PR 公開日 2022/08/15 06:45

デノンからHi-Fi新シリーズ「900」「1700」が登場! 最注目の3モデルを評論家5名が徹底レビュー

110周年機の技術を搭載するなど大きく進化
大橋伸太郎/岩井 喬/生形三郎/鴻池賢三/林 正儀
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【両プリメインアンプのレコード再生に注目!】(文:岩井 喬)

入門からミドルクラスを担う「800」「1600」シリーズが「900」「1700」シリーズへと刷新されたが、特にプリメインアンプにおけるそのグレードアップのポイントは110周年モデル、PMA-A110にもたらされた技術への置き換えにある。フラットアンプとパワー段の2段構成の新型増幅回路や電子ボリュームを用いたミニマムシグナルパスの進化など、よりS/Nの良い、高純度なサウンドをリーズナブルな価格帯で実現。いずれもハイC/Pな製品となっている。

PMA-1700NEはUSB DAC、PMA-900HNEはHEOSモジュールを有するが、ともにMM/MC対応フォノアンプを搭載し、アナログ対応にも妥協がない。PMA-1700NEのフォノ部は部品レイアウト再考によるS/Nの改善、PMA-900HNEではオペアンプを高音質仕様のものにしている。このレコード再生能力を確認すべく、テクニクスSL-1500CにデノンDL-103を取り付けて試聴を実施。


写真はPMA-1700NEのフォノイコライザー。パーツレイアウトを再考することでS/Nの改善を図っている
PMA-900HNEではデジタル系やライン入力と似たスッキリとした解放感あるクリアなサウンド傾向で、オーケストラのローエンドはぐっと深く沈み込ませつつ、管弦楽器の爽やかな旋律を明瞭に引き立たせている。ジャズのウッドベースは弾力良く伸びやかで、ピアノはブライトに煌く。空間表現力も十分に高い。ヴォーカルは肉付きをほんのりと持たせた、しっとりとしたスムーズかつナチュラルな描写である。

一方PMA-1700NEは、よりアナログらしさを押し出した中低域の密度感が増したリッチなサウンドだ。オーケストラは重心が低くローエンドもどっしりと太さがあり、管弦楽器の旋律も艶やかで音離れも良い。空間性もより良く広大で、奥行き方向の距離感や楽器の重なりも鮮明に見えてくる。ヴォーカルの肉付きが増したことでより安定感と存在感も向上。コーラスワークの重層感も良く、一際自然だ。楽器そのものの芯の太さ、適度な切れ味で描く輪郭の鮮やかな際立ちが絶妙なコントラストを生んでいる。

【PMA-1700NEのUSB DAC再生に注目!】(文:生形三郎)

昨今のデノンコンポーネントは、山内慎一氏がサウンドマスターとして音作りを統括して以降、「Vivid & Spacious」たるサウンドフィロソフィが掲げられている。本機が繰り出すサウンドは、まさにその言葉を体現するものである。

900シリーズのサウンドの魅力は、剛性感のあるカチリとした音楽表現にあると感じる。どのようなソースを再生しても、音に芯があり筋の通った着実な音像描写を楽しませてくれる。ソロ楽器はもちろんのこと、オーケストラなどの音数が多いソースも、立体的で鮮度感の高い表現が飛び出してくるのだ。次に試聴したPMA-1700NEと比較すると、ここで感じる芯の強さは、まさに900シリーズならではの醍醐味だと筆者は感じた。

対してPMA-1700NEは、情報量が増えさらなる楽器の立体感や音場の奥行き感も表出される。そして、その手触りは900シリーズよりも幾分滑らかでソフトな質感があり、まさに上位機たる品格を伴っている。PMA-1700NEにPCをUSB接続してハイレゾファイル再生をしてみると、透明度の高い立体的な音質を楽しむことができる。スピーカーを着実に駆動するとともに、帯域バランスも過不足無く揃っており、安定したサウンドを聴かせる。

ヴォーカルは歌声に付帯感がなく鮮明で、低音楽器は低域の量感が充実しておりつつも滲みがない。全体的に、すべての楽器の姿をイーブンに見渡せる視座があり、よくよくコントロールされたサウンドである。特にオーケストラソースではそれを如実に実感し、まるで壮大な音のタペストリーを眺めているかのような緻密な音楽再現を堪能できるのだ。

PMA-1700NEは、4層基盤のD/Aコンバーター回路を搭載。超低位相雑音のクロックをDACの側に設置したマスタークロックデザインを採用する

以上、PMA-900HNE/DCD-900NEおよびPMA-1700NEは、当然グレードとしてはPMA-1700NEの方が上手ながらも、サウンドの傾向としては互いに異なる魅力を備えており、グレードはもちろんのこと、音の好みによってもチョイスできる魅力的な新ラインナップなのである。

【PMA-900HNEのネットワーク再生に注目!】(文:鴻池賢三)

オーディオシステムの核といえるのがステレオプリメインアンプ。いつの時代も、トータルパフォーマンスを引き出す要として品格は譲れない。一方、オーディオはデジタル化という節目を経た後、近年は、ハイレゾやストリーミングサービスの台頭は周知の通り。こうした新しい時代のプリメインアンプに何を求めるべきか。老舗として確固たる地位を守り続けてきたデノンの答えが、ピュアを極める方向に深化した「PMA-1700NE」と、ネットワークオーディオを意識して進化した「PMA-900HNE」と言えるだろう。

新型アナログ増幅回路に止まない探求心を、電子ボリュームの採用に合理性を感じる。筆者は主に「PMA-900HNE」でAmazon Music HDをストリーミング試聴し、同機の狙いとクオリティをチェックした。まず、同機で注目すべきは、すっかりお馴染みのネットワークシステム「HEOS」を内蔵し、各種ストリーミングサービスへのアクセスが容易なこと。時代に沿った「アンプ」のアップデートと言って良いだろう。

HEOSに対応するPMA-900HNEは、最新のSoCプロセッサーを搭載

音を出すと、柔らかく繊細で、金管楽器の煌びやかさがエネルギッシュ。キツくならず、鮮やかなサウンドは近代的な高音質と言える。1曲目は、Susan Wongの「How Deep Is Your Love」。軽快な空気感が印象的な楽曲だが、本機ではビビッドな色彩で魅せつつシルキーな柔らかさを伴って好印象。空気を湛えるかのような包容力の深さにハイレゾの真価が見て取れ、PMA-A110と同等という、FLAT AMPとPOWER AMPの2段構成による新型増幅回路が特徴とする低歪み性能を感じることができた。

往年のCity Pop、村田和人の「Boy’s life」 は、澄み切ったヴォーカルが夏空を感じさせ、リズムのキレでテンポ良く進行。時を超えて感動の記憶が蘇り、ハイレゾのアドバンテージを再認識した。プリメインアンプとストリーミングの組み合わせは大いにアリで、アナログの温かみとデジタルの合理性を研ぎ澄ませた、デノン流の答えと受け止めた。

【DCD-900NEのCD再生に注目!】(文:林 正儀)

新たに900、1700の両シリーズを登場させたデノン。PMA-900HNEはHEOSのネットワーク対応で、単体でもさまざまな音楽環境が楽しめるHi-Fiエントリー機だ。上位のPMA-1700NEはアイソレーター回路を改善したUSB DACを内蔵する。パソコンなどにつなぎハイレゾ音源を楽しみたいPCオーディオリスナーにおすすめできる。

それぞれの役割分担が明確なのが好ましい。2段構成の新型増幅回路や電子ボリュームなど800、1600シリーズの後継に相応しい進化を遂げているが、特に1700番は記念モデルA110譲りのUHC-MOSプッシュプル回路にミニマムシグナルパスを採用したこだわりで、引き続きクラス最強のパフォーマンスを発揮する。一方でDCD-900NEは、CD専用機としてはデノン最上位のモデルとなる。新開発のシャーシによってこれまでの単一構造から、デジタル/アナログ完全分離構成へとブラッシュアップされた。D/Aコンバーターも新開発だ。

ここではDCD-900NEを用いたCD再生をメインにレビューしたい。2台のアンプの聴き比べのような試聴である。1700は重量感も抜群だ。その物量投入や定格出力の違い、アンプのグレード差がサウンドにそのまま現れた印象だ。言いかえると、CDプレーヤーが敏感にその違いを描き分けるともいえる。万能で多彩な表現力だ。藤田恵美のライブは、900が明るくポップな響きで、1700は落ち着きがある。声質もクリアで硬めなのに対して、柔らかく艶やかと好対照だ。

DCD-900NEは、プリメインアンプのPMA-900HNEとサイズが揃う。また、CD専用機としてデノントップモデルとなる

幸田浩子のオペラは、ニュアンスが細やかでステージの奥が深いクラシック向きの1700に対して、900は抑揚を抑えつつ音像が近くフレンドリーだ。ジャズは両者動きがよく、メリハリを出す。その中にもピアノが緻密でリズムが立つのが1700で、元気にとびだすのが900。それぞれのモデルの魅力を、DCD-900NEはしっかり引き出せていた。


Specification

【DCD-900NE】
●再生周波数特性:2Hz-50kHz -3dB(DSD)、2Hz-20kHz ±1dB(PCM 44.1kHz)、2Hz-96kHz ±1dB(PCM 192kHz)●SN比:110dB(DSD)、115dB(PCM)●ダイナミックレンジ:108dB(DSD 可聴帯域)、101dB(DSD 16bit)、110dB(PCM 24bit)●高調波歪率:0.0015%(DSD)、0.0020%(PCM 24bit)、0.0025%(PCM 16bit)●出力端子:アンバランス×1●入力端子:同軸デジタル×1、光デジタル×1●その他入出力:IRコントロール入出力×1●消費電力:24 W(待機時 0.3W)●サイズ:434W×107H×328Dmm●質量:4.9kg

リア部の出力端子には、RCA、光デジタル、同軸デジタルをそれぞれ1系統。その他IR CONTROLを用意。RCA端子も独立化されている

【PMA-900HNE】
●定格出力:50W+50W(8Ω、20Hz-20kHz、T.H.D 0.07%)、85W+85W(4Ω、1kHz、T.H.D 0.07%)●全高調波歪み率:0.01% (-3dB、8Ω、1kHz)●SN比:105dB(CD、AUX、RECORDER)、86dB(PHONO/MM)、71dB(PHONO/MC)●周波数特性:5Hz-100khz(0 - -3dB)●サイズ:434W×131H×375Dmm●質量:8.3kg

リア部には、入力端子にCD、NETWORK/AUX、RECORDER、PHONO、同軸デジタル、USB-DAC、EXR.PREをそれぞれ1系統、光デジタルを2系統、出力端子にはRECORDERを1系統、その他IR CONTROLを1系統装備する

【PMA-1700NE】
●定格出力:70W+70W(8Ω、20Hz-20kHz、T.H.D 0.07%)、140W+140W(4Ω、1kHz、T.H.D 0.07%)●全高調波歪み率:0.01%(-3dB、8Ω、1kHz)●SN比:106dB(CD、NETWORK/AUX、RECORDER、入力端子短絡時)、89dB(PHONO/MM)、74dB(PHONO/MC)●周波数特性:5Hz-100khz(0 - -3dB)●消費電力:295W(待機時最小0.2W)●サイズ:434W×135H×410Dmm●質量:17.6kg●取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス


リア部には、入力端子にCD、AUX、RECORDER、PHONO、同軸デジタル、USB-A、LANをそれぞれ1系統、光デジタルを3系統、出力端子にRECORDER、SUBWOOFERをそれぞれ1系統装備する




本記事は季刊Audio Accessory vol.185からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから

(協力:D&Mホールディングス)

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