公開日 2025/02/14 06:30
Qobuzの音質改善に効く!話題の「光アイソレーター」4モデルを一斉試聴!
TOPWING/SONORE/ediscreation/TELEGARTNERの4モデル
■「光ファイバー」で金属導体由来のノイズをシャットアウト
昨今ネットワークオーディオ界をもっとも賑わせている製品ジャンルのひとつが「光アイソレーター」と言っていいだろう。通常は導体がメタルのLANケーブルで接続されるネットワーク機器であるが、光ファイバーを間に挟み込むことにより、ネットワークノイズを遮断して音質を改善できるということで、国内外の各社から光アイソレーターが製品化されている。
今回、界隈でも話題の4モデルを一斉試聴し、どんな音の違いが現れるのか検証してみた。価格は一番安いもので3万円台、高いもので30万円台と幅広い。
試聴機材については、ネットワークプレーヤーとして「N-05XD」を使用し、音源にはQobuzを用いた。まずは汎用のルーターとN-05XDを直結した状態で聴き、その後光アイソレーターをルーターとネットワークプレーヤーの間に挟み込んで試聴している。なおLANケーブルはテレガートナー製の「MFP8 IE GOLD」を使用している。
■TOPWING「OPT ISO BOX」
最初に、驚異の低価格と高性能で話題沸騰中のTOPWING「OPT ISO BOX」を聴く。高耐久グレード光変換モジュールを搭載。内部光ファイバーの接続にはST-Link方式を用いることで、接続の信頼性・堅牢性を高めている。
本機は通信速度切替機能(10Mbps/100Mbps/1Gbps)を搭載している。そこでまず100Mbpsでタン・ドゥンを聴いてみると、独奏チェロの音像がキュッと引き締まった。演奏会場の空気感が出る。
続いて10Mbpsだと音像の立体感と会場の空気感が減少。鐘の倍音は間引きされ、太鼓の沈み込みも浅い。1GbpsだとS/N向上!空気感が濃厚に伝わってくる。チェロの彫りが深い。鐘の倍音は豊かで、余韻のゆらぎも克明。
宇多田ヒカルは10Mbpsだとヴォーカルとベースの音像が肥大。100Mbpsにするとノイズフロアが顕著に下がって宇多田のブレスも鮮明だが、全体的にややすっきりし過ぎな感もある音色と質感。しかし肥大していた音像が引き締まり適正サイズに。1Gbpsだとすっきりし過ぎることはなく、硬軟バランスがフラットに。むしろどの音像も密度感が高まっている。
この価格でこのパフォーマンスは驚異的!
■SONORE「opticalModule Deluxe V3」
初代から数えて4世代目となる「opticalModule Deluxe V3」。
(1)回路を全面的に刷新
(2)最新のネットワークICを採用
(3)ネットワークICにはメーカー供給ファームウェアを使用せず、最適化した独自のカスタムファームウェアで動作
(4)ネットワークICは手選別を経た単一周波数超低ジッターFemto精度クロックを用いて制御
(5)ネットワークICをはじめとしたIC類・回路の電源は、最高品質のDC-DCレギュレーターを介して供給
とさすがによく作り込まれている。
本機は「SFP-LANコンバーター」であり、他の3機種のような「LAN IN→LAN OUT」ではないので、本機を2台用意して「ルーター→LAN IN /光OUT→光IN/LAN OUT→N-05XD」となるように繋いだ。
タン・ドゥンは全体的に「こってり」とした質感で描かれる。チェロの音像は左右幅がやや広めだが音色から雑味は取り除かれている。宇多田ヒカルはノイズフロアの低下が効いているのだろう、冒頭から鳴っているテープヒス調の背景音が克明。宇多田のヴォーカルは上下左右前後方向に立体感豊か。ベースに芯がある。肥大しがちなストリングスの音像は左右幅が明瞭に区切られた。
■ediscreation「FIBERBOX 3“JAPAN STANDARD MODEL”」
発売以来大人気の「FIBER BOX 3」。今回聴くのは「JAPAN STANDARD MODEL」である。
(1)0.25 - 0.35psの低ジッターを実現するOCXOクロックを採用してジッターを最小まで減少。2基のモジュールは完全に同期されたクロック信号を使用しているため、光ファイバーは信号を送受信するときに全く同じ動作要件を満たす
(2)高品質な信号トランスがクロックと光ファイバー・モジュールを完全に分離しているため、非常に低い位相ノイズも実現
(3)新開発のLPS(Limited Power Source)電源は40μVrms以下のノイズで高品質の電源を提供する
宇多田は肥大化していた冒頭のギターの音像がコンパクト。ブレスが明瞭。ヴォーカルの密度感がアップした。両ヴォーカルのリヴァーブが克明で、ベース音像は引き締まり芯がある。ストリングスの音像も3次元的に展開される。
タン・ドゥンが圧倒的に素晴らしい!! ノイズフロアが劇的に下がる。空気感充実。チェロの音色に極めて高い品位が。胴鳴りには深み。鐘の音の低域成分が充実し、質量感も出た。かけ声の残響音が初めて鮮明かつ克明に描き出された。
■テレガートナー「OPT BRIDGE 1000M」
ネットワーク分野のスペシャリスト、テレガートナーがつくる光アイソレーターだけに本格的な内容である。
(1)内部には高品位な変換回路を2基搭載、その間をシングルモードの光ファイバーで接続
(2)添付のAC電源アダプタ2台使用することで2つの内部回路をそれぞれ別の電源で駆動して電源ノイズや干渉を回避
(3)10Mbps/100Mbps/1Gbpsに対応しており、本機とイーサネット接続した機器同士の通信速度、通信モード(全二重/半二重)を自動的に最適化するオートネゴシエーション機能搭載
(4)ユーザーで通信速度・通信モードを設定できるDIPスイッチを配置
宇多田ヒカルはモノが違う再生音! 密度感・実在感大幅アップの宇多田と椎名林檎の両ヴォーカル。肺活量がアップしたかのような余裕ある表現で非常に聴きごたえがある。ベースの音像は引き締まり、ストリングスの音像に3次元的な位置感が出た。各楽音間に空間が発生している。
宇多田が衝撃的に良すぎたので印象が薄くなってしまったが、タン・ドゥンも独奏チェロの周囲が静かになり、鐘の左右幅と前後の位置が精密に描かれるようになった。
■まとめ -ネットワークオーディオはまだまだ面白くなる!
光アイソレーター4機種一斉比較、いかがだっただろうか。価格の幅も広いが、性能と個性の幅もとても広かったことに非常に驚かされる試聴であった。そして何より、光アイソレーションによるノイズ除去効果の大きさを改めて痛感した。LANを経由して伝搬されるノイズは相当に、音質を阻害しているのだ。
光アイソレーターの導入により、ネットワークオーディオはまだまだ面白くなりそうである。音質が飛躍的に向上すること間違いなしである!
【試聴曲】
・タン・ドゥン『交響曲1997「天、地、人」』(44.1kHz/16bit)
・宇多田ヒカル「二時間だけのバカンス」(96kHz/24bit)