公開日 2013/01/11 11:50
【CES】Hisense、TCL、ハイアール − 次世代の主役をねらう中国メーカーの実力とは
年々ブース規模が拡大、展示内容も充実
CESはいくつかのメイン会場だけでなく、ホテルのスイートルームなども使い、ラスベガスの街中で繰り広げられている一大イベント。だがその中心は、何と言ってもラスベガス・コンベンションセンターのセントラルホールだ。
ソニーやパナソニック、東芝といった国内大手メーカーだけでなく、サムスン電子やLG電子、またインテルなどのITメーカーなどもセントラルホールに巨大なブースを構え、派手な演出とブース構成で来場者の注目を集めようと必死だ。ブースの大きさや派手さが、そのメーカーの勢いをある程度反映していることは間違いない。
■この10年で韓国メーカーのブースが
記者はこの10年ほどのあいだでCESを7回訪れているが、10年前と今とで、セントラルホールの勢力図も様変わりした。
10年前は日本メーカーが文字通り主役で、巨大なブースがいくつも立ち並んでいた。その脇にひっそりとあるのが韓国メーカーという具合だったが、その後次第に韓国勢が勢いを伸ばし、近年ではブースの規模、演出の豪華さで完全に逆転された感がある。
特に今年は訪れたのが2年ぶりということもあり、サムスン電子ブースがさらに広大になっていることに驚かされた。LGのブースも相変わらず巨大で、超大型のデジタルサイネージを使った派手な演出も効果的だった。
いまや世界のテレビシェアの1位と2位をこの韓国2社が占めており、3位以降との差はますます開いている。その勢いがそのままブースにも表れている印象だ。
この2社と比べると、演出がおとなしい日本メーカーのブース展開が、いかにも地味に見えてしまう。より活気のあるブースには人が集まるもので、サムスンやLGは常に黒山の人だかり。一方の日本メーカーは、それなりに人は入っているものの、ブース内を歩くのに苦労するほどではない。技術面ではかなり高度なものを展示しているだけに残念だ。
「韓国メーカーは派手だけど、技術的にはまだまだ」というのは、数年前までよく聞かれたセリフだが、いまやそういう声は滅多に聞けない。確かに画作りなどアナログ的な作り込みなどは依然として日本メーカーに一日の長があるが、CESの発表内容をご覧いただいてお分かりの通り、「4K」「スマートTV」「有機EL」といった最新トレンドでは、日本メーカーと互角かそれ以上の戦いを繰り広げている。
■中国メーカーのブースも年々拡大・充実
さて、韓国メーカーは業績面でもCESでの人気でも、さらには技術力においても、文字通りこの10年で躍進を遂げたわけだが、その陰で着々と存在感を高めているのが中国メーカーだ。
今回、セントラルホールに出展した中国メーカーは3社。Hisense、TCL、そしてハイアールだ。各社とも年々ブースが広く、そして派手になってきている。
中でも話題を集めたのはHisenseだ。長年に渡ってセントラルホールの入り口付近、インテルの隣の広大なスペースはマイクロソフトの指定席だった。2012年を最後に、マイクロソフトの方針でCESから撤退することになったのだが、そこで空いたスペースを獲得したのがHisenseだった。同社は日本でもテレビを販売しているので、ご存じの方もいるだろう。
Hisenseはブースの演出も豪華。一定時間おきにステージでダンスや演奏が披露され、来場者の注目を集め、間髪入れずに製品の訴求を行っており、露出効果はかなりあったものと思われる。つい3年ほど前の同社ブースは人が少なく、閑古鳥が鳴いていたので、隔世の感がある。
TCLも派手なブースを構えた。TCLは日本では馴染みがないが、米国では着実にその地歩を固めつつある。「COLOR YOUR WORLD」が同社のキャッチコピーだが、その文字を大きく掲げ、ブースの色使いもとてもカラフル。元気さを強く印象づけていた。
ハイアールは3社のうち、日本で最も知名度があるブランドだろう。2011年に三洋電機の白物家電事業を買収し、その後、日本で積極的に事業を展開している。日本ではテレビを展開していないが、米国では積極的な展開を行っている。
派手にマーケティングを行っているのはわかった。それでは、この3社の展示内容はどうだったのか。先にざっくりとした印象を述べると、荒削りだが、大きな可能性を感じさせるものだった。
4K関連では、HisenseとTCLが、ともに世界最大となる110型の4Kテレビを展示した。サムスン電子も110型の4Kテレビを出展しており、「最大画面サイズの4Kテレビ」という称号はこの3社が分け合った格好だ。パネルは同じものである可能性が高いが、画面の大きさで耳目を集めようという積極姿勢は評価に値する。そのほかHisenseは、84型の4Kテレビ試作機も展示していた。
実際に販売される製品を見ても、Hisenseは非常に進んでいる。4Kテレビ「XT880」シリーズは65、58、50インチの3サイズを用意し、近々、中国市場で発売する予定という。
なお4Kテレビについては、65インチはソニーや東芝、LG電子が発表しており、58インチについても東芝がすでに投入を表明している。だが50インチは今のところ、他メーカーにはないサイズだ。このあたりにも同社の独自性が表れている。
さらにXT880シリーズは、超狭額のメタルフレームを採用しており、スタイリッシュな外観を実現。アクティブシャッター方式の3D撮影にも対応する。
なおTCLの最新テレビもナローベゼルで「Blade TV」という名称が付けられている。超狭額ベゼルというトレンドを、両社ともしっかりと押さえている。
もう一つのトレンドである「スマート」についても、Hisense、TCL、ハイアールの3社とも積極的に取り組んでいる。HisenseとTCLはGoogle TV対応テレビを出展していたほか、スマートフォンと連携したコンテンツのシェア、スマホ画面のミラーリング表示といったトレンドも着実に押さえ、デモを行っていた。
また3社はいずれも音声認識やジェスチャーコントロールといった、新たなユーザーインターフェースの研究成果を披露。またHisenseはこれに加え、HTML5を使ったプラットフォームの開発も行っているようで、試作段階ながらデモを見ることができた。
さらにHisenseとTCLは、グラスレス3Dのデモ展示も行っていた。両社ともにデッドポイントがかなり多く、また視差の少なさのわりには解像度が低い(おそらく2Kパネルを使っている)など、完成度は東芝のものと比べるとかなり低かったが、新たな技術にチャレンジしようとする意気込みは感じられた。
◇
巨大な中国市場で軸足を固めつつ、最新技術もしっかりと取り込み、マーケティングにおいても日韓メーカーに必死で食らいついている中国メーカー。アメリカ人の多くは、ブランドの国籍を問わず、安くて良いものなら受け入れる文化がある。同程度の性能を安価に提供すれば、中国メーカーの存在感は今後ますます高まる可能性がある。
日本メーカーはもちろん、我が世の春を謳歌ししているサムスンなども、今後この3社が強力なライバルに育つ可能性は十分想定しているはず。ちょうど、サムスンやLGがこの10年で成し遂げたことと同じことが、これから再び起きるかもしれない。
ソニーやパナソニック、東芝といった国内大手メーカーだけでなく、サムスン電子やLG電子、またインテルなどのITメーカーなどもセントラルホールに巨大なブースを構え、派手な演出とブース構成で来場者の注目を集めようと必死だ。ブースの大きさや派手さが、そのメーカーの勢いをある程度反映していることは間違いない。
■この10年で韓国メーカーのブースが
記者はこの10年ほどのあいだでCESを7回訪れているが、10年前と今とで、セントラルホールの勢力図も様変わりした。
10年前は日本メーカーが文字通り主役で、巨大なブースがいくつも立ち並んでいた。その脇にひっそりとあるのが韓国メーカーという具合だったが、その後次第に韓国勢が勢いを伸ばし、近年ではブースの規模、演出の豪華さで完全に逆転された感がある。
特に今年は訪れたのが2年ぶりということもあり、サムスン電子ブースがさらに広大になっていることに驚かされた。LGのブースも相変わらず巨大で、超大型のデジタルサイネージを使った派手な演出も効果的だった。
いまや世界のテレビシェアの1位と2位をこの韓国2社が占めており、3位以降との差はますます開いている。その勢いがそのままブースにも表れている印象だ。
この2社と比べると、演出がおとなしい日本メーカーのブース展開が、いかにも地味に見えてしまう。より活気のあるブースには人が集まるもので、サムスンやLGは常に黒山の人だかり。一方の日本メーカーは、それなりに人は入っているものの、ブース内を歩くのに苦労するほどではない。技術面ではかなり高度なものを展示しているだけに残念だ。
「韓国メーカーは派手だけど、技術的にはまだまだ」というのは、数年前までよく聞かれたセリフだが、いまやそういう声は滅多に聞けない。確かに画作りなどアナログ的な作り込みなどは依然として日本メーカーに一日の長があるが、CESの発表内容をご覧いただいてお分かりの通り、「4K」「スマートTV」「有機EL」といった最新トレンドでは、日本メーカーと互角かそれ以上の戦いを繰り広げている。
■中国メーカーのブースも年々拡大・充実
さて、韓国メーカーは業績面でもCESでの人気でも、さらには技術力においても、文字通りこの10年で躍進を遂げたわけだが、その陰で着々と存在感を高めているのが中国メーカーだ。
今回、セントラルホールに出展した中国メーカーは3社。Hisense、TCL、そしてハイアールだ。各社とも年々ブースが広く、そして派手になってきている。
中でも話題を集めたのはHisenseだ。長年に渡ってセントラルホールの入り口付近、インテルの隣の広大なスペースはマイクロソフトの指定席だった。2012年を最後に、マイクロソフトの方針でCESから撤退することになったのだが、そこで空いたスペースを獲得したのがHisenseだった。同社は日本でもテレビを販売しているので、ご存じの方もいるだろう。
Hisenseはブースの演出も豪華。一定時間おきにステージでダンスや演奏が披露され、来場者の注目を集め、間髪入れずに製品の訴求を行っており、露出効果はかなりあったものと思われる。つい3年ほど前の同社ブースは人が少なく、閑古鳥が鳴いていたので、隔世の感がある。
TCLも派手なブースを構えた。TCLは日本では馴染みがないが、米国では着実にその地歩を固めつつある。「COLOR YOUR WORLD」が同社のキャッチコピーだが、その文字を大きく掲げ、ブースの色使いもとてもカラフル。元気さを強く印象づけていた。
ハイアールは3社のうち、日本で最も知名度があるブランドだろう。2011年に三洋電機の白物家電事業を買収し、その後、日本で積極的に事業を展開している。日本ではテレビを展開していないが、米国では積極的な展開を行っている。
派手にマーケティングを行っているのはわかった。それでは、この3社の展示内容はどうだったのか。先にざっくりとした印象を述べると、荒削りだが、大きな可能性を感じさせるものだった。
4K関連では、HisenseとTCLが、ともに世界最大となる110型の4Kテレビを展示した。サムスン電子も110型の4Kテレビを出展しており、「最大画面サイズの4Kテレビ」という称号はこの3社が分け合った格好だ。パネルは同じものである可能性が高いが、画面の大きさで耳目を集めようという積極姿勢は評価に値する。そのほかHisenseは、84型の4Kテレビ試作機も展示していた。
実際に販売される製品を見ても、Hisenseは非常に進んでいる。4Kテレビ「XT880」シリーズは65、58、50インチの3サイズを用意し、近々、中国市場で発売する予定という。
なお4Kテレビについては、65インチはソニーや東芝、LG電子が発表しており、58インチについても東芝がすでに投入を表明している。だが50インチは今のところ、他メーカーにはないサイズだ。このあたりにも同社の独自性が表れている。
さらにXT880シリーズは、超狭額のメタルフレームを採用しており、スタイリッシュな外観を実現。アクティブシャッター方式の3D撮影にも対応する。
なおTCLの最新テレビもナローベゼルで「Blade TV」という名称が付けられている。超狭額ベゼルというトレンドを、両社ともしっかりと押さえている。
もう一つのトレンドである「スマート」についても、Hisense、TCL、ハイアールの3社とも積極的に取り組んでいる。HisenseとTCLはGoogle TV対応テレビを出展していたほか、スマートフォンと連携したコンテンツのシェア、スマホ画面のミラーリング表示といったトレンドも着実に押さえ、デモを行っていた。
また3社はいずれも音声認識やジェスチャーコントロールといった、新たなユーザーインターフェースの研究成果を披露。またHisenseはこれに加え、HTML5を使ったプラットフォームの開発も行っているようで、試作段階ながらデモを見ることができた。
さらにHisenseとTCLは、グラスレス3Dのデモ展示も行っていた。両社ともにデッドポイントがかなり多く、また視差の少なさのわりには解像度が低い(おそらく2Kパネルを使っている)など、完成度は東芝のものと比べるとかなり低かったが、新たな技術にチャレンジしようとする意気込みは感じられた。
巨大な中国市場で軸足を固めつつ、最新技術もしっかりと取り込み、マーケティングにおいても日韓メーカーに必死で食らいついている中国メーカー。アメリカ人の多くは、ブランドの国籍を問わず、安くて良いものなら受け入れる文化がある。同程度の性能を安価に提供すれば、中国メーカーの存在感は今後ますます高まる可能性がある。
日本メーカーはもちろん、我が世の春を謳歌ししているサムスンなども、今後この3社が強力なライバルに育つ可能性は十分想定しているはず。ちょうど、サムスンやLGがこの10年で成し遂げたことと同じことが、これから再び起きるかもしれない。