公開日 2023/08/26 08:30
SIEがAudezeを買収!ところでAudezeってどんなブランド?今後なにが期待できる?
平面磁気ドライバーがより身近になるかも
米現地時間の8月24日、PlayStationでおなじみソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が、米カリフォルニア州サンタアナに拠点を置くオーディオブランド・Audeze(オーデジー)の買収を発表した。
SNSでの反響を見てみると、なぜSIEがAudezeを?という驚きの声がやはり多い一方、直前に発表された新しいPlayStation用ワイヤレスヘッドセットとの関連性に注目するヘッドホン/イヤホンファンもいる様子。この機会に、Audezeとはどんなブランドか、SIEの買収によって今後なにが期待できるのかまとめてみたい。
まずAudezeというブランドの特徴をひと口で表すと、「平面磁気ドライバーのエキスパート」だろうか。
8月23日にPlayStation.Blogで公開された「PULSE Explore ワイヤレスイヤホン」「PULSE Elite ワイヤレスヘッドセット」に関する紹介記事には、両製品が「PlayStationのオーディオ機器としては初めて、プロのサウンドエンジニアが使用するような高価なヘッドホンに搭載されているカスタム設計のプレーナーマグネティックドライバーを内蔵」していると書かれている。この“プレーナーマグネティックドライバー”こそ、日本語で“平面磁気ドライバー”とか“平面駆動ドライバー”などと訳されているものだ。
この平面磁気ドライバーの長所をかいつまんで述べるなら、「大きな振動板の全体をほぼ均一に動かせる」「振動板を薄く軽くしやすいため、音楽信号への反応(レスポンス)が良くなる」といったところ。振動板が大きければ重く力強い低音を再生しやすいし、振動板を均一に動かせれば歪みが少なくクリアな音が鳴らせる。またレスポンスが良ければ、残響や余韻のような微細な音も明瞭に聴き取れるなど、音質的な魅力は多い。
その反面、作るのは大変で製造コストもお高くなる。ヘッドホン/イヤホンの筐体もドライバーに合わせて設計しないと、せっかくの平面磁気ドライバーの長所を引き出しきれないし、ほかにもドライバーの小型化が難しいなど扱いづらい部分がある。
なので、平面磁気ドライバーを使ったヘッドホン/イヤホンを手掛けているのは、充分な技術力やノウハウを備えたブランドが中心。例えば日本のフォステクス、中国のHIFIMAN、ルーマニアのMeze Audioが複数のモデルを展開しているほか、近年ではヤマハやfinalなども高級モデルを開発している。
さて、今回話題となったAudezeも、この平面磁気ドライバーを得意とするブランドの一角だ。数十万円クラスの高級ヘッドホンから、音楽スタジオのレコーディングエンジニアに向けた業務用ヘッドホン、できる限り小型化したイヤホンタイプまで、さまざまな角度から平面磁気ドライバーを活用した製品を手掛けている。
そしてもちろん、ゲーミングヘッドセットにも進出している。初期のモデル「Mobius」は筆者も使ったことがあり、FPSのようなシビアなゲームにも音楽鑑賞にも耐える音質と、マイクのクリアな通話品質の両方がお気に入りだった。
しかも、Bluetooth/USB/3.5mmアナログの3種類の接続方法に対応、取り外し可能なブームマイク、頭の向きに合わせて音の聴こえ方が変わるヘッドトラッキング機能とバーチャルサラウンドなど、機能性もゲーミングヘッドセットとして本格的。
つまりオーディオブランドとはいえ、これほどのゲーミングヘッドセットが作れる以上、SIEの目に留まるだけの下地がAudezeには備わっていた、と言えるのではないだろうか。
AudezeがSIEの傘下に入ることで期待できるのは、やはり平面磁気ドライバーのノウハウを活かした高音質体験だ。現時点では明言されていないものの、「PULSE Explore ワイヤレスイヤホン」「PULSE Elite ワイヤレスヘッドセット」には平面磁気ドライバーが搭載されていることから、さっそくAudezeの技術が活かされているかもしれない。
上述した平面磁気ドライバーの長所がうまく発揮されれば、BGMや環境音が作り込まれたオープンワールド系タイトルや、ゲーム内の音や通話の情報が勝敗を分けることもあるe-Sports系タイトルなどで大きな違いが感じられるのではないか。PlayStation 5の「Tempest 3Dオーディオ」との合わせ技も楽しみなところだ。
また、「PULSE Explore ワイヤレスイヤホン」は希望小売価格29,980円、「PULSE Elite ワイヤレスヘッドセット」は18,980円と、平面磁気ドライバー搭載製品としてはお手頃。しかも、AIを活用して雑音を減らすノイズリダクションマイクや、音ズレが少なく高音質なワイヤレスオーディオ技術「PlayStation Link」といった機能面も充実させた上での価格だ。
そしてもうひとつ、ソニーおよびINZONEブランドにおよぼす影響も気になるところだ。ソニー/INZONEの製品群をふくめ見渡してみても、完全ワイヤレスおよびワイヤレスヘッドホンへの平面磁気ドライバー採用はこれが初めてのこと。ソニーにはオーディオ製品において独自のポリシーがあるし、またINZONEは“SIEとは別に、エレクトロニクス事業を手掛けるソニーとしてのゲーミングブランド”というコンセプトが立ち上げ時に語られていたこともあり、後を追うように平面磁気ドライバー搭載製品をすぐ発売するとは考えにくいが、グループ企業である以上、SIEから技術のフィードバックがある可能性は期待できるのではないだろうか。
いずれにせよPlayStationオフィシャルアクセサリーとして、機能性も充分な平面磁気製品がこの価格で登場するというだけで、充分なインパクトがあることは間違いない。
SNSでの反響を見てみると、なぜSIEがAudezeを?という驚きの声がやはり多い一方、直前に発表された新しいPlayStation用ワイヤレスヘッドセットとの関連性に注目するヘッドホン/イヤホンファンもいる様子。この機会に、Audezeとはどんなブランドか、SIEの買収によって今後なにが期待できるのかまとめてみたい。
まずAudezeというブランドの特徴をひと口で表すと、「平面磁気ドライバーのエキスパート」だろうか。
8月23日にPlayStation.Blogで公開された「PULSE Explore ワイヤレスイヤホン」「PULSE Elite ワイヤレスヘッドセット」に関する紹介記事には、両製品が「PlayStationのオーディオ機器としては初めて、プロのサウンドエンジニアが使用するような高価なヘッドホンに搭載されているカスタム設計のプレーナーマグネティックドライバーを内蔵」していると書かれている。この“プレーナーマグネティックドライバー”こそ、日本語で“平面磁気ドライバー”とか“平面駆動ドライバー”などと訳されているものだ。
この平面磁気ドライバーの長所をかいつまんで述べるなら、「大きな振動板の全体をほぼ均一に動かせる」「振動板を薄く軽くしやすいため、音楽信号への反応(レスポンス)が良くなる」といったところ。振動板が大きければ重く力強い低音を再生しやすいし、振動板を均一に動かせれば歪みが少なくクリアな音が鳴らせる。またレスポンスが良ければ、残響や余韻のような微細な音も明瞭に聴き取れるなど、音質的な魅力は多い。
その反面、作るのは大変で製造コストもお高くなる。ヘッドホン/イヤホンの筐体もドライバーに合わせて設計しないと、せっかくの平面磁気ドライバーの長所を引き出しきれないし、ほかにもドライバーの小型化が難しいなど扱いづらい部分がある。
なので、平面磁気ドライバーを使ったヘッドホン/イヤホンを手掛けているのは、充分な技術力やノウハウを備えたブランドが中心。例えば日本のフォステクス、中国のHIFIMAN、ルーマニアのMeze Audioが複数のモデルを展開しているほか、近年ではヤマハやfinalなども高級モデルを開発している。
さて、今回話題となったAudezeも、この平面磁気ドライバーを得意とするブランドの一角だ。数十万円クラスの高級ヘッドホンから、音楽スタジオのレコーディングエンジニアに向けた業務用ヘッドホン、できる限り小型化したイヤホンタイプまで、さまざまな角度から平面磁気ドライバーを活用した製品を手掛けている。
そしてもちろん、ゲーミングヘッドセットにも進出している。初期のモデル「Mobius」は筆者も使ったことがあり、FPSのようなシビアなゲームにも音楽鑑賞にも耐える音質と、マイクのクリアな通話品質の両方がお気に入りだった。
しかも、Bluetooth/USB/3.5mmアナログの3種類の接続方法に対応、取り外し可能なブームマイク、頭の向きに合わせて音の聴こえ方が変わるヘッドトラッキング機能とバーチャルサラウンドなど、機能性もゲーミングヘッドセットとして本格的。
つまりオーディオブランドとはいえ、これほどのゲーミングヘッドセットが作れる以上、SIEの目に留まるだけの下地がAudezeには備わっていた、と言えるのではないだろうか。
AudezeがSIEの傘下に入ることで期待できるのは、やはり平面磁気ドライバーのノウハウを活かした高音質体験だ。現時点では明言されていないものの、「PULSE Explore ワイヤレスイヤホン」「PULSE Elite ワイヤレスヘッドセット」には平面磁気ドライバーが搭載されていることから、さっそくAudezeの技術が活かされているかもしれない。
上述した平面磁気ドライバーの長所がうまく発揮されれば、BGMや環境音が作り込まれたオープンワールド系タイトルや、ゲーム内の音や通話の情報が勝敗を分けることもあるe-Sports系タイトルなどで大きな違いが感じられるのではないか。PlayStation 5の「Tempest 3Dオーディオ」との合わせ技も楽しみなところだ。
また、「PULSE Explore ワイヤレスイヤホン」は希望小売価格29,980円、「PULSE Elite ワイヤレスヘッドセット」は18,980円と、平面磁気ドライバー搭載製品としてはお手頃。しかも、AIを活用して雑音を減らすノイズリダクションマイクや、音ズレが少なく高音質なワイヤレスオーディオ技術「PlayStation Link」といった機能面も充実させた上での価格だ。
そしてもうひとつ、ソニーおよびINZONEブランドにおよぼす影響も気になるところだ。ソニー/INZONEの製品群をふくめ見渡してみても、完全ワイヤレスおよびワイヤレスヘッドホンへの平面磁気ドライバー採用はこれが初めてのこと。ソニーにはオーディオ製品において独自のポリシーがあるし、またINZONEは“SIEとは別に、エレクトロニクス事業を手掛けるソニーとしてのゲーミングブランド”というコンセプトが立ち上げ時に語られていたこともあり、後を追うように平面磁気ドライバー搭載製品をすぐ発売するとは考えにくいが、グループ企業である以上、SIEから技術のフィードバックがある可能性は期待できるのではないだろうか。
いずれにせよPlayStationオフィシャルアクセサリーとして、機能性も充分な平面磁気製品がこの価格で登場するというだけで、充分なインパクトがあることは間違いない。