PR 公開日 2022/09/15 06:30
Shureの旗艦イヤホン「SE846」第2世代を速攻レビュー!進化した“十年名機”、新サウンドの魅力に迫る
リファレンスとして揺るがぬ音質を現代的にアップデート
約9年ぶりにアップデート!Shure「SE846高遮音性イヤホン(第2世代)」登場
Shureが展開するイヤーモニター “SEシリーズ” のトップエンド「SE846」が遂に、第2世代へとアップデート。「SE846高遮音性イヤホン(第2世代)」として登場する。
高い完成度を誇るSE846本体に、余計な手を加えることなく、現在の状況やニーズへの対応を実現したという新モデル。このアップデートによって、2013年の発売から今日までシリーズ最上位であり続けたSE846が、これからもそうあり続けることになったわけだ。この揺るぎなさ、SE846こそ名機中の名機と言えるだろう。
時代が進めば、音楽トレンドもリスナーの好みも変化し、求められるサウンドも変わる。いかに本質的なポテンシャルや完成度に優れるイヤホンも時を経れば、チューニングという一点においては、時代のニーズとの間にズレが生じることは避け難い。実際SE846と同時期に登場した名機の多くが、現在は後継モデルや新モデルにその立場を譲っている。
だがSE846は、自身はSE846のままであり続けながら現在のニーズに応えられる機構を持っていた。「ノズルインサート」交換によるチューニング変更だ。
開発時の意図はユーザーごとの音の好みの違いへの対応だっただろう。それが今、時代の変化に応えるアップデートにも活かされることになったのだ。
時代を超えて通用するポテンシャルと時代の変化にも対応できるシステム。その両方を備えるSE846だからこそ、この「第2世代」への進化が実現した。長年のSE846ユーザーとしても感慨深い。Shure開発陣が口にする、「壊れていないものは直すな」精神にぴたりと沿った形での進化となったことにもうなずかされる。
SE846 第2世代の最大のポイントは、従来のウォーム/バランス/ブライトに加え、新規ノズルインサート「エクステンド」が付属すること。従来のバランスに代わり出荷時に標準装着されている。
ほかにも、本体色には定番の「クリア」に加えて、新色のジェイドグリーン&グラファイトシルバーを追加。付属ケーブルはシンプルなストレートタイプに回帰し、付属イヤーピースのサイズ追加もなされるなど、さまざまな変更点がある。
今回のレビューではSE846のポテンシャルを再確認した上で、第2世代機の変更点を中心に、特に注目の新ノズルインサート「エクステンド」のサウンド傾向についてじっくりと紹介したい。
「SE846」とは?
まずはShureのイヤーモニター「SE846」について改めて確認しておこう。
発売は2013年。10万円前後の超ハイエンドイヤホンが次々と登場し始めた時期で、SE846や各社の力作が「これなら10万円も納得」というサウンドを叩き出したことで、超ハイエンドイヤホンというジャンルが成立し、今日まで続いている。
SE846のドライバー構成はいわゆるBAマルチの3ウェイ4ドライバーで、4基のドライバーは低域2基/中域1基/高域1基に割り当てられる。ドライバー数は当時としても突出した数ではなく、現在においては平凡とさえ言える。
しかし現在においても、Shureのラインナップにこれを超えるドライバー数のモデルは存在しない。ドライバー数はこれで十分であり、これを超えるドライバー数に大きなメリットはないというのが、Shureの一貫した考えということだ。
そして彼らが自信を持って「ドライバー数はこれで十分」と言い切るその背景には、そのドライバー構成から最大のポテンシャルを引き出す技術がある。その代表が独特のアコースティック構造による「ローパスフィルター」だ。
マルチウェイ構成では、低域/中域/高域の各帯域を担当するドライバーが他の帯域の音も鳴らしてしまうと、複数ドライバーからの音が重なるその部分での干渉が、音の濁りや不正確さを生み出してしまう。そこで一般的には、音声信号を各ドライバーに渡す手前に電気的なフィルター回路を置き、担当帯域の信号のみを抽出してドライバーに渡す仕組みが用いられている。
ここで難しいのが低音の扱い。低音信号だけを通して低域用ドライバーに渡すローパスフィルター回路の性能を高めるには、大きめサイズの電子パーツを使う必要があるのだ。しかし、それを搭載すれば当然、イヤホン全体のサイズも大型化し、装着感などの面においてのマイナス要因となる。
そこでShureが生み出したのが、電気的な仕組みではなくアコースティック、すなわち音響的な構造によって低域を抽出するローパスフィルター。ドライバーに渡す信号に手を加えるのではなく、ドライバーから放出された音に対して働き、その中高域を大きく減衰させることで、中域/高域担当ドライバーとの音の被りをなくすという。
原理としては単純だ。「音は細い管を通過するとき高域側から減衰していく」ことを利用。細い道が刻まれた薄い金属プレート10枚を貼り合わせて、内部に計10cm強ほどの音響経路を持つ、小さく精密な構造体を作成。その経路を通過させることで、低域ドライバーから放出された音の中高域を十分かつ自然に減衰させている。
ただ原理は単純とはいっても、実装は容易ではなかっただろうし、製造にも手間がかかっているだろう。そのためかこのローパスフィルターは未だに、同社イヤホンの中でこのSE846にしか搭載されていない。
さて、そのローパスフィルターが低域側を担当するのに対して、音の最終的な出口であるノズルの内部には、高域の調整を担うアコースティックフィルターが仕込まれている。ノズルから鼓膜に向けて放出される直前の音に対して働き、高域を適切に減衰させ整えるのがその役割だ。
この「適切に減衰させ整える」ことこそ、まさに「チューニング」であり、それを行う音響フィルターを交換可能としたのが「ノズルインサート機構」というわけだ。
次ページ従来のSE846+「バランス」ノズルで基本性能をチェック