画質や音質の傾向はどう違う?
2023年最新4K有機ELテレビ一斉レビュー。メーカー5社の“超高画質”最上位モデルを比較視聴!
SHARP 「FS1ライン/4T-C55FS1」
光の波長変換によって純度の高い3原色の生成を実現する、量子ドット技術を導入した有機ELパネル「QD-OLED」を新たに採用した同社の最上位モデル「FS1ライン」。さらに独自の2層式放熱構造「クールダウンシールドII」、有機EL素子の発光量とパネル面の温度分布をリアルタイムで解析して発光量を緻密に制御する「クライマックスドライブ」回路などを搭載することで、輝度の向上と色彩豊かな表現を実現している。
映像処理エンジンには、新開発のAI高画質/高音質プロセッサー「Medalist S4X」を新搭載。映像モード「AIオート」で、あらゆるコンテンツ情報に合わせて、色彩・明暗・精細感を自動で最適化した映像、そして自動調整した音声も再生できる。また、画面上部にトゥイーターとミッドレンジのハイトスピーカーを配置した音響システム「AROUND SPEAKER SYSTEM PLUS」を搭載したことで立体音響を実現している。
明度が高めでナチュラルバランスな新境地の画
ビデオコンテンツでは、平均して明るく、極端に色鮮やかする印象ではなく手控えた印象。映像全体が明るい分、夜空の映像ノイズのざらつきが目に付くが、アークヒルズのシーンのビルの青い照明は淡麗に描き、ウェルバランスな画を狙ったように感じられる。映画コンテンツでも、同じ傾向を堅持しており、明るく端正なバランスの画質だ。放送番組の大相撲中継は、穏やかで破綻の無い描写が好ましく、強調する部分の選定が巧みにできている。
ネット動画は、QD-OLEDの色純度を発揮しつつ、明度も高めでナチュラルバランス。明るく美麗だが派手ではない、あくまでもクラリティが高い。高性能パネルを得て、アクオスの新境地を切り拓けている。サウンドは、ハイトスピーカーのレベルを上げると、広がり感が出て、音場の奥行き感が増す。ミュージカル映画は、音楽に艶があって美しい。
TVS REGZA 「X9900Mシリーズ/55X9900M」
歴代のフラグシップ・4K有機ELレグザの開発で培ってきた有機ELパネルモジュールを、着実に進化させた「レグザ専用有機ELパネルモジュール」を搭載する「X9900Mシリーズ」。光の反射が少なく、広視野角の「低反射ARコート」を投入した有機ELパネルに、自社開発の高冷却インナープレートとメタルバックカバーを導入、さらに明るさ制御のアルゴリズムを改善したことで、従来機から約2割の輝度向上を実現。
最新世代の高画質映像処理エンジン「レグザエンジンZRα」によって、「AIナチュラルフォーカステクノロジーPRO」をはじめ、「ネット動画ビューティPRO」や「地デジAIビューティPRO」など映像処理に対応。本モデルで注目なのが、ミリ波レーダーを用いた高画質・高音質技術。ミリ波レーダーによってユーザーの視聴位置を検知し、視聴距離に最適な画質・音質に自動調整することが可能だ。また、最大出力90Wを誇る「重低音立体音響システムXHR」によって、迫力あるサウンドも装備。全録機能「タイムシフトマシン」対応もハイエンドならでは。
S/Nが高く密度感も豊かで落ち着きのある丁寧な画質
ビデオコンテンツは、トータルバランスを重視した落ち着いた画調。パネルの違いがあるため高輝度部分の描写は他モデルよりも穏やかで、密度感の豊かさを感じさせる。一部分、色被りのような癖が気になったが、色彩表現は独自の傾向がある印象。一方、さまざまなシーンでノイズ処理に優れており、夜景の灯火も穏やかに散りばめ、S/N指向の画を見せる。映画コンテンツは、暗めの落ち着いた画質で、俳優の人肌や服装も温かい色調であり、シネフィル好みのフィルムライクが画だ。放送番組の大相撲中継は、コントラストがしっかり付いて黒が深く沈む。超解像のノウハウの厚みを感じさせ、無用な強調は自重する節度感がある。
ネット動画は、スムーズなガンマで派手に演出せず、落ち着いた深みのある色彩で、被写体本来の質感を端正に、かつ丁寧に描き出す。ベテランAVファンが喜ぶ、高い完成度のモデルだ。重低音のモードを「弱→中→強」と変更していくと、ミュージカル映画では順にオケの低弦が巧く強調されていく。「強」では、音楽の支えになる部分が太く厚く鳴るが、歌声の変化や全体への影響がない点にノウハウを感じさせる。
SONY 「A95Kシリーズ/XRJ-55A95K」
2022年度モデルだが、国内ブランドで初めて量子ドット技術を導入した有機ELパネル「QD-OLED」を採用した4K有機ELブラビアが「A95Kシリーズ」である。映像エンジンには、独自開発の認知特性プロセッサー「XR」を搭載。色再現性を高める「XRトリルミナスマックス」、滑らかな色階調を実現する「XRスムージング」といった、色表現処理技術とQD-OLEDが掛け合わさることで、最上位機種ならではの色表現を叶えている。
また、パネル表面の温度分布を検知する温度センサーと入力された映像信号の分析処理の相乗効果によって、高いコントラスト表現を成し得る「XR OLED コントラスト プロ」など、「XR」ならではの高画質技術が細部まで盛り込まれている。画面を震わせて音を出力する真円大型アクチュエーターを携えた「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」も投入。また、付属のブラビアカムでユーザーの視聴環境・距離・位置を認識し、自動で明るさや音を調整する連動機能も追加されている。
原色の純度と鮮度を備えながら雄大なコントラストも実現
原色の純度と鮮度、赤系の突出は本機ならでは。ビデオコンテンツは、暗部重視ながらもハイコントラスト。灯火の赤は眼を射るようで、黒が沈むため赤の彩度が余計に際立つ。映画コンテンツも強靭なコントラストで、服のシックな黒も深みがあって締まる。俳優のスキントーンはややマゼンタ寄り、イタリアンジュエリーのぎらりとしたグリッターな輝きもハイコントラストに描き、凄みが表れる。放送番組の大相撲中継は、力士の肌を克明に描き、解説者のクローズアップは過剰感がある。遠景はフォーカス感を少々緩めていいし、土俵の土の掃き目がエンハンスで強調されすぎなのも抑えて良い印象。
ネット動画は、やはり鮮やかさが一番だった。赤の発色の生々しく、ハイコントラストでガンマ設定を変えたように黒が沈み、重厚で華麗。色純度を武器にできており、コントラストの雄大さと画作りの巧みさも継承している。サウンドは、アクチュエーターに長年取り組んできたこともあり、映像との一体感はさすがに勝る。
<取材で使用したレファレンスモデル>
4K Ultra HDブルーレイ・レコーダー PANASONIC 「DMR-ZR1」 オープン価格
HDMIケーブル FIBBR 「Pure 3」 ¥51,700(税込/2.0m)
HDMI分配器 RATOC 「RS-HDSP8P-4K」 ¥21,780(税込)