公開日 2010/05/27 12:06
機器はもちろん、音源のクオリティも大切 − 高音質音源の確保方法
高音質音源確保のために気をつけたい要素とは?
機器はもちろん、音源のクオリティも大切
デジタル圧縮技術は日々進化を重ねているが、非圧縮やロスレスと100%同じというわけにはいかない。しかも、違いを聴き分ける能力には個人差があるので、ある人は同じと感じても、別の音楽ファンがその差を許容できるとは限らないのだ。もちろん再生する音源によっても、圧縮音源と非圧縮/ロスレス音源の違いが目立つものと目立ちにくい音楽が存在する。さらに、現在の環境では差が出にくくても、再生機器をアップグレードしたときに予想以上の違いが聴き取れる場合もある。
そうした事実を考えると、オーディオにネットワークシステムを導入するときの大原則として、「その時点で手に入る最良の音源を確保する」ことの大切さが浮かび上がってくる。その原則は高音質音楽配信とCDのリッピングどちらにも当てはまるので、もう少し具体的に考えてみよう。
高音質リッピングのために気をつけたい要素とは
手持ちのCDからHDDへのデータの移動の際には、プロセスごとにいくつもの選択肢があり、こだわればきりがないほどだ。リッピングを例にとると、CDドライブ、リッピングソフト、エンコード形式のそれぞれに複数の候補がある。
CDドライブはパソコンの内蔵/周辺機器として数え切れないほど発売されており、NASと一体化した製品も登場した。パソコンの場合はドライバソフトの種類やバージョンによっても動作が変化するし、リッピングソフトとの組み合わせでも読み取り速度やリトライ(読み直し)の頻度に違いが出てくる。
そうした組み合わせまで配慮して全数を検証するのは事実上不可能なので、現実的にはメカニズムとソフトウェアの両面で評価の高い製品を選ぶというのが結論になるだろう。ちなみに筆者はいくつか検証したうえで、ドライブはパイオニア製、リッピングソフトはExact Audio Copy(EAC)という組み合わせを選んでいる。
リッピングソフトについては、ネットワークオーディオプレーヤーのメーカーが推薦するプログラムをまずは使ってみるといいだろう。たとえば、DSを発売しているリンは前記のEACのほか、有料ソフトのdbpowerampを推奨している。音質のほか、アルバムアートの取得しやすさや総合的な使い勝手が優れているというのが、その推薦理由だ(いずれも対応OSはWindowsのみ)。
Macユーザーの多くはiTunesでリッピングしたデータをすでにたくさん保有しているはずだ。iTunesのリッピング機能も使いやすさの点ではよくできているし、音質も水準を上回ると思う。ただし、パソコン上で再生する場合は、iTunesの再生エンジンはそれほど高品質とはいえない。Mac専用の高音質再生ソフト「Amarra/Amarra MINI」やフリーウェアのSongbirdで再生すると、クオリティの違いに驚くはずだ。
CDドライブとHDDを内蔵する一体型のネットワークオーディオプレーヤーは、自社で開発したリッピングソフトを内蔵する例が多い。ソフトの性能にこだわるほど音質が向上するというのがメーカーの主張だ。
リッピング時のコーデックはロスレスまたは非圧縮を選ぶのが基本だが、汎用性が高くデータの小さいFLACが一番のお薦め。iTunesのヘビーユーザーはALACを使い続けるのがいいと思う。
高音質配信サイトのコーデックは、ドイツグラモフォンのようにFLACの採用が主流だが、日本のHQMのように、配信はFLACで行い、それとは別にマスターデータをDVDに記録して販売する方法をとるケースもある。英国のリンレコーズはFLACのほかにMP3とWMAを用意しているが、それはあくまで他の方式が再生できない人のためのオプションであり、中心はFLACだ。同サイトには最高で192kHz/24bitの音楽データが多数用意されており、注目録音はディスクに先行してアップロードされる。
さまざまな違いを追求する楽しみはピュアオーディオに似ている
ネットワークオーディオで扱う音楽データはCDよりも上位フォーマットの音源まで含まれるため、再生環境の変化や周辺アクセサリーに敏感に反応する傾向が強いようだ。リッピングソフトの読み込み条件を変えると音が変わるし、NASやルーターの防振対策でも音質が改善する場合がある。アナログ時代から積み重ねてきたオーディオの経験則が当てはまるケースもあるし、新しい発見に出会うことも少なくない。音楽を楽しむスタイルが変わるだけでなく、オーディオの楽しみも深みを増すのである。
山之内 正 プロフィール
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。
デジタル圧縮技術は日々進化を重ねているが、非圧縮やロスレスと100%同じというわけにはいかない。しかも、違いを聴き分ける能力には個人差があるので、ある人は同じと感じても、別の音楽ファンがその差を許容できるとは限らないのだ。もちろん再生する音源によっても、圧縮音源と非圧縮/ロスレス音源の違いが目立つものと目立ちにくい音楽が存在する。さらに、現在の環境では差が出にくくても、再生機器をアップグレードしたときに予想以上の違いが聴き取れる場合もある。
そうした事実を考えると、オーディオにネットワークシステムを導入するときの大原則として、「その時点で手に入る最良の音源を確保する」ことの大切さが浮かび上がってくる。その原則は高音質音楽配信とCDのリッピングどちらにも当てはまるので、もう少し具体的に考えてみよう。
高音質リッピングのために気をつけたい要素とは
手持ちのCDからHDDへのデータの移動の際には、プロセスごとにいくつもの選択肢があり、こだわればきりがないほどだ。リッピングを例にとると、CDドライブ、リッピングソフト、エンコード形式のそれぞれに複数の候補がある。
CDドライブはパソコンの内蔵/周辺機器として数え切れないほど発売されており、NASと一体化した製品も登場した。パソコンの場合はドライバソフトの種類やバージョンによっても動作が変化するし、リッピングソフトとの組み合わせでも読み取り速度やリトライ(読み直し)の頻度に違いが出てくる。
そうした組み合わせまで配慮して全数を検証するのは事実上不可能なので、現実的にはメカニズムとソフトウェアの両面で評価の高い製品を選ぶというのが結論になるだろう。ちなみに筆者はいくつか検証したうえで、ドライブはパイオニア製、リッピングソフトはExact Audio Copy(EAC)という組み合わせを選んでいる。
リッピングソフトについては、ネットワークオーディオプレーヤーのメーカーが推薦するプログラムをまずは使ってみるといいだろう。たとえば、DSを発売しているリンは前記のEACのほか、有料ソフトのdbpowerampを推奨している。音質のほか、アルバムアートの取得しやすさや総合的な使い勝手が優れているというのが、その推薦理由だ(いずれも対応OSはWindowsのみ)。
Macユーザーの多くはiTunesでリッピングしたデータをすでにたくさん保有しているはずだ。iTunesのリッピング機能も使いやすさの点ではよくできているし、音質も水準を上回ると思う。ただし、パソコン上で再生する場合は、iTunesの再生エンジンはそれほど高品質とはいえない。Mac専用の高音質再生ソフト「Amarra/Amarra MINI」やフリーウェアのSongbirdで再生すると、クオリティの違いに驚くはずだ。
CDドライブとHDDを内蔵する一体型のネットワークオーディオプレーヤーは、自社で開発したリッピングソフトを内蔵する例が多い。ソフトの性能にこだわるほど音質が向上するというのがメーカーの主張だ。
リッピング時のコーデックはロスレスまたは非圧縮を選ぶのが基本だが、汎用性が高くデータの小さいFLACが一番のお薦め。iTunesのヘビーユーザーはALACを使い続けるのがいいと思う。
高音質配信サイトのコーデックは、ドイツグラモフォンのようにFLACの採用が主流だが、日本のHQMのように、配信はFLACで行い、それとは別にマスターデータをDVDに記録して販売する方法をとるケースもある。英国のリンレコーズはFLACのほかにMP3とWMAを用意しているが、それはあくまで他の方式が再生できない人のためのオプションであり、中心はFLACだ。同サイトには最高で192kHz/24bitの音楽データが多数用意されており、注目録音はディスクに先行してアップロードされる。
さまざまな違いを追求する楽しみはピュアオーディオに似ている
ネットワークオーディオで扱う音楽データはCDよりも上位フォーマットの音源まで含まれるため、再生環境の変化や周辺アクセサリーに敏感に反応する傾向が強いようだ。リッピングソフトの読み込み条件を変えると音が変わるし、NASやルーターの防振対策でも音質が改善する場合がある。アナログ時代から積み重ねてきたオーディオの経験則が当てはまるケースもあるし、新しい発見に出会うことも少なくない。音楽を楽しむスタイルが変わるだけでなく、オーディオの楽しみも深みを増すのである。
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。