログプレーヤーは、ラックスマン「PD-171A」。スタティックバランス型トーンアームを搭載したミドルハイエンドクラスのベルトドライブ型だ。安定した人気を誇るベストセラー機だったが、トーンアームの供給終了に伴い、残念ながら昨年に生産完了となってしまった。
柔らかな質感描写のヴォーカルは、たいへん聴き心地のよいもの。語尾の微細なニュアンスやイントネーションなど、歌唱の中の細かなディテールがしっかりと抽出される様子は、バランス伝送の恩恵だろう。ステレオイメージの見晴らしが良好な点も、やはりバランス伝送ならでは。S/Nのよさがそれをもたらしているのは確実で、ワイドで奥行きに深いステレオイメージが表れた。
ロック系のビートもタイトに決まり、PE-505の優れた回路設計はもちろん、筐体のリジットさがうかがい知れる。切れ味が鋭く、余韻がいたずらに尾を引かない点もその裏付け。トランジェント性能がいいのだ。
編成の大きなオーケストラの再生でも、この組み合わせはまったく混濁も飽和もしない。アンサンブルの細部を詳らかにしながら、ハーモニーの重厚さやスケール感をがっちりと再現してくれた。
■テクニクス「SL-1000R」の3次元的に広がるステレオイメージは格別
続いて聴いたプレーヤーは、テクニクス「SL-1000R」。ダイレクトドライブ型の最高峰といってもよい、妥協を排したハイエンドプレーヤーである。特に約1トン/㎠におよぶ慣性質量を有した重量級プラッターは、日本の高い加工技術の賜物である。カートリッジは引き続きフェーズメーションPP-2000。
ここではより一層ワイドレンジで高分解能なサウンドが堪能できた。テクニクスのダイレクトドライブ特有の安定感と静粛性が再生音に確実に反映されており、3次元的に広がるステレオイメージは格別である。クラシックのオーケストラは立体感に富み、スケール感も雄大。細部まで濃密なハーモニーと流れるようなアンサンブルの妙が楽しめる。しかもサウンド全体が醸し出すしなやかな雰囲気がいい。
ロック系はビートが深く、ヘヴィなムードで繰り出される。ギターのカッティングも軽快にリズムを刻み、疾走感が感じ取れる。ヴォーカルは実に味わい深い再現だ。伴奏を従えた音像定位は、一歩前に突出する感じで、音像フォルムの目鼻立ちもしっかりしている。
PE-505は、外観や構成は同社の大ヒットデスクトップオーディオ“505シリーズ”のひとつではあるが、こうしてハイグレードなプレーヤーと組み合わせても、どうしてどうして、なかなか侮れないポテンシャルを有していることがわかるモデルなのであった。
(提供:ティアック)
この「PE-505」を、バランス伝送が可能な人気のアナログプレーヤー2モデルと組み合わせてテストした。ロングセラーを記録したラックスマンの「PD-171A」と、ダイレクトドライブの最高峰としてテクニクス復活を強く印象づけた「SL-1000R」。いずれも価格的にはハイグレードなプレーヤーとなるが、上位モデルとの組み合わせにおいて「PE-505」はどんな表情を見せるのか、徹底検証した。
■MCカートリッジのバランス受けを10万円代で実現する「PE-505」
現時点でアナログ・カートリッジの大半を占めるのがMC型であるのは、疑う余地のないところだが、その発電の仕組みが平衡方式であることは意外と認知されていない。つまり磁気回路は、+/−それぞれにグランドを設けたバランス方式になっているのである。このことからわかるのは、対応機が近年増えつつあるバランス入力端子付きフォノイコライザーアンプは、真に理に適った接続/増幅方式であり、S/Nやチャンネルセパレーション、歪み率といったスペックにおいて優位に働くのである。
ティアック「PE-505」は、デュアルモノラルの回路構成による完全バランス入出力によるフォノイコライザーアンプ。前述したMCカートリッジの伝送/増幅にパーフェクトに応える製品といってよい。昇圧トランス等を内蔵しない、いわゆるハイゲインアンプである。今回はそんなPE-505を、バランス出力に対応したミドル〜ハイエンドクラスのアナログプレーヤーと組み合わせ、その実力のほどを深堀りしてみたい。
PE-505は単純なフォノイコライザーアンプではない。キャリアの長いアナログオーディオファンや、モノラルレコードも愛聴するような熱心なレコード愛好家をも唸らせる、なかなか興味深いファンクションを備えたモデルなのである。具体的には、RIAAイコライザー制定前のモノラルレコードの補正カーブであったDECCAやCOLUMBIAのイコライザーカーブ・ポジションを装備。一方ではMCカートリッジの負荷抵抗のみならず、MMカートリッジの負荷容量設定も細かなポジションを装備している点が見逃せない(しかもここまで複数の設定値を備えているのは、この価格帯製品では貴重)。また、MCカートリッジの消磁機能まで備えているのは実に頼もしいところ。
今回はフルバランス増幅回路での試聴テストとなるわけだが、86dBという高S/N比は、本機よりも高価なハイエンドモデルでもなかなか見られないスペック。これこそ本機の設計コンセプトが本格的という何より証拠だ。
中央にメーターを備えた、ほぼシンメトリーなパネルデザインは、どこかノスタルジックな雰囲気を醸し出しながら、確かなアイデンティティを放っている。背面に目を転じれば、入力端子のみならず、出力までバランス完備である。
ここで組み合わせるバランスケーブルにもできる限り良質のものを選びたい。今回はサエク「SCX-5000」を用意した。導体に結晶粒界を長手方向に変化させて結晶同士のつながりを連続化させ、低歪みを実現した高純度銅PC-Triple Cを採用しているのが特徴。絹糸介在やフッ素絶縁材など、内部構造にもこだわりを貫き、MCカートリッジが拾い上げた微小信号の伝送に理想的なコンストラクションを実現している。
なお、バランス伝送での接続は、MCカートリッジ使用時のみ実践できるもので、MMカートリッジでは不可であることに注意したい(発電構造が異なるので、バランス伝送できない)。
■PD-171Aと組み合わせ。細かなディテール表現はまさにバランス伝送の恩恵
今回使用したカートリッジは、フェーズメーションのフラグシップ機「PP-2000」。そこでPE-505の設定は、ハイゲインのMCポジションにて、インピーダンス100Ωとした。プリメインアンプにはアキュフェーズ「E-800」、スピーカーにはTADの「Micro Evolution One(ME-1)」を組み合わせている。
最初に聴いたアナログプレーヤーは、ラックスマン「PD-171A」。スタティックバランス型トーンアームを搭載したミドルハイエンドクラスのベルトドライブ型だ。安定した人気を誇るベストセラー機だったが、トーンアームの供給終了に伴い、残念ながら昨年に生産完了となってしまった。
柔らかな質感描写のヴォーカルは、たいへん聴き心地のよいもの。語尾の微細なニュアンスやイントネーションなど、歌唱の中の細かなディテールがしっかりと抽出される様子は、バランス伝送の恩恵だろう。ステレオイメージの見晴らしが良好な点も、やはりバランス伝送ならでは。S/Nのよさがそれをもたらしているのは確実で、ワイドで奥行きに深いステレオイメージが表れた。
ロック系のビートもタイトに決まり、PE-505の優れた回路設計はもちろん、筐体のリジットさがうかがい知れる。切れ味が鋭く、余韻がいたずらに尾を引かない点もその裏付け。トランジェント性能がいいのだ。
編成の大きなオーケストラの再生でも、この組み合わせはまったく混濁も飽和もしない。アンサンブルの細部を詳らかにしながら、ハーモニーの重厚さやスケール感をがっちりと再現してくれた。
■テクニクス「SL-1000R」の3次元的に広がるステレオイメージは格別
続いて聴いたプレーヤーは、テクニクス「SL-1000R」。ダイレクトドライブ型の最高峰といってもよい、妥協を排したハイエンドプレーヤーである。特に約1トン/㎠におよぶ慣性質量を有した重量級プラッターは、日本の高い加工技術の賜物である。カートリッジは引き続きフェーズメーションPP-2000。
ここではより一層ワイドレンジで高分解能なサウンドが堪能できた。テクニクスのダイレクトドライブ特有の安定感と静粛性が再生音に確実に反映されており、3次元的に広がるステレオイメージは格別である。クラシックのオーケストラは立体感に富み、スケール感も雄大。細部まで濃密なハーモニーと流れるようなアンサンブルの妙が楽しめる。しかもサウンド全体が醸し出すしなやかな雰囲気がいい。
ロック系はビートが深く、ヘヴィなムードで繰り出される。ギターのカッティングも軽快にリズムを刻み、疾走感が感じ取れる。ヴォーカルは実に味わい深い再現だ。伴奏を従えた音像定位は、一歩前に突出する感じで、音像フォルムの目鼻立ちもしっかりしている。
PE-505は、外観や構成は同社の大ヒットデスクトップオーディオ“505シリーズ”のひとつではあるが、こうしてハイグレードなプレーヤーと組み合わせても、どうしてどうして、なかなか侮れないポテンシャルを有していることがわかるモデルなのであった。
(提供:ティアック)