6作品の画質・音質を徹底チェック
発売直前最速レポート!『スター・ウォーズ』BD-BOXのクオリティ&見どころを総力検証
エピソードI ファントム・メナス
■画質チェック:最高級のフィルム画質
本作の画質を一言で言い表すなら「最高級のフィルム画質」だ。ナブーの俯瞰風景、タトゥイーンの夜景などがディスク全体を通した見どころだろう。
実写撮影の部分はもちろん、CGIも当時最高水準のディティールを確保したうえで、フィルム撮影にありがちなノイジーな表情を絶対に見せない。いかにもフィルムらしくストンと落ちる闇や、タトゥイーンの夜景の暗がりにも、撮影由来・圧縮由来のノイズを殆ど見出すことができない。フィルムマスターの映画としては、私の知る限り最もS/Nが高い映像である。
ナブーにおける数々の造形デザインなどから、本作が科学一辺倒のSFではなく、多分に幻想的な要素を含んでいることが分かる。
その幻想を画作りとしても表現するためだろう、フィルム由来の粒状感は最小限度であり、徹底的に純化された透明感が全編を覆う。澄んだ空気に光が満ちる。穏やかかつ清澄な光に満ちた映像はさながら魔法のようであり、まったく隙の無いBD化によって美しい工芸品として結実している。
なお本作では一部実験的にデジタル撮影も行われたようだが、本編中のどのシーンが該当するかは、画質上では判別できなかった。
1999年の作品ということで、BDで見た際のCGIのディティールや完成度について少々不安もあったが、まったくの杞憂に終わった。
さすがに最近の『トランスフォーマー』や『アバター』などの作品と比べると厳しいが、この年代のものとしてはまさに「別格」。特にデストロイヤー・ドロイドの造形の緻密さが強い印象を残した。
高画質化が進んだ結果、CGのキャラクターと俳優が共演するようなシーンでの合成の不自然さが目に付くようになったが、そもそもスター・ウォーズとはそういう作品であって、CGと実写の絡みが不自然云々などというのは無粋だ。むしろ、そこまでの情報が明確に見通せることをファンは喜ぶべきで、それも含めて楽しむべきものだ。
一方、高S/N路線ということと、フィルム撮影とCGIの技術的・年代的制約から、絶対的な情報量としては限界も見える。撮影由来のものと思われる、一時的に映像が甘くなるシーンも、ごくわずかではあるが散見される。
しかし、それらを補って余りあるほどに、本作の映像は美しい。工学的な高画質と、感覚的に美しい映像は異なるが、本作はその二つを両立している。両者が互いに補完しあい、視覚を通して大きな多幸感を与えてくれる。
【画質評価】
情報量:90
解像感:80
安定感:90
総合評価:90
■音質チェック:音楽主体の音作り − ライトセーバーの効果音に注目
音質はまず、血沸き肉踊るオープニングが強く印象に残る。ジョン・ウィリアムスによる劇伴は完璧にサラウンドミックスされ、全く違和感や誇張感の無い劇場そのものの音を実現している。
これは新三部作に共通した特徴で、BGMのサラウンドミックスの巧みさは、私が見てきたあらゆる作品の中でもトップクラスだ。映画音響にはある種の“くどさ”や“やりすぎ感”がつきものだが、新三部作の音響にはそれが無い。むしろオーディオ的に高品位なBGMこそが音響の主体となっている。
そのぶん、サウンドエフェクトに関して言えば、想像していたほどの存在感、ダイナミズムは得られなかった。アクション映画として考えると、音数の豊富さや音響の工学的精度は群を抜いているが、全体的に一歩引いた印象を受けるのだ。例えばプライベート・ライアンのように、効果音だけで全てを語り尽くすような音作りにはなってはいない。
これはもちろん、あくまで音楽との兼ね合いで、相乗効果を発揮するようサウンドデザインを行った結果だろう。音響も映像同様、非常に高S/Nであり、音量を上げても耳障りにならないという美点があるため、ここはぜひとも音量をグイと上げるべきだろう。
なにより嬉しかったのは、ライトセーバー絡みの効果音が素晴らしかったことだ。クライマックスにおけるクワイ=ガン&オビ=ワンとダース・モールの戦闘は、殺陣の素晴らしさ、唸るライトセーバー、迸るスパークのテンションの高さのおかげで、シリーズ屈指の盛り上がりを見せる。ライトセーバーが唸るあらゆる場面が、本作のサウンドの聴きどころとなっている。
【音質評価】
技術:95
力感:75
品位:90
総合評価:86
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