公開日 2023/10/20 06:30
2023年最新4K有機ELテレビ一斉レビュー。メーカー5社の“超高画質”最上位モデルを比較視聴!
画質や音質の傾向はどう違う?
ここ数年、各社のフラグシップモデルに位置する4K有機ELテレビは、基本的に1種類の有機ELパネルを用いて、メーカー毎で独自の組み立て方式を採用したり、放熱プレートを導入するといった仕様のものが主流であった。しかし、2023年の店頭に並ぶ最上位モデル群は、微細なレンズで効率的に光を出力することで輝度を大幅に向上させるマイクロレンズアレイ技術を採用した「MLA-OLED」、量子ドット技術を導入することで色純度を高めた「QD-OLED」といった、新たな有機ELパネルが採用されており、注目度が増している。
一方で、各メーカーとも高画質エンジンによる性能を高め、新たにミリ波レーダーによるセンシング技術や、よりユーザー好みの映像を手軽に再現できる機能など、各社の特色を活かした高画質技術の進化も見逃せない。本特集では、5モデルのハイエンド・4K有機ELテレビを一堂に集め、HDMI分配器を用いて同時にシュートアウトする方法などを採用して、各モデルのクオリティをチェックした。
有機ELパネルの特徴はもちろんだが、映像エンジンの違いを通じて、各社なりの映像の思想が、各々の4K有機ELテレビに凝集されている。映像機器の華であり、さらにハイエンドモデルでしか体感することのできない映像美を楽しんでもらいたい。
凹凸形状の有機EL発光層の上に1画素あたり数千個のレンズを並べて光を拡散することができるマイクロレンズを装備した、新世代の有機ELパネルである「MLA-OLED」を採用したことで、従来モデルよりも高コントラストを実現し、色表現も進化させたモデルの「MZ2500シリーズ」。さらに2019年から同社のフラグシップ・4K有機ELビエラで培ってきた、バックカバー一体型放熱プレートと放熱シートを、独自素材を用いて貼り付ける「デュアルメタルヒートレス構造」も採用されている。
高音質の追求も最上位機種ならではで、実用最大出力160Wを誇る「360立体音響サウンドシステム」を搭載。多数のスピーカーユニットを線上に並べて前向き配置することでクリアな音を実現したラインアレイスピーカーを始め、ワイドスピーカー、ウーファー+パッシブラジエーター、そして高さ方向の音を出力するイネーブルドスピーカーによって、迫力のある立体音響を実現している。
解像感とコントラストが豊かで実存感に富む画作り
ビデオコンテンツは、ピークが明るくシャープネスがやや強いが、暗部の沈み込みと細かな灯火をハイコントラストで描き、HDR表現で他社に差を付ける。映画コンテンツは、鮮鋭感が豊かでクロマ濃度も高く、重厚で力強い画作り。エッジや若干硬い部分があるが、女優の肌の温かなスキントーンは特徴的。放送番組の大相撲中継は、S/Nが良くクリアで国技館の奥行きが巧く表れており、またコントラストと階調も豊か。実際に肉眼視するような力士の肌の質感は、自然な存在感がある。超解像のエンハンスが過剰な部分があり、土俵の箒の掃き目が強調されてうるさいのは課題。
ネット動画は、クリアで細部まで解像感とニュアンスに富み、女性のスキントーンも透明感があって美しい。淡麗なものは淡麗に、重厚なものは重厚に描く、スケールの大きい映像がMZ2500シリーズならではの特長と言える。ミュージカル映画の音を聴くと、今回取材したモデルの中で一番映画的だ。SEを逐一拾い出し、活き活きと存在感豊かに表現する。実際にスピーカーユニットを多数並べた物量効果は大きいものだ。
2013年からグローバル市場で有機ELテレビを投入し続けているLGエレクトロニクス。ハイエンドの「OLED G3シリーズ」には、最新世代へと進化したデバイス「OLED evo」を搭載。微細なレンズ層を有機ELパネルに導入することで、反射した光を画面側に屈折させて、高効率で光を出力できるようになった「マイクロレンズアレイ」が追加されたことで、2022年度機種「OLED B2シリーズ」よりも輝度が最大70%も向上している。
独自のリアルタイムAIプロセッサーは「α9 AI Processor Gen6」へと進化。「AIアップスケーリング」、「OLEDダイナミックトーンマッピングプロ」、「オブジェクト型リアルタイム映像処理」の映像処理のクオリティが向上し、放送番組からネット動画まで最適な処理を施す。8500万通りの中から、AIがユーザー好みの映像傾向を分析して、最適な映像を実現する「パーソナル・ピクチャー・ウィザード」も追加された。
ハイコントラストと素直なナチュラルさを備え持つ
パネルの持ち味をストレートに活かした、明るく素直な画。ビデオコンテンツは、エッジを抑えたナチュラルなディティール描写。東京タワーのシーンの暗部は、マイルドな印象。映画コンテンツでも客観性が高く、ニュートラルで素直。ディティールも丁寧に描き込み、女優のクローズアップなど細かい部分も情報が出る。デイライトシーンは、陽光の描写の色温度も良好。放送番組の大相撲中継は、力士の身体に照明が当たっている部分はハイキーになるが、総じて明るく自然な映像で、従来の過度な補正や人肌が平板になる傾向が一気に改善された。
ネット動画は、精細感を強調した尖った映像ではなく、あえてディティールを滑らかにまとめた、優れたバランス感覚を感じさせる。総合的にハイコントラスト/クラリティ/色バランスなど、デバイスを素直に活かしているのがわかる。サウンドは、オケの低弦が太く鳴り、セリフは明瞭だが落ち着いた声質。重低音な印象は少ないが、無用な演出がなく、真っ直ぐ聴き手に届く音質だ。
一方で、各メーカーとも高画質エンジンによる性能を高め、新たにミリ波レーダーによるセンシング技術や、よりユーザー好みの映像を手軽に再現できる機能など、各社の特色を活かした高画質技術の進化も見逃せない。本特集では、5モデルのハイエンド・4K有機ELテレビを一堂に集め、HDMI分配器を用いて同時にシュートアウトする方法などを採用して、各モデルのクオリティをチェックした。
有機ELパネルの特徴はもちろんだが、映像エンジンの違いを通じて、各社なりの映像の思想が、各々の4K有機ELテレビに凝集されている。映像機器の華であり、さらにハイエンドモデルでしか体感することのできない映像美を楽しんでもらいたい。
PANASONIC 「MZ2500シリーズ/TH-55MZ2500」
凹凸形状の有機EL発光層の上に1画素あたり数千個のレンズを並べて光を拡散することができるマイクロレンズを装備した、新世代の有機ELパネルである「MLA-OLED」を採用したことで、従来モデルよりも高コントラストを実現し、色表現も進化させたモデルの「MZ2500シリーズ」。さらに2019年から同社のフラグシップ・4K有機ELビエラで培ってきた、バックカバー一体型放熱プレートと放熱シートを、独自素材を用いて貼り付ける「デュアルメタルヒートレス構造」も採用されている。
高音質の追求も最上位機種ならではで、実用最大出力160Wを誇る「360立体音響サウンドシステム」を搭載。多数のスピーカーユニットを線上に並べて前向き配置することでクリアな音を実現したラインアレイスピーカーを始め、ワイドスピーカー、ウーファー+パッシブラジエーター、そして高さ方向の音を出力するイネーブルドスピーカーによって、迫力のある立体音響を実現している。
解像感とコントラストが豊かで実存感に富む画作り
ビデオコンテンツは、ピークが明るくシャープネスがやや強いが、暗部の沈み込みと細かな灯火をハイコントラストで描き、HDR表現で他社に差を付ける。映画コンテンツは、鮮鋭感が豊かでクロマ濃度も高く、重厚で力強い画作り。エッジや若干硬い部分があるが、女優の肌の温かなスキントーンは特徴的。放送番組の大相撲中継は、S/Nが良くクリアで国技館の奥行きが巧く表れており、またコントラストと階調も豊か。実際に肉眼視するような力士の肌の質感は、自然な存在感がある。超解像のエンハンスが過剰な部分があり、土俵の箒の掃き目が強調されてうるさいのは課題。
ネット動画は、クリアで細部まで解像感とニュアンスに富み、女性のスキントーンも透明感があって美しい。淡麗なものは淡麗に、重厚なものは重厚に描く、スケールの大きい映像がMZ2500シリーズならではの特長と言える。ミュージカル映画の音を聴くと、今回取材したモデルの中で一番映画的だ。SEを逐一拾い出し、活き活きと存在感豊かに表現する。実際にスピーカーユニットを多数並べた物量効果は大きいものだ。
LG ELECTRONICS 「OLED G3シリーズ/OLED55G3PJA」
2013年からグローバル市場で有機ELテレビを投入し続けているLGエレクトロニクス。ハイエンドの「OLED G3シリーズ」には、最新世代へと進化したデバイス「OLED evo」を搭載。微細なレンズ層を有機ELパネルに導入することで、反射した光を画面側に屈折させて、高効率で光を出力できるようになった「マイクロレンズアレイ」が追加されたことで、2022年度機種「OLED B2シリーズ」よりも輝度が最大70%も向上している。
独自のリアルタイムAIプロセッサーは「α9 AI Processor Gen6」へと進化。「AIアップスケーリング」、「OLEDダイナミックトーンマッピングプロ」、「オブジェクト型リアルタイム映像処理」の映像処理のクオリティが向上し、放送番組からネット動画まで最適な処理を施す。8500万通りの中から、AIがユーザー好みの映像傾向を分析して、最適な映像を実現する「パーソナル・ピクチャー・ウィザード」も追加された。
ハイコントラストと素直なナチュラルさを備え持つ
パネルの持ち味をストレートに活かした、明るく素直な画。ビデオコンテンツは、エッジを抑えたナチュラルなディティール描写。東京タワーのシーンの暗部は、マイルドな印象。映画コンテンツでも客観性が高く、ニュートラルで素直。ディティールも丁寧に描き込み、女優のクローズアップなど細かい部分も情報が出る。デイライトシーンは、陽光の描写の色温度も良好。放送番組の大相撲中継は、力士の身体に照明が当たっている部分はハイキーになるが、総じて明るく自然な映像で、従来の過度な補正や人肌が平板になる傾向が一気に改善された。
ネット動画は、精細感を強調した尖った映像ではなく、あえてディティールを滑らかにまとめた、優れたバランス感覚を感じさせる。総合的にハイコントラスト/クラリティ/色バランスなど、デバイスを素直に活かしているのがわかる。サウンドは、オケの低弦が太く鳴り、セリフは明瞭だが落ち着いた声質。重低音な印象は少ないが、無用な演出がなく、真っ直ぐ聴き手に届く音質だ。
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